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プリンセスと魔法のキス

明後日は第82回アカデミー賞の発表&授賞式ですが、
全部門の中でひとつだけ、絶対コレが選ばれるってわかるものがあります。
それは長編アニメーション賞の『カールじいさんの空飛ぶ家』です。
『カールじいさん…』は作品賞の候補として、今年のアメリカ映画の十傑として、
唯一選ばれたアニメ映画なんだから、他のアニメに負けるはずがないです。
むしろもし負けるようなことがあれば、作品賞の選考の方に問題があります。
ボクは『カールじいさん…』の他に、『コララインとボタンの魔女』と、
今日感想を書く『プリンセスと魔法のキス』を観ましたが、
今のところ『プリンセスと…』が一番よかったです。

プリンセスと魔法のキス

2010年3月6日日本公開。
ディズニー久々の手描きアニメーション映画。
第82回アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート作。

いつの日が自分の手で夢を実現させたいと願う女性、ティアナ。ある日、ティアナの前に、言葉を話す一匹のカエルが現れる。かつて王子だったころ、のろいによって姿を変えられてしまったと語るカエル。そして、魔法を解くためにキスしてほしいとティアナに告げるのだが……。(シネマトゥデイより)



本作はディズニーが久々に作った手書きアニメーション映画な訳ですが、
なぜお家芸だった手描きアニメなのにしばらく作られなかったのか…。
本作の感想の前に、ここ数年のディズニーのアニメーション映画の話を。
(かなりボクの想像も入ってますが…。)

ディズニーは2003年の手描きアニメ『ブラザー・ベア』を最後にスタジオを閉鎖、
今後のアニメ作品はCGIアニメだけにすると宣言し、手書きアニメから撤退しました。
これからはCGIアニメの時代だと考えたんでしょうね。
その頃はディズニーのCGIアニメ映画を制作していたアニメ制作会社ピクサーも、
まだディズニーの子会社になる前だったし、経営面ではけっこう険悪な関係でした。
最悪、ピクサーとの縁が切れる惧れがあったディズニーは、
自社でCGIアニメ映画を作る技術が早急に欲しかったんだと思います。
だからCGIアニメに力を注ぐために古臭い手描きアニメから撤退したんでしょう。
宣言どおり、それ以降ディズニーは『チキン・リトル』など、
自社製作のCGIアニメを作ってきましたが、正直ピクサー作品には遠く及ばず…。
結局2006年に大枚叩いてピクサーを買収、完全子会社化してしまいました。

そこからは自社製作アニメもピクサーの技術、人材も活用して、
『ルイスと未来泥棒』『ボルト』などクオリティの高いCGIアニメが作れるように。
自社製作映画やピクサー作品以外のアニメ映画も『クリスマス・キャロル』や、
日本では劇場公開された『ティンカー・ベル』など、いずれもCGIアニメで制作。
『魔法にかけられて』みたいな、手描きアニメ時代のディズニープリンセスを
セルフパロディとして自虐的に描いた実写映画までが登場して、
完全にディズニーの手描きアニメの時代は終わったかと思いました。

しかし、ピクサーのCCO(現場の最高責任者)であるジョン・ラセターが、
本家ディズニー・アニメーション・スタジオのCCOになったことで状況は一変。
"手描きアニメの伝統を絶やしてはならない"という鶴の一声で本作が制作されました。
奇しくもCGIアニメの雄を子会社化したことで手描きアニメが復活するという、
なんとも興味深い出来事でした。
日本でも日本アニメ界の雄ジブリの『崖の上のポニョ』が、CGを一切使わず、
全編手描きで制作されたことが話題なったのもまだ記憶に新しいです。
ボクは無類のCGIアニメ好きですけど、どちらの手描き回帰も英断だと思います。
CGIアニメは手描きアニメの進化した形じゃないですからね。
どちらもまだまだ進化していく文化です。

