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ハクソー・リッジ

今週はTOHOシネマズがシネマイレージ・ウィーク期間中でしたが、
(24日から30日まで、会員は映画が1100円均一になるキャンペーン)
こんな時に限って観たい洋画が少なかったので、久々に邦画を観ました。
清水崇監督のホラー映画『こどもつかい』です。
和製ホラーはけっこう好きだし、予告編(こどものうた編)で聴いた
 ぼーあんがぁ ぼーあんがぁ ステプライ ステプライ♪ 
 カンクローさん カンクローさん おいない おいない♪
 かみのごサーカス おいないよ あめじんとみーのしょうたいは♪

という劇中で子供たちが唄う奇怪な歌の意味が少し気になっていたので、
安く観れるなら観てみようとチョイスしました。
作品としてはホラーというよりもダークファンタジーであまり怖くなく、
期待ハズレ感は否めませんが、歌の意味はわかったので目的は達成か。
それにしても劇場公開される和製ホラーは本当に怖くなくなってしまったな…。
R指定どころかPG指定も避けてるようでは怖いはずないか。

ということで、今日はシネマイレージ・ウィーク期間中に観た洋画の感想です。
PG指定を受けており、ある意味『こどもつかい』よりも怖い作品です。

ハクソー・リッジ
Hacksaw Ridge

2017年6月24日日本公開。

メル・ギブソン10年ぶりの監督作だった本作ですが、
第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞にノミネートされました。
久々にメガホン取ったと思ったら、監督賞候補になれてしまうんだから、
メル・ギブソンの監督業の才能は恐ろしいものがあります。
そもそも10年ぶりになってしまったのも、飲酒運転やDVなど彼の素行が悪すぎて
監督業どころか俳優業からも干されていたような状況だったのが原因ですが、
こんなに才能があるのならこの失われた10年が勿体ない気がしました。
もし問題起こさなかったら、あと1~2本くらい佳作が撮れてたかも。
(個人的には俳優メル・ギブソンはそんなにいいとは思わないけど。)
結局、作品賞は『ムーンライト』に、監督賞は『ラ・ラ・ランド』に受賞を譲るが、
本作の面白さはその2作と比較しても優るとも劣らないと感じました。
ただ、録音賞と編集賞を受賞し、技術部門で2冠となりましたが、
その受賞傾向は間違ってないなと思います。
というのも、本作は物語よりも大迫力のミリタリー・アクションが素晴らしく、
そのお蔭で傑作だと感じられた映画だったからです。
むしろ物語はけっこう微妙だった気がします。

物語が微妙だと感じたのは、本作がクリスチャン映画だからかも。
過去にキリストの受難を描いて物議を醸した『パッション』を撮った
メル・ギブソンは熱心なクリスチャンであり、キリスト教が題材になるのは必然。
しかし私は理神論者であり、クリスチャンではないため、
本作に込められた宗教的メッセージ性には全く共感できません。
特に本作の主人公は原理主義的で極端な思想のクリスチャンなので、
普通のクリスチャンでも理解し難く、共感できない部分はありそうですが、
私のようにクリスチャンですらない者にとっては異常者にすら思えます。
劇中での彼の行いはたしかに崇高で尊い行為だと思うのですが、
その動機が信仰のためだと、人助けも利己的なものに成り下がります。
自発的な人助けではなく、信仰を守るため律法に従っているだけですからね。

宗教だけではなく、もうひとつ主人公との立場的な違いもあり、
むしろこちらの影響が大きくて物語に共感できなかったのかもしれません。
それは本作は事実を基にした物語ですが、舞台が太平洋戦争の沖縄戦であり、
主人公は米兵なので、当然敵は日本兵ということになるんですよね。
特亜の映画ほど反日的ではないものの、日本人としてはやっぱりね…。
主人公は律法に従い日本兵を殺傷することはありませんが、
日本兵を殺傷する側に加担しているのは否めず、
間接的に殺傷しているようなものなので、やっぱり敵視しちゃいます。
そもそも直接手を下さず、間接的な人殺しは宗教的に正しいのかと思うし、
そんな解釈次第でどうにでもなるような信仰に何の意味があるんだと。
ただ、本作の日本兵はかなり手強く、勇猛果敢に描かれているので、
日本人としてちょっと誇らしく思えました。
以下、ネタバレ注意です。

