ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

赤ずきん

なにかと二匹目のドジョウを捕まえたがるハリウッドでは、
去年の『アリス・イン・ワンダーランド』の大ヒットを受けて、
童話の新解釈(または前日譚や後日譚)した映画がブームになっていますよね。
ボクが把握する限りでは『オズの魔法使い』5本、『白雪姫』3本、
『ピーターパン』『ピノキオ』『眠れる森の美女』『人魚姫』が各2本、
他にも『ヘンゼルとグレーテル』『ノートルダムの傴僂男』『アラビアン・ナイト』など、
いろんな古典童話の映画化が制作、企画されています。
原作が超有名だからクリエーターとしてもイジリ甲斐があって面白いだろうし、
全くのオリジナルよりも集客が有利だと考えるのもわかるのですが、
『ガリバー旅行記』の全米でのコケ方見ると、お客はそんなに求めてなさそうです。
作り手と受け手に温度差があるブームなんてそうそう続くはずもなく、
ほとんどの作品は公開まで漕ぎ着けずに頓挫するはず。

ということで、今日はグリム童話の後日譚を実写映画化した作品の感想です。
残念ながらこの作品も童話ブームに水をかぶせる成績になったようです。

赤ずきん

2011年6月10日日本公開。
グリム童話の「赤ずきん」の成長した姿を描いたファンタジー・サスペンス。

赤ずきんことヴァレリー(アマンダ・セイフライド)は木こりのピーター(シャイロー・フェルナンデス)と愛し合っていたが、ヘンリー(マックス・アイアンズ)との婚約を親が勝手に決めてしまう。ある満月の夜、ヴァレリーの姉が何者かに惨殺され、魔物ハンターのソロモン神父(ゲイリー・オールドマン)は人オオカミのしわざだと宣告するが……。(シネマトゥデイより)



本作の印象は、なるほど『トワイライト』の監督の作品だなってことに尽きます。

有名なグリム童話「赤ずきん」の"大人版"というフレコミの本作ですが、
実際は"ティーン版"といえるような内容で、
ハイティーンからせいぜい20代前半の女性がターゲット。
モテモテのヒロイン、三角関係、人狼…、
まさに『トワイライト』を「赤ずきん」をモチーフに作ったような作品であり、
基本的には少女向けロマンス映画だと思います。
だから、ビジュアルイメージから本作をダークファンタジーかゴシックホラーだと思って
鑑賞した人は残念な思いをすることは間違いなく、ボクもまさにそうでした。
ボクは『トワイライト』は好きなんで、先入観さえ持たなければ楽しめたのかも…。
『トワイライト』嫌いな人は端からダメだと思います。

原作では幼い少女だった赤ずきんちゃんを、大人(ティーン)にするというアレンジは、
まぁ『アリス・イン・ワンダーランド』と同様の手法だし、どうということはないですが、
オオカミを人狼にするというアレンジはなかなか面白い設定だと思います。
これはたぶん、『トワイライト』が作ったゴシックロマンスブームと、
『アリス・イン・ワンダーランド』からの童話ブームを同時に取り入れた折衷案として、
逆算的に「赤ずきん」という作品に白羽の矢を立てたんだと思いますが、
その作品チョイスはなかなか絶妙だと感じます。
ただそれを、安易にミステリー調に仕上げてしまったのは失敗だと思うんですよね。
(「赤ずきん」のミステリーといえば、アニメ映画『リトル・レッド』もそうでしたね。)

本作は村人の中に紛れた人狼を見つけるというミステリーですが、
ゴシックロマンスはファンタジーのジャンルのひとつだから、
どんな突飛な展開でも可能だし、まともな推理ものになんてなるはずなく、
どんな真相であろうと何の驚きも感じません。
実際に村人の誰が犯人でも筋が通ってしまうので、
ある意味では最後まで犯人が断定できないとも言えるけど、
推理する余地なんて全くなく、真相を告げられても「へぇ…」って感じ。
本人が名乗り出るまで犯人が不明のままってのもミステリーとしてはイマイチかな。
探偵役として活躍するかと思われたお婆さん(ジュリー・クリスティ)が、
最大の容疑者候補に見えてしまうのも妙な感じです。

でも普通なら一番怪しくなさそうなお婆さんが容疑者に見えてしまうってのは、
オオカミがお婆さんに化けるという原作を知ってるからこその先入観で、
それをうまく利用している演出には感心しました。
本作はけっこう誤解されてますが、あの赤ずきんちゃんの成長後を描いた後日譚ではなく、
赤ずきんちゃんを大人という設定にしてアレンジした物語で、
グリム童話の「赤ずきん」とは時間的繋がりはないと思われます。
でも、ヒロインの赤ずきんことヴァレリー(アマンダ・セイフライド)は
あの有名な赤ずきんちゃんの成長した姿ではないけど、
このお婆さんはもしかすると赤ずきんが年老いた姿なんじゃないかと思いました。
ボクには明確に理由はないけど、そう感じる人も少なからずいるみたいで、
そう思わせる演出がされているのかもしれません。
このお婆さんがいなければ、全く本来の「赤ずきん」の要素は全くない映画です。

脚本はまだまだ改善の余地があると思いましたが、映像的にはなかなかよく、
白い雪景色と退廃的な田舎街や黒い森によるモノクローム気味な舞台の中に、
赤ずきんの真紅のガウンだけが鮮やかに際立って、なんだか幻想的で官能的。
ただ肝心の人狼(オオカミ状態)の出来がイマイチ…。
ただちょっと大きめのオオカミってだけで、魅力に欠けます。
もっと半人半獣の狼男っぽくするとか、せめて『ウルフマン』とまではいかなくても、
人間から変身する瞬間のシーンがあれとよかったと思います。
クライマックスの直接対決にしても、せっかく人狼なのに人間状態で戦うし、
何だか拍子抜けさせられました。

あ、そうそう、オオカミといえば、ラストは原作に倣ったつもりなのか、
人狼の腹に石を詰めて湖に沈めますが、この展開は明らかに意味がないです。
原作ではオオカミの腹に石を詰めたのは湖に沈めるためでなく、
腹から赤ずきんとお婆さんが脱出したことを悟らせないためだったはず。
結局湖に落ちて沈んだことには変わりないけど、沈めることだけが目的なら、
あんなグロい手段は使わずとも石を抱かせるだけで済むはず。
仮にも自分の○○に対して、赤ずきんのあの扱いは酷いですよ。
てか自分の姉が殺されても男のことばかり考えてるような女だけどね。

全く面白くないこともないけど、いろいろと詰めの甘い作品でした。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/490-24a5c829
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad