ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

フェア・ゲーム

先月21日、オバマ米大統領が年内にイラク駐留米軍を完全撤退させることを発表しました。
ブッシュ前大統領の戦闘終結宣言以降も全く終わった気配のなかったイラク戦争ですが、
今度こそちゃんと終結ということになるのかな?
CNNによると、米国民4400万人の命と、軍事費7570億ドルも投じられたようで、
国民の政府に対する非難の声もかなり高まっていたみたいですね。
イラク側の死者は2万とも3万とも言われてます。
終結したとしても、大義なき戦争であるイラク戦争が、今まで続いていたことが問題です。

イラク戦争に消極的だった国が多い中、当時の小泉政権は率先してイラク戦争を支持、
日本も自衛隊を派遣したりと、いろいろ影響を受けました。
でも結局は三十余人の自衛隊員の死亡や原油高など、不利益しか被らず、
やっぱり戦争なんて、勝とうが負けようが参加するもんじゃないなと思います。
ボクは戦争する権利を完全に放棄することが正しいとは思ってないけど、
大義は絶対に必要だと思います。
大義があれば、たとえ負けても(死んでも)後悔はないですが、
イラク戦争で亡くなった米軍兵士はさぞ無念に思っているでしょう。

ということで、今日はイラク戦争に最後まで反対した米国人の実話を基にした映画の感想。

フェア・ゲーム

2011年10月29日日本公開。
イラク戦争開戦をめぐり起こった「プレイム事件」を完全映画化した実録サスペンス。

CIAのヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)と元ニジェール大使で夫のジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)は、イラクに核開発計画がないことを政府に報告する。しかし2003年、ブッシュ政権がイラクに宣戦布告。ジョーがニューヨークタイムズ紙にイラクにおける調査報告を寄稿したことから、報復としてヴァレリーが諜報(ちょうほう)員であることがアメリカ中に公表されてしまい……。(シネマトゥデイより)



なんとも酷い話です。
あ、作品の出来が酷いのではなく、描かれている出来事が酷いということです。
しかもこの酷い出来事は、事実である「プレイム事件」が基になっているとのこと。
プレイム事件については、本作を観るまで全然知らなかったし、
本作に描かれていること以上のことを調べようとも思いませんが、
ホントに本作に描かれているような内容だったら、酷いというか怖いです。
本作には実際に事件当時流されていたニュース映像も多用されており、
エンドロールではヒロインの本人の映像も流されます。
これはまぎれもない事実なんですね。

9.11同時多発テロ以降のアメリカ。
当時のブッシュ政権は、人気取りや石油利権のために、どうしてもイラクと戦争がしたい。
イラクのフセイン大統領をテロの首謀者ビン・ラディンとひっくるめて批判し、
北朝鮮、イランとともに、イラクを悪の枢軸国と認定するも、
戦争を仕掛ける大義としてはイマイチ弱く、何かいい口実はないかと探していました。
そんな中、イラクが中国から用途不明のアルミ管を購入したとの情報が。
さらにイラクがアフリカの小国ニジェールから、
イエローケーキと呼ばれるウラン物質500トンを調達しているという疑いが…。
ブッシュ政権は、アルミ管をウラン濃縮のための遠心分離器と決めつけ、
イラクが核兵器開発をしている証拠として、戦争の大義にできると考えます。

CIAの女性諜報員ヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は、チェイニー副大統領からの命令で、
元ガボン大使でニジェールにも詳しいで彼女の夫であるジョー(ショーン・ペン)に、
ニジェールからイラクにイエローケーキが輸送されたか調査を依頼します。
ジョーは早速ニジェールに飛び、調査しますが、その事実はないと確信し、
その調査報告をCIAに提出します。
しかしイラクが大量破壊兵器を保有していると決めつけたいブッシュ政権にとって、
イラクがウランを調達していないという報告は不都合なものです。

一方、ヴァレリーもイラクが大量破壊兵器を開発しているか諜報活動を開始。
イラク人核技術者の妹(現・米国人)をスパイとしてイラク入りさせ、
兄と接触させて、核兵器開発計画の存在を探ります。
その結果、イラクに核兵器開発計画は中止されたままであることを確信し、上に報告。
しかしやはりそれも、戦争の口実が欲しいブッシュ政権には不都合なもので…。

