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SUPER8

当然のことながら「映画は監督のモノ」です。
なので本来、リュック・ベッソン製作とか、宮崎駿脚本とか、
監督よりも製作や脚本家が前面に出るような宣伝はおかしいのです。
まだ脚本家は映画の出来に大きく寄与する存在なのでいいとして、
製作ってのは映画プロデューサーのことで、主に製作費集めなど興行部門の責任者、
映画の仕上がりとはあまり関係のない人です。
製作総指揮というのは、その映画プロデューサーを選ぶ人のことです。
言葉の印象からすると、現場で指揮取ってる超偉い人って感じだけど、
作品自体にはノータッチだと思っていいです。

そんな作品の出来とはあまり関係のない裏方を宣伝で使うというのは、
やはりその人の知名度を利用してお客さんを呼びたいからなわけですが、逆に言えば、
観客は製作とか製作総指揮に釣られて作品選びをするべきじゃないということです。

ということで、今日はスピルバーグ製作であることが強調された映画の感想です。
今年は本作以外にも『ヒア アフター』『トゥルー・グリット』
『トランスフォーマー3』『カウボーイ&エイリアン』『リアル・スティール』など、
スティーヴン・スピルバーグ製作(総指揮)映画がたくさん公開されますが、
肝心の彼自身の監督作『タンタンの冒険』が一番ダメそうな予感…。

SUPER8/スーパーエイト

2011年6月24日日本公開。
J・J・エイブラムス監督によるSF大作。

1979年、アメリカ・オハイオ州。8ミリカメラで映画撮影をしていた6人の子どもたちのそばで、貨物列車の衝突事故が発生。貨物列車は空軍施設・エリア51からある場所へと研究素材を極秘に移送中だった。アメリカ政府が隠す秘密を目撃してしまった子どもたちのカメラには、事故の一部始終が記録されていたが……。(シネマトゥデイより)



エリア51から極秘に何かを運ぶ貨物列車がトラックに衝突し脱線大破、
その残骸の貨物コンテナを中から扉をぶち破り脱走した謎の生き物…。
そんな特報を観た時には、かなり期待できそうなSFパニック映画だと興奮しましたが、
その後解禁された予告編観ると、どうも子どもが主役のSFジュブナイル映画のようで、
ちょっと想像とは違い、過度な期待をせずに観ることができました。
特報を観た時に感じたワクワク感は全く得られませんでしたが、
SFジュブナイル映画としてはなかなか楽しめる作品だと思います。

J.J.エイブラハム監督も言ってますが、
本作は「過去のスピルバーグ作品へのオマージュ」です。
たしかに『E.T』『未知との遭遇』などスピルバーグ作品への敬意が感じられるし、
宣伝でもオマージュであると謳われています。
しかし、そんなことを公式に発表するメリットはありません。
そんなことは「あ、ここは『ジュラシックパーク』のオマージュだな」とか、
「この襲われ方は『ジョーズ』を踏襲してるな」とか、観客が勝手に判断するもの。
わざわざ宣言してしまうと、始めから過去の作品と比較され、
「『E.T.』はこんなもんじゃなかった」などと見当ハズレな批評をされるだけです。
オマージュを公式に宣言してメリットがあるのは、完全なパロディ作品か、
オマージュ元(今回はスピルバーグ)をヨイショするためでしかありません。

本作は後者の意味合いが強いようですが、案の定過去の作品を引き合いに出されて、
けっこう酷評されているようです。
たしかに過去の名作と同じベクトルで戦えば当然負けますよ。
しかしフラットに観れば勝っている部分だってあります。
たとえば列車事故のシーンですが、これは『宇宙戦争』のオマージュらしいけど、
このスペクタクル感(VFXで出来栄え)は過去のどのスピルバーグ作品より上です。
主演のカイル・チャンドラーや、ヒロインを演じたエル・ファニングの演技力だって、
『E.T.』や『A.I』の天才子役たちに引けを取るものではありません。
それなのに広報で「J.J.版『E.T.』」みたいな変な煽り方するから、
往年のスピルバーグ作品ファンに色眼鏡で観られるんですよ。
あとは公開まで内容を極秘にしすぎで、下手にハードル上げているのも酷評の原因です。

J.J.監督によれば、本作は「8mmビデオに夢中になる少年たちの青春物語」と、
「エリア51をめぐるSFミステリー」という別々の企画を融合した作品とのこと。
そのことで簡単にジャンル分けできないような不思議なバランスの作品になってますが、
そんなジャンルレスな作品が陥りやすいのが「どちらも中途半端」という事態。
本作は比較的高いレベルで融合してあるように思うのですが、
どちらも中途半端ってほど悪くはないけど、今一歩で完璧だったのにって感じです。
ボク個人の印象ではSFミステリーの方がより描き切れていないと感じたので、
ここはもっとSF要素を削って、青春物語に比重を置いた方がよかった気がします。

SF部分で言うと、肝心のエイリアンの設定や外見がイマイチで魅力的じゃありません。
同監督の作品『クローバーフィールド』でもクリーチャーデザインをしたクリエーターが
本作のエイリアンも手掛けているのですが、『クローバー~』の怪獣にそっくりです。
知性が感じられない尖ったデザインで、宇宙人というより宇宙怪獣という感じ。
行動は高度なテクノロジーを扱ったり、テレパシーを使ったりと知性的なんですが、
巨大で粗暴なところもあり、凶悪な外見も相まって凶暴さばかりが強調されています。
これでは『E.T.』と比較されたら、ガッカリされて当然です。
そのエイリアンが脱走したことによるアメリカ空軍の隠蔽工作もズサン。
設定の練り込みが甘く、リアリティが薄いです。
そもそもあの程度の貨物コンテナなら、列車事故なんてなくても、
あのエイリアンは脱走できたんじゃないかな?
その列車事故も、あんな常用トラックと正面衝突して貨物列車側は大破したのに、
トラックのドライバーは一命を取り留めるってありえないでしょ…。

一方、少年の青春物語の方はかなりよかったです。
こちらはJ.J.監督の少年時代の記憶をベースになっているそうで、
映画好きにはたまらない、映画を撮ることの初期衝動が描かれたワクワクする話。
"スーパーエイト"とは8mmフィルムの企画の名前らしく、
それをタイトルにするくらいだから、こちらの方がより描きたかった内容でしょう。
あきらかに考証、設定がいい加減だったSF部分に比べ、
こちらはとてもウェルメイドに仕上がっています。
少年たちが8mmビデオを手にロメロ風なゾンビ映画を自主制作するのですが、
そのエイリアン脱走騒動を「リアルな画を撮る」ために利用する少年たちの
映画にかける情熱が微笑ましく特に面白いです。
予算のない、ましてや中学生が作る自主映画ですからね。
そのアイディアと何でも利用しようという逞しさが勝負です。
でもこれは普通の商業映画にも通じる大切な要素だと思います。
劇中で撮影された彼らのゾンビ映画を、エンドロールで流すという粋な演出もあり、
本編に否定的な人でも、このオマケのゾンビ映画は大絶賛する人が多いです。
(実際は同じ監督が撮ってるのに、少年たちが撮ったと錯覚するんでしょうね。)
それに中学生の青春物語ということで、ボーイ・ミーツ・ガールなロマンスや、
少年たちの友情、家族愛もしっかり描かれていて、とても感動的でした。

あまりスピルバーグは意識せず、過度な期待をしなければ、
普通に楽しめるファミリー映画だと思います。

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