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サンクタム

3DC安全ガイドラインでは、3D映像を作るにあたって、視聴者の健康のためにも、
「飛び出し映像の多用や長時間提示は避けるべき」とされており、
それを受けて、なるべく飛び出さないように3D映像を作るのが主流なんだそうです。
これは日本のガイドラインなので、外国にもあるのかは知りませんが、
飛び出す映像が人体に悪影響があるという事実に国境は関係なく、
どこの国の3D映像も似たような方針で作られていると思います。
2008年に初めて観て以来、デジタル3D映画を三十数本ほど鑑賞しましたが、
「飛び出しがすごい」と感じた3D映画には出会った試しがありませんでした。
それはシステム的にデジタル3Dが飛び出しに向かないからだと思ってましたが、
観客の健康のために自主規制されていただけなのかもしれません。

でも観客が3D映画に求めるのって、やっぱり画面から飛び出してくる映像だと思います。
それを期待するから、3D映画は相対的に評価が低くなるのかもしれません。
いくら「奥行きがすごい」なんて言っても、
ボクたち三次元人は普段から奥行きのある世界を見ており、
奥行きにそれほどありがたみを感じないんじゃないでしょうか。
例えるなら奥行きのある映像は窓枠から外を眺めるような感じで、
飛び出す映像は窓の外から室内に向かって何かを投げ込まれるような感じ。
後者の方が刺激的で楽しいですよね。

安全ガイドラインが必要なほど3D映画は人体に有害という事実を視聴者(観客)に周知し、
それがわかった上で観に来てくれる人のためには、
健康と引き換えにしてもいいと思えるほど刺激的な飛び出す映像を提供してほしいです。

ということで、今日は全く飛び出さないデジタル3D映画の感想です。

サンクタム

2011年9月16日日本公開。
ジェームズ・キャメロンが製作総指揮を務めるアドベンチャームービー。

南太平洋にぽつりと浮かぶ島にある、熱帯雨林の奥地に広がる洞くつ。その地は、人が足を踏み入れてはいけない聖域(サンクタム)の様相を呈していた。そんな洞くつの謎に挑もうと探検隊がダイビングによる調査を試みるが、巨大なサイクロンが襲い掛かり……。(シネマトゥデイより)



本作で話題になることといえば、製作総指揮がジェームズ・キャメロンということばかり。
内容のことなんて全然話題にもなりませんが、それが本作をよく表す事象だと思います。
つまりは内容なんてスッカスカで、売りはビッグネームな製作総指揮様だけってことです。
しかし製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー)は、
作品を製作するプロデューサーを選任する人です。
現場で映画制作の指揮をとっているわけではなく、単なる会社のお偉いさんです。
なので製作総指揮がどんなに優れた名監督であろうが関係なく、
その人の監督作と同様の期待をして観ると痛い目に遭う確率が高いです。
本作はまさにそのパターン。
いや、キャメロンの監督作と比較しなかったとしても、大したことない作品です。

ただ本作はキャメロンの影響が全くないかと言われればそんなことはなく、
彼の指示で、改良型フュージョンカメラシステムで撮影されています。
フュージョンカメラシステムは、キャメロンが『アバター』の撮影のため、
苦心して制作した三次元ステレオ撮影用カメラです。
『アバター』の3Dはたしかに素晴らしく、未だ世界最高峰じゃないかと思います。
だからそれで使った3Dカメラの改良型で撮られた作品となれば、
映像はかなり期待できると思いますよね。
しかし、カメラを2つ並べた形という基本構造はどの三次元ステレオカメラも一緒。
素人目には他のステレオ撮影された3D映画とそれほど差がある感じはしません。
それどころか、技術以外の要因から、他の3D映画よりかなり劣る映像になっています。

その要因というのが、本作の舞台となる洞窟です。
キャメロンは「3Dは閉所のシーンの方が効果的」と語っています。
たしかに奥行き、空間を表現できる3Dでは、開放的な舞台よりも、
閉鎖的な舞台の方が臨場感を出せます。
だから洞窟なんてのはまさに3D映画のための舞台装置のようですが、
日の光も差し込まない深い洞窟は、3Dの弱点である明度に問題があります。
最近は劇場の3Dインフラの進化で、3Dメガネにより画面が暗くなることは減りました。
しかし本作は元の映像自体が暗いんだからどうしようもないです。
黎明期の暗く出来の悪い3D映画を久しぶりに味わった感じです。
光の陰影があってこその立体映像、全体が暗いんじゃ平面と変わりません。
それに「閉所の方が効果的」というのも実は眉唾で、
『アバター』にしろ『トランスフォーマー3』にしろ、評判がいい3D映像は空撮シーン。
どこまでも続く広々とした空中を爽快に飛びまわるシーンでした。

さらに悪いのが撮り方です。
空間を表現するための3D撮影なのに、なんで役者の寄りの画ばかり撮るのか。
もっと引きの画で空間を撮らないことには、せっかく閉鎖的な舞台も活きません。
空間の奥行きよりも、役者の顔の凹凸を表現したいのかな?
カットもコロコロ変えすぎで、役者の動きを追うのに必死で、
奥行きを堪能するどころではなかったです。

…と、ここまでが本作の3Dのダメなところ。
しかし3Dなんてのは映像面を飾りつける視覚効果でしかなく、
映画にとって最も肝心なのはストーリーです。本作はそれがダメすぎます。
3Dのダメさは薄々予想してたけど、ストーリーがここまでダメだとは予想外でした。
もう悪い意味でツッコミどころだらけの内容だったのですが、
その中でも特に納得のいかなかったところを2点だけ書きます。

まず1点目は、ケープ・ダイビングで洞窟調査していた調査チームですが、
サイクロンみ見舞われ、洞窟内が増水、入り口から脱出できなくなり、
5人が洞窟内に取り残されてしまいます。
その中のひとり、ベテラン探検家フランク(リチャード・ロクスバーグ)は、
別の出口を探すため、皆を連れて洞窟の奥を目指しますが、
他のメンバーが彼の指示を聞かなかったり、何かにつけ彼に反発します。
たしかに昔気質で高圧的なところがあるフランクですが、死ぬか生きるかの事態なのに、
最も頼りになる彼の指示に従わないとかありえないです。
特に唯一の女性ヴィクトリア(アリス・パーキンソン)は、
潜水経験もなく一番足手まといにもかかわらず、簡単な指示すら無視。
そのせいで更に皆の足を引っ張りますが、結局最後もフランクの指示を聞かず死にます。
もう自業自得というか、もっと早く死んでほしかったです。
とはいえ、フランクだって嵐が来ると知ってて洞窟調査をしてたわけで、
ベテラン探検家のくせに自然を舐めてるとしか言いようがない、
乗り残された全員が自業自得で、誰一人として応援する気になれません。

そして2点目は、怪我をして一緒に脱出することができなくなった仲間を、
置いてけぼりにするのは可哀そうなので、息の根を止めてあげるという展開が何度かあり、
その行為自体は特に残酷だとかは思いませんが、問題はその殺し方。
なにも水中に押し付けて溺死させることはないでしょ。
溺死はトップクラスの苦しい死に方だと言われてます。
置いてけぼりにしたことで、そこが水没し、怪我人が溺死するのがかわいそうだから、
苦しみが少ないように息の根を止めてあげてるんじゃないの?
刃物も携帯してるんだから、それ使えばもっと楽に殺せるんじゃないの?
溺れる苦しさをわかってるはずのダイバーがそんなことをするなんて、
納得できないというか、リアリティが感じられません。
しかし本作は事実が基になっていると謳われており、もし本当なら滅茶苦茶な話だし、
フィクションだとしたらあまりにも出来の悪い脚本です。

そんな残念な内容だから、流行の3Dで武装したのでしょうが、
公開された頃にはすでに3D熱は冷めており、あまりヒットしませんでした。
何も褒められるところがなくつまらない作品でしたが、
ハリウッドが3D映画を見つめなおす機会にはなったんではないでしょうか。

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