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昨今、日本映画が元気だと言われていますよね。
日本人の洋画離れが進み、相対的に邦画が元気なように感じるだけかもしれませんが、
たしかに一昔前に比べて見応えのある作品が多いような気もします。
そのひとつの要因として、いい若手俳優が多いからだと思います。
特に1980年代前半生まれの俳優(男)たちは、50年に一度の黄金世代じゃないかな?
ちょっと挙げても妻夫木聡、藤原竜也、松山ケンイチ、小栗旬、松田龍平、瑛太、玉木宏、
佐藤隆太、山田孝之、玉山鉄二、桐谷健太、向井理、岡田准一、生田斗真などなど、
アラサーになり円熟期を迎えた主演級実力派イケメン俳優がゾロゾロします。
世代が近いので、当然共演やW主演ということも多いですが、
そんな群雄割拠の中で凌ぎを削り合い、いい作品が乱発してるんじゃないかな?
世間的にはかなり厳しい世代で、ボクもその世代のひとりなんだけども、
彼らはその厳しい世代の希望だと感じることがあります。

ということで、今日は黄金世代の初共演で話題になっている映画の感想です。
この2人は初共演なのか…。なんか意外でした。

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2011年5月28日公開。
妻夫木聡、松山ケンイチW主演で映画化した社会派エンターテインメント。

全共闘運動が最も激しかった1960年代後半、週刊誌編集部で働く記者・沢田(妻夫木 聡)は、理想に燃えながら日々活動家たちの取材を続けていた。ある日、梅山と名乗る男(松山ケンイチ)から接触を受けた沢田は、武装決起するという梅山の言葉を疑いながらも、不思議な親近感と同時代感を覚えてしまう。(シネマトゥデイより)



1970年前後の実話を基にした作品ですが、今から約40年くらい前の話ですね。
ボクは80年代生まれなんで、その頃は当然まだ生まれてませんでしたが、
この70年代前後って、近代の中でも特に理解しにくい時代だと感じています。
特に安保闘争を発端にした学生運動とか、テロ行為に走る新左翼とか、
何のメリットもない闘争に向かっていく若者の心境にシンパシーを全く感じません。
だから学生運動とか新左翼を描いた映画を観ても、どうも理解に苦しかったんですが、
本作は現代人的な感覚にコミットするように描かれているためか、
本作を観て当時の過激な若者の心境がちょっとだけわかった気がしました。
別に政治に対して情熱的だったわけではなく、ただの自己顕示欲だったんですね。
それならば現代人も誰しもが持ち合わせている感情なので、よくわかります。
今はネットがあって、些細な自己顕示欲ならブログやツイッターで消化できますが、
当時は大きなメディアしかなかったので、自己顕示するにも大々的にする必要がある。
で、後には引けなくなって過激な行動に出てしまう、って感じかな?
そのやり方には共感はしないものの、個々の心境にはシンパシーを感じられました。

といっても、今までその時代のことは理解できず苦手意識があったので、
本作で描かれる学生運動の推移や事例については完全に勉強不足。
本作の肝である"朝霞自衛官殺害事件"なんて聞いたこともない状態で観てしまい、
完全な理解とは程遠いと自覚しています。
安田講堂事件をテレビで見て政治闘争に目覚めた若者・梅山(松山ケンイチ)が、
なぜ朝霞自衛官殺害事件の首謀者として破滅するまで行ってしまったのか、
その過程は時間的制約のためかかなり端折られているように思います。
当時の空気感を知る人ならその程度は補完できるでしょうが、
ボクにはいささかエキセントリックな展開に感じます。

ただ本作の主人公はその梅山ではなく、彼を取材する雑誌記者・沢田(妻夫木聡)であり、
その沢田のモデルである川本三郎の自伝が原作になった作品です。
なので本作は学生運動の是非や末路を描きたいわけではなく、
学生運動をツールとして、ジャーナリズムの限界を描いた作品だと思います。
現代からすると、学生運動というのはかなり理解に苦しいものだけど、
ジャーナリズム、特に大手マスコミの実態ってのはそう変わってない気がするし、
これは現代にもコミットする内容で比較的わかりやすいと思います。
学生運動家の顛末だけがテーマの作品であればボクも全然楽しめなかっただろうけど、
メインはひとりの若い記者がジャーナリズムのあり方に苦悩する話がテーマなので、
興味深く観ることができました。

本作で描かれるジャーナリズムのあり方は、簡単に言えば"取材源の秘匿"の問題です。
取材源の秘匿はジャーナリストとして絶対に守るべき倫理ですが、
時に社会的な倫理とは相反するものにもなり得ます。
だから取材源の秘匿は絶対に守られるものではないわけですね。
しかし営利主義のマスコミに倫理観なんてあるわけがなく、
往々にして本作のように保身のために取材源の秘匿は破られてしまいます。
いくら左翼を名乗るマスコミでも、結局大きな権力には逆らえず、
ジャーナリストの倫理よりも企業としての保身が勝るんですね。
若いジャーナリスト沢田は、ジーナリストとしての筋を通し、
取材源・梅山の情報を秘匿し通したために、梅山の共犯者として逮捕されます。
日本の制度では取材源の秘匿は認められていないので、
マスコミに心を許して何でも喋ると大変な目に遭うかもしれないです。
別に自分の犯罪絡みのことだけじゃなくて、内部告発なんかも危ないんじゃないかな?

とはいえ、ジャーナリストとしての倫理を貫いた沢田に共感しているわけではないです。
沢田もスクープを取りたいという自己顕示欲からの行動であり、いわば梅山と同類。
それだけに梅山にシンパシーを感じ、ストックホルム症候群状態になったんだと思います。
沢田は梅山を庇うかのように取材源の秘匿を貫きますが、
梅山はそれに報いるような出来た男ではなく、自らの保身に必死。
そんなカスをそれでも守る沢田の心境は凡そ理解できるものではありません。
ラストの居酒屋のシーンで、沢田が何を思ってあんな状態になったのかは、
ボクにはイマイチわからないし、なぜこれが本作のラストシーンなのかも腑に落ちません。
本作の中にも出てきたジャック・ニコルソン主演の『ファイブ・イージー・ピーセス』が
そのラストシーンへの伏線になっているようなので、その映画を観た人にはわかるのかも?
これから本作を観る人はそれで予習してみるといいかもね。

学生運動に興味ないボクが本作を観に行ったのは、主演2人目当てなのに他なりませんが、
妻夫木聡があいかわらず良かったのはもちろん、
ここ数作、微妙な役が続いていた松山ケンイチも久しぶりに当たり役だったと思います。
脇も派手さはないが、その渋さが作風にマッチしていてよかったです。
特に京大全共闘議長・前園勇役の山内圭哉が嘘くさくてとてもよかったです。
一応ヒロイン役の忽那汐里は演技はいいけど、ちょっと顔が現代人ぽすぎるかな?
微妙なのは三浦友和、あの程度のカメオ出演なら必要なかったと思います。

しかし本作は日本映画界ではかなりの注目作なのに、初登場10位にも入れないなんて、
ただメジャー会社の作品じゃないってだけで、これほどまでスルーされてしまうんですね。
それともやっぱり学生運動という題材がウケないのかな?
テレビ局制作の娯楽映画が活気があるのも大変結構なことですが、
本作のようなまともな日本映画が全く注目されないというのは憂慮すべき状況です。

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