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はやぶさ/HAYABUSA

去年、日本に大きな感動を与えた小惑星探査機はやぶさ。
その話題性からも映画化されるのは間違いないと思いましたが、
なんと映画会社3社が別々に映画化を企画、製作するということになりました。
JAXAははやぶさの映画化については「お好きにどうぞ」って姿勢のようで、
映画会社にとってみればオイシイ題材です。
同じ題材の映画の企画が3本も重なるのは稀なことらしく、それもまた話題になりました。
同じ題材のガチンコ対決で、どの作品が一番いいか見ものです。

その3本は東映の『はやぶさ 遥かなる帰還』と、松竹の『おかえり、はやぶさ』、
そして公開中の20世紀フォックスの『はやぶさ/HAYABUSA』です。
東映版は唯一実在の人物をモデルにした主人公で、
キャストを渋い名優で固めたリアルで硬派な作品になりそう。
最も後発となる松竹版は3D実写映画になるということで他との差別化をはかります。
同じ題材でも各社アプローチの仕方が違のが面白と思うのですが、
その中でもボクが一番興味深いと感じたのは20世紀フォックス版です。
それは公開が他社よりも先んじているというのも魅力のひとつですが、
それ以上に、本作が20世紀フォックス初の日本映画だからです。
ワーナー、パラマウント、ソニーに続き、ついに20世紀フォックスも、
日本でローカルプロダクツを始めてくれたことが嬉しいです。

ということで、今日は20世紀フォックス初の日本映画の感想です。
はやぶさ帰還から1年ほどで制作・公開してしまうのスピーディさは、
さすがはフットワークの軽い、ハリウッド・メジャーだなと思います。
しかも全米10都市でも公開されるとか…。

はやぶさ/HAYABUSA

2011年10月1日公開。
小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦を描いた壮大なドラマ。

2003年5月9日。小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星イトカワを目指し地球を出発した。イオンエンジンの実験、成功すれば世界初となる小惑星からのサンプル入手などを目的として2005年9月にイトカワに到着。しかし姿勢制御装置の不具合や、通信が途切れるなど、さまざまなトラブルに見舞われてしまう。(シネマトゥデイより)



去年6月の小惑星探査機はやぶさの帰還には感動しました。
ボクは宇宙開発にそれほど価値を見出せてなくて、そんなものに予算を使うのは、
この長引く不況と財政難の中で、優先順位の低いことだと思っていました。
それはボクだけでなく、今の民主党政権も思っていたことで、
(はやぶさ帰還前の)2010年の事業仕分けでは、
はやぶさプロジェクトの予算が17億円から3000万に減額されたとか…。
でも国民が受けたあの感動を金額に換算すれば17億円なんて安いもの。
これからの経済効果も相当なものになると思います。
ボクも日本はNASAのおこぼれをもらえばいいと考えていましたが、
はやぶさの帰還で、日本独自の宇宙開発も必要だと思うようになりました。
(民主党政権も帰還後の世論の反発を受けて、予算減額を撤回したみたいですね。)

ただこれは結果論で、はやぶさが満身創痍で困難な旅を乗り越えたから感動するのであり、
もし難なく帰ってきてしまったなら、(一部の天文ファンを除き、)
みんな「そんなプロジェクトに何の意味があるの?」と思うんじゃないかな?
世界で初めて月以外の天体からのサンプル採集したわけだけど、
それこそ「2番じゃダメなんですか?」(by 事業仕分け)って感じだし、
そのサンプルで太陽系誕生の謎がわかるかもしれないって言われても、
「それって食えるの?」ってなもんですよ。
はやぶさプロジェクトが闇夜に針の穴を通すような計画だったから価値があるんです。
日本の宇宙開発ではNASAのような大規模な予算は付かず、
致し方なく低コストで省エネな探査機にするしかなかったわけです。
そのためはやぶさは、燃料漏れおこしたり、エンジン停止したり、通信がロストしたりと、
ある意味脆弱な機体になってしまったことが、困難な旅を演出することになり、
それが功を奏して、ドラマチックで感動的な旅になったのでしょう。
なので結果的には、低予算様々だったのかもしれません。