ブッシュ大統領はジョーとヴァレリーの報告を握り潰し、
イラクに対して宣戦布告を強行します。
ここまででも十分に酷い話のなのですが、ここからはもっと酷い、
というかもっと恐ろしい話になります。

宣戦布告した大義として、イラクが大量破壊兵器を保有していることを挙げますが、
その根拠となるのが、イラクがアフリカからウランを調達したという情報とします。
このことに耳を疑ったのは、実際にアフリカ・ニジュールで調査し報告したジョーです。
ジョーは自分の報告が握りつぶされたことに腹を立て、真実を公表すべく、
NYタイムズ紙に調査結果を寄稿、アメリカでは戦争の大義に対し議論が巻き起こります。
当然ブッシュ政権は黙っていません。
報復として、政府の息のかかったジャーナリストを使いジョーを嘘つき扱い。
それどころか、ジョーの妻ヴァレリーがCIAの工作員であるとマスコミにリークします。

素性が公になってしまったヴァレリーは、もはや工作員として活動できなくなり、
CIAから退職することを余儀なくされます。
さらには素性を隠して付き合っていた友達たちとも疎遠になり、孤立無援に…。
その上、イラク戦争を支持する米国民から、ストーカー被害、嫌がらせを受ける毎日。
それでもやめない、いや、逆に怒りを強める夫のジョーは、
さらに反戦活動を行い、ブッシュ政権批判を展開します。
そのことによりプライベートはどんどん悪化し、ついには子どもを連れ、
ジョーと別居することになるのだった、…という話。

あ、なんか粗筋書いただけで、感想になってませんね。
あまりに酷い出来事だったので、それをそのまま伝えることに気を取られてしまいました。
ここからはちゃんと感想を書きます。

タイトルの「フェア・ゲーム」とは、「最適な攻撃対象」という意味らしく、
ブッシュ政権にとってのヴァレリー夫妻のことを指しています。
政権に対する戦争批判の矛先を、ヴァレリー夫妻を吊し上げることで、
国民の関心をそちらに向けさせようという世論誘導です。
明らかに義はヴァレリー夫妻側にあるにも関わらず、
世論の大勢を夫妻批判に挿げ替えてしまう恐ろしいプロパガンダ。
夫妻自身ですら、自分たちが間違っていたと公開する事態にも…。
言論の自由なんて名ばかりで、正しかろうが政府批判をするものには報復する、
当時のフセイン政権以上にブッシュ政権は恐ろしいです。

本作はブッシュ政権最大のスキャンダルであるイラク戦争開戦の経緯を皮肉る内容だけど、
ブッシュ政権に対する批判よりも、いかにホワイトハウスを敵に回すことが恐ろしいか、
いかに正しいことでも体制に背くことをするのがどれだけリスキーかを物語っており、
こんな作品を観たら逆に政府批判なんてできなくなってしまいます。

ただ救いは、本作がこうして映画になっていることです。
いくら叩かれても正しいことであるならば、いずれは評価され、
汚名をそそぐこともできる日が来ると思わしてくれます。
この「プライム事件」は政権とCIA上層部による陰謀だが、
工作員の身分を暴露することは犯罪であり、例え国家権力と言えども罪は罪です。
ちゃんとFBIが捜査に乗り出し、リークを主導した副大統領補佐官は起訴されます。
補佐官は大統領の根回しで不起訴となりますが、
後にアーミテージ元国務副長官から謝罪を引き出すことに成功します。
これにより、夫妻の名誉は一定量回復され、オバマ政権に変わったこともあり、
こうして映画化もされるようになったということですね。
FBIが独立した機関でよかった。三権分立万歳です。

それにしても当時の実際のニュース映像が多用される本作ですが、
当時の政権の面子、ブッシュ大統領とかライス国務長官のアホ面が流されると、
今でも苦々しい気持ちになり、胸焼けしそうです。
まぁそいつらを支持した小泉総理も似たようなものですが。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/572-0e875637
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad