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カラフル

ボクが酷評した『クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』ですが、
世間的には信じられないくらいの高評価を受けているようで驚いています。
まぁボクも"劇しん"(劇場版クレヨンしんちゃん)に対する過剰な期待から、
ムキになって扱き下ろしすぎましたが、
逆に言えばあんな粗末なSFにも関わらず称賛されるなんて、
世間の"劇しん"に対する期待が低くなってきていることを痛感しました。
(それとも亡くなった原作者に対する慶弔評価なのかな?)

ただ『ブリブリ3分ポッキリ大進撃』から6作も続けて駄作だったので、
世間の"劇しん"に対する期待が低くなるのも仕方ないかもしれません。
黄金期は『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『アッパレ!戦国大合戦』の頃ですが、
その監督だった原恵一さんは日本一のアニメ映画監督だと思います。
原恵一監督が"劇しん"引退後に作った『河童のクゥと夏休み』も超名作で、
この3本はボクのオールタイム邦画ベスト10に入るほど好きです。
『河童のクゥ』はもしかすると"劇しん"のひとつになったかもしれない作品で、
『河童のクゥ』の構想が『オトナ帝国』や『戦国大合戦』に影響してたりします。
逆に『クレヨンしんちゃん』の設定が『河童のクゥ』に生かされたりもしてるんです。
キャラクターデザインも同じ人なので雰囲気も似てます。
だから『河童のクゥ』も"劇しん"の延長線上みたいなものでした。

ということで、今日は日本一のアニメ映画監督の最新作の感想ですが、
完全にクレしん色がない中で、どれほどのものが出来るかお手並み拝見です。

カラフル
カラフル

2010年8月21日公開。
直木賞作家・森絵都のベストセラー小説をアニメーション化した感動大作。

突然現れて当選を告げる天使の計らいで、死んだはずの“ぼく”の魂は、自殺してしまった少年・真の体に“ホームステイ”をすることに。現世に戻る再挑戦のため、真としての生活を始めた“ぼく”は、やがて真が自ら死を選んだ理由を知る。そんな中、“ぼく”は現世に戻る再挑戦をすることの本当の意味を考え始めるが……。(シネマトゥデイより)



うん、期待どおりの名作。
でも本作は中高生以上向けに作られていて、"大人も感動できるこども映画"だった
『クレヨンしんちゃん』シリーズや『河童のクゥと夏休み』とは全然違うため、
意外性という点ではちょっと物足りなかったかも。
しかもイジメ、自殺、中学生の援助交際、親の不倫、受験などなど、
『告白』顔負けの重いテーマのデパートで、アニメ向きの作品ではないと感じました。
いや、別にアニメだからって悪いってことではなくて、
実写でも同程度の感動は与えられただろうのに、アニメであることで、
「アニメだからよかった」「アニメなのによかった」と不当な評価を受けそう。
内容もSFやファンタジーのような実写だと技術や予算的に厳しいものではないし、
逆にアニメにカテゴライズされることで、正当な評価から逃げたようにも思えます。
アニメって実写映画と同じようなシーンでも、衝撃度が増幅されるんですよね。
本作のようなもともと刺激的な内容のものをアニメかするのはちょっと卑怯です。
原恵一監督って、そんな演出を多用しがちで、『戦国大合戦』のラストもそうだけど、
クレしんの枠から放たれた『河童のクゥ』は刺激がかなり強かったです。
そんな衝撃が感動になって作品を名作たらしめてるんだけど、
ハリウッドに毒されたボクの持論では、アニメはやっぱりこどものもので、
その上で大人も感動できるのが理想だと思っているので、
PG-12じゃないのが不思議なくらい、あまり小学生以下に観せたくない内容の本作は、
アニメとしてはやりすぎなんじゃないかと思うんですよね。
(特にハンバーグ捏ねるシークエンスなんて…。)
原恵一監督はすごく才能ある人だけど、野放しにすると刺激的すぎるので、
テレビシリーズの劇場版くらいの枷があった方がいい気がします。

