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ザ・ファイター

今年も例年どおりアカデミー賞の作品賞候補作だった10本は全部観て回るつもりですが、
今年は全部面白そうな作品ばかりなので楽しいです。
去年は正直、『プレシャス』と『17歳の肖像』を観たくなかったけど、
ひとつでも観てないとその年のアカデミー賞は語れないので、無理して観ました。
今年はすでに10本中7本観ることができましたが、残る3本のうち2本はもうすぐ公開ですが、
最後の『ウインターズ・ボーン(原題)』の日本公開は来年に持ち越しになるみたいで…。
全米で去年の6月に公開された映画ですよ。
オスカー候補になるくらいの映画なんだから観るべきところがあるんだと思うけど、
全米公開時点で日本公開に向けて動かないってのは、
日本の配給会社の買い付け担当者たちに見る目が無いんじゃ…。

ということで、今日は日本で公開された7本目の前年度オスカー候補の感想です。

ザ・ファイター

2011年3月26日日本公開。
実在する伝説のプロボクサー、ミッキー・ウォードの伝記映画。

地域の期待を一身に背負う名ボクサーだが、短気でだらしない性格から破綻した日々を送っている兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)と、才能に恵まれていないボクサーの弟ミッキー(マーク・ウォールバーグ)。過保護な母アリス(メリッサ・レオ)や兄に言われるがままに試合を重ねるが、一度も勝利を収められず……。(シネマトゥデイより)



ボクはアメリカのボクシング界のことは全然知らないので、
ミッキー・ウォードのことも知りませんでしたが、アメリカではかなり有名らしく、
特に3度にわたる元・世界王者アルツロ・ガッティとの試合は世紀の名勝負といわれ、
ミッキーは伝説のボクサーとして語り継がれてるんだそうです。
本作はそのガッティとの試合の2年前の、WBUのタイトルマッチまでを描いた作品なので、
ミッキーのマイナー選手時代の秘話を描いた作品ってことになるんでしょうね。
ちなみにWBUはそんなにメジャーなタイトルではないらしいです。

ミッキーのことも知らないんだから、当然その兄ディッキーのことも知りません。
作中では伝説的な世界王者シュガー・レイ・レナードからダウンを奪った選手らしいけど、
別にその試合に勝ったわけでもないようで、アメリカでもそこまで有名ではなさそう。
本作はミッキーの半生を描いた映画ではあるんですが、
ディッキーを演じたのが役作りの鬼クリスチャン・ベイルであり、
本作でアカデミー助演男優賞を受賞してしまうほどの好演で、
あたかもディッキーが主役のような映画になっています。

プロボクサーのミッキー(マーク・ウォールバーグ)は家族の管理で試合をしていたが、
彼らの言うとおりに試合をしていたら4連敗してしまった…。
原因はお金のために無茶な相手とでもマッチメイクをする母親(メリッサ・レオ)と、
ヤク中でまともにトレーナーの責務を果たさない兄ディッキーです。
しかしミッキーは家族とべったりの生活だったので、なかなか自立できず…。
でも恋人シャーリーン(エイミー・アダムス)と出会い、彼はボクサーとして再起を誓い、
家族と決別し、新しいスタッフの元でボクシングをすると決めます。
その後のミッキーは連戦連勝しますが、母親や家族は面白くありません。
母親はミッキーのトレーナーはディッキーがするべきだと主張します。
母親や7人の姉妹はミッキーよりディッキーの方がたぶん好きなんですね。
ダメな子ほどかわいいってやつで、ミッキーが活躍するのもディッキーの手柄、
ディッキーあってのミッキーでないと意味がないと考えているようです。
ミッキーも、元ボクサーで自分にボクシングを教えてくれた兄を尊重しており、
彼自身もディッキーのためにリングに上がっていると思っているフシがあります。
前述のように、映画としても主役そっちのけでディッキー中心で撮られています。
しかしそれこそが本作の最大の伏線なんですよね。

クライマックスのWBUタイトルマッチで、王者に対して防戦一方の挑戦者ミッキー。
もうだめだと誰もが思った8ラウンドで、彼は急に攻勢に転じます。
今まで精彩を欠いていたミッキーが、急に強くなったように見えるので、
こんな大逆転はリアリティないし、できすぎじゃないかと感じる人もいると思います。
でもミッキーは急に強くなったんじゃなくて、それまでが全力が出せなかったんです。
そのキッカケになったのがセコンドにいた兄ディッキーが叫んだ一言、
「おまえが主役だ!」です。
ミッキー自身も無意識のうちに、家族の中心で自分の憧れた兄の存在に遠慮していて、
そんあ兄の夢だった世界タイトルを取ることに呵責を感じ、力を出し切れなかったのが、
この一言で兄を超える決心が付き、存分に力を発揮できるようになったんだと思います。
ミッキーが本当の意味で家族から自立できた瞬間です。
観客もここで改めてミッキーが主役だということを再認識させられ、
本作がディッキーの更生の物語ではなく、ミッキーの自立の物語だと気づくわけです。
今までのディッキー中心の映画作りは、このラストの熱い展開を盛り上げるための、
長く壮大な伏線だったんですね。
ディッキー役クリスチャン・ベイルは、あくまで「助演」男優賞ってことですね。

しかしクリスチャン・ベイルの役作りはすごいよね。
ヤク中を演じるためにゲッソリ青白く、すごく不健康そうに身体を作ってきてます。
あのヤク中っぽさは説得力ありますよね。
(頭頂部の髪も抜いたり、歯並びも変えたんだそうです。)
もともとヤク中っぽくみえる役者はいますが、クリスチャン・ベイルは、
片や『バットマン』シリーズでマッチョなアメコミヒーロー演じている人だから、
そのギャップというか、その努力は凄まじいものがあります。
(『バットマン』最新作が来年に控えてるし、今頃はまたマッチョになってるかもね。)
もともとディッキーはブラピがやる予定だったらしいのですが、
それはそれで面白そうだけど、ここはやっぱりクリスチャン・ベイルだったから
これほど評価の高い作品になったんだと思います。
すっかり役作りキャラが定着してしまった彼だけど、無理しすぎて早死にしそうだなぁ…。

あ、身体の改造だけじゃなくて、演技も抜群でした。
エンドロールで本物のディッキーのインタビューが流されてたけど、完コピしてました。
作中でディッキーはHBOに担がれて、自分のドキュメンタリー映画が、
薬物汚染を扱った番組にされてしまったことに憤ってましたが、
本作でこうしてちゃんと映画になって、自分を演じた人がオスカーまで受賞したんだから、
さぞ嬉しかったことでしょうね。

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