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武士の家計簿

近年は映画やドラマでオリジナル作品がめっきり減ってしまい、
大抵は小説か漫画の映像化作品になってしまいました。
でも、もうそろそろ原作にできるめぼしい作品も尽きてきたのか、
思いもよらないものが原作になったりします。
例えば『おまえ うまそうだな』のような、短い絵本を長編映画化したり、
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』や『ダーリンは外国人』みたいな、
散文形式のエッセイやコミックエッセイを映画化したりとか、
どう考えても長編映像化には向かないようなものまで映像化されますよね。
(テレビドラマだと『日本人の知らない日本語』とか。)
でも、こんな長編物語になってない原作を長編作品にするのって、
脚本家の技量が高くないとできないと思うのですが、
そういうものに限って、けっこう面白いものが多いような気がします。
特に日本人は、その手の脚本を書くのに長けていると感じます。
日本人は文化的に、イチから何かを作るより、二次創作物を作る方がうまいのかな?
そういえば今年大ヒットした小説『もしドラ』も二次著作物ですね。

ということで、今日はある一家の家計簿から作られた二次創作物の感想です。

武士の家計簿

2010年12月4日公開。
磯田道史の同名ノンフィクションを原作に映画化した異色時代劇。

会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目の直之(堺雅人)。江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、加えて武家社会には身分が高くなるにつれ出費も増えるという構造的な問題があった。直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断し、猪山家の人々は一丸となって倹約生活を実行していく。(シネマトゥデイより)



剣の腕はからきしだが、算盤を持たせたら右に出る者はいない侍が、
そろばんでお家存続のピンチを乗り切るという、
明るいタッチのファミリードラマかと思っていたのですが、全然違いました。

序盤は、主人公で加賀藩の下っ端御算用者・猪山直之(堺雅人)が、
藩の御蔵米の勘定役に任命されるが、どうしても帳尻が合わず、
詳しく調べるうちに、上司が御蔵米をピンハネしていることが発覚するも、
下っ端の立場ではどうすることもできず、道理と身分の狭間で苦悩するという、
封建社会での武士の葛藤を描いた藤沢周平作品のような展開です。
この展開は思っていたものとは全然違ったけど、ボクは藤沢周平作品も好きだし、
嬉しい誤算といった感じでした。
ただ猪山直之の場合は、不正を正したいという思いは正義感によるものではなく、
帳簿が合わないことが無性に気になるという数字オタクなだけで、
その妙なキャラクターが、藤沢周平作品にはない面白さを醸し出しています。

中盤は、猪山直之が猪山家の膨大な借金に気が付き、
お家存続のために武家としての恥も外聞も捨て、質素倹約を始めるという内容で、
ここで漸くタイトルでもある家計簿が登場します。
資財を投げ売り、食費を削り、息子の大事な晴れ舞台も質素に執り行う、
徹底した倹約生活で借金完済を目指します。
このあたりは予想どうりのコメディタッチのファミリードラマで、
期待どおりに面白かったです。
人間、身の丈に合った生活が一番ですね。

ここまではとても面白く、大満足な作品だったのですが、問題は終盤です。
終盤は、激動の幕末を迎え、猪山直之の息子・成之(伊藤祐輝)も成長。
息子・成之は幕末志士と同様、日本や藩の行く末を憂いますが、
戦が始まろうというのにずっとそろばんばかりしている父・直之に、
武士としてそれでいいのかと不満を感じるようになります。
そんな父子の確執と和解の物語で、かなりシリアスな展開です。
社会システムが大きく変わろうという幕末に、
倹約だの家計簿だの悠長なこと言ってられる時代じゃないのはわかりますが、
武士が刀ではなく算盤で奮闘する物語を期待して観に行ったので、
ふつうの幕末の家族の物語を見せられても、拍子抜けするだけです。

しかも何十年にもわたる物語なので、終盤は家族が死別するシーンが多く、
どんどん気持ちが沈んでいくんですよね。
主人公の猪山直之も年老いて出番場少なくなり、代わりに息子・成之の出番が増えますが、
この息子、父親に対して偉そうに武士としての心得を語っておきながら、
攘夷派→佐幕派→新政府軍と渡り歩く日和った奴で、どうも気に入らないです。
しかも結局、剣ではなく算盤の腕で新政府軍のお偉いさんになってるんだから、
もうちょっと父親に謝罪、感謝が必要なんじゃないかと思うんですよ。
史実を追っているので、史実がつまらなければ物語がつまらなくなるのは仕方ないけど、
こんな展開になるのなら、わざわざ猪山直之の最期まで律儀に描かないで、
面白かった江戸時代までで終わらせておけばよかったのに…、と残念に思いました。
エンドロールもしんみり暗く、観る前の期待や、中盤までの楽しさを忘れてしまうほど、
鑑賞後感が重たかったです。

けっこう面白かったはずなのに、しんどいという印象しか残らない、惜しい映画です。

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