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127時間

今週末、『127時間』がようやく日本公開されたことで、
第83回アカデミー作品賞にノミネートされた10作のうち9作品を観ることができました。
残る一本『Winter's Bone(原題)』は日本公開すら決まってないので置いておくとして、
その9本を面白かった順に並べて、オスカー受賞が妥当だったか振り返ってみます。

第83回アカデミー作品賞候補作個人的ランキング (カッコ内はオスカー実績。)
1位 『インセプション』 (撮影賞、視覚効果賞など4部門受賞。)
2位 『英国王のスピーチ』 (作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞の4部門受賞。)
3位 『ザ・ファイター』 (助演男優賞、助演女優賞受賞。)
4位 『127時間』 (無冠。)
5位 『トゥルー・グリット』 (無冠。)
6位 『ブラック・スワン』 (主演女優賞受賞。)
7位 『ソーシャル・ネットワーク』 (脚色賞、作曲賞受賞。)
8位 『キッズ・オールライト』 (無冠。)
9位 『トイ・ストーリー3』 (長編アニメーション賞、歌曲賞受賞。)

10本も候補作があると例年なら2~3本「なんで?」と思うものがありましたが、
この年は全て高水準で、どれも面白かったです。
そんな中、実際に作品賞を受賞したのは『英国王のスピーチ』でした。
その結果は順当だと思ったし納得できるものだったのですが、
個人的には『インセプション』が最も面白いと思いました。
『インセプション』は技術部門の賞は総なめにし、最多タイの4部門受賞ですが、
なぜか作品賞以外の主要部門には候補にも挙がっていません。
もし挙がれば監督賞、脚本賞の可能性はあったはずだけど、ちょっと冷遇された感じ…。
『インセプション』の素晴らしいところはオリジナル脚本で勝負したってことなのに…。
オスカーの大本命だった『ソーシャル・ネットワーク』ですが、
面白くなかったわけではないけど、Gグローブ作品賞受賞など前評判がよすぎて、
期待のハードルを高く設定しすぎちゃった感じです。
『トイ・ストーリー3』は最下位にしましたが面白くなかったというわけではなく、
むしろ一番面白かったくらいだけど、アニメと実写は比較できないのでとりあえず最下位。
作品賞にアニメが推薦されると、長編アニメーション賞が半ば消化試合化してしまう。
もともと受賞させるつもりなんてないんだし、アニメの作品賞推薦はやめてほしいです。

ということで、今日は4番目によかった作品賞候補作の感想です。
ほぼひとり芝居で演技賞狙いの作品ですが、今回は相手が悪かったですね。

127時間

2011年6月18日日本公開。
実話を基にダニー・ボイル監督が映画化した感動的なサバイバル・ドラマ。

アメリカ・ユタ州のブルージョン・キャニオン。ロッククライミングをしていた登山家のアーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)は落石事故に見舞われ、右腕を断崖に挟まれたまま身動きが取れなくなってしまう。助けを呼ぶ術もなく5日間が過ぎ、命も尽き果てようというとき、アーロンは自身にある決断を下す。(シネマトゥデイより)



公開前から「岩に腕を挟まれた男が、自分の腕を切り落として生還する物語」と、
物語の核心とも言えるプロットがすでにアナウンスされているし、
タイトル(127時間)からも「いつ脱出するのか」がわかってしまっているので、
生きるか死ぬかわからないサバイバル・スリラーとしては楽しめませんでした。
本作は実話がベースになっているし、ボクが知らないだけで有名な話だったこともあり、
(実在のアーロンは事故後一躍時の人になったらしいです。)
別にネタバレなんて関係ないというスタンスで広報しているんでしょうが、
できれば(邦題も含め)もう少しネタバレに配慮してほしかったかな?

