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怪物はささやく

今日の気になる映画ニュース。

アメリカでは『ワンダーウーマン』が絶好調のDCEUですが、
ザック・スナイダー監督が『ジャスティス・リーグ』から降板するらしいです。
突然の発表で驚きましたが、私は以前からアメコミが好きすぎるオタクには
万人受けするアメコミ映画は作れないと思っていたため、
スナイダー監督にはDCEUから手を引いてほしいと思っていたので朗報です。
…と言いたいところですが、降板理由がナーバスすぎて喜べません。
なんでも3月に20歳の娘さんが自殺したんだそうで、
今の精神状態では仕事に支障が出るため身を引くのだそうです。
ワーナーは公開延期も提案したそうですが、彼は拒否し、降板を選んだそうな。
きっと待っているファンのことも考えたんじゃないかな?
『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンが引き継ぐそうで、これ以上ない後任です。
まぁ11月公開なのですでにほとんど出来上がってるとは思いますが。
そういえばダグ・リーマン監督も『ジャスティス・リーグ・ダーク』から降板するとか。
こちらは単にスケジュールの都合らしいけど、残念だな…。

今日も映画の感想です。

怪物はささやく
A Monster Calls

2017年6月9日日本公開。

久々に映画館でスペイン映画を観ました。
私は映画館に観に行く作品はハリウッド映画が中心だけど、
今週水曜日の映画がお得なTOHOシネマズデイに観たいハリウッド映画がなく、
ハリウッド・スターも出演しているスペイン映画の本作で手を打ちました。
本作はスペイン映画ですが全編英語で、アメリカでも大々的に公開されるも、
全米ボックスオフィス初登場13位と全く振るわなかったため、
3週目で上映館数が1513館から約42館まで縮小されたとか…。
一気に3.8%にまでダウンしたