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悪人

アカデミー賞の前哨戦のひとつ、トロント国際映画祭を制したのは
コリン・ファース主演の『キングス・スピーチ』でした。
これを機に日本で来月公開される、去年のアカデミー賞作品賞候補で、
コリン・ファース主演の前作『シングルマン』ももうちょっと拡大公開してほしいです。
今の公開規模では、ちょっと劇場に観に行くのが難しいので…。

でも『キリング・スピーチ』がオスカー戦線で一歩リードしたけど、
その粗筋を読んだ感じでは、よくて主演男優賞受賞止まりな気がします。
今年度の作品賞はやっぱり『インセプション』じゃないかなぁ?
トロントで『キリング・スピーチ』のライバルだった
ダニーボイル監督の『127 HOURS』もかなり面白そうだけど。
それか大穴で『トイ・ストーリー3』ですね。

ということで、今日は日本アカデミー賞作品賞最有力になるであろう作品の感想です。
ライバルは『告白』『おとうと』くらいかな?

悪人
2010年9月11日公開。
モントリオール世界映画祭で主演・深津絵里が最優秀女優賞受賞した話題作。

若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……。(シネマトゥデイより)



深津絵里が本作でモントリオール世界映画祭最優秀女優賞を受賞しましたが、
正直、驚きました。
彼女は映画女優というよりもテレビのトレンディ俳優というイメージがあったし、
そんな国際的な権威のある賞を取るタイプだとは思わなかったからです。
今回はよっぽどすごい演技をしてるんだろなと思って観に行きましたが、
いつも通りの深津絵里だったので尚意外でした。
でもこれはボクの「テレビドラマは演技が下手」という思い込みからくるもので、
彼女は普段から実は世界レベルの演技をしてたのかもしれませんね。
特に本作は妻夫木聡、満島ひかり、樹木希林、柄本明など、
演技派俳優の中に混じった中での、ひとりだけの選出ですからね。
ボクなんかは普段見慣れてるから、彼女の演技に突出したものは感じられなかったけど、
世界からすると特別な何かがあったんでしょうね。
彼女が国際的な賞を受賞したことで、今年度の日本アカデミー賞は、
ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞した寺島しのぶの独り勝ちだと思っていたのが、
ちょっと面白くなってきました。
もちろん銀熊賞の権威は高いですけど、東宝は日本アカデミー賞の会員ですからね。
いい勝負するんじゃないかと思います。

しかし本作で注目すべきはやっぱり妻夫木聡ですよ。
彼は自然体で演技するタイプで、彼の本来のイメージ通りの実直で信念を曲げないような、
等身大のキャラを演じることが多かったし、それが好印象だったんだけど、
本作では殺人犯で暗く重いキャラで、正直、彼に演じられるのか疑問でした。
だけどタイトルバックでの彼の表情を見て、一気に杞憂だと悟りました。
全然妻夫木聡を感じさせない、迫真の演技です。もちろん演技がうまいのは知ってたけど、
等身大の演技だけじゃなくて、憑依型の演技もできるんですね。
本作は彼が自ら映画化権を取ってでも主役をやりたかった作品らしく、
映画化権を取った東宝が彼を抜擢することで、結果的に望みがかなったわけですが、
それだけに気合が入った演技でした。
でも「初めて自ら望んだ役」なんていわれると、今までの出演作は…って感じです。

満島ひかりも性格のゆがんだ援交尻軽女の役で、お世辞にもいい役じゃなかったけど、
いつもながらの憑依型演技で、抜群の存在感を示しています。
しかしそれ以上に岡田将生がよかったですね。
松尾スズキ演じる悪徳業者と並ぶぐらいの悪人で、すごくイメージの悪い役。
彼みたいな有望なイケメン俳優はこんな役は避けるもんなのに…。
『告白』の時のバカ担任役もよく受けたなと思ったけど、
彼は単なるアイドル俳優じゃなくて、本物の俳優になってきた感じです。
一方で『雷桜』ではまた爽やかなイケメン役で主演してます。演技の幅が広いです。

とまあ深津絵里のモントリオール最優秀女優賞のこともあって、
演技に目が行きがちな作品ですが、内容も見応えがあります。
見応えがあるのに、尺が長すぎるんで、観終わった後に疲労感を感じるくらいです。
「誰が本当の"悪人"なのか?」というキャッチコピーでもわかるように、
悪人の定義を問うような内容です。
倫理的に殺人に勝る罪なんてないんですが、殺人犯は極悪人とイコールではありません。
マスメディアは被害者を悲劇の人に仕立てて、加害者を極悪人のように報じるけど、
被害者にも犯行に及ばせてしまった過失はあるかもしれません。
たとえば最近話題の押尾学の裁判員裁判ですが、懲役2年6月の判決の判決は、
社会通念からするとずいぶん短い気がするけど、裁判員の一人が
「世間は彼を極悪人みたいな扱いをしているが、事実と違うと腹の中で笑っていた」
みたいなことを言ってましたが、実際に本人を目の前にしてみるとそう感じるんでしょう。
メディアはわかってても言及しないけど、この件は加害者だって犯罪者だし過失あります。

本作でも誰も殺す気などなかった祐一(妻夫木聡)を、
犯行に及ばしてしまうまでに追い詰めたのは被害者の佳乃(満島ひかり)であり、
その状況を作ったのは佳乃を置き去りにした圭吾(岡田将生)です。
誰が見ても諸悪の根源は圭吾なのに、彼は法では裁かれません。
本当の極悪人ってのは狡賢く、自ら裁かれるようなことはしないので、
犯罪者ってのは不器用なだけでホントはいい人が多いんだそうです。
まぁだからといって人を殺したらダメですけどね。

あと、出会い系サイトに出会いを求めるのは無謀だよね。
出会い系で誰かに出会えてたとしても、所詮は"出会い系サイトを利用するような奴"で、
一般通念では軽蔑されるタイプの人間です。そんな人に対して敬意を払えるわけないし、
相手だって自分のことをそう思ってます。
そんなのトラブって当たり前ですよ。
でもね、社会人になるとホントに出会いってなかなかないから、
そんなサイトに出会いを求めてしまうのもわからなくはないです。
悪徳セールスに引っかかる老人たちの問題もそうだけど、
"孤独感"を生み出しまくる社会システムを何とかしないとダメですね。
どうすればいいかはわかりませんが…。

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