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ステキな金縛り

豪華キャスト陣で話題の映画『ステキな金縛り』ですが、
豪華キャストというよりは、最近映画で見たばかりの人が沢山出演している感じ。

例えば今年公開の映画から本作にも出ている人を挙げると、
『はやぶさ/HAYABUSA』から西田敏行と竹内結子と山本耕史、
『天国からのエール』の阿部寛、『プリンセス トヨトミ』の中井喜一、
『東京公園』の小林隆、『マイティ・ソー』の浅野忠信、『白夜行』の戸田恵子、
『僕と妻の1778の物語』の草なぎ剛、『スマグラー』の小日向文世、『GANTZ』の浅野和之、
『アンフェア2』から篠原涼子と佐藤浩市、『夜明けの街で』の深田恭子、
『カイジ2』の生瀬勝久、『太平洋の奇跡』の唐沢寿明、『探偵はBARにいる』の大泉洋と、
もう主演の深津絵里以外は今年お馴染みの顔ばかりといった面子です。

ほとんど主演級ばかりなのがスゴイですが、日本の映画俳優って少ないんですね。
本作には出てないけど香川照之なんて、一年中スクリーンに映ってますもんね。
日本の芸能人は沢山いるけど、大スクリーンの演技には堪えられない人が多いのかな?
お馴染みのスターが出続けてくれるのも有難いですが、
もっと新しい映画俳優がどんどん出てきた方が、日本映画界にとってはいいと思う。
本作でも一番若くてアラサーの深田恭子だし…。

ということで、今日はキャストの年齢層が高い日本映画の感想です。
三谷幸喜の生誕50周年作品ですが、いわゆる三谷組も歳を取りましたね。

ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
ステキな金縛り

2011年10月29日公開。
三谷幸喜監督が3年ぶりにメガホンをとった法廷コメディ。

失敗が続いて後がない弁護士のエミ(深津絵里)は、ある殺人事件を担当することになる。被告人は犯行が行われたときに自分は金縛りにあっていたので、完ぺきなアリバイがあると自らの身の潔白を主張。エミはそのアリバイを実証するため、被告人の上に一晩中のしかかっていた幽霊の落ち武者、六兵衛(西田敏行)を証人として法廷に召喚させるが……。(シナマトゥデイより)



140分を超える上映時間ですが、その長さを感じさせないくらいに楽しく、
今年観た日本映画の中では1・2を争うくらい笑えたコメディでした。
しかし、コメディとしては大満足の作品ですが、法廷劇(ミステリー)としては全くダメ。
かなり出来の悪い部類に入ると思います。

本作はミステリーとしては先に犯行の描写がなされる倒叙ものの形態で進みます。
本作で扱われる事件では、ミステリーの禁じ手のひとつである双子ネタを使っており、
その時点でミステリーとしては論外です。
まぁ幽霊が証言台に立つというという時点で、ミステリーとして論外なのかもしれないが、
幽霊裁判という形態は、斬新なようでいて、古くは『藪の中』などでも使われる
典型的なミステリーの形態のひとつなので、そのことは問題ではないです。
超常現象の存在が焦点となるオカルト裁判は実際にもけっこうありますし…。
(映画『エミリー・ローズ』の元ネタとかね。)
しかし双子ネタは安易、且つリアリティにも乏しく、ミステリー自体が陳腐化します。
三谷幸喜監督はテレビドラマ『古畑任三郎』の「しゃべりすぎた男」や、
初脚本映画『12人の優しい日本人』では、コメディでありながら、
比較的まともな法廷ものに仕上げていただけに、本作は勿体ないと思わされます。

この殺人事件の被疑者が犯行時刻に金縛りにあっていたというアリバイを立証するため、
彼の弁護士が金縛りにした張本人である幽霊を法廷に召喚し、
証言させることで被告人の無罪を勝ち取ろうと試行錯誤する、…という内容です。
だけどこの殺人事件自体の出来が悪く、被害者が双子だったという事実も含め、
かなりあからさまな状況証拠が多く、裁判員裁判ならばそれだけでも無罪判決を取れそう。
証人が幽霊かどうかにかかわらず、事件の真相究明にアリバイの立証は重要とは思えない、
弁護側にとってはかなり簡単なケースだと思えてしまいます。
真犯人はけっこう無茶な偽装工作もしているので、捜査すれば物的証拠も出てきそう。
証人が重要な裁判を描きたいなら、被疑者のアリバイを立証することでしか
絶対に無罪を証明することができないような難しい事件にするべきでした。
逆に言えば証人がいさえすれば真相は簡単にわかる事件にすればいいので、
そんな事件を考えるのは、三谷幸喜なら朝飯前だと思うんですが…。