以上ははやぶさプロジェクトの感想ですが、ここから本作の感想。
本作は当然だけど事実が基になった物語です。
登場人物も激似と評判の川口淳一郎さんがモデルの川渕幸一(佐野史郎)など、
実在の人物をモデルにしている者が多数なのですが、
主人公である水沢恵(竹内結子)は特定のモデルを持たない架空の人物です。
そのためかかなり色の強いキャラで、極度の天文オタクで明らかに挙動不審…。
こんなキャラを男が演じたら、どんなイケメンでもキモオタにしか見えませんが、
癒し系女優・竹内結子が演じることで、かわいらしくコミカルに仕上がり、
(女性としては微妙だけど、)純粋な少年のように感じられて好印象でした。

また現実的にはちょっと考えにくい設定ではあるのですが、
古本屋の店員だった恵がひょんなことから宇宙科学研究所にスカウトされるという展開は、
外部の人間の目を通して日本の宇宙開発の現場を見られるという演出になっており、
ボクのように宇宙開発に無知な観客にとってはとてもわかりやすく、ありがたいです。
また恵は(広報兼)雑用としてプロジェクトに参加しているので、
部署の垣根を越えていろいろ首を突っ込んでいけるのも、
プロジェクトの全容を描くのにとても役立っていると思います。
架空の人物を主人公に据えた利点ですね。

ですが、架空の人物であるゆえに、プロジェクトの本筋には大きく関与できません。
ゆえに、主人公を中心とする人間ドラマは希薄になります。
ということは、全体的に映画としての物語性も希薄で、脚色も控え目ということ。
なので、本作は映画というよりも、はやぶさプロジェクトの軌跡を追った、
再現ドラマという様相が強い作品になっています。
せっかく実写映画化3本の内、唯一の女性主人公の作品なんだから、
ロマンス的な展開も差別化にはありだと思うんだけど、薄い家族ドラマしかないです。
他社に先んじて公開したいために、ドラマを練る時間がなかったのかも?

しかし実写映画化一本目としては、事実を脚色しないで伝えるというのも、
それはそれで意義があるのかもしれませんね。
今後他の2本を観る上では、本作で全容を捉えられたことはきっと役立ちそうです。
…とは思うんだけど、やっぱり再現に拘りすぎと思うところもありました。
例えば、はやぶさの小惑星イトカワへの1度目のタッチダウンが失敗した理由が
有耶無耶に描いてあることです。
事実として、なぜ失敗したのか不明なんだろうけど、所詮は映画、
半フィクションなんだし、その程度のことは創作しちゃえばよかったのでは?
その失敗はその後のはやぶさの不具合や、満身創痍になるキッカケで、
けっこう重要なところのはずだから、有耶無耶のままでは気持ち悪いです。
それにしても、あんなにいろんな事態を想定して、
その都度クリアしてきた宇宙科学研究所の所員たちなのに、
小惑星イトカワがデコボコという可能性を考慮してなかったとは、
意外と抜けてるところもあるんですね。
しかもこれに足をすくわれかけてるし…。

はやぶさプロジェクトの入門ともいえるわかりやすい再現ドラマだった本作ですが、
再現ドラマは何度もやっても仕方ないので、
後発2作品にはドラマ部分の強化を期待したいと思います。
東映製作、渡辺謙主演の『はやぶさ 遥かなる帰還』は来年2月11日公開、
松竹製作、藤原竜也主演の『おかえり、はやぶさ』は来年3月10日公開です。
日本の老舗映画会社としての意地で、20世紀フォックスの初日本映画である本作には、
勝るとも劣らない作品にしてくれることを期待します。

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