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イリュージョニスト

今日は風が強く、春服だとちょっと寒かったですが、
桜並木の下を歩くとまさに桜吹雪って感じで、とても綺麗で感動的でした。
さんまさんが言ってましたが、花鳥風月を愛でるようになるともう歳なんだとか…。
あの人の言うことはだいたいいい加減ですが、確かに昔は何でもなかったのに、
年齢を重ねるごとに日本の情景が綺麗に見えてきてます。
花鳥風月だけじゃなくて、年々感動することのハードルが下がってきてます。
映画なんかでもそうで、学生時代はアニメ映画なんかで泣くわけないと思ってたのに、
今は2本に1本くらい泣けますからね…。

大人がアニメで泣いてるのって、傍目に見るとちょっとどうなの?って思うけど、
最近は大人を…それもお年寄りを主人公したアニメ映画が多いですよね。
それも軒並み国際的に高い評価を受けています。
パッと思いつくだけでも、オスカーの『カールじいさんの空飛ぶ家』に『つみきのいえ』、
オスカー候補になった『ハウルの動く城』や『イリュージョニスト』、
世界のアニメ映画賞を総なめにした『メアリー&マックス』などなど。
『Mr.インクレディブル』『ファインディング・ニモ』『ファンタスティックMr.FOX』など
父親世代を主役にしたものも多く、評価も高いです。
海外のアニメ映画は大人が主役のものが主流なのかな?
日本はなぜか少年少女ものが圧倒的多数ですが…。

ということで、今日は2010年の映画祭のアニメ賞に旋風を起こした老人アニメの感想です。

イリュージョニスト
LIllusionniste.jpg

2011年3月26日日本公開。
『ぼくの伯父さん』シリーズのジャック・タチ監督が遺した脚本を、
アニメ作家シルヴァン・ショメが映画化したアニメーション。

1950年代のパリ。場末の劇場やバーで手品を披露していた老手品師のタチシェフは、スコットランドの離島にやって来る。この辺ぴな田舎ではタチシェフの芸もまだまだ歓迎され、バーで出会った少女アリスはタチシェフを“魔法使い”だと信じるように。そして島を離れるタチシェフについてきたアリスに、彼もまた生き別れた娘の面影を見るようになり……。(シネマトゥデイより)



本作は英仏合作映画ですが、ボクが本作の存在を初めて知ったのは、
第83回アカデミー賞で長編アニメーション部門候補作が発表された時です。
その回の対象となった作品(つまり2010年公開作品)は、
本命視されていた『トイ・ストーリー3』や、対抗の『ヒックとドラゴン』はもちろん、
『怪盗グルーの月泥棒 3D』『シュレック フォーエバー』『メガマインド』などなど、
大ヒットアニメ映画が目白押しの年でした。
(ちなみに日本からは『サマーウォーズ』が審査対象になってました。)
でもノミネートされたのは『トイ・ストーリー3』と『ヒックとドラゴン』と…、
聞いたこともないタイトルで、なんだか地味そうな本作の3本のみ。
ボクは少なくとも『怪盗グルーの月泥棒』は選ばれると思ってたのでビックリでしたが、
それを押しのけてノミネートされた本作に興味も持ちました。
しかも日本での配給はスタジオ・ジブリの洋画配給部門とも言える
三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーです。
お墨付きを得たようなもので、これはきっと名作に違いないと期待が膨らみました。

で、実際に鑑賞したのですが、予想通りの名作でした。
でも内容が切なすぎて寂しすぎて、ハッピーエンドではなかったので、
鑑賞後は満たされるどころか、心に穴が開いたようなちょっと悲しい気持になりました。
アニメ映画って基本的にハッピーエンドが多いですからね。
本作も途中どんな困難があっても、最後は円満に収まると思い込んでいたので…。
なんとも夢のない終わり方で、なんだろ、あんまり感じたことのない感覚でした。
失恋に近いような…、う~む、哀愁ってやつかな?