主人公デズモンドは幼い頃、兄弟ケンカで兄ハルを煉瓦で殴って殺しかけ、
その反省からキリスト教の第六戒「汝、殺すなかれ」を強く決意します。
それから15年後、彼はたまたま交通事故に遭った少年の止血を行い、
医者から「命の恩人だね」と褒められて嬉しくなり、医療に興味を抱きます。
まぁその時会った看護婦ドロシーに一目惚れして、
彼女の気を惹くために医療の勉強を始めたような気もしますが…。
少年時代の傷害事件とドロシーに対するストーカー行為のせいで、
彼のことをちょっと痛い奴なのかもと思ってしまいました。
そのストーカー行為が実を結び、ドロシーと婚約できるんだけど…。
そんな折、兄ハルが父親の反対を無視して米軍に入隊し、
デズモンドも「お国のために働きたい」と入隊を決意するのです。
ただ第六戒で人殺しはできないし、医療に興味があるので衛生兵を志望します。
どうも多くのキリスト教宗派は戦争で敵兵を殺すことは殺人ではないとし、
第六戒に抵触しないと都合のいい解釈をしているみたいですが、
デズモンドの入信する宗派は戦争での殺人も禁じているみたいです。
「セブンスデー・アドベンチスト教会」という宗派で、とにかく十戒を厳守し、
同じクリスチャンからも異端視されることもある新興宗派らしいです。
劇中でもこの宗派の事はあまり強調されていませんが、
異端視するクリスチャン客に嫌われないように配慮したのかも?

デズモンドは陸軍に入隊し、ジャクソン基地で訓練を受けることになります。
身体能力は高いみたいで障害物競走(?)などでは高い成績を収めるが、
ライフルを使った射撃訓練は断固拒否し、上官に睨まれます。
射撃を行う以前にライフルに触れることすら拒むのですが、
訓練で誰か殺すわけでもないのに、武器に触れることも信仰に背くのか、
と思ったけど、どうも宗派とは別の彼独自のルールのようです。
なんでも昔、母親にDVする父親に拳銃を向けてしまったことがあるらしく、
それを悔いて二度と銃には触れないという誓いを立てたらしいです。
神との誓いなので宗教上の理由ではあるけど、単なる自分ルールで我儘です。
しかし兄も殺しかけて、父親も殺しかけるなんて、やっぱり少し痛い奴ですね。
そんな彼が信仰で凶暴性を抑制できているのなら、宗教にも意味あるかも。

デズモンドが射撃訓練拒否するのは、上官にとっては命令違反に他ならず、
彼は大尉に呼び出され、除隊を迫られるのですが、
「良心的兵役拒否者」なる証明書を見せて除隊を拒否するのです。
どうも宗教上の理由とかで兵役を免除してもらう証明書らしいですが、
兵役を望んでるんだから証明書は無効じゃないかと思うのだけど、
その証明書のせいで大尉も彼を強制的に除隊させられないみたいで、
軍曹に「奴が除隊を望むように追い込め」と指示します。
便所掃除など雑務ばかり押し付けたり、精神病を疑ったりしますが、
デズモンドの堅い信仰を崩すことは出来ず…。
そこで彼の所属する隊に「銃も使えない弱い奴がいる隊は弱い」と、
連帯責任で罰を与え、彼が仲間からイジメられるように仕向けます。
これにより仲間からリンチされたりして、陰湿なやり方だと思うけど、
彼も自分の信仰のせいで仲間に迷惑掛けてるから自業自得か。
いや、彼には自業自得でも、仲間にとっては単なる迷惑で怒って当然。
信教は自由だが周りに迷惑が掛かる信教の自由は困ったもんですね。

仲間のリンチにも耐えるデズモンドですが、訓練終了で休暇が与えられ、
それを利用して婚約者ドロシーと結婚式を挙げることになるのですが、
中隊長から「お前、射撃訓練終わってないだろ」と休暇を取り上げられます。
デズモンドは良心的兵役拒否者資格を振りかざし抗議するが、
射撃訓練しろという命令を無視したと、上官の命令拒否罪で軍法会議に。
軍法会議で有罪になれば刑務所行き、それが嫌なら不名誉除隊という
もはや打つ手なしの状況になります。
いや、実際は射撃訓練に応じればいいだけの話なんですが…。
結婚式をドタキャンされたドロシーからも「プライド捨てて従え」と言われるが、
彼は「プライドじゃなくて信仰だ」と拒否し、軍法会議で徹底抗戦の構えです。
刑務所よりも信仰を選ぶんだから奇特というかやはり痛いです。
法廷で「殺人を犯さないと刑務所送りなのはおかしい」と訴え、それは一理あり
裁判長も同情的ですが、それでも軍法違反は明白なので有罪は避けられず…、
と思いきやテズモンドの父親が法廷に飛び込んで来て、
裁判長の上官である准将の手紙を裁判長に渡し、一転無罪になります。
父親は第一次世界大戦で従軍しており、准将と戦友だったみたいで、
コネを使って強引に息子を無罪にしたような感じで、少し卑怯だと思いましたが、
どうも憲法にも良心的兵役拒否者の権利は守れと明記されているらしく、
そもそも冤罪だったみたいですね。
デズモンドは銃を持たずに衛生兵として派兵されることになりますが、
そもそも衛生兵を志望して陸軍に入隊するのは妙な気も…。
射撃訓練どころか衛生兵に必要な医療訓練も受けてないだろうし…。

1945年5月、デズモンドはジャクソン基地の仲間たちと共に沖縄に派兵され、
米軍が苦戦している戦場「ハクソー・リッジ」の攻略に当たることに。
「ハクソー・リッジ」を訳せば「弓のこ崖」で、かなり切り立った崖っぽいですが、
その崖の上の前田高地という場所に日本軍陣地があるみたいです。
なんでも米軍は6回攻めて6回撃退されたみたいで、
崖を登ってるところを上から攻撃されて攻めあぐねているのかな?
と思ったら、崖は縄梯子で簡単に登れちゃうんですよね。
崖の上の前田高地での白兵戦で死を恐れぬ日本兵に撃退されるみたいです。
撃退された隊の兵士の話では、日本兵は衛生兵を優先的に狙うらしく、
デズモンドにも赤十字標章を外して戦場に行くように助言します。
衛生兵を攻撃するのはジュネーブ条約違反で、あるまじき所業ですが、
赤十字外してるなら一般兵と見分けは付かず、攻撃されても文句は言えないな。

デズモンドの所属する第96師団を含む米軍が崖に到着すると、
まず戦艦が日本兵が待ち構えているであろう崖の上の前田高地を砲撃します。
砲弾の雨のような苛烈な砲撃で、正直卑怯だと思ってしまいます。
その後、米軍は崖を登りますが、そこには無数の米兵の死体が転がっていて、
死体はグチャグチャに破損してますが、それは残虐な日本兵の仕業というより、
米兵の死体が自軍の戦艦の砲撃で破損しているだけな気も…。
あんな激しい砲撃にも関わらず、日本兵は難を逃れていたみたいで、
崖を登って来た米兵に対し発砲して来るのですが、
米兵には日本兵の姿は確認できず、一方的に撃ち殺されます。
というのも戦艦の砲撃による爆発の煙で視界が最悪なんですよね。
自軍の煙幕で敵軍を見失ってるんだからアホな戦術です。
(日本兵も同条件のはずだが、そこは地の利があるのかな?)

相手の出した煙で奇襲を掛ける日本兵は大奮闘。
正直、「日本兵頑張れ」という気持ちになっちゃいますね。
しかし煙が晴れ始めると米兵の反撃が始まり…。
さすがに米兵の装備は凄まじく、機関銃や火炎放射器まで使われて
日本兵はどんどん殺され、どんどん押されていきます。
やっぱり戦争は兵士の頑張りも戦略も関係なく、武器の差が全てですね。
そして日本軍はついに壕を制圧され、撤退します。
米軍は制圧した前田高地で夜営することになります。
ハードな戦闘シーンでとても見応えがありましたが、
やはり武器を持たず、戦闘に参加できないデズモンドは、
主人公なのに戦闘シーンでは全く活躍できず、まるで空気でしたね。