アニメという表現方法で、刺激度は嵩増しされたわけだけど、
それを差し引いてもやっぱりいい映画であることには変わりありません。
主人公・小林真(声:冨澤風斗)のように極端に追い詰められた状況でなくても、
何かしら現状に悩んでいる人には響く内容だと思います。
誰でも1度や2度は死にたくなるほど悩むことはあると思うけど、
どんなテンパった状態でも、自分を客観的にみると、そんなに悪くないかもしれない。
何かひとつでも自分の拠り所になるものがあれば、他はどうでもいいと思えるかも。
主人公・真の場合はそれが唯一の友達・早乙女(声:入江甚儀)で、
彼が一緒にいてくれるだけで、他の辛い問題も耐えれるわけですね。
ボクは幸運にも真のようにイジメられたことはないんですが、
受験やら就活やらでかなり絶望していた時には、
友達がいることで救われてると感じることが多かった気がします。
自殺したくなるような最悪な状態でも、親友の存在はそれを凌駕する力があります。
イジメられっこが本作を観に来るとは思えないけど、本作を観た学生は、
身近なイジメられっこに手を差し伸べてあげてください。
誰でも他人の人生を劇的に変える力があります。
…ということを感じた優しさにあふれる作品でした。

本作は「人間は一色ではなくいろんな色を持っている」というテーマで、
人間の中にはいいところもあれば悪いところもあるという多面性を肯定するもので、
それはすごく慈愛に満ちた考え方だとは思うんですが、
ハリウッド的勧善懲悪に毒されたボクには少し納得できないところも…。
真の母親(声:麻生久美子)は可哀想なくらい制裁を受けたと思うんですが、
真が憧れる女子・ひろか(声:南明奈)のケジメもちゃんと付けるべきです。
いくらなんでも、女子中学生の援助交際を多様性として容認したらダメでしょ。
真はぶん殴ってでも彼女を改心させるべきでした。
援交相手の報いもちゃんと描いてほしかったくらいです。
『河童のクゥ』でもクゥの父親や友達の犬を殺した奴らへの制裁が描かれてなくて、
スッキリしませんでしたが、リアル路線もいいけどアニメである以上は、
ちゃんと悪いものは悪いと道徳的に描いた方がいいような気がします。

ストーリ-については、原作は読んだ覚えはないけど、
なんか知っているような気がして、オチが予想できてしまいました。
原作がそこそこ古いし、ベストセラーだし、どこかで聞いたことがあったのかも。
(NHK制作の実写版を見たことがあるのかもしれません。)
本作は初めて監督自身が脚本を書いてない作品みたいですが、
ところどころ構成に甘さを感じるところがありました。
特に真が最後の唱子(声:宮崎あおい)との会話で前世の罪に気づくわけだけど、
タイムリミットいっぱいで、かなり綱渡りな展開なために、
ちょっとご都合主義気味というか、せっかくのリアリティが薄まってます。
観客はそれ以前にいろんな伏線から気づけるようになってるけど、
真もジワジワ気づく方がいいんじゃないかな?
まぁ原作も知らない勘のよくない人には、この方が衝撃的でいいのかもしれないけど。
あと自殺前の真も自殺するタイプに思えなかったのも説得力不足かな。
早乙女くんや唱子だって、急に降って湧いたわけじゃないしね。

最後にキャスティングですが、メインはタレントで固めてますが抜群の配役です。
援交少女役の南明奈と真の兄役の中尾明慶には心配してたけど意外にハマってました。
ブスという設定の唱子は宮崎あおいでしたが、良すぎて逆に可愛くなってました。
天使プラプラ役はまいけるという子役でしたが、正直上手いとは思わなかったけど、
そのちょっと浮いてる感じが逆にこの世のものではない感じで、配役の妙ですね。
で、主人公の真役の冨沢風斗ですが、この子は河童のクゥ役の子だったようですね。
完全に声変わりしてて気づきませんでしたが、
さすが監督から信頼されてるだけあって上手いです。
あと、主題歌・挿入歌も有名な曲ばかりですが抜群のチョイスで感動しました。

『戦国大合戦』や『河童のクゥ』の域には達してないけど、
不作気味な今年の邦画で、5本の指に入るのは間違いない佳作で、
中学生以上の多くの人にオススメしたい映画です。
(『オラの花嫁』を絶賛している人には特にオススメしたいですね。)
今年の邦画動員数ナンバー1になりそうな『借りぐらしのアリエッティ』と
数々の賞を争うことになるでしょうが、これも見ものです。

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