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カーズ2

9月に日本公開が予定されていたCGIアニメ『ブルー 初めての空へ』ですが、
全く詳細な日程等が決まらないなと思っていたら、
いつの間にか日本公開を取りやめたようで、とてもガッカリしました。
こんな土壇場で取り止めた理由がわからないのが、どうにもモヤモヤします。

CGIアニメの話題では、それ以上に気になるのがドリームワークス(DW)のこと。
自社制作の『ランゴ』が大ヒットしたことで気をよくしたパラマウントが、
DWとの契約を2013年で打ち切ってしまうそうで、
その後どこがDWアニメ映画を配給することになるのか…。
『ヒックとドラゴン』は三部作以上、『マダガスカル』は全四部作、
『カンフーパンダ』に至っては全六部作計画されているのに、大丈夫なのでしょうか?
『メガマインド』の日本公開も年内と決まっているだけで動きがないので心配です。
ビデオスルーになるならなるで、さっさと決断してくれないとヤキモキします。

とはいえ、日本ではこれから年末にかけてCGIアニメの公開ラッシュになります。
上記の『ランゴ』や『カンフーパンダ2』に加え、
『ハッピーフィート2』『タンタンの冒険』、邦画の『もののけ島のナキ』などなど、
10本程度のCGIアニメ映画の公開が控えています。

ということで、今日はそのCGIラッシュの先陣であり、大本命作品の感想です。

カーズ2
Cars 2

2011年7月30日日本公開。
ディズニー/ピクサー製作の『カーズ』の続編となるアドベンチャー・アニメ。

天才レーサーのマックィーンとレッカー車のメーターが訪れた“トーキョー”で大事件が発生。さらには、フランス、イタリア、そしてイギリスと、ワールド・グランプリで世界を旅するマックィーンたちが行く先々でスパイが暗躍。マックィーンたちは巨大な陰謀から世界を救おうと立ち上がる。(シネマトゥデイより)



この記事ではきっとネタバレを書いてしまうと思うので、
これから観る人に伝えておきたいことを先に書いておきます。
本作を観る前に、DVDでリリースされている『カーズトゥーン メーターの世界つくり話』を
先に見ておくことをオススメします。
そのDVDはタイトル通り、メーターのスピンオフからなる短編集で、
『ボルト』と同時上映だった「メーターの東京レース」も収録されており、
そのエピソードは本作のトーキョーのシーンの土台にもなっているので、興味深いです。
また「名探偵メーター」というノワール・フィルム調のエピソードは、
スパイ映画である本作のプロトタイプとも思える作風で、こちらも興味深いです。
他にも本作にはその短編集からのオマージュと思われる演出が随所にありますが、
なにより各エピソード共通のお約束ネタが、本作の大オチに繋がる振りになっており、
(見なくても本作に差し支えることはないですが、)大きな笑いどころをひとつ損します。
本作はメーターが主役なので、先に彼のスピンオフを見ておくのは予習としてもいいです。
一部からはウザキャラ扱いされるメーターですが、
そのDVDを見れば誰でも彼が好きになるはずで、本作が120%面白くなること請け合いです。

さて本作はピクサーの12本目の長編アニメであり、ピクサー25周年記念作品です。
そしてピクサーのCEOであるジョン・ラセターが、久しぶりに御自ら監督した意欲作です。
しかし、全米で公開されるやいなや、評論家から「ピクサー史上最悪の作品」、
「ピクサーの不敗神話崩壊」などと酷評されてしまいます。
でもボクの観た限りではそんなに悪い作品ではなく、
粗悪乱造が始まっているCGIアニメの中にあっては充分佳作。
この高いクオリティで史上最悪と称されるんだから、
ピクサー作品に対する期待値の高さがわかり、逆に感心しました。
佳作だとは思うのですが、たしかに酷評する気持ちもわからなくもないです。
きっと「期待していたものと違う」という想いが出たのでしょう。

期待を裏切られたと感じる要因のひとつは、本作が最近のピクサーらしくないこと。
過去のピクサー作品、特に直近の3作、
『WALL・E』、『カールじいさん』、『トイ・ストーリー3』は、
子どもが楽しめるのはもちろん、大人"こそ"感動できる名作アニメでした。
しかし本作は、大人"も"楽しめるファミリー向け娯楽アニメであるため、
過去3作で味わったような号泣必死の感動を期待すると、不満を感じてしまうと思います。
そんな感動作が続いたため、それがピクサーのカラーだと思っている人もいるでしょうし。
たとえばこれが、『Mr.インクレディブル』の次に公開されていたら、
そんな期待はされず、もうちょっと順当な評価を得たはずです。