一晩明けた早朝、急に日本兵の大軍が現れ、米兵に襲い掛かります。
どうも前田高地の下には日本軍の地下トンネルが広がってるみたいで、
本当に突如地面から湧き出たように次々と現れるんですよね。
ただ前日の戦闘で弾を使いすぎたのか、主に銃剣で刺すという攻撃方法で…。
とはいえ3桁は軽く超えそうな大軍で、数の力で圧倒し、
不意を突かれた米軍は成す術なく撤退、崖の下まで逃げ戻ります。
昨日は数百人で崖を登った米軍も、崖を降りれたのはわずか32人で…。
日本兵に肩入れしてしまった私としても痛快な展開でしたが、
憎き火炎放射器兵のバックパックを撃って大爆発させるシーンは最高でした。
概ね撤退を終えた米軍は再び戦艦に砲撃を指示し、前田高原に砲弾の雨。
ところが衛生兵デズモンドはまだ崖から降りておらず、
自軍の砲弾降り注ぐ中で、負傷兵を探して走り回っていました。
そしてひとり負傷兵を見つけるたびに崖っぷちまで運んで、
縄を結わえて崖の下に降ろしてやるのです。
デズモンドがまだ前田高地で負傷兵を救助していることに気付いた米軍は
戦艦による砲撃を中止させます。
結論から言えばデズモンドは自力生還した米兵の二倍以上の
75人を救助するのですが、そんなに自軍の生存兵がいるのに、
戦艦から砲撃開始するなんて冷酷すぎますよね。
まだ助かるのに味方の砲撃でトドメを刺された米兵もきっと多いです。

砲撃が止んだ後も負傷兵を探し続けるデズモンドでしたが、
残党狩りをする日本兵たちに遭遇し、追われて逃げるうちに
日本軍の地下トンネルに入り込んでしまうのです。
そこで彼は負傷したひとりの日本兵に遭遇し、なんと治療を施すのです。
彼のひとりでも多く助けたいという気持ちに敵味方は関係ないのかな。
いや、ここで日本兵を治療しなければ、武器を持たない彼は殺されてただろうし、
自分を守るために恩を売る必要があっただけかも。
ただ彼は地上でも負傷した日本兵を2人崖から降ろしてやったそうで、
ホントに分け隔てなく助けていたのかもしれません。
とはいえ、その2人の日本兵は結局助からなかったらしいので、
彼が救助した生存者75人の中には含まれていません。
なので記録もなく、日本人も助けたのが史実かどうかはかなり疑わしいです。

デズモンドは最後にジャクソン基地でイジメられた軍曹も助けますが、
日本兵がやって来たため、担いで逃げるのは無理だと思ったのか、
なんとライフルに布を巻き付けて即席担架を作って崖まで運ぶのです。
でも人を殺すためじゃなくても銃に触れるのは御法度だったのではないのか。
その程度の信念なら、なぜ軍法会議に掛けられるほど触れるのを拒んだのか。
担架に乗せられた軍曹は運ばれる途中に追って来た日本兵を数人撃ち殺すが、
ひとり助けるために数人死んでるのでは本末転倒ではないか。
人を殺している人間の足の代わりになることは、明確に殺人に関与してるだろ。
やっぱり戦争自体、神の意に反することで、どんなに綺麗事を並べようが、
参加してる時点で信仰的にアウトなんじゃないかと思います。

軍曹と共に崖の下に降りたデズモンドは、皆から称賛され、
除隊させようとした大尉からも謝罪を受けます。
大尉に「明日は君の宗派の安息日だから戦場に出なくていい」と言われますが、
デズモンドは翌日も10分だけお祈りして前田高地に向かうのです。
訓練中は安息日の訓練も拒否してたのに、もうライフルも触っちゃったし、
そんなに厳格に教えを守る必要ないと思い直したのかも。
いずれにせよ、その程度の信仰心だったということです。
再び前田高地を攻める米軍は、地下トンネルに爆弾を次々放り込み、
地下に潜む日本兵を焼き殺し、日本軍の司令官を自決(切腹)に追い込み、
米軍はついに前田高地の日本軍陣地を陥落させます。
この展開だと、デズモンドが地下トンネルの存在を上官にチクった感じで、
彼のせいで多くの日本兵が焼き殺されてしまったような印象を受けました。
これでも第六戒が守られたと言えるのかどうか…。

戦争に勝利し帰国したデズモンドは、後に良心的兵役拒否者として初めて
名誉勲章を授与されることになり、それが快挙のように描かれているが、
基本的に良心的兵役拒否者は兵役を拒否しているはずなので、
そもそも分母が少ないだけではないかと思ってしまいます。
意外とセブンスデー・アドベンチスト教会の信者からも異端視扱いされてそう。
エンドロールで自分の功績を嬉々として語る故デズモンド本人を見ると、
やっぱり単なる英雄気取りの俗物だと思ってしまいます。

立場上、全く共感は出来なかった物語でしたが、
それを差し引いても余りあるハードな戦闘シーンで楽しめました。
敬虔なクリスチャンのメル・ギブソンですが、殺人嫌いのデズモンドとは違って
(映画上で)人を殺すのが大好きなんでしょうね。

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LION/ライオン 25年目のただいま
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