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戦場でワルツを

今更な話ですが、『おくりびと』ってアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことで、
(観てなさそうな人含め)いろんな人から手放しに評価されてるけど、
アカデミー賞外国語映画賞は、その年のハリウッド映画を除いた映画の中で、
アメリカ人映画関係者が選んだ1位ってだけですよね。
むしろ国際映画祭のモントリオール世界映画祭グランプリ受賞の功績の方が、
一応世界一ってことになるし、評価されるべきじゃないかな?
もしアカデミー賞外国語映画賞受賞ってだけで"スゴイ"とか"最高"とか言うなら、
せめてその時の対抗馬がどの程度の作品だったかくらいは観とくべきと思います。
もしかしたら例年になく駄作揃いだったかもしれないですし。
ということで、一番のライバルだった作品を観てきました。

戦場でワルツを

2009年11月28日日本公開。
アリ・フォルマン監督の自伝的ドキュメンタリー・アニメーション。

2006年冬、友人のボアズがアリに対して、毎夜みる悪夢に悩まされていると打ち明けた。ボアズは、それがレバノン侵攻の後遺症だという。しかし、アリの記憶からは、レバノンでの出来事が抜け落ちていた。記憶から失われた過去を取り戻すために、アリは世界中に散らばる戦友たちに会いにいく。(シネマトゥデイより)

本作はアカデミー賞の前哨戦でもあるゴールデングローブ賞の外国語映画賞を受賞し、
アカデミー賞外国語映画賞の大本命とされていましたが、蓋を開けてみれば、
誰も予想してなかった『おくりびと』にオスカーを取られる結果になりました。
(『おくりびと』はゴールデングローブ賞にはノミネートされてません。)
ボクも『おくりびと』のオスカー受賞は予想外で、日本人としては嬉しかったけど、
正直、今年の外国語映画賞は大したことないレベルなんだろうなと思ってました。

イスラエル映画なんて初めて観ましたが、本作みたいな作風の映画自体初めて。
写真をトゥーンレダリングしたような写実的な背景の中で、
ビジュアルノベル風のキャラがFLASHアニメで動くという、風変わりなアニメ。
しかもアニメなのにドキュメンタリーで、
アリ・フォルマン監督の実体験を描いたノンフィクションとのこと。
もちろん監督自身、本人役で登場し、脇役の多くも実在する本人です。
ある日、アリ監督が自分のイスラエル軍に従軍していたレバノン内戦時代の記憶が
全くないことに気付き、自分の抜け落ちた記憶を探すために、
かつての戦友たちに話を聞きに会いに行く、という設定の話。
まさかホントに監督の記憶が抜けてるとは思えないし、そこはあくまで設定かな?
簡単に言えば、アリ監督がインタビュアーとなって、レバノン内戦を経験した人から、
戦争の体験談や武勇伝をインタビューして、それをアニメに仕上げた作品です。

冒頭は犬の群れが街中を疾走するシーンから始まるんですが、
これがビックリするほどかっこいい。
まるでアメコミが動いてるかのような、芸術的でスタイリッシュな映像。
それだけでも本作を観にきて正解だと思ったんですが、
この映画はそんなかっこいいアニメーションがウリの映画ではないです。
なにしろ史実に沿った戦争映画ですから。もっと重い社会派作品です。

登場人物たちが語る戦争体験談は本当に戦場で体験した話ですが、
悲惨さや恐怖よりも、戦渦での異常な心理状態や非日常的な状況で、
何だかファンタジーに思えるような非現実感を感じさせます。
その非現実感はアニメーションという表現方法で更に加速され、
無機質で血の通ってないキャラによって、より現実味が薄く感じられます。
1982年のパレスチナ難民大虐殺を描いた映画なのに、
アニメーションにして残酷さや悲惨さをオブラートに包んでしまうのは
ドキュメンタリーとして、戦争映画としてどうなんだ?ってことですが、
これはもちろんワザとしている戦法です。

アニメーションで悲惨な体験談や現実離れした武勇伝をスンナリ受け入れさせておいて
最後の最後でパレスチナ難民大虐殺時の実写の記録映像を流す。
家族を失って泣き叫ぶ女性の映像や虐殺された子供の死体の写真…。
ここで今までファンタジーのように観ていた観客は、ガァーンと現実に引き戻され、
わかっていたはずなのに、今まで観た非現実的な体験談も全て戦争中に実際にあった
実話だったんだと衝撃を受けるわけです。(泣きだす人までいました。)
そして気持ちの整理もつかないまま暗転し、スタッフロールへ…。
映画が終わっても茫然自失で席を立てない…、みたいな。

まぁちょっと大袈裟に書いてますけど、とにかくスゴイ映画なのは間違いないです。
難点を挙げるとするなら、耳慣れない(たぶん)ヘブライ語のセリフなんで、
セリフに込められた感情がイマイチ伝わりにくいこと。
まぁ声優自体、ほぼ本人で俳優じゃないからなのかもしれませんが…。
むしろそのセリフの空虚な感じも、ファンタジー感を加速させてるのかも?
それにとにかく独特の映像が革新的過ぎて、映像に集中したくなって、
字幕に目線を落とすのが億劫になること。
まぁどっちも難点というよりは利点の裏返しなんですが…。

で、最後に思ったことは、よくこんな映画に『おくりびと』が勝てたな…、ってこと。
これは『おくりびと』を卑下してるんじゃなくて、
むしろ『おくりびと』ってスゴイのかも…、と見直した感じです。

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