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ちいさな英雄 -カニとタマゴと透明人間-

やっと『カメラを止めるな!』を観ることが出来ました。先週末から近所のシネコンでも公開が始まったので。この作品は一切ネタバレするべきではないと思うので感想は書きませんが、たしかに噂通り、思いもよらない展開を見せる興味深い作品でした。いや、そういう噂は聞いていたので、自分でもいろいろ予想しており、劇中劇パターンも考えていましたが、予想の斜め上を行く劇中劇パターンで感心しました。「日本アカデミー賞を総なめにすべき作品だ」という評価もよく聞きますが、私もそうなれば面白いとは思うけど、本年度の日本アカデミー賞は『万引き家族』が総なめすることが内定しているので無理でしょう。本作が狙うべきは権威主義の日本アカデミー賞なんかではなく、アカデミー外国語賞日本代表です。本場アカデミー会員は映画制作映画が好きなのでノミネートくらいは可能性あるかもしれません。ジャンル映画の国際映画祭にもどんどん出品するといいと思います。なんでも舞台作品の盗作疑惑がほぼ事実だったようですが、海外ならバレない(気にしない)だろうし、きっと高評価を得るはずです。盗作疑惑も示談ではなく法廷に持ち込んでほしいな。盗作かインスパイアかの線引きは難しいので今後のためにも判例を作った方がいいです。

今日も映画の感想です。

ちいさな英雄 -カニとタマゴと透明人間-
ちいさな英雄

2018年8月24日公開。

『メアリと魔女の花』のスタジオポノックの劇場映画第二弾となる本作。スタジオの実力を知らしめなければいけない大切な第二弾だというのに、まさかの短編集となっています。正直、長編映画を製作するだけの体力がないのではいかと勘ぐってしまいますね。

2013年、スタジオジブリは『風立ちぬ』で宮崎駿が引退、『かぐや姫の物語』で高畑勲も事実上の引退、無能な鈴木敏夫プロデューサーは「宮さんが引退したらジブリ維持できない」と制作部門解散を決め、2014年、ジブリ制作部門全員が退職を余儀なくされます。リストラされたジブリスタッフらは無きジブリの後継者を自負してスタジオポノックを立ち上げ、昨年、処女作『メアリと魔女の花』を公開しました。しかしジブリに終止符を打った『思い出のマーニー』にすら届かない興収で、お世辞にも成功したとはいえず、ほろ苦い船出となります。出来自体は悪くなかったのにヒットできなかった背景には、『メアリ』公開直前に(『君の名は。』に嫉妬した)宮崎駿が引退を撤回し、鈴木Pは彼の復帰作のためにジブリ制作部門も再開し、スタジオポノックがジブリの後継者とは思われなくなったためでしょう。それどころかジブリのリストラ組の互助会みたいな印象は否めません。ポノックの宮崎駿に対する憤りは想像に難くなく、その証拠に『メアリ』ではエンドロールの「感謝(スペシャルサンクス)」に「高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫」の名前があったのに、本作では亡き「高畑勲」だけになっています。新生ジブリに対する決別宣言とも取れる表記です。
そんな状況だったのでポノックは処女作『メアリ』が最終作になるに違いないと思いましたが、宮崎駿に対する敵愾心がそうさせたのかポノックは存続し、僅か一年で劇場第二弾を公開しました。しかしこの状況と短い製作期間では長編は難しかったのか、短編3本のオムニバス映画しか出来なかったみたいで…。『メアリ』はなかなかの佳作だったし、第二弾も数年かけてでも長編映画で勝負してほしかったですが、宮崎駿の復帰作が公開されるまでに少しでも認知されたいというポノックの焦りが短編オムニバスの妥協に繋がった気がします。『メアリ』は日本では注目されませんでしたが海外の評価は高いので、もうジブリや宮崎駿なんて無視して独自に頑張ればいいと思うのですが…。まぁポノックがジブリを意識しているというのは私の憶測ですけどね。

上映時間が短そうなので安易に作れそうな短編映画ですが、面白い短編映画を作るのは面白い長編映画を作ることの何倍も難しいと思うんですよね。限られた短い時間の中で物語を紡ぐのは高い技術を要するからです。それを成功させている短編映画というのは非常に少なく、短編映画は相対的に長編映画よりつまらないという印象は否めません。ディズニーやピクサーのアニメーション映画にはだいたい短編が付属していますが、本編見終わったら短編の内容なんて覚えてませんもんね。本作の短編3本も残念ながら完成度が低く、長編映画のオマケで上映されるのがちょうどいいくらいの出来。それが3本集まっても満足できるものではありません。それを見越してか、鑑賞料金は一般1400円と低めに設定されていますが、おまけレベルの短編3本でその料金は高すぎます。一般1000円くらいが妥当でしょう。
実際は劇場第二弾というわけではなく、「ポノック短編劇場」という新レーベルの第一弾という体裁を取っているみたいですが、第二弾、第三弾と続けようと思っているなら考え直すべき。私が知る限り短編オムニバスなんて日本で成功した試しはないんだから、素直に長編製作した方が称賛は高いです。
以下、各短編の感想です。ネタバレ注意。

カニーニとカニーノ
カニーニとカニーノ

短編オムニバスの一本目となる本作。やはり最初を飾る作品なので、監督は『借りぐらしのアリエッティ』で名の知れた元ジブリの有望株、米林宏昌です。絵柄もオーソドックスなジブリ絵を使用しており、3本中では最もジブリっぽい雰囲気の作品になっています。主に水中での物語ですが、特に水面の描写がリアルで素晴らしいと感心しました。短編映画は作家の名刺代わりなので、こうして作画技術を見せつける場としても使われがちです。ただ水中という舞台にリアリティを持たすためか、水を潜るボコボコボコという効果音が鳴り続けていて、ちょっとうるさいと思ってしまいました。
カニの兄妹が冒険する物語というフレコミで、擬人化されたカニの兄カニーニと妹カニーノが主人公ですが、作中には擬人化されてない普通のカニも登場するんですよね。もうどういう世界観なのか謎ですが、細かい説明を省いて許されてしまうのも短編映画の特徴です。その分、客が補完しないといけないわけで、そこに齟齬があれば上手く伝わりません。だから短編で物語を伝えるのは難しいのです。私は普通のカニがいる以上、兄妹を擬人化されたカニと考えるのは無理があり、彼らはカニの生態に似た小型水棲ヒューマノイドであろうと補完しました。
カニーニとカニーノ兄妹は父親と川で3人暮らしをしています。以前は母親や沢山の兄姉がいたみたいですが、なぜかいません。他の水棲生物にでも捕食されて3人だけ生き残ったのかなと思いました。ある日、妹カニーノが巣穴を出て濁流の川へ。父親は娘を助けますが代わりに濁流に流されてしまいます。残された兄妹は父親を探しに行くことにしますが、肉食魚に狙われて岸へ避難し、川辺から下流を目指します。岸からどこまで流されたかもわからない父親を探すわけですが、これは気の長い旅になりそうだ、と思いきや、さすがは短編、あっという間に父親を発見するのです。時間が限られているとはいえ、怒涛のテンポです。
父親は負傷しており、川の中の岩陰に隠れていました。その周りには巨大で不気味な外来種っぽい肉食魚が徘徊しており、父親に近づこうとした兄妹に喰いかかります。しかし喰われる寸前、水鳥が巨大魚を捕食。兄妹は難を逃れ父親と再会します。なんというか、他力本願な呆気ない幕切れで、冒険と呼べるほどのものではありませんでした。
その後、母親が五つ子の赤ちゃんを抱いて帰宅。母親は死んだものだと思ってたけど、産卵のためにどこかに行ってたみたいです。たしかほとんどのカニは海で産卵するんですよね。まぁ彼女はカニではなく水棲ヒューマノイドだけど。更にその後、カニーニとカニーノは巣立ちを迎えます。親元を離れて兄姉たちのところに行くのですが、兄姉たちも死んだわけじゃなくて先に巣立っていただけか。でもそれなら兄カニーニの方が先に巣立ちするはずだけど、なぜ妹カニーノと同時なのか。
水面の描写だけしか評価できない薄い物語ですが、そもそも短編で冒険譚を描こうというのが無謀だったかな。とはいえこれを長編化しても面白くなるとは思えないけどね。

