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日輪の遺産

先月末、やっと菅直人首相が退陣し、野田佳彦新首相が誕生することとなりました。
正直、首相や閣僚が代わった程度で、現状に何か変化があるとは到底思えませんが、
「菅以外なら誰でもいい」って思うようになっていたので、
とりあえず新内閣が誕生することは嬉しく思います。

「戦後最大の危機」とか「戦後最大の国難」とかいわれる昨今ですが、
それってつまり「敗戦直後より酷い状態」ってことですよね。
今より圧倒的に貧しかった当時の方が、まだマシだったってことです。
ボクはもちろん戦争も敗戦直後も経験してないので比べることなんてできませんが、
「当時は貧しくても希望があった」という話はよく聞きます。
やっぱり希望さえあれば、どんな困難もそれほど苦にならないってことでしょうね。
今はその希望が見えないため「戦後最大の国難」だと感じるのでしょう。
なので正確には「戦後最大に夢も希望もない時代」ってことですね。

ということで、今日は敗戦直後の復興への希望を描いた作品の感想です。
思えば鳩山政権が退陣することになった米軍基地問題も、
円高是正のためにまともな為替介入ができないアメリカ隷属姿勢も、
軍事力を背景にできないために起こる領土問題も、当時の敗戦処理の拙さが原因。
いわば『日輪の負の遺産』です。

日輪の遺産

2011年8月27日公開。
浅田次郎のベストセラー小説を映画化。

昭和20年8月10日、帝国陸軍の真柴少佐(堺雅人)は、軍トップに呼集され、ある重大な密命を下された。それは現在の価値で約200兆円のマッカーサーの財宝を隠すというもので、真柴は極秘任務を遂行するが、やがて任務の終わりが見えたころ、勤労動員として駆り出された20名の少女たちに非情極まる命令が出され……。(シネマトゥデイより)



敗戦前夜、ポツダム宣言受諾を決めた日本軍上層部だったが、
米軍が進駐してくる前に、大蔵省から来年分の軍事費として900億円前借し、
日本復興のための費用として隠してしまうことにしました。
その900億円はフィリピン復興のためにマッカーサー親子が用意した財宝で、
それをマニラ侵攻でマレーの虎こと山下司令官が奪取したもので、
マッカーサーは血眼になって探している、という設定。
山下財宝やM資金などの埋蔵金系都市伝説を題材にした歴史ミステリーとして、
なかなか興味深い設定です。
しかし本作は、そんな陰謀説的なミステリーではなく、
マッカーサーの財宝を秘密裏に隠すことを命じられた日本軍将校と、
その人足として駆り出された何も知らない20人の女学生の
感動のヒューマンドラマとして描かれています。

面白いのは、主人公の真柴少佐(堺雅人)など軍人が、
いわゆる怖い軍人のイメージではなく、慈愛に満ちた心の持ち主。
少女たちも今の中学生と大して違わずキャピキャピしていて、
ほとんどの登場人物は一様に平和を望んでおり、
今までの戦争映画から受ける当時の日本人像とは一線を画します。
戦時中にこんな穏健な登場人物ばかりなのはおかしいようにも思いますが、
ある意味現代人に近いまともな思考の人たちなので、感情は伝わりやすいです。
それに同じ「お国のために命を捨てる」ということでも、
敵に自爆攻撃を仕掛ける特攻隊や、捕虜にならないために自決する民間人より、
戦後の復興のために命を懸けるということの方が、不思議と強い愛国心を感じます。
下手な戦争映画よりも、愛国心を揺さぶられました。

財宝隠しを命じられた真柴少佐と、大蔵官僚の小泉中尉(福士誠治)、
そして事情は知らないが2人を手伝うよう命じられた望月軍曹(中村獅童)は、
勤労奉仕の女学生20人とその担任(ユースケ・サンタマリア)を使って、
マッカーサーの財宝を壕に運び込ませます。
女学生たちの献身的な働きにより財宝を隠す作業は終わりますが、
その最終日、上層部から口封じのために女学生と担任を始末しろと命令が。
真柴少佐は軍人として命令に従うべきか、女学生たちを守るべきか悩むが…、という話。
そんなやさしい軍人たちと女学生の財宝隠しのところはとても面白いのですが、
それが女学生のひとりだった久枝(八千草薫)の回想という形で語られるのですが、
その手法がイマイチよくなかったと思います。

まず映画は現代から始まり、久枝は20人の女学生の中の唯一の生き残りとして登場します。
この時点で、どう転んでも他の19人は死ぬ展開になるということが予想できてしまい、
回想中のドキドキ感が薄れてしまいます。
また、真柴少佐と小泉中尉ほか、軍上層部5人しか知らない財宝のことなど、
当時の久枝が知るすべのないことまで回想で語られてしまっており、納得がいきません。
一応、真柴少佐の当時の日記を久枝が持っていたということになっていますが、
その日記が久枝の手元に渡るシーンは一切なく、
そもそもそんな超国家機密を、慎重な真柴少佐が日記に書くなんて考えにくいです。
なので回想なんかにしないで、はじめから戦時中を舞台にして描き、
現代の久枝も描きたいなら、最後に後日談として描けばいいと思います。

ただ、そもそも久枝を中心に描いていること自体がイマイチで、
観客が気になるのはむしろ軍人たちが敗戦後どうなったかですよ。
久枝の話で明確にわかる望月軍曹や、後日談としてマッカーサーの通訳だった
日系人(ミッキー・カーチス)の回想で判明する小泉中尉はまだいいとして、
一番気になる真柴少佐の動向が最期まで描かれていません。
それなのに久枝の孫(麻生久美子)の職場とか結婚とかオメデタとか、
そんなどうでもいいエピソードに時間割かれるのが納得できません。
火葬場以降のシーンは全く感動もしないし完全に蛇足です。

真柴少佐の最期や日記の受け渡しなど、描かれるべきものが描かれず、
現代を舞台としてどうでもいいシーンが延々と描かれ、
それで134分もの上映時間になってるんだから、監督の腕が問われます。
この物語は戦時中の財宝隠しとマッカーサーの通訳の後日談だけで充分でした。
それなら上映時間も2時間未満でスッキリ収まったはずです。
恐ろしいのは当初は3時間を超える超長尺作品にするつもりだったということです。
それが予算の都合で短くせざるを得なかったらしいのですが、
短くするにあたって、脚本を新たに書き換えず、適当に切っていったんだと思います。
3時間以上なら久枝の回想が中心という展開も活きたと思いますが、
短くするにあたっても、久枝のところだけは切らなかったため、
他の大切なシーンが疎かになったんだと思います。

ちなみに久枝の女学生時代は2年前に大人気だった子役・森迫永依でしたが、
20人の女学生の中のひとりという感じであまり目立ってはいませんでした。
だから久枝を中心にしたのではなく、八千草薫を重用したかっただけだと思います。
ボクは柴田少佐役、堺雅人の主演映画として観に行ったんですが、
これでは八千草薫の主演映画です…。
監督も主演なのに堺雅人をあまり活躍させられなかったことが申し訳なく思っていて、
次の監督作『ツレがうつになりまして。』にも出演してもらったそうです。
そちらは10月公開になりますが、公開スパンが短すぎて、
ちゃんといい作品になっているのかちょっと不安です。
主演の妻役もも今公開中の『神様のカルテ』で妻役しているの宮崎あおいで、
しかもどちらの役のニックネームも「ハル」だそうで被りまくってます。
もうちょっと公開時期を考えたらいいのにね。

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