もうひとつの要因は前作『カーズ』とあまりにも作風が違うこと。
ジョン・ラセター監督は、前作と同じような内容の続編ものは意味がないと考えており、
意図的に前作と全く違った作品にしたんだとか…。
前作はアメリカの荒野にある忘れられた町を舞台にした(車だけど)ヒューマンドラマで、
傲慢な主人公マックィーンが立派なレーサーに成長する様子を描いた作品でした。
一方本作は日本やヨーロッパと世界を股に掛けたスパイ映画で、主人公はメーター。
舞台はもちろん、主人公や映画ジャンルまで変わってしまっています。
全く新しい話なのはいいけど、これでは前作の内容が好きだった人は不満に思うかも…。
同じ続編ものである『トイ・ストーリー3』は、前作のキャラクターたちも、
脇役に至るまで活かされており、前作ファンも納得の完全無欠の続編ものでしたが、
本作は両主人公を除けば、旧キャラはカメオ程度の扱いで、本作からの新キャラがメイン。
これではまるでメーターのスピンオフみたいな状態で、
それを正当な続編として提示されると、ちょっと腑に落ちないものがあるんじゃないかな。
ボクは前作と本作の間に前述の『メーターの世界つくり話』が挟まれていて、
むしろそれの続編・完結編として観ているので、すんなり受け入れられましたが…。

しかしだからといって、本作が前作を超える内容かといえば「NO」です。
凡百のアニメ映画の中にあってはトップクラスの作品ではあるが、
ピクサーに限ってしまうと、やはり史上最悪かブービーな出来かも。
ロケーションや映像技術は史上最高級に素晴らしいのですが、脚本が少し弱い気がします。
本作はスパイ映画なのですが、『007』シリーズのような硬派なものではなく、
オーバーテクノロジーなスパイグッツが飛び出す『スパイキッズ』系スパイ映画。
それも嫌いではないけど、何でもアリになってしまい、安易な展開に思えてしまいます。
ミサイル発射、立体ディスプレイ、テレスコープ、水陸両用に加え空も飛行可能…、
この程度はスパイカーということでギリギリ理解できますが、
命令ひとつでどんな形状にもなれ、どんな武器も装着できるホログラフ変装装置は、
さすがにトンデモすぎます。
ましてやその装置を単なるレッカー車であるメーターが使いこなすというのは…。
『スパイキッズ』のターゲット層(子ども)は、秘密道具いっぱいで楽しめるでしょうが、
ドラマ性を求めてしまう大人の鑑賞にはちょっとつらい設定です。

裏を返せば、子どもなら問題なく楽しめるということになりますが、実はそうでもなく、
ストーリーはサスペンス要素を含み、今までのどのピクサー作品よりも難解。
複雑な相関図、聴き慣れない車用語、クリーン燃料絡みの石油利権、車種差別などなど、
せめて中学生くらいじゃないと完全には理解できないストーリーです。
実際にアクションシーンやレースシーンを食い入るように観ていた子どもたちも、
ドラマシーンでは退屈そうにソワソワしていました。
結局子どもにとっても大人にとっても微妙に中途半端なんですよね。
ピクサー作品のわりには脚本が練りきれていなかったことの原因は、
おそらくジョン・ラセターが監督したためでしょう。
彼はピクサーだけでなく、ディズニーアニメーションのCEOを兼任している大幹部で、
超多忙で本来ならもはや現場仕事なんて出来る状態ではありません。
でも『カーズ』は彼の中で一番好きな作品だったため、
続編も自ら監督したかったのでしょうが、CEOの業務をしながらの監督業は余裕がなく、
ベテランのブラッド・ルイスが共同監督として参加しましたが、船頭多くしてなんとやら。
中途半端な脚本になってしまったのでしょう。

しかし何度も言いますが、ピクサー作品としては低い評価というだけで、
もしこれがDW作品だったら、スパイ映画のクオリティの高いパロディとして、
いつも通りの高い評価を受けていただろうことは想像に難くないです。
是非観てほしい作品だし、なにしろ日本を舞台にした物語です。
日本、アメリカ、イギリス、スランス、イタリアと5ヶ国を舞台にしていますが、
その中でも日本が最もフィーチャーされているといっても過言ではなく、
これだけ日本に対して好意的なハリウッド映画はそうはありません。
舞台に日本が選ばれたのはジョン・ラセター監督が日本に好意的なことはもちろん、
日本が世界有数の自動車産業大国だったためです。
これは日本人として誇らしいことだと思います。

相撲取りミニバンのピニオン・タナカや、見事な枯山水を作る三輪車のゼン・マスター、
かわいい芸者コンパクトカー、オクニなどなど、脇役ながらキラリと目を惹く日本キャラ。
マックィーンが出場することになった世界最速を決めるワールドグランプリにも、
トヨタ・GT-ONEがモデルとなった鈴鹿チャンピオン、シュウ・トドロキが参戦します。
ボンネットに日の丸を掲げた勇士は、他国代表のレーシングカーを圧倒してます。
それだけでも日本人なら一定の楽しみは保証されているようなもの。
当然外国人目線なので日本人からすると違和感のあるところもありますが、
歴史的な文化だけでなく、自動販売機、立体駐車場、ウォシュレットなど、
変なところに食いついているのが、日本を客観的に見れて面白いです。
「メーターの東京レース」の時は、なぜかK-POP(?)がエンディング曲で愕然としたけど、
本作は海外の名だたるアーティストの挿入曲を並び、正真正銘のJ-POP、
Perfumeの「ポリリズム」が挿入歌として効果的に使われ、溜飲が下がる思いでした。
それも含め「メーターの東京レース」の時よりも日本に対する理解も深くなっていて、
細かい違和感もかなり軽減されており、日本に対する誠実さと愛を感じます。
もし本作が全世界で総スカン食らったとしても、日本だけは盛り立てていきましょうよ。
でも前作『カーズ』は日本興収がピクサー作品の中で最も低い作品…。
本作はせっかく日本贔屓な内容なのに、ピクサーの片想いで終わる可能性も…。
中国の台頭でハリウッドでもジャパンパッシングが進む昨今、
こんな不評の作品だからこそ大ヒットさせて、日本市場の魅力をアピールしましょう。

いつもながらディズニーのローカライズは完璧で、日本語吹き替え版で観ると、
メーターの書いた置手紙など、劇中の文字もほぼ日本語表記にされています。
いつも感心するのですが、本作は日本も舞台に含むため、
オリジナル版ではどういう表記になってたんだろうと、気になった箇所も多かったです。
ドンドコぐっさん演じるメーターも絶妙ですが、できれば字幕版で観たかったな…。
でも大作ラッシュで今はシネコンも本作にあまりスクリーンを割けないようで、
軒並み日本語吹き替え版だけの上映です。
しかし中古車・欠陥車を表す「レモン」というスラング(?)を、
「ペッパー(コショウ→故障)」と訳してあったのは、秀逸だと感心しました。
ディズニーのローカライズはつくづく素晴らしいです。

さて、最後にピクサーの今後ですが、
来年公開の次回作は完全新作の『メリダとおそろしの森』だそうで、
ピクサー史上初の女の子を主役に据えた物語らしいです。
そのことはちょっと残念で、『プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』など、
ディズニー・クラシックスは女の子向け作品が中心なので、
ピクサーは男の子向けを貫いて、住み分けを図ればいいと思うのですが…。
再来年(2012)は初めて一年に2本公開されるそうで、
そのうち一本は『モンスターズ・インク』の前日談『モンスターズ・ユニバーシティ』。
もう一本は『タイトル未定』の完全新作になるそうです。
今後は2年で3本ペースを予定しているそうですが、史上最悪を更新しないよう、
ペース上げてもクオリティは下がらないようにお願いしたいですね。
あと、たぶんディズニー名義でしょうが、ピクサー出身監督による来年公開の実写映画、
『ジョン・カーター(火星のプリンセス)』も注目しています。
ちなみに『カーズ』シリーズの続編は未定ですが、
『フレーンズ』というスピンオフシリーズがビデオ・シークエンスで始まるそうです。

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