サムライエッグ
サムライエッグ

2本目は百瀬義行という人が監督した短編です。彼は『猫の恩返し』と同時上映された短編『ギブリーズ episode2』で監督をしており、『平成狸合戦ぽんぽこ』や『ホーホケキョとなりの山田くん』に携わった高畑勲組のひとりだったようです。それもあってか、画風も高畑勲風の水彩画っぽいアニメーションになってます。
本作はある母子の物語です。小4の息子シュンは卵アレルギーで、少量の卵を口にしただけでも重度のアナフィラキシーショックを発症するため、母は常に気にかけています。レストランに行っても食べるものがないとか、給食は食べられないから弁当を持たすしかないとか、学校のお泊り行事に参加しづらいとか、とにかく食物アレルギーの大変さ、特に親御さんの大変さが描かれていて、物語を見ているというよりは食物アレルギーについての教材ビデオを見せられているような印象です。
ラストは母の留守中、シュンが自宅冷蔵庫にあったカップアイスを食べて全身ボコボコになる重度のアナフィラキシーショックを発症。隣人のおばさんに救急車を呼んでもらって一命を取り留めるという展開に。アイスクリームなんて食べたらダメなのはわかりそうなものだと思ったし、そんなもの自宅に置いておくなよと思ったのですが、どうやら卵を使用していないアイスクリームもあるみたいで、そのつもりで買ったらいつの間にか原材料に卵黄が追加されていたようです。食物アレルギーがあると、いつも食べている加工品でもコマ目に原材料を確認しないと危ないし、メーカーも留意しなくてはいけないという啓発ですね。
その後、シュンは卵アレルギーを克服したいという意思を込めて、学校の鶏小屋の鶏卵にマジックでサムライの落書きをして幕を下ろします。最後の最後にタイトルの「サムライエッグ」が登場したわけですが、「え、これで終わりなの?」と思ってしまいました。克服するまで描いてくれないと、本当に食物アレルギーの大変さを教えられただけになります。たしかに私は食物アレルギーはないので、ここまで過酷だとは思ってなく勉強になったところもありますが、何も解決しておらず、というか解決は困難だと思えて、ただただシュンと彼の母が気の毒で後味が悪いです。本当に教材ビデオとして作ったんじゃないの?

透明人間
透明人間

3本目はジブリ後期の作品で作画監督を務めた山下明彦監督の短編。さすがアニメーター出身なだけあって作画技術が高く、絵的に面白いシーンが多いです。画風も全体的に暗めで3本中では最もジブリっぽくないかもしれません。
絵的には面白いのですが、物語が微妙というか、設定があまりに説明不足なんですよね。主人公は透明人間なので周りの人間からは見えないのは当たり前なのですが、ちゃんと服やメガネを付けているのに無視されるんですよね。これは透明人間というのはアニメ的比喩表現で、存在感が薄いことのメタファーなのかと思ったのですが、彼は同僚やレジ係など人間だけじゃなく、パソコンやATM、自動ドアなど機械にまでも無視されるんですよね。これは存在感が薄いメタファーではなさそうです。更に彼は肩から消化器を下げているのですが、それは重りの代わりで、外すと宙に浮いてしまうみたいです。(もちろんその消化器も周りの人に見えないみたい。)浮くわ見えないわで、もうこの世のものとは思えませんが、本当にそうで、霊的な存在と考えれば説明が付くかな。
誰からも無視されて孤独に打ちひしがれる主人公ですが、河原で落ち込んでいるところを傘の紳士が「おまえさんこんなところで何しとる?」と声を掛けてくれます。あ、見える人間もいるのか、と思ったのですが、その紳士も傘で顔を隠しており、透明人間の可能性が高く、やっぱり普通の人間には見えないのかな。
ただラストで主人公はトラックに轢かれかけた乳母車の赤ちゃんを助けるのですが、なぜかその赤ちゃんは主人公のことが見えているようです。赤ちゃんを英雄的に助けてめでたしめでたし、と思いたいところですが、少し深読みをすれば、赤ちゃんが主人公のことを見れるのは赤ちゃんも同類だった、つまり霊的な存在だったということで、実は赤ちゃんはトラックに轢かれて死んでしまったのではないかと推測できます。たぶん考えすぎだろうと思いますが、短編が故の説明不足により補完の自由度が高いため、こんな不幸な設定の補完もできてしまうんですよね。そのせいで私としては、赤ちゃんが死んだという物凄く後味の悪い印象を残した作品になりました。これが最後の3本目なので鑑賞後感は最悪です。
あと、どうでもいいけど主人公はカニ風小型生物の1本目や小学生の2本目と違って、透明人間は別に小さくないので、『ちいさな英雄』というオムニバスタイトルは偽りありなんじゃないかな。まぁ英雄という意味では赤ちゃんを助けたとも取れる透明人間だけで、1本目、2本目の主人公は全く英雄ではないけどね。

週末興収ランキング初登場10位以内にも入れず、スタジオポノックの存続はいよいよ困難だと思われますが、ジブリに対する対抗心でなんとか存続し、素晴らしい長編作品を作って引退詐欺ジジイと腰巾着ジジイをギャフンと言わせてほしいです。ジブリで培った技術はあるんだから適切な原作を選べば出来るはずです。とりあえず本作も北米公開してアカデミー賞ノミネート資格を得ましょう。短編アニメーション賞なら何かの間違いでどれか1本くらいノミネートされる可能性あると思います。

関連作の感想
メアリと魔女の花

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