物語の根幹となる幽霊や、あの世の設定もよく出来ているとはいえません。
展開に合わせてその都度新しい設定が追加される都合のよすぎる設定です。
本作には幽霊が見える人と見えない人が登場しますが、それを分けるのは霊感ではなく、
ある3つの条件が揃った時だけ見えるようになるという設定です。
しかし3つの条件のうち2つ、「最近付いてない」と「最近死に触れた(動物も可)」は、
かなり多くの人が当てはまりそうなもので、残る1つ「シナモンが好き」というものも、
女性を中心にけっこう当てはまる人が多そうですよね。
この条件ならボクも見える人になれますが、それくらい緩い設定になっているのは、
完全に展開から逆算し、都合のいいように設定されているからです。

幽霊は現世のものに触れることはできないけど、息を吹きかけることはできます。
この設定は幽霊の存在を立証するための突破口なので必要なものですが、
段田(小日向文世)という幽霊だけは、サイコキネシスのようなものが使えます。
なんか幽霊の設定に一貫性がないですね。
他にも幽霊は写真に写ることもでき、その気になれば動画にも映れます。
そんなことが出来るなら、息や妙な電磁石装置を使わなくても存在を簡単に立証できます。
これもひとつの笑いのために整合性を無視し、急きょ捻じ込んだだけのネタです。
最も酷いのは、幽霊はあの世との往来が簡単で、他の幽霊を連れて戻ることもできること。
殺人事件の捜査でこれが出来るなら、もう何でもアリになってしまいます。

そんな感じで、本作の脚本には三谷幸喜らしいウェルメイドさは皆無なのですが、
その脚本の不出来を補って余りある面白さ、楽しさがあります。
それはひとえに、キャストの演技によるところが大きいのでしょう。
そしてそれは、やはり三谷幸喜の演出力によるものだと思います。
おそらくほとんどの登場人物が、キャストに合わせて当て書きされており、
そのキャストの良さが最大限に発揮されるようにキャラ付けされています。
例えば、最近悪女キャラばかり演じる深田恭子ですが、
本作では彼女本来のアイドル女優的なキャラで起用されており、
最近の出演作の中ではダントツに可愛らしい深キョンが拝めます。
特に主演の深津絵里は素晴らしく、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した
『悪人』以上、いや彼女の出演作でも過去最高に魅力的な演技を見せており、
彼女のポテンシャルが正しい方向に最大限引き出されているように思えます。
三谷映画初参加の阿部寛や中井喜一も、観客が望む彼らのイメージをそのまま取り入れ、
俳優の素材をうまく使っているという印象です。
逆に浅野忠信や竹内結子には、イメージと違う役があてがわれていますが、
それがちゃんと板に付いているのも興味深いです。

なにより全てのキャストが活き活きと楽しそうに演技をしているので、
観ているコチラも楽しい気持ちになります。
それは適材適所、演じやすいようにキャラ付けされているのもあるでしょうが、
三谷幸喜の人柄によるところも大きいでしょう。
演劇に理解があり、監督だけど偉そうに気取らない人なので、
役者としても気負わないというか、仲間意識を感じられる監督で、
自由に伸び伸びと演技ができるのでしょうね。
その最たるものが本作のキーマン、落ち武者の幽霊役の西田敏行で、
本作含め現在3本の出演作が公開されていますが、本作が最も本領発揮できています。
それもそのはずで、本作では彼自身かなりアドリブをブチ込んだそうですが、
それが許されるのも三谷幸喜との関係性があってのことでしょう。
とはいえそれは役者に限ったことで、畑違いから唯一起用されたTKO木下は、
けっこう緊張してたように思えますね。(木下は三谷組には入れなさそうかな。)

ミステリーには期待せず、ファンタジー・コメディとして観れば最高の作品。
これだけ豪華キャストのコメディはなかなかないので、それだけでも観る価値はあります。
もうちょっと泣ける展開もあるのかななんて思ってたけど、笑いっぱなしでした。

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