ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

人間失格 ディレクターズカット版

人は記憶でしか判断できない。
もしも記憶の幅を広げたければ、物語を疑似体験することだ。
これは"TOHO CINEMAS PRESENTS MOVIE AWARD"と題した映画予告で、
プレゼンターの相沢紗世が、世界的な脳機能学者の格言として紹介する言葉ですが、
まぁ簡単にいえば、"映画をたくさん観に来いよ"ってことです。

真意は置いといて、記憶の幅が広がるかどうかは知らないけど、
物語をいっぱい知っておくってのは大事なことですよね。
最近の若い子は古典的な物語も知らないことが多くて、
普通の会話の中でも引用とか比喩が通じないことがあって困ります。
かく言うボクも本読むのが大嫌いなんで、あんまり偉そうなことは言えないんですが、
古典文学とかベストセラー小説はけっこう映画化されるんで、
それでなんとなく補えてる気でいます。
本だと絶対読まない作品でも映画なら観れるし、映画って敷居が低くて助かりますね。

今日は超古典的なのに、今まで内容を知らなかった作品の映画化作品の感想です。

人間失格 ディレクターズカット版

2009年12月12日公開。
日本テレビで放送中のアニメ『青い文学シリーズ』から、
原作太宰治、キャラクター原案小畑健の「人間失格」を劇場版として再編集。

裕福な家庭に育った大庭葉蔵は左翼運動のまね事をしながら、その日暮らしをしていた。ある日、警察に追われた葉蔵はとあるカフェに逃げ込み、そこで恒子と出会う。その夜、恒子と枕をともにした葉蔵だったが、ささいなことから父との確執が脳裏によみがえり、生きていることを恥ずかしく感じ…。(シネマトゥデイより)

今年は太宰治生誕100周年ってことで、それを記念して彼の晩年の作品
『パンドラの匣』『ヴィヨンの妻』『斜陽』が映画化され公開されました。
そして晩年の代表作である『人間失格』も来年早々、実写映画化されます。
それの先手を打つように、突如公開されたのが本作です。

太宰治や夏目漱石、芥川龍之介といった文豪たちの名作の表紙イラストを、
『BLEACH』や『テニスの王子様』の作者など少年ジャンプの漫画家たちが描き下ろし、
賛否両論巻き起こし話題となった集英社の文庫シリーズはまだ記憶に新しいですね。
普段は純文学なんて読まない若い層を、人気漫画化のイラストで釣って、
ライトノベル感覚で買わせてしまおうという狡賢い売り方でしたが、みごと大成功。
そのあまりの人気に、そのカバーイラストをキャラクター原案に
文豪たちの名作5作品をテレビアニメ化した番組『青い文学シリーズ』。
そのシリーズ第一作目、『DEATH NOTE』の小畑健がキャラクター原案を勤めた
太宰治の「人間失格」全4話を劇場用に再編集し、新カットと
主演声優を務めた俳優・堺雅人による冒頭ナビゲートを追加したのが本作です。

ボクは太宰治の『人間失格』は読んだことがなかったんですが、
内容は気になってたので、映像化されてないか調べたことがあります。
ところがどういう訳か、誰もが知ってるような超有名な小説のはずなのに、
今まで一度も映像化されてなかったようで、太宰治生誕100周年の今年になって、
ようやくテレビアニメとして映像化されたようです。
しかしこのテレビアニメ、どうも関西では放送されなかったらしくて、
関西在住のボクは見ることが出来ず、諦めかけてました。
と思ったら、都合のいいことに「人間失格」だけ劇場版になるとのこと。
小規模だけど、ちゃんと関西でも公開されるってことで、勇んで観に行きました。
(後で知ったんですが、関西でも遅れてテレビ放映されるようです。早まった?)

冒頭でナビゲーターの堺雅人が言ってましたが、
本作は必ずしも原作どおりじゃなくて、今の時代に合わせた解釈をしているらしい。
簡単に言えば、かなりアレンジしてますよ、ってことです。
なのでこれがどれだけ原作を踏襲してるかはわかりませんが、
概ねどんな話かはわかったつもりになれました。
自分が他人とは違う特別な存在だと思っていたのに、多少の挫折でみるみる堕落。
堕ちるとこまで堕ちて、せめて人並みの生活を望むようになるが、
被害妄想が強くていつまでたっても満足できない。
そんな今の若者世代にも通じる若者心理を描いた作品ですね。
太宰治はこの主人公・大庭葉蔵に自分を重ねて書いたんでしょうが、
読者も少なからず葉蔵に共感する部分があって、彼に自分を重ねてしまう。
そして自分の不遇さを哀れんで、自尊心を保つ…みたいな?

そう思うとなんとなく今まで映像化されなかった理由がわかる気がします。
大庭葉蔵は読者自身だから、顔が在っちゃいけないからじゃないかな?
ましてやこんな『DEATH NOTE』の夜神月みたいな共感の湧きにくい顔じゃ…。
(まぁジゴロなんでイケメンなのは間違いないけど…。)
ボクの受けた印象だと、葉蔵ってもっと哀愁の感じる若者じゃないかなぁ?
(…ってそれが自分自身ってことになる?)

アニメーションですが、テレビアニメを再編集しただけにしてはかなり綺麗。
セピア色の情緒的で芸術的なシーンが多いんで、独特な世界観はあるんですが、
劇場アニメと比べると、コマ数はやっぱり少なくて、キャラの動きがテレビ的です。
あと、作画が乱れてるのか、カット毎にかなり顔が変わりますよね。
特に葉蔵は女性的だったり、童顔だったり、老けたり、コロコロ変わります。
まぁキャラ原案の小畑健の漫画も顔がコロコロ変わるんで、
その雰囲気を再現してるだけかもしれないけど。
小畑健の絵って繊細で綺麗だけど、なんかキャラに生気を感じませんよね。
だからなのか、主人公以外全員モブくさいです。
でも"おばけ"はよかった。単純だけど複雑で不気味な魅力がありました。
あれも小畑健のデザイン?ちょっと浮いてる感じがしたけど…。

そういえば新カットってどこだったのかなぁ?
テレビで出来るか微妙な、過激でエロいシーンもちょこちょこあったけど…。
葉蔵のジゴロっぷりやらレイプやら心中やら自殺やら、なかなかデリケートな内容で、
テレビアニメ化されたこと自体冒険のような気もしたけど…。
さすがに恒子の座位シーンの腰の動きはテレビでは流せなかったんじゃないかな?
それでも葉蔵の幼少期の性体験は示唆する程度だったし、
原作に比べたらかなり緩くしてある気がしました。
来年公開の実写版は生田斗真が主演ということで、ジャニーズだし、アイドルだし、
もっと骨抜きになってるんじゃないかなぁ?
あ、でもキンキキッズ主演の便乗ドラマ『人間・失格』は過激な内容でしたね。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/226-debd6219
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad