ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

KUBO/クボ 二本の弦の秘密

今日の気になるアメコミ映画ニュース。

『ジャスティス・リーグ』のザック・スナイダー監督版のリリースを求める
署名活動がファンによって行われているそうです。
同作は製作終盤でスナイダー監督が身内の不幸で降板し、
『アベンジャーズ』のジョシュ・ウェドン監督が後を引き継いだのですが、
編集で1時間近い大量カットし、新たなシーンを大量追加したそうで、
たしかにかなり趣の違う作品になってしまっている気がします。
私の印象ではかなり改善されているような気がするのですが、
どこがどのように変わったのかちょっと気になるかも。
ただこれをリリースすると監督の力量が比較されてしまうため
スナイダー監督が嫌がる気がしますね。

今日も映画の感想です。

KUBO/クボ 二本の弦の秘密
Kubo and the Two Strings

2017年11月18日日本公開。

本作は『コララインとボタンの魔女』のライカ製作のストップモーション・アニメで、
昨年度のアカデミー賞長編アニメ部門にもノミネートされました。
ハリウッドアニメなのに中世日本が舞台という珍しい作品なので、
アカデミー賞にノミネートされた時など、日本でも注目されるかと思ったけど、
注目されたのはライバルのフランス製ジブリ映画『レッド・タートル』でしたね。
まぁどちらも受賞は逃し、オスカーは下馬評通り『ズートピア』に決まりました。
その時は順当な結果かと思いましたが、漸く日本公開された本作を観て、
圧倒的に本作の方が面白いじゃないかと思わされました。
アカデミー会員はちゃんと全候補作を観て投票しているのか疑問です。

本作は間違いなく素晴らしい出来で、観た人の評価はかなり高いのですが、
あまり観てもらえてないようで、世界興収は1億ドルを切り、
ライカ作品として最高の評価と同時に最低の成績になってしまいました。
最近でも『ゴースト・イン・ザ・シェル』『パワーレンジャー』など、
日本絡みのハリウッド大作が次々と爆死していますが、
やはり本作も日本が舞台ということで、あまり興味が持たれなかったかな。
日本を扱ってくれるハリウッドのクリエーターたちには感謝する反面、
そのせいでヒットできないことは日本人として申し訳なく思ってしまいます。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』などとは違い、内容は間違いないので、
せめて日本でだけでもヒットさせてあげたいと思ったのですが、
昨年度のアカデミー賞なんてみんな忘れてしまった頃に漸く公開され、
更に東映系シネコン中心であまり大規模公開されなかったみたいで、
週末興収ランキング10位にも入れない寂しい結果に…。
世界配給はユニバーサルなんだから日本では東宝東和が配給して
全国のTOHOシネマズでも上映してくれたらよかったのに、
私も梅田ブルク7まで足を延ばすことになってしまいました。
(ブルグ7はほぼ満席だったので公開規模次第ではヒットしたはず。)
しかもなぜか洋アニメには珍しく、字幕版を中心に上映しているようで、
字幕派としては字幕版の上映は有難いことだけど、
子供やファミリーを集客するには吹替版中心にする方がいい気がします。
ライカらしくちょっとダークなところもあるけど、大人向けでもないし、
こういう素晴らしいアニメこそ子供たちに観せるべきだと思います。

外国でも数々の映画賞を受賞しており、高く評価されているのは間違いなく、
作品の出来が素晴らしいのは疑う余地ありませんが、
映像や物語の出来もさることながら、私が本作に最も感心したことは、
中世日本への理解の深さです。
ハリウッドに限らず外国が日本を題材にしたら大抵トンデモな世界観になり、
ツッコミどころだらけで物語に集中できないなんてこともあるけど、
本作は日本人が作ったのかと思うほど日本文化への造詣が深いです。
もちろんファンタジーなので、実際には存在しないものもあるけど、
ファンタジー設定も仏教的観念を主体とした日本的なもので、
日本人が作った和製ファンタジーよりも和風かもしれません。
本作にちょこっと出てくる鶏の妖怪・波山なんて日本人でも知らない人多そう。
キャラの立ち振る舞いも非常に日本の時代劇的ですが、
なんでも監督が黒澤映画を参考にしたようで納得です。
本作の全米公開は8月13日だったのですが、これも物語がお盆の時期なので、
わざわざ日本のお盆に合わせているほどのコダワリようです。
(日本ではなぜか翌年の11月に公開されましたが…。)

と、ハリウッド映画としては異例の日本考証がされている本作ですが、
やはり洋画なのか限界はあり、日本人としては少し違和感のあるところも。
その中でも最大で最悪だと思ってしまう違和感は
題名にもなっている主人公の名前「クボ」ですよね。
なんでもキャラクターデザイナーの日本人友達の名前から拝借したそうですが、
たぶんその友達の名字(ミドルネーム)が久保だったのでしょう。
しかし本作の主人公は母親からも「クボ」と呼ばれており、
どうもクボがファーストネームみたいなんですよね。
日本考証するうちに名前がおかしいこと気付きそうなものですが…。
まぁこれには強い違和感を覚えたものの不思議と徐々に慣れました。
「クボ」というファーストネームじゃなくて「く坊」というニックネームだと思えば、
(それも多少無理はあるものの)受け入れやすいかもしれません。

それとこれは全世界共通で誰でも感心するはずですが、映像が素晴らしい。
さすがアニメーション作品として『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』以来となる
史上二度目のアカデミー視覚効果賞にノミネートされただけのことはあります。
葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』を彷彿とさせる冒頭の映像から始まり、
浮世絵を動く人形劇化したような粋で渋い映像の連続でかっこいいです。
ストップモーション・アニメなのでコマ撮りした写真の連続なのですが、
その手間暇を考えると気が遠くなりそうです。
でもその甲斐あってCGIアニメーションにはまだ出せない質感や味が
うまく表現できていると思います。
このキャラの人形っぽさが作品の雰囲気にマッチしてますよね。
NHKの人形時代劇のような懐かしさも感じられます。
以下、ネタバレ注意です。

中世日本、眼帯をした少年クボは、母上と2人で浜辺の洞窟で暮らしています。
母上はクボが赤子の頃に頭を打って記憶障害になっているみたいで、
日没から数時間以外は意識薄弱で人形のような状態で、
クボはそんな母上を介抱しながら、昼間は近くの村に行き、
大道芸で日銭を稼いでいる感心な少年です。
彼の芸は三味線を弾きながら語りものをするのですが、
彼が三味線を弾くと折り紙の人形が動き出す不思議な芸で
ひとり人形浄瑠璃って感じですかね。
折り紙で人形浄瑠璃なんて斬新ですが、これぞ日本文化ですね。

クボが語る物語はハンゾウという侍が妖怪退治する冒険譚ですが、
ハンゾウは彼の亡き父で、母上から聞いた物語のようです。
なんでもハンゾウと母上は駆け落ちしてクボを授かるも、
邪悪な母方の祖父から命を狙われハンゾウは死亡し、
母上は赤ん坊のクボを連れて逃げ、未だに隠れているようです。
クボの眼帯で隠された左目も祖父にやられたみたいです。
祖父は「月の帝(みかど)」というこの世界の支配者らしいのですが、
帝、つまり天皇を敵キャラにするなんて日本ではなかなか出来ない設定ですね。
意外とこれがネックで本作が大規模公開されないのかも?
月の帝は妖怪なので、その娘である母上も妖怪なはずで、
クボは妖怪のハーフであり、だから折り紙を動かす魔術が使えるのでしょう。

彼は母上から日没までには洞窟に戻って来るように言い付けられていますが、
村ではお盆のお祭りがあり、夜には灯籠流しが行われるようで、
村のお婆さんの「灯籠流しでは死者と話が出来る」という話を真に受け、
墓地で灯籠流しの行われる日没まで村に残ってしまいます。
ところがというか当然というか、灯籠流しでも父の霊は現れることはなく、
残念がるクボでしたが、その前に能面を付けた怪しい女2人が現れます。
彼女たちは母上の妹、つまり叔母なのですが、祖父の命令で来たようで
甥っ子の残った右目を奪おうと黒い霧の魔術で攻撃してきます。
黒い霧はお祭り中の村も容赦なく攻撃し、逃げるクボも追い詰められますが、
そこに息子を助けるために母上が駆け付け、妹たちと対峙。
母上がクボの背中に触るとクワガタムシの翅(はね)が現れ、
クボは飛んで逃げることが出来ましたが、母上は殺されたようで…。
人間と駆け落ちしただけで姉を殺すなんて、とんでもない妹たちです。
でも市女笠を被った能面姿は、なんか妖艶でかっこいいですね。
魔術も使えるけど得物として鎖鎌も携帯しており、その武器チョイスも好み。

辛くも飛んで逃げたクボは最果ての国と呼ばれる雪山に着地。
そこで喋る白いニホンザルと出会いますが、
このサルはクボが肌身離さず持っていたサルの置物が
母上の最後の魔術でニホンザルに変化したもののようです。
サルはクボの面倒を見るつもりのようで、クジラの死体を見付け、
その中でキャンプし、鯨汁まで作ってくれます。
別に批判的な感じはないが、日本人は鯨を食べる印象があるのでしょうね。
サルは月の帝から身を守るために、昔ハンゾウも探した三種の神器
「折れずの刀」「刺さらずの鎧」「割れずの兜」と探すようにクボに言います。
しかしどこにあるかまでは知らないみたいで…。
ところがクボの折り紙で(ハンゾウを模して)作った侍が勝手に動き出し、
刀で方向を指し示し、どうやら神器のありかまで案内してくれるみたいです。
クボとサルは折り紙侍の指示する方角へ向かいますが、
道中、クワガタムシっぽい鎧の男にクボが拉致されてしまうのです。
クワガタっぽい鎧にしては中肢も動いているから変だなと思ったら、
どうやら鎧ではなく生身のようで、彼はクワガタの妖怪みたいです。
クワガタといえばクボの父ハンゾウの家紋なのですが、
このクワガタ男は元ハンゾウの家臣だったらしいのですが、
月の帝に妖怪に変えられ、記憶も消されてしまったようです。
主君がハンゾウだったという微かな記憶だけあるみたいで、
主君の息子クボを思わず拉致っちゃったようですが悪者ではなさそう。
彼もクボとサルの旅に同行することになります。
サルとクワガタがお供になるなんて変形『桃太郎』みたいで面白いですね。
次はどんな動物がお供になるのかと期待したけど、以降仲間は増えません。

一行は「折れずの刀」がある洞窟に到着します。
刀は聖剣エクスカリバーのように地面に刺さっており、
これは選ばれし者しか抜けないパターンか、と思いきや、
クワガタがあっさり抜いてしまいます。
するとブービートラップが発動、巨大妖怪ガシャ髑髏が現れ襲ってきます。
このガシャ髑髏、なんだか巨神兵みたいなデザインだと思いましたが、
それもそのはず、監督は宮崎アニメの影響も公言しているようです。
サルが抜いた刀で斬り付けるも、折れずの刀のはずがポッキリ…。
どうやらこれは偽者で本物はガシャ髑髏の頭蓋骨に刺さった
無数の刀のうちの一本のようです。
クボは頭蓋骨に登って本物の折れずの刀を発見して抜くと、
ガシャ髑髏は瓦解してしまいます。
本物の刀で倒すのかと思ったら抜いただけで倒せるのか…。

ひとつ目の神器を手に入れた一行は次の神器がある湖へ。
クボが三味線を弾くと紅葉が集まり、立派な船になります。
紙状なら折り紙じゃなくても操れるんですね。
紅葉の船なんて綺麗で風情があっていいですよね。
湖底に神器があるみたいで、クボとクワガタが泳いで取りに向かいます。
そこは目玉の園と呼ばれる場所で、クボは「刺さらずの鎧」を回収するも、
巨大な目玉のある水生妖怪に見入られて食べられそうになり…。
しかしクワガタが得意の弓矢で目玉を射ち抜き、クボを救出します。
泳げないサルは船で留守番ですが、そこに邪悪な叔母の片割れが現れ、
サルは折れず刀を手に彼女と対決になります。
たかがサルのくせにかなり強いなと思ったら、
どうもこのサルは死んだ母上の化身だったみたいです。
村で妹2人と戦った時は後れを取ったものの、1人相手なら互角以上に戦え、
負傷しながらもなんとか倒すことに成功します。
船に戻ったクボもサルが母上だと気付き再会を喜びますが、
母親がサルになっちゃったらちょっとショックですよね。
母上もサルの置物じゃなくて、もっといい人形を持たせてたらよかったのに。

母上であるサルはハンゾウとの馴れ初めを話してくれます。
なんでもはじめは母上も月の帝の命令でハンゾウの命を狙っていたのですが、
ハンゾウとの戦いの中で2人は恋に落ち、駆け落ちしたそうな。
そしてクボが生まれますが、生後すぐに帝に左目を奪われてしまいます。
帝は残った右目も欲していますが、別に目玉に特別な力があるわけじゃなく、
クボが全盲になれば妖怪の仲間入りが出来るらしいのです。
つまり帝は孫と暮らしたいから孫を失明させようとしているツンデレ爺さんです。
その話を聞いた夜、クボはある夢を見ます。
三味線を持った全盲の老人が現れ、「最後の神器はハンゾウの砦にある」と
教えてくれるという内容ですが、どう考えても全盲老人は月の帝ですね。
クボは気付いてないみたいで、翌朝ハンゾウの砦に向かうことにしますが、
案の定罠で、邪悪な叔母の片割れが待ち伏せており…。