とはいえ、初めから本作は『フローズン』や『[リミット]』のような、
極限状態やソリッドな映像で観客を楽しませるようなサバイバル・スリラーではなく、
実話を基に、生きることへの執念を描いたヒューマンドラマとして作られているので、
オチよりその過程が重要であり、ネタバレはそれほど問題ではないのかも。
主人公アーロン(ジェームズ・フランコ)が必死に抵抗したり絶望したり開き直ったりと、
腕を切り落とすに至るまでの心理状態の描写が興味深く、
たとえ結末はわかっていてもドキドキしました。

自分の四肢と命を秤に掛けて、自ら腕や足を切り落とすというのは、
極限の選択として『ソウ』などのソリッド・スリラーではよく使われるネタですが、
本作が興味深いのはその行為自体が極限の選択ではないということです。
アーロンは腕を岩に潰された時点で、もう腕のことは諦めているのですが、
ロクな道具(刃物)を持っておらず、腕を切り落としたくても切り落とせない状態。
最終的には切断しますが、切り株映画なら腕なんて面白いくらいスパスパ切れるけど、
実際はそう簡単ではなくその作業は苛烈を極めます。
(神経を切るところなんてゾワゾワしました。)
その状況から比べれば、切断手段の用意されている『ソウ』のゲームなんて生ぬるく、
本作は並みのソリッド・スリラーよりも極限の恐怖を感じます。

そんな総毛立つような描写もありますが、それはリアリティのための演出であり、
グロシーンを楽しむための作品ではありません。
感動あり、ユーモアあり、スペクタクルありの、誰でも楽しめる娯楽映画です。
(ハンディで家族への遺言を撮るところなんて、ちょっと泣きかけました。)
コロラド高原キャニオンランズ国立公園の壮大な自然の風景も素晴らしいです。
アーロンが岩に挟まり動けなくなるのは人ひとり通るのがやっとな狭い場所ですが、
その広大な風景との対比が、より絶望感を煽りますね。
グロはホントに少しだけなので、それが苦手というだけで本作を観ないのは勿体ないです。

しかしあんな大自然に挑むというのに、主人公アーロンの軽装備は酷いです。
自分は冒険慣れしているという驕りがあったんでしょうね。
ザックの中は電子機器ばっかりじゃないかって感じなのに、通信機器は全く持たず…。
登山道具といえばロープくらいで、もう少しマシなナイフかピッケルでもあれば、
状況はかなり変わっていたはずです。
誰にも自分の行先を告げておかなかったのも大失敗。
なんとか生還したことで、英雄扱いされているからよかったものの、
もしこれで死んでいたら自業自得で無駄死にしたオッチョコチョイとして扱われそうです。
実物のアーロンはあんな大事故に会いながらも、全く懲りることなく、
今でもコロラド高原で山登りしてるそうです。
過去の教訓から、準備万端で挑んでいるでしょうが、片腕ですよ?
ハンディキャップ背負いながら挑戦するなんて英雄的なのかもしれないけど、
ボクからするとやっぱりオッチョコチョイな奴だと思います。
今度何かあったら、片腕なのに無理するなんて自業自得な奴だ、ってことになります。
それともメディアに待ち上げられすぎて、引くに引けなくなったのかな?

そんなアーロンを演じたジェームズ・フランコですが、本作は彼のほぼひとり芝居。
当然本作がオスカー候補になるほど注目されたのも、彼の演技によるところが大きいです。
下手すれば悲惨すぎて見てられないアーロンの状況を、
シリアスなだけでなくウィットに演じていて、怖さはあるけど暗さはありません。
実在のアーロンは至って普通の人で、彼の背景などはキャラとして弱いですが、
その人間味ある演技で見事に魅力的に仕上げてあります。
『スパイダーマン』シリーズとかでちょくちょく見かける俳優でしたが、
こんなに表情豊かな、エモーショナルな演技できる人とは思ってませんでした。
今後はもっと注目していきたい俳優のひとりになりました。
アカデミー主演男優賞を受賞してもおかしくないほどの好演でしたが、
名優コリン・ファースが相手とあっては、運が悪かったとしか言えませんね。
でもこれで注目されたし、そう遠くないうちに受賞するんじゃないかな?

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