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豆富小僧

CGIアニメーションの雄、ドリームワークスが方向転換をして、
今後はパロディ色の強い作品を作らないそうです。
アメコミヒーローをパロった『メガマインド』のDVDセールスが不調だったのが発端で、
それ以外の理由としては、パロディ作品は海外でのウケがよくないかららしいです。
たしかに『メガマインド』だって日本公開すら決まってない状態だし、
きっと公開されてもヒットはしないとは思います。
でも、今までのドリームワークスのファンであるボクにとっては、
パロディこそがドリームワークスのアイデンティティだと思っていたので、
それをそんなに簡単に手放していいものか不安です。
ドリームワークスの人気を不動のものにした『シュレック』だって、
もとはディズニー的な童話のパロディだったわけだし、
日本でも人気のある『カンフーパンダ』は香港映画のパロディです。

最大のライバルであるピクサーだけでなく、群雄割拠するCGIアニメ戦線の中で、
わざわざ自社の最大の個性を捨てるなんて正気の沙汰とは思えません。
去年パロディではないドリームワークス作品『ヒックとドラゴン』が高評価を得ましたが、
あれはディズニー出身の監督が、ディズニーの王道的手法で作った作品です。
たしかに名作だったのは間違いないけど、あれはドリームワークスでなくても出来る作品。
ドリームワークスには他社には真似のできない、彼ららしい作品を作り続けてほしいです。

ということで、今日は国産CGIアニメーション映画の感想です。

豆富小僧

2011年4月29日公開。
京極夏彦の『豆腐小僧双六道中ふりだし』をアニメ化した異色ファンタジー。

人間と妖怪が一緒に暮らしていた江戸時代、お盆に乗せた豆腐を持って立っているだけが取り柄の妖怪・豆富小僧。気弱で人間を怖がらせることができず、父親の妖怪総大将・見越し入道からは常に怒られ、ほかの妖怪たちからもばかにされていた。そんな彼を唯一慰めてくれる目付け役のダルマと共に、豆富小僧は母親捜しの旅に出るが……。(シネマトゥデイより)



本作は日本初となる長編3Dオリジナルアニメーションらしいです。
原作があるものをオリジナルと称するのは違和感がありますが、
国産CGIアニメとして、デジタル3Dで制作された長編は本作が初めてじゃないかな?
もともと日本は国産のCGIアニメが極端に少ないですよね。
世界のアニメ映画の潮流は確実にCGIアニメへと向かっており、
アニメ大国を自負する日本として、その潮流は無視できません。
でも一昨年公開の『ホッタラケの島』と『よなよなペンギン』が興行的に失敗したためか、
去年は国産の長編CGIアニメが一本も公開されませんでした。
(短編作品では『くまのがっこう』がありましたが。)
本作は実に1年4か月ぶりの国産長編CGIアニメということになります。

そんな国産CGIアニメですが、ピクサーやドリームワークスをはじめ、
ハリウッドのCGIアニメと比べると映像的にかなり劣るのは否めません。
これは技術的な差もありますが、それ以上に(予算など)環境による差が大きいようで、
その差を埋めるなんて一生無理、今後も開く一方です。
だから日本のCGIアニメは、ハリウッドの真似ではなく、独自の進化が必要ですが、
本作はその過程として、正しい道を進んでいると思います。

独自の進化とは、日本のアニメが世界に対して持っている優位性を活かすことです。
その優位性とは何かといえば、日本が長年培ってきた手描きアニメの手法だったり、
魅力的なキャラクターデザインの力だったりです。
それをうまくCGIアニメに落とし込めば、技術的には到底及ばないハリウッド作品にも、
一矢報いることができると思います。

本作はCGIアニメですが、細部までフルポリゴンで描かれているわけではなく、
手描きのテクスチャで表現されている箇所も多いです。
それは技術的にフルポリゴンには出来ないための苦肉の策でもあるんですが、
結果的に手描きアニメの繊細さ、温かみを作品に付与されています。
例えるならハリウッドのCGIアニメはジオラマの中でキャラが動いているようですが、
本作は建築関係でよく見る手描き外観パースの中にキャラがいるような感じで、
ハリウッド作品にはない映像的な斬新さがあります。
それに合わせてか、キャラクターにも輪郭線を強調するなど、
手書き風のレンダリングがかけられていて、画面全体の統一感を図られていますが、
この手法は奥行きが薄っぺらく見えてしまうため、デジタル3Dとの相性はイマイチかと。
手描きの風合いを残すのはいい判断だと思うけど、その場合3D化はしない方がいいです。

