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監督失格

日本は世界有数の映画消費国で、外国映画にとっても、とても魅力的なマーケットのはず。
でもハリウッド映画が日本で公開されるのって、他のアジア諸国に比べてかなり遅い。
日米同時公開なんてほとんどありません。
だからなんだかハリウッドから舐められてる感じがするんですよね。
日本人は鳴物入りに弱いから、「世界○ヵ国でNo.1」とか、
実績を引っ提げて日本公開した方がいいとか思われてるんですかね?
それとも日本語字幕付けるのとか日本語吹替のアテレコが極端に遅いだけ?

でもまぁそれは仕方ないとしましょう。
それよりもイラッとくるのは全国順次公開ってやつです。
当然スタートは東京(関東)からで、ボクの住む関西ではかなり遅れるものもあります。
まさかフィルムを持ち回りしているわけでもないだろうに、なんで地方と差をつけるかな?
たしかに劇場数が違うので、ミニシアター系作品は公開順番待ちになるのは仕方ないです。
でもシネコンで上映されるようなメジャー作品まで○週遅れで公開とか、
その理由が地方差別としか思えなくてムカムカします。
1日公開のはずの『リミットレス』や『ステイ・フレンズ』が、
関西ではなぜ1週遅れ8日からの一斉公開になるんでしょうか?
東京はまだしも、東海より遅いとか、関ヶ原の溝は深いです。

というわけで、今日は東京から1カ月遅れで関西(全国)公開が始まった映画の感想です。
むしろ10月1日が正式な公開日で、東京のは先行上映だと思います。

監督失格

2011年9月3日公開。
2005年に34歳で急逝した女優・林由美香を題材としたドキュメンタリー。

1996年、映画監督の平野勝之は当時恋愛関係にあったAV女優林由美香と共に、東京から北海道への自転車旅行に挑戦する。最初の1週間は旅のあまりの過酷さに毎日泣き続けていた由美香だったが、ついにひと月以上をかけて礼文島に到着する。その後、2人は別れたものの、彼女の死の直前まで友人としての関係は続いており……。(シネマトゥデイより)



偶然にも有名人の孤独死の現場に踏み込むという展開のドキュメンタリーであるため、
内容の衝撃度は申し分ないですが、作品としての意図がわからない映画です。
いや、ホントは意図はわかる気がするのですが、その意図を隠そうとしていて、
なんだか潔くない、煮え切らない印象が残りました。

その有名人は林由美香という人気AV女優で、
亡くなった当時はかなりゴシップが踊ったそうですが、
ボクはAV女優に疎く、彼女自身もそのゴシップも本作で初めて知りました。
本作は彼女の元不倫相手であるAV監督の平野勝之によるもので、
交際中から亡くなるまでの彼女とかかわった約15年間にわたる生々しい記録と、
本作を映画として形作るために、死後に新たに撮影した映像からなります。

前半は交際中の記録映像で、平野監督と林由美香がAVドキュメンタリーの撮影で、
東京から北海道まで自転車で2人旅をするという内容。
セックス旅行のドキュメンタリーといった企画ものAVシリーズで、
それを後に再編集し映画『由美香』として劇場公開もしたそうですが、
言うなれば本作前半はその映画のディレクターズ・カットみたいなものですね。
ボクにとっては全く知らない不倫カップルの旅先でのホームビデオのようなもの。
おそらく濡れ場は完全カットされてるし、そんなもの見せられたところで退屈なだけです。
(ただのママチャリで北海道まで行こうという企画のいい加減さはちょっと面白いかな。)
それが1時間ちかくも続くんだから、ちょっと滅入りましたね。
当時これを映画化した時はちゃんと需要あったのか甚だ疑問ですが、
続編らしきものが2作も制作されているので、監督としては手応えあったのでしょうね。
そもそもは男一人旅として企画していたんだとか…。
それこそ需要あるのかって感じですが、その企画は3作目で実現させたようです。

すごく退屈な前半でしたが、これが林由美香の死の衝撃を強調するための潜伏期間として、
ちゃんと機能していたら全然文句はありません。
しかし、不倫旅行企画と、林由美香の死とは直接因果関係はなく、
監督との過去の不倫関係も遠因にすらなってないように思われます。
なので、前半の長く退屈なホームビデオは何のために流す必要があったのか疑問です。
ひとつ思い当たる理由があるとすれば、彼女の死の当日や、彼女の孤独死の現場に、
単なる元カレである監督がたまたま居合わせ、たまたまビデオを回していたという、
都合がよすぎる如何にもな状況の正当化のためじゃないかと思います。
「自分は15年前から彼女の日常を撮ってるから、この状況も全然不自然じゃない」ってね。
その証拠として、10年前のドキュメンタリー映像を差し込んだのではないかと。

こんな書き方をすると、監督が彼女の死によくない形で関わっていると思われそうですが、
さすがにそれはなさそうかな…?
警察も酒と睡眠薬による事故死で、事件性はないと考えたようだし、
そもそもホントに監督にやましいところがあるなら、わざわざ映画化はしないでしょう。
ただ、こんな都合のいい状況はわざわざ公開してしまうと、
再び疑わしいと思われかねないのは間違いないのに、何で今更?って感じはします。
それは映像作家としての性(さが)、AVではなく映画監督としての意地でしょうね。

孤独死発見当日、彼女の部屋で彼女を遺体を発見した監督は、映像作家としての性か、
たまたまスクープの現場に居合わせたかのような、嬉々とした様子が窺い知れます。
高らかに「現場保存」を叫ぶ姿は、沈着冷静なようでいて、普通ではあり得ない反応です。
知人が仰向けに突っ伏していたら、心配して助け起こすのが普通でしょう。
監督は速攻110番しますが、あのような場合、警察ではなくまず救急車を呼ぶものです。
まるで踏み込む前から彼女が死んでることがわかっていたような、
それでなくても死んでいることを期待していたような反応に思えました。
代表作『由美香』以来、映画監督としてはパッとしなかった中で起こったこの事故、
いいものが撮れたと言わんばかりの、ディレクターズ・ハイ状態です。

彼女の死後、彼女の母親との取り決めで、せっかくのスクープ映像は封印されました。
しかし(粘り強い説得が功を奏したのか?)5年後に公開の承諾を得て、
こうして現在公開されているわけですが、公開するために新たに撮り下ろしたシーンでは、
監督は「この制作に乗り気ではない」とまるで強要されているような口ぶり。
しかし「人は二度死ぬ」「由美香が忘れられないように」という方便で、
本作を制作する正当性を強調しています。
結果的に彼にとって約10年ぶりの映画監督としての代表作になりました。

スクープを無駄にはするまいという、その映像に対する執着心は感服に値するもので、
『監督失格』なんてタイトルですが、むしろ「監督合格」です。
でも元カノの悲劇まで飯のタネにするなんて「人間失格」…。
しかし以上はあくまで、ボクが本作から勝手に受け取ってしまった本作の裏の意図であり、
そんなつもりは全くなかったのであれば、とんでもない人格批判で申し訳ないと思います。
AV監督やAV女優の恋愛感情というのは、おおよそ常人には理解しがたいものなので、
監督がラストで叫ぶように、林由美香と別れたくないという純粋な愛が、
本作の制作の動機だったのかもしれません。
でも真意なんて知るすべはなく、事故の真相とともに藪の中です。

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