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恐怖

暑いです。涼がほしいです。そんな時は怪談です。
ボクも昔は幽霊とか怪奇現象とか超怖かったんですが、
それ以上に怪談が好きで、大量に怪談を読んだり聞いたりするうちに、
心霊に対してマヒしたのか慣れたのか、今では全く怖くなくなってしまいました。
でも未だに怪談を怖がりたい(そして楽しみたい)と思っていて、
今でも怪談を聞きまくったり、ホラー映画を見まくったりして、
ボクでも怖いと思える話を探しています。

そんな中でひとつ気付いたのは、怖い話はフィクションの方が怖いということです。
ボクはオカルトを信じてないので、怖い話のほぼ全ては作り話なのは知ってるけど、
怪談は"実際にあった"という体裁をとっているために、あまりにありえない展開や、
よく出来すぎている展開は、話がうそ臭くなるので使えません。
だからフィクションであると明言されている怖い話の方が自由度が高く、
いくらでも怖く作りこめるんですよね。
だからボクにとっては、さも事実のように話す稲川淳二の怪談よりも、
当然作り物であるホラー映画の方が怖いと感じることが多いです。

ということで、今日はホラー映画の感想です。

恐怖

2010年7月10日公開。
『リング』『女優霊』の脚本家・高橋洋監督がメガホンを取った異色ホラー。

脳科学の研究者である太田夫妻は、戦前の満州で行われた脳の人体実験のフィルムを入手する。スクリーンには真っ白な光が写っており、偶然部屋をのぞいた二人の幼い娘もその奇妙な映像を目にすることになる。17年後、大学病院に勤めていた姉のみゆき(中村ゆり)が突然姿を消し、妹のかおり(藤井美菜)はその行方を必死に探そうとする。(シネマトゥデイより)



本作はJホラーシアターの最終作となる作品です。
Jホラーシアターというのは、『呪怨』のプロデューサーである一瀬隆重が、
Jホラーを代表する監督6人を起用し、6本のJホラー映画を制作する企画です。
2004年に企画がスタートしましたが、既にJホラーブームが去ったこともあってか、
どれも興行的には振るわず、2007年から企画凍結状態になったようですが、
3年の沈黙を破って最終作である本作が公開となりました。
今までの5作品は『リング』などのド直球の怖い怨霊系ホラーとは違い、
落合正幸監督の『感染』はJホラーには珍しかったキモい系メディカル・スリラー、
鶴田法男監督の『予言』はつのだじろうの漫画「恐怖新聞」をアレンジした作品、
清水崇監督の『輪廻』はラストに大どんでん返しがあるサスペンス、
黒沢清監督の『叫』は耳を劈く音響が印象的なサイコミステリー、
中田秀夫監督の『怪談』は古典落語の怪談噺「累ヶ淵」を映像化した時代劇と、
怖いだけの和製ホラーのいうよりは、正直あまり怖くはないけど、
脚本や演出に工夫を凝らした興味深い作品が多かったです。
そして、その取を飾る本作は、これまで以上にヒネリの利いた作品です。

本作はある神経外科医が実際に行った人体実験をモチーフにしています。
生きた人間の頭蓋骨を開け、脳の側面の溝(シルビウス裂)に電気を流すと、
被験者は幽体離脱したり、あの世が見えると証言するそうです。
つまり人間が死に掛けると、シルビウス裂が刺激され、
脳がお花畑とか三途の川を見せるわけです。
つまり、死から生還した人があの世が見えたのは脳の機能で幻覚が見えるだけであり、
実際には死後の世界なんてものは存在しないということの証明になります。
だからもちろん幽霊なんてものも存在しません。人間は死ねば"無"になります。
ボクはオカルトは信じてませんが、この理論は信憑性がある気がします。
でも死後の世界がないということは、宗教を信じている人には怖いことでしょうね。
神も仏も存在しないわけだし、宗教自体何の意味もなくなるわけだし。