てことで、本作はディズニー久々の手描きアニメであるということも魅力ですが、
古臭い手描きアニメの印象とは裏腹に、ディズニーアニメ史上、最も斬新な作品です。
というのも、とにかくいろんな"ディズニーアニメ史上初"が満載な作品なんです。
まず特筆すべきは、主人公がディズニーアニメ史上初の黒人だってことですね。
白人至上主義とまでバッシングを受けることのあったディズニーアニメですが、
アフリカ系アメリカ人の米国大統領が誕生した年に、
ついにアフリカ系ディズニープリンセスも誕生しました。
まぁいままでも中国人主役の『ムーラン』やアラブ人主役の『アラジン』など、
白人以外の作品もあるんですが、逆に内容が人種差別的だと叩かれたりしたようです。
それにそれぞれの舞台も各々の国ですから、端から白人のいない世界だし。
でも本作はアメリカのニューオリンズが舞台です。
黒人が比較的多い都市とはいえ、もちろん白人も登場する中で、
白人以外がヒロインに選ばれたのは革新的なことだったと思います。
意外にもアメリカが舞台になったのも、ディズニーの手描きアニメ史上初だそうです。
それにお家芸のミュージカル部分の音楽に、黒人音楽のジャズが使われたのも
ディズニーアニメ史上初だったみたいですよ。
ボクは古典的なディズニーアニメのミュージカル部分が苦手だったんだけど、
本作はジャズだったからかいつもよりテンポもよくて陽気な感じで平気でした。

ストーリーの原案は『カエルになったお姫様』という小説ですが、
根底はグリム童話の『かえるの王子』のパロディだと思います。
カエルになった王子はプリンセスにキスされることで呪いが解けて人間に戻れますが、
本作のヒロイン、ティアナはプリンセスではなくただのウェイトレスだった…。
プリンセスではない彼女がキスしたことで、呪いは解けるどころか、
彼女にまで感染し、ティアナもカエルになってしまう…。
元の姿に戻るには本物のプリンセスからキスされる必要があるが…、という話。
呪いを解くには女の子からキスされること自体じゃなくて、
その女の子の肩書きが大事だってのが、何だか面白いですね。
そんなどことなく俗っぽい設定もディズニーアニメには珍しいかも。
あと、王子がいつもの品行方正で勇猛果敢なディズニープリンスじゃなくて、
王族から勘当され、金持ちのヒモになりたいというダメ人間なのも面白いです。
ヒロインのティアナも愛よりも金を取るスクルージタイプなのも新しいかな?

そんなディズニーらしからぬ極端な性格の男女ふたりが、
人間に戻るために湿地に棲む魔女に会いに行く冒険の中で、
感化されあい、好意的な関係になっていくというのが大筋です。
その冒険の途上である夢を持ったワニとホタルが仲間になるんですが、
このホタルの物語がすごくいいんです。もう、本編なんてどうでもいいです。
このホタル、絶対マスコットにはなれないような、小汚くみすぼらしい姿で、
"またディズニーアニメらしからぬ微妙なキャラが出てきた"なんて思ったんですが、
まさかコイツにあんなに泣かされるとは…。
このホタルはディズニーアニメ史上初の、ある結末を迎えるんですが、
それも衝撃的だったけど、その後が超感動的です。
ディズニー映画なんで、みんなハッピーエンドなのは間違いないんですが、
彼の絶対不可能と思われる夢まで、あんな形で成就してしまうとは、
ほんとにディズニー映画には"夢"が詰まってますね。

最後はネタバレになりますが、どうしてもツッコミたいのでひとつだけ…。

ティアナの親友のシャーロットが、物語の佳境でカエルの王子にキスした時に、
真夜中回ってたから王子の呪いが解けないのはわかりますが、
シャーロットもカエルにならないのはおかしいと思う。
"カエルになるのは黒人だけか!?人種差別だ!"みたいなことを言われかねませんね。

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