舞台はロック音楽やテレビなど刺激的な娯楽が登場し始める1950年代。
主人公の老手品師タチシェフの商売である昔ながらのマジックは、
そんな世間の流れには全く付いていけず、彼は地方劇場で細々とドサ回りする日々。
ある日、電気が開通したばかりの田舎のバーに営業で行った彼は、
そのバーで働く貧しい少女アリスと出会います。
彼女の靴がボロボロなのを知ったタチシェフは、彼女に何気なく靴を買い与えてしまうが、
純真な田舎娘のアリスは彼が魔法で靴を出したと勘違いし、彼が魔法使いだと信じ込み、
旅立つ彼に勝手に同行してしまう、…という話です。

タチシェフは誰も見向きもしなくなった自分の手品に、
純粋に驚いてくれるアリスを、娘のように愛おしく思うようになり、
街で一緒に住み、彼女の望む品物を魔法で出したかのように買い与えていくが、
貧乏な売れない芸人の彼にそんな資金力はなく…。
それでもアリスのために、意にそぐわない仕事や肉体労働で昼夜問わず働くが…。

このアリス、はじめは本当に健気でいい子で、とてもかわいらしい少女なので、
タチシェフの何でも買い与えてしまう気持ちもよくわかりますが、
それはド田舎育ちだったために世間ずれしていなかっただけのことで、
やっぱり普通のティーンエイジャーの女の子です。
街に出てきてしまえば、その辺のシティーガールと同じで、
一丁前にお洒落や色恋に目覚めるようになります。
ほとんどセリフのないサイレント映画のような作品で、
登場人物の心情は汲み取るしかないので、いろんな意見もあるでしょうが、
ボクはかなり早い段階で彼女はタチシェフが魔法使いでないことは知っていたと思います。
少なくとも彼の楽屋から勝手にハイヒールを持ち出した時点では知っていたはず。
それをわかった上で、何でも買ってくれるパパとして彼を利用してたのではないかと。
言葉が通じないことと、無邪気な態度で幼児性を感じ油断してしまうが、
人に取り入る術や行動力もあるし、けっこう計算高い小悪魔的少女だと思いました。
なのにそう思ってしまうボクですらアリスのことを悪く思えないという魔性の少女です。
一見行き当たりばったりな彼女ですが、きっと逞しく生き、幸せになると思います。

そんなアリスに魅了されてしまったタチシェフは気の毒だと思いますが、
時代遅れの手品を何の工夫もせず続ける彼の向上心のなさもよろしくないです。
でもその順応力のなさが妙にリアルで、これが老いるということなのかなと思い、
なんだか切ない気持ちになります。
彼だけでなく、同じ宿に泊まっているピエロと腹話術師も、
世間の流れから取り残され、落ちぶれてしまった芸人です。
ピエロは自殺をはかり、腹話術師は商売道具の人形を質入れしてしまいます。
世間に対応できなくなりお先真っ暗のオッサンたちと、
貪欲に今を生きるアリスの対比がなんとも痛烈で…。
ボクは年齢的にはアリスに近いけど、オッサンの方にシンパシーを感じてしまうので、
どうにも寂しい気持ちになるというか、歳は取りたくないと思いました。
ラストの電車の中で、幼児のエンピツを拾ってあげたタチシェフのあの行動ですが、
夢を売る手品師の彼が、アリスのことで懲りて、完全に夢を捨ててしまったような描写で、
なんともいえない虚無感を感じ、映画館を後にしました。

寂しい映画でしたが、何かと感情を揺さぶられたので、心に響く名作だと思います。
絵も魅力的で、アリスはとてもかわいらしく、男性キャラはユニークです。
一見すると昔ながらの手法で描かれたアニメに見えますが、
CGで描かれたものを手書き風に落とし込んでいるんですね。
手描きのあたたかさとCGの滑らかさが両立されていて、独特の味があります。
寂しい気持ちになったけど、また観たいかなぁ…。

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