ここからはボクの想像ですが、死の瀬戸際で三途の川が見える人が多いのは、
生前に"死んだら三途の川を渡るものだ"と刷り込まれているからじゃないかな?
レーサーが事故った時に"宝船が見える"のも同じ理由です。
新『エルム街の悪夢』によると、人間は死んでも6分ほど脳が動いているそうで、
死ぬと6分だけ脳が作り出した死後の世界を見ることができるのでしょう。

生きた人間の頭を割って脳に電気を流すなんて、現在では絶対できない実験ですが、
本作は、戦時中に七三一部隊がそんな生体実験をしている記録映像を観たある女医が、
その生体実験により霊的進化(アセンション)を起こせると思い込み、
実の娘を含む若者たちにその生体実験を施す…という話です。
実験後、被験者の周りで怪奇現象がおこるんですが、本作は幽霊を否定しているため、
幽霊らしい幽霊は出てこないし、怪奇現象は幽霊によるものではありません。
本作では『リング』の貞子に相当する恐怖対象は、女医の娘みゆき(中村ゆり)ですが、
もちろん彼女は死んでいるわけではないし、幽霊でもありません。
そこが本作が他のJホラー映画とは違う、興味深いところです。
生きた人間が怪奇現象を起こすというのは、幽霊が心霊現象を起こすことよりも、
ある意味、不気味な感じがしました。
実験後のみゆきは白目がちで、見た目もかなり不気味です。

でもそんな彼女よりも怖い存在が、彼女の母親で普通の人間である女医、悦子です。
実の娘でも躊躇なく生体実験のモルモットにしてしまうマッド・サイエンティストで、
喋り方も坦々としていて、何をしでかすかわからない不気味さがあります。
そんな女医を演じるのは"2時間ドラマの女王"の異名を持つ片平なぎさ。
あまり映画に出る女優でもないし、ましてやホラー映画の悪役なんて意外な配役です。
最近は2時間ドラマ枠の縮小されて、仕事を選んでられなくなったか…。

自殺志願サイトで集団自殺のために集まったみゆきたち若者4人が、
練炭自殺を決行し死後の世界に来たはずが、実はそこは…。
という意外性に満ちた展開で幕を開けた本作ですが、
どうもオチが弱いというか、正直オチの意味がイマイチわかりません。
なのでストーリーとしては序盤こそ面白いが、どんどん尻ツボミになります。
それにそんなに怪奇シーンも多くないし、あまり怖いとはいえません。

でも思わず目や耳を塞ぎたくなるシーンがあります。
それは、みゆきに生体実験を施すシーンです。
メスで頭皮の剥いで、頭蓋にドリルで穴を開け、電ノコで切り取り、脳みそが露出…。
怖いというか超キモチワルイです。
しかも頭蓋の切除時に、キュイィィィン、ガリガリガリ…みたいな、
歯の治療のような音を劇場特有の大音量で流されるんだから堪りません。
ボクは『SAW』シリーズが好きで何回か見てるんですが、
『SAW3』だけは一度しか見てないし、二度と見たくないんですよね。
それは本作と同じで、妙にリアルな脳手術のシーンがあるからです。
最近はスプラッタ映画にも慣れて、どんなにエグい切り株シーンでも、
どんなに人間がグチャグチャになるシーンでも平気になってきたんですが、
脳みその映像だけは全く慣れません。(レントゲンでも吐きそうに…。)
その生体実験シーンだけはマジで泣きそうになったけど、
他はそんなにグロテスクなシーンもなかったので、物足りなかった気もするけど、
ある意味助かったかな…。

『恐怖』という題名のわりには、怖さよりも不気味さや気持ち悪さだけだったけど、
心霊じゃないJホラーというのはやっぱり興味深く面白かったです。
今までJホラーシアターの中で一番面白かったのは『輪廻』でしたが、
本作はそれに迫る出来だったのではないでしょうか。

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