ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

コンテイジョン

映画の予告編などを観ていると「本年度アカデミー賞最有力」という
キャッチコピーが躍る作品が出始めましたね。
そろそろ第84回アカデミー賞の賞レースの機運が高まる時期です。
まだ気が早いですが、作品賞にノミネートが予想されているのは、
スティーブン・スピルバーグ監督の『戦火の馬』が受賞最有力で、
対抗がレオナルド・ディカプリオ主演の『J・エドガー』、
続いてエマ・ストーン主演の『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』が有力。
あとは絶賛公開中のブラッド・ピット主演の『マネーボール』や、
ジョージ・クルーニー主演の『ザ・ディセンダンツ(原題)』、
メリル・ストリープ主演の『鉄の女 マーガレット・サッチャー』が候補になりそう。
アニメ枠はジョニー・デップ主演の『ランゴ』あたりが有力かな?
あくまで予想ですが、ちょっと派手なラインナップになりそうで楽しみです。

ということで、今日はオスカー級俳優が多数出演することで話題の映画の感想です。

コンテイジョン

2011年11月12日日本公開。
スティーヴン・ソダーバーグ監督が豪華俳優陣で描くサスペンス大作。

ミッチ(マット・デイモン)の妻・ベス(グウィネス・パルトロー)は、香港への出張後にシカゴで元恋人と密会していたが、せきと熱の症状が出始める。同じころ香港、ロンドン、東京で似たような症状で亡くなる人が続出。フリージャーナリストのアラン(ジュード・ロウ)は、伝染病ではないかと考え始め……。(シネマトゥデイより)



未知の伝染病の恐怖を描いたパンデミック系パニック・ホラーの本作。
そんななんとなくB級くさい題材にもかかわらず、分不相応と思える豪華キャストで、
思わず釣られてしまいました。
ただ、本作のテレビCMでは「全員アカデミー賞の衝撃」なんて謳い文句が躍ってますが、
これはちょっと誇張しすぎですね。
メインキャストにアカデミー賞を受賞した人が数人含まれるというだけです。
マリオン・コティアール、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレットの
主要3女優はオスカー女優を意図的に揃えているような気もするけど、
マット・デイモンは俳優賞ではなく脚本賞を取ってるだけだし、
ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュバーンは候補どまりでした。
他の主要キャストのジェニファー・イーリーなどは候補にすらなってないし…。
はっきり言って偽りの謳い文句だけど、権威に弱い日本人には効果的な宣伝でしょう。
ちなみに監督のソダーバーグは列記としたオスカー監督です。
本作の前日に公開された本年度オスカー候補『マネーボール』も監督する予定だったけど、
クランクイン直前に解雇されたみたいです。

とはいえオスカー俳優かどうかは別にしても、豪華キャストなことには変わりません。
ただアメリカ全土、世界中を舞台にしたアンサンブル・プレイな内容なので、
豪華キャストの共演と呼べるほど共演シーンがないのは残念なところ…。
なにしろ「感染しないように他人との接触を避けなければ」という事態ですから、
キャスト同士はほとんど邂逅しません。
同じ世界観の中で、別々の独立した話が3~4本同時進行しているような感じです。
なのでキャストひとりひとりの持ち時間も、それほど長くはありません。
なんか勿体ないような気もするけど、ある意味では贅沢ってことなのかな?

本作は、ゾンビ映画のようにウイルスに感染することや発症すること自体の恐怖よりも、
未知のウイルス発生に伴う公衆衛生のあり方、政治的な対応、秩序の崩壊を描いた、
社会性の強いパニック映画となっています。
もし本作のような伝染病が発生したら、ホントにこんな事態になりかねないと思うような、
リアリティを感じさせる緻密な考証がなされているように感じます。
特に未知の伝染病ではないけど、有害な放射性物質による汚染を受けたばかりの日本では、
なかなか身近に感じるテーマだと思います。

香港、ロンドン、日本、アメリカで、謎の脳炎を発症する死者が確認され、
それが極めて感染力、致死率の高い未知のウイルスによるものであることが判明します。
最初の感染者のひとり、ミネアポリスに住む米国人ベス(グウィネス・パルトロウ)は、
数日前、香港滞在中に感染したらしく、そうとは気付かずに帰国し、発症、死亡します。
彼女の息子クラークも感染し、死亡したことで、感染病であることが判明。
彼女の夫であるミッチ(マット・デイモン)は病院で隔離されることに…。
パンデミック系パニック映画は、意外と世界観が狭かったりするけど、
本作ではホントに世界的な規模で感染が広がっている様子が上手く描かれ、
対岸の火事とは思えない伝染病の深刻さが伝わってきます。

未知のウイルスを調査するために、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から、
ミアーズ医師(ケイト・ウィンスレット)がミネアポリスに派遣され、
隔離されていたミッチはこのウイルスに対して免疫があることが判明し、
娘ジョリーと共に、帰宅することが許されます。
CDCによりこの新型髄膜脳炎ウイルスは「MEV-1」と命名されます。
ミアーズ医師はこの調査の過程で感染してしまい、亡くなります。
多くの看護師は、この未知のウイルスから身を守るためにストライキをする中、
調査中の感染病に自分が侵されるなんて、野口英世みたいな立派な人です。