本作を一言で表すなら「キャラがかわいい」、これに尽きると思います。
かわいいキャラを描かせたら、やっぱり日本の右に出るものはいないと思います。
逆に言えばそれ以外に評価できるところなんて何もないんだけど、
多少の難点を補って余りあるかわいらしさが本作にはあります。
モブキャラたちもかわいいものが多いけど、特に主人公・豆富小僧がとにかくかわいい。
豆富小僧は持っている盆の上のトウフを失うと、自分も消えて無くなってしまうのですが、
ちょっとしたアクションでも大事なトウフを落っことしそうになります。
豆富小僧が少し走るだけで不安定にプルプルしているトウフにヤキモキさせられ、
そんな危なっかしい豆富小僧が、よりかわいらしく見えます。
そんなトウフのプルプル感や、豆富小僧のほっぺたのフニフニ感は、
CGIでなければ表現できなかったでしょうし、CGI化するには打って付けのキャラですね。

そんな豆富小僧のかわいらしさをより引き立てているのが、
豆富小僧の声を担当している深田恭子です。
深田恭子はもともとアニメ声でかわいい声ですが、今回共演している平野綾など、
本職のアニメ声優と比べるとお世辞にも声の演技がうまいとはいえません。
(なんでも意外なことにアニメ声優初挑戦だったとのこと。)
しかしその拙さが、セリフに幼児っぽさを醸し出していて、
豆富小僧の子どもらしい健気さ、可愛らしさに拍車をかけています。
ボクはタレントが声優をすると、タレント本人のイメージが先行してしまうので、
ちょっと考え物だと思っているのですが、豆富小僧の場合には深田恭子自身の持っている
ホンワカした印象がキャラにも加味され、キャラに深みを与えているのでよかったです。
本作は豆富小僧だけではなく、ほとんどの主要キャラをタレントが演じていますが、
武田鉄矢を先生キャラにしたり、松平健を厳しい親父さん役にしたりと、
タレント本人のイメージを活かしつつキャスティングしていて、適材適所でした。
アニメ声優経験も豊富な大泉洋や雨上がり宮迫らもいつもながらにいい演技で、
これだけタレントばかりのわりには全く問題なく仕上がっているというか、
これだけ出来るなら本職の声優ばかりのものよりも豪華さがある分お得な気がします。

数は少ないながらも今まで観た国産CGIアニメの中では、本作が一番よかったです。
映像的にも独自性があってそこは評価するべきだと思いますが、
やはりハリウッドのCGIアニメと比べてしまうと10年は差をつけられている印象…。
それは技術的なものよりもむしろ物語(内容)の完成度の差だと思います。
本作はホントに「かわいい」というだけで、中身がないんですよね。
豆富小僧は母親を探したいのか父親に認められたいのか、
人間を脅かしたいのか助けたいのか、その目的がはっきりしていません。
そのふわっとした感じが豆富小僧らしいといえばらしいのですが、
物語に芯がなく、ただ「かわいい」で終わってしまいます。
豆富小僧は江戸時代から、妖怪のいなくなった200年後の現代に来てしまい、
そこで人間の少女に出会い、彼女のために命を賭すほどの友情が芽生えるわけですが、
その友情を育む過程が大雑把すぎて、ラストの感動が薄いです。
(特にその人間の少女の豆富小僧に対する感情が淡泊すぎるように感じます。)
また、現代の設定があまりに近未来SFのようで、クライマックスが壮大に膨らみすぎ。
全体的にはほのぼの妖怪ファンタジーなのに、急に大風呂敷広げた感じで、
世界観ぶち壊し、まとまりがなくなってしまっています。
国産CGIアニメが技術的に厳しいのは仕方ないとして、内容はもっと頑張れるはずです。

さて本作は1年4か月も待った国産長編CGIアニメ作品でしたが、
次はそんなに間を開けることもなく、年内にもう一本公開されます。
クリスマス(冬休み)映画『friends もののけ島のナキ』です。
キャストにはかなり不安を感じますが、スタッフにはかなり期待できそう。
技術的にも内容的にも『豆富小僧』を超えるものになりそうな予感です。
国産CGIアニメの発展のためには、なによりヒット作が生まれることが大切。
とにかくどんどん作って、場数を踏んでほしいです。

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