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人間失格

今週金曜日に第33回日本アカデミー賞の授賞式が行われます。
本家アカデミー賞は、授賞式の視聴率アップのために
作品賞ノミネート作を5本から10本に増やし、玄人受けする作品だけでなく、
大衆向け作品もノミネートされるようにしたそうです。
その点から今年の日本アカデミー賞のノミネート(優秀)作を見ると、
たしかに文芸作品っぽいのばかりで、盛り上がりに欠ける気がします。
(例年はそうでもなかったんですが…。)
日本も作品賞のノミネート本数を10本に増やしたら、
大ヒット作『ROOKIES』や『20世紀少年』が候補になって授賞式が楽しそうだし、
例え噛ませ犬とわかっていても最優秀作が『ROOKIES』に勝ったってことになれば、
いろんな人が興味持つようになるんじゃないかなぁ?
(今年はアニメ作品賞が混戦必至で面白そうかな?)

今日は文芸作品ぽい映画の感想です。
今年度のベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)受賞した女優も出演中で、
来年の日本アカデミー賞作品賞候補になるかも?

人間失格

2010年2月20日公開。
太宰治の代表作品の一つである「人間失格」を原作とした文芸映画大作。

議員の父親を持ち、津軽では有名な資産家の御曹司・葉蔵(生田斗真)は人間関係がうまくいかず、周囲に溶け込むためにわざと失態を犯して笑いを取る日々を送っていた。高校に入った葉蔵は遊び人の堀木(伊勢谷友介)や詩人の中原中也(森田剛)と出会い、酒や女におぼれる放蕩(ほうとう)生活を送るようになって、精神的に疲弊していく。(シネマトゥデイより)



去年は太宰治生誕100周年だったので、去年はそれに関連して彼の作品
『パンドラの匣』『ヴィヨンの妻』『斜陽』が次々と映画化されました。
そして、そのメモリアル・イヤーから遅れること2ヶ月、
彼の最大(?)の代表作『人間失格』もついに公開されました。
こんなに有名な作品なのに、実写映像化されたのは今回が初めてらしいです。
でも何で去年のうちに公開しなかったのかな?
本作から先んずること2ヶ月前にアニメ版『人間失格 ディレクターズカット版』が
公開されちゃってて、せっかくの"初映画化"という看板を取られちゃってます。

原作はあまりに有名な作品ですが、小説を読まないボクにとっては、
全く映像化されなかった本作は無縁の存在だったんですが、
古典として知っておくべき作品だと感じていたので、
映画化されたら観るつもりでいました。
特に前途茫洋な昨今、ニーズ的にもバッチリな時期です。
先にアニメ版の方を観ちゃったので、本作観る前にそこそこ内容は知ってましたが、
存在を知ったのは本作の方が先で、アニメ版は予習くらいのつもりで観ました。
が、圧倒的にアニメ版の方が数段面白かったです。
まぁもちろん先に観た方が新鮮だし有利ってのはあるんだろうけど、
それはあまり関係ないです。
なぜなら本作とアニメ版は、同じ原作とは思えないほど内容が違うからです。

アニメ版の方はかなりアレンジされているので、原作に忠実ではないんでしょうが、
それでも作品の本質のテーマはキッチリ描かれていたと思います。
むしろアレンジすることで、より明確に伝わるようになってたのかも。
一方、本作はおそらく原作にかなり忠実なつくりだと思います。
原作読んだことないのでホントはわからないけど、手記という体裁の原作を
映像化したらこんな感じになるんだろうなって感じの坦々とした演出だし、
セリフ回しもどこか書き言葉っぽいので、そんな感じがします。
ただ原作を忠実に追うだけで、何のポリシーも感じられない脚本で、
主人公・葉蔵や登場人物の内面(社会に対する絶望や恐怖)は全く描かれず、
葉蔵の堕落した人生をただ坦々と映像化しているだけで終わってます。
ダメ男のダメ生活をただ延々と流されるだけで、退屈極まりない映画です。
近くの座席のババァがやたら欠伸してて鬱陶しかったけど、その気持ちもわかります。

葉蔵の内面が全く無視されているため、
人格形成した少年時代のエピソード(竹一のおばけの絵など)の意味することや、
中原中也との妙にファンタジックなエピソードなど、
どんな意味があるのかなど全くわかりません。
左翼活動描写が全く排除されてるのもあってか、
物語の根幹となるはずの常子との関係や、入水自殺未遂事件すらサラッと流され、
その動機の片鱗すら伝わってきません。
全体を通しても葉蔵の苦悩は"金がない"ってことだけに感じます。
そして最後は漫画『ブラックジャック』の最終回のパクリみたいなシーン…。
さらにエンドロールのバックでは生田斗真と共演者の記念写真を流す…。

でもまぁ何でそんな映画になっちゃたかは何となく想像できます。
まずジャニーズの有望株・生田斗真で映画作ろうと企画が持ち上がったけど、
今のご時世アイドル映画では集客は見込めない。
ちょうど太宰治生誕100周年だったので、それに便乗し、
有名な原作を利用して文芸映画にしてみた、って感じじゃないかな?
でも動機は生田斗真のアイドル映画なんで、何かを描くというポリシーは全くなく、
一般客や映画ファン、太宰治ファンの鑑賞に堪えうる作品にはならなかった。
かといって、中途半端に文芸作品を気取ったためにジャニーズファンのババァからも
欠伸をされてしまうほど退屈な作品に仕上がったんだと思います。

そもそも女道楽の葉蔵を、濡れ場NGのアイドルにやらせるのがおかしい。
まぁ全く濡れ場まがいのものがないわけではないんだけど、
ファンに気を使ってるのか、倍以上年齢の離れた室井滋や三田佳子とだけ。
石原さとみや小池栄子とはそれを思わすシーンさえありません。
一番大切な常子役の寺島しのぶとすらありません。
女道楽だけじゃなくて、アル中・薬物中毒で廃人となってしまう役で、
そんな役をジャニーズ・アイドルが演じて、迫真の演技できるわけがない。
いや、生田斗真の演技が下手ってことじゃなくて、イメージ戦略上、
もしリアルに演じたら事務所NGになるから控えめにしかできないってことです。
彼自身はそつなく演じてて、アニメ版より葉蔵のイメージに近いと感じました。

ヒロインのひとり、寺島しのぶさんは先日『キャタピラー』で銀熊賞に輝き、
時期的にもタイムリーで、本作への集客にも貢献しそうですね。
でも生田斗真しか撮ってないといっても過言じゃない作品なんで、
彼女の演技を観に行くだけなら全く無駄なので止めた方がいいです。
『キャタピラー』も文芸作品だけど、本作よりはよっぽど真面目なはず。
そちらの公開を待ちましょう。

映画、失格。

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