一方、スイスの世界保健機関(WHO)では、感染経路を特定するため、
最初に発生したと思われる香港に、オランテス医師(マリオン・コティアール)を派遣、
現地の疫学者サン(チン・ハン)と合流し、調査します。
しかし彼女は突如サンに拉致され、感染源にほど近い彼の村に連れて行かれます。
彼は例えワクチンが作られても、金持ちが優先して摂取されることを懸念し、
自分の村を救うためにWHOの医師を人質にワクチンを要求するつもりです。
…犯罪行為はよくないけど、実際にサンの村の人は後回しにされそうだよね。
金持ちかどうかは別としても、これだけの世界的伝染病だと、欧米が優先されるでしょう。
中国政府の「誘拐犯とは交渉しない」という方針で、彼らはプラセボを掴まされますが、
どのみちワクチンはもらえなさそうに思います。

感染が広がる中、CDC副所長チーヴァー医師(ローレンス・フィッシュバーン)は会見し、
感染が広がらないように患者の隔離の推奨と、ワクチンが開発されるまでの間、
市民のパニックを回避できるように訴えかけます。
その一方で、フリー・ジャーナリストのクラムウィディ(ジュード・ロウ)は、
東京で男性が発症する様子を撮った動画を自分のブログにアップし、
「政府は事実を隠蔽している」「製薬会社とグルだ」と独自の陰謀論を展開し、
事態をますます混乱させます。
さらに科学的に根拠のない薬草を特効薬だと吹聴し、薬草の争奪戦が起こります。
日本でも「放射性物質にはヨウ素が効くからうがい薬を飲むといい」とかデマが流れ、
店頭からうがい薬が消えたことは記憶に新しいですね。
チーヴァー副所長は「ネットは信じるな、ウイルスより危険」と訴え続けますが、
クラムウィディ記者の陰謀論はどんどん拡散し、市民の不安は増す一方、
各地で暴動や強盗が頻発し、街は混沌と化します。
その裏で、クラムウィディ記者は製薬関係の投資家と組み、金と名声を手にするのです。
後に彼は詐欺罪で捕まりますが…。

ワクチン開発のため、株の培養が行われることになります。
しかしあまりに毒性が強いため、なかなか培養できず…。
検体が流出することを懸念したCDCにより、レベル4の研究所以外での培養を禁止します。
しかし、こっそり研究を続けていたサスマン博士(エリオット・グールド)が培養に成功、
これでワクチンの開発に一歩前進しますが、今度は新薬承認の壁が…。
動物実験には成功するのですが、なかなか臨床実験できません。
そんな中、ワクチン開発に携わるヘックストール医師(ジェニファー・イーリー)が、
無断で彼女自ら治験し、感染した彼女の父親にも摂取します。
その結果、見事治験に成功し、ワクチンの製造が始まります。
こんな状況下では何より規律や秩序が大事ですが、
サスマン博士やヘックストール医師がルールを破ったことで、
突破口が見つかったわけですね。

大量生産の始まったワクチンですが、充分な量になるには数年かかるため、
感染病の混乱から脱したと思ったら、今度はワクチン争奪戦が始まります。
一応ランダム抽選で摂取順が決まるので公平ですが、
遅い順番に割り当てられた人はたまったもんじゃありません。
やっぱり研究者や政府の関係者は優先的に摂取してもらえます。
そのためチーヴァーCDC副所長は、恋人を妻にして、彼女の優先順を上げたりします。
副所長は前にも、発表前の極秘情報を彼女に教えて、
封鎖前にシカゴから脱出させたりと、職権乱用しています。
しかし人の口に戸は建てられず、彼女から情報は漏えいし、
市民のCDCへの不信感を強めることに…。
まぁ自分の大切な人を救いたいという気持ちは仕方ないですね。
陰謀論による政府や製薬会社への不信感も根強く残り、
ワクチン自体の安全性を疑問視する人もたくさんいます。

群像劇なので話が飛びまくり、それぞれの登場人物に利害が絡んだテーマがあるため、
ひとつにまとめて感想を書くのは難しいですが、
やはり我々にわかりやすいのは、最初の感染者の夫ミッチのエピソードだと思います。
政府関係者や研究者、ジャーナリストといった公人が主要登場人物に多い中で、
ミッチだけは一般人で、感情移入もしやすいかと思います。
市井の人から見た感染病騒動は、他のエピソードほど劇的ではないものの、最も身近です。
街では買い溜めや暴動が頻発、満足な配給も受けられないまま…。
街を出ようにも道路は封鎖されており、家に閉じこもっているほかありません。
物資が不足する中、隣の家で武装強盗事件が起きて、身の危険を感じても、
通報が多すぎて911は常に音声ガイダンス状態です。
でも一番困るのが、思春期の娘が彼氏に会いたがることだったりします。
そこがまたリアルで親近感を感じますね。

ラストに、WHOのオランテス医師が拉致されたことで、
不明のまま棚上げされていた感染経路の謎が描かれます。
その原因はやはり人間にあったようで、アメリカ企業による中国での開発が自然を破壊し、
人間には感染しない病原菌を持った野生のコウモリが住処を奪われ、豚舎に飛来。
家畜のブタに感染し、人間に感染する病原体に変異。
そのブタを扱っていた中華飯店にいたベスが最初の感染者になったということです。
同じような経路をたどったニパウイルス感染病がMEV-1のモデルでしょう。
世界的に猛威を振るったSARSも野生のコウモリが宿主だったような…。
ボクが一番怖い感染病エイズなんかも、元は野生のサルの病気が突然変異したもの。
人がむやみにジャングルに踏み入らなければ、発生しなかった感染病は多いのです。
最初の感染者のベス自身、そのアメリカ企業の関係者なので、因果応報だったと言えます。
自然破壊反対!

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/582-c22b022f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad