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スマグラー おまえの未来を運べ

今月初め、東京都での施行で、全都道府県で施行されたことになる暴力団排除条例。
簡単に言えば「暴力団と交際する事業者は仲間(密接交際者)とみなす」という条例です。
密接交際者の認定を受けると事業所名が公表され、社会的にデメリットを受けます。
真っ当な堅気のボクらにとっては、とても素敵な条例ですね。

しかし、昔から興行とヤクザは密接な関係があり、芸能界は戦々恐々みたいです。
テレビでも黒い交際が疑われる芸能人は使いにくくなり、
今年の紅白歌合戦でも演歌歌手が激減するのでは…、という噂です。
興行といえば映画もそうで、映画ファンとしては今後の動向が気になります。
疑わしい芸能人は映画でも使わないでほしいのはもちろんですが、
もしかしたら任侠映画とかヤクザ映画が作りにくくなるんじゃないかと…。
もし作られても、現実にそぐわないものになるんじゃないかと懸念しています。
ある意味で「YAKUZA」や「GOKUDO」は世界的に認知された日本のカルチャーです。
ヤクザは嫌いだけど、ヤクザ映画は嫌いではないし、無くならないでほしいなぁ。

ということで、今日はヤクザと中国マフィアのイザコザに巻き込まれる物語の感想です。

スマグラー おまえの未来を運べ

2011年10月22日公開。
真鍋昌平の漫画『SMUGGLER』を実写映画化したアクション・エンタテインメント。

俳優への道をあきらめ、その場しのぎの日銭でしのいでいる砧涼介(妻夫木聡)は、借金返済のため、日給5万円という高額の運送アルバイトをすることに。砧はいそいそと初仕事にかかるものの運送屋とは名ばかりで、その内容は死体などのヤバイ荷物の運搬と処理だった。たった一度のミスすら命取りになる危険な世界に足を踏み入れた砧は……。(シネマトゥデイより)



なかなか面白い作品ですが、予想外に観る人を選ぶ作品だと思います。
痛快アクション・サスペンスだと思って観ると、痛い目に遭うかもしれません。
なぜなら本作は、『アウトレイジ』並みに激しいバイオレンス・アクション映画…、
いや、『4デイズ』よりもエグいトーチャーポルノ(拷問映画)の域に達した内容です。

最初のうちはちょっとワル乗りしすぎかなと思う程度のバイオレンス映画ですが、
妻夫木聡演じる主人公キヌタに対する拷問が始まると、客が1人、2人と退席…。
退席する客はやはり年配の方が多かったですが、おそらくあの妻夫木くんが、
こんな残酷な目に遭う映画だとは思わなかったのでしょう。
最近のキャリア(『悪人』『マイ・バック・ページ』)から、
幅広い年代の客に支持されるようになった妻夫木くん。
本作もそんな彼が主演するクライム・サスペンスと思って観に来る客も多そうです。
ボクは原作は知らないものの、他のキャストからこの展開はある程度予想してましたが、
それでもその予想を超えるグロさでしたからね。
観客の意表を突くのはいいけど、退席させてしまっては意味がなく、
ジャンルとしては良作でも、一般的に低い評価を受けてしまいます。
激しいバイオレンスを含む作品であることを周知させるべきでした。
せめて高いレイティングを設けて、警戒させるべきでした。

本作はレイティングは、こんなグロい内容なのにまさかPG12(小学生以下指導必要)です。
この内容ならR15+(15歳未満禁止)にしておくべきです。
どうせティーンエイジャーが好き好んで観る作品でもないんだし、
わざわざ低いレイティングに抑える必要はないと思います。
客の入場制限だけの問題ではなく、レイティングってのはネタバレにもなります。
例えば本作で、主人公は拷問で足を切り落とされそうになりますが、
PG12ではそこまで猟奇的な表現は許されないので、
結局足を切り落とされることはないことがわかってしまいます。
ホラー映画でもそうですが、バイオレンス映画の場合、
レイティングはなるべく高く設定しておいた方が、客の期待は煽れるんですよ。

それにしてもこんなバイオレンス映画に、なぜ妻夫木くんを起用する必要性があったのか。
去年度の日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞俳優だから、
彼が出演することで作品に箔がつくのは間違いありません。
でも、はっきり言って妻夫木くんに向いていない作品だと思います。
本作は原作が漫画なので、登場人物は漫画的な極端なキャラが多いです。
というか、妻夫木くん演じる主人公以外は、全員ちょっとイカレタ奴ばかりです。
その中で正統派で演技派な妻夫木くんは、はっきり言って浮いています。
彼の自然で人間味のある上手い演技が、漫画チックな作風とギャップがあります。
そのために彼が拷問を受けると生々しくて痛々しく見えるのです。

それは裏を返せばリアリティがあるということだけど、
暴力を楽しめてこそのバイオレンス映画は、暴力シーンで笑えるようでないとダメです。
コメディ色が半端になってしまいます。
できれば拷問されてもあまり悲惨さを感じさせない俳優、
例えば同じ原作者の作品『闇金ウシジマくん』の山田孝之とか、
コメディ的な演技が得意な俳優が主演の方がよかったと思います。
そもそもせっかく妻夫木くん使っても、この主人公はそれほど演技力必要なさそうだし、
というかあまり動かないキャラだし、出番も少ないし勿体ないです。
せっかくのイケメンも拷問でボコボコになっちゃうし、
妻夫木ファンもさぞガッカリすることでしょう。

でも主人公以外の登場人物はみな一本立ちできるほど個性的で面白いです。
評論家は永瀬正敏演じる運び屋ジョーが好評のようですが、
もちろんジョーもかなりよかったけど、どちらかといえばボクは敵キャラがいいですね。
伝説の中国人殺し屋「背骨」(安藤政信)のサブマシンガンの弾さえも避ける
超アクロバティックで漫画丸出しのアクションもよかったし、
田沼組組長(島田洋八)の愛煙家なのに嫌煙家という設定も笑えました。
中でも田沼組構成員で、主人公を拷問する河島(高嶋政宏)のイカレっぷりは最高。
あまりにも不快で残忍なキャラで、高嶋政宏自身を嫌いになりそうなほどの悪役です。
そういえば高島弟の方も最近イカレたヤクザの役をやってましたね。(『探偵は~』)
これほど個性派悪役がハマる兄弟はなかなかいません。
あとチョイ役でしたが、警官AとB(松田翔太&大杉漣)もいい味出してました。

主人公キヌタ(妻夫木聡)は俳優志望だった若者ですが、夢に挫折して、
中国マフィア帳(阿部力)の斡旋でパチスロのゴト行為を始めるが、
失敗して金融屋(松雪泰子)から300万円の借金を背負うことに…。
返す当てのない彼は、金融屋の斡旋でヤバいブツを運ぶ運送屋「スマグラー」になる。
スマグラーは運送屋というよりも、ヤクザの抗争で出た死体を始末するのが仕事です。
だけどある日、田沼組の依頼で生きた人間「背骨」を運ぶことになります。
でも運送中にキヌタのミスで背骨に逃げられてしまい、
かわりに俳優志望の彼が背骨の代役をすることになるが…、という話。

素人が凄腕殺し屋を演じることになるという展開は、
『知らなすぎた男』や『ザ・マジックアワー』を彷彿とさせますね。
好きなパターンの展開で思わずワクワクしてしまいましたが、
その後はなんか期待ハズレの展開でガッカリしました。
キヌタは代役になるやいなや、すぐ拘束衣を着せられ、
田沼組の河島から拷問を受けるので、演技もくそもありません。
拷問でボコボコにされたあと、土壇場で背骨のフリをして河島に反撃しますが、
殺しの実力が伴わないのに、殺し屋のフリをしてその場をしのぐのが演技ですが、
本当に暴力的なことをするのは演技とは言えません。
あれは、ただの火事場のクソ力です。(立ってるのも不思議でしたが…。)
なので主人公キヌタの俳優志望という設定は、あまり活かされてないように思います。
序盤の警官から職質受けるシーンでは、演技でピンチを脱していてよかったのですが…。

結局、主人公が登場してないところだけは面白い映画という印象でした。
妻夫木くんは今いい感じの時期なので、もっと作品選びは慎重にするべきです。
なんでも次は中国(台湾)映画への出演が控えてるんだとか…。
まさか『ワイルドスピード』の3作目みたいな地味な出演じゃないよね?

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