叔母はクワガタがハンゾウの成れの果てであることを明かし、
クボとサルは驚きますが、当然記憶喪失のクワガタ自身もビックリ。
私もサルが母上なのは薄々気付いたけど、クワガタが父親だったとは予想外。
けっこうドジな三枚目キャラなので伝説の侍と同一人物とは意外でした。
でもこれで灯籠流しでハンゾウの霊が呼び出せなかった理由もわかりましたね。
まだ生きてるんだから呼び出せなくて当然で納得しました。
もうひとりの妹は倒せたサルでしたが、その時の負傷が祟り今回は劣勢で、
クワガタと夫婦で立ち向かいますが、結局2人とも殺されてしまいます。
せっかく生きてたと思った矢先に両親が殺されたクボが
三味線で怒りのビートを掻き鳴らすと強力な魔術が発生し叔母を倒します。
そして砦に残されていた文献から最後の神器の在処を知り、
クボはそこに向かって飛んで行くのです。
両親が死んだのは驚きの展開でしたが、その後の展開がちょっと強引で
なんだか呆気に取られてしまいました。
ストップモーション・アニメって細かいシーンを作るのが面倒なのか
ちょっと強引な展開で話を飛ばすことが間々ありますね。

なんと最後の神器「割れずの兜」の在処は最初の村で、
その村の鐘楼が実は兜だったという灯台下暗しな展開です。
だから母上は赤ん坊のクボを連れて村の近くに来てたんですね。
記憶障害で彼女自身も忘れてたみたいですが。
三種の神器を装備したクボの前に、祖父である月の帝が降臨します。
帝は右目を渡して妖怪になるように要求しますがクボは断固拒否。
起こった帝は諦めて孫を殺そうと大百足の巨大妖怪に変化。
三種の神器でパワーアップしたクボなら対抗できるかと思いましたが、
別に強くはなってないみたいで…。
「折れずの刀」「刺さらずの鎧」「割れずの兜」は名前の通り
耐久力に優れた神器なので攻撃力は上がらないんですね。
ハンゾウのような一流の侍が装備したら怖いものなしでしょうが、
剣術の心得もない普通の子供が装備しても少し打たれ強くなるだけみたい。
結局三種の神器も弾き飛ばされ、クボは絶体絶命です。

しかしクボは妖怪のハーフであり、普通の子供ではありません。
彼は三味線の三本の弦を外し、母上の髪、父ハンゾウの弓の弦、
そして自分の髪を張り、弾き鳴らします。
すると何よりも強い親子の絆パワーが発動し、更に村人たちの霊を呼び起こし、
その強力な魔力で大百足を倒すのです。
ちょっと理屈がわからないエモすぎる展開ですが、なんだか感動しました。
邪悪な祖父は死んだかと思いましたが、まだ人の姿に戻って生存しています。
でも記憶が失われているようで、善人として再教育されることになり、
孫のクボとも一緒に暮らせるみたいで、結果的に彼の望みは叶ったのかも。
なんだか全盲だった片目も見えるようになってるみたいですね。
いくら記憶喪失とはいえ、両親を殺した男をクボは許せるのか?
まぁ直接手を下したのは叔母だから大丈夫なのか?
なんにしても娘や孫を殺そうとするようなクソジジイには死んでほしいし、
逆にジジイが幸せになりそうなこの結末はちょっと釈然としません。

クボは両親分2つの灯籠を用意し、再び灯籠流しをします。
今度はちゃんと両親の霊を呼び出せ、再会できてめでたしめでたし。
(ハンゾウの元の姿が見れましたが、まんま三船敏郎でしたね。)
いや、両親が確実に死んだと証明されたわけでめでたくはないか。
でも村人の灯籠が黄金のサギに変わって飛び立つシーンとかとても綺麗で、
感動してちょっと泣けてしまいました。

この感動的な和風ファンタジー作品を外国人が作ったなんて、
日本人として嫉妬してしまうほど素晴らしいアニメでした。
もっと多くの人に観てもらいたいです。

関連作の感想
コララインとボタンの魔女
パラノーマン ブライス・ホローの謎

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1883-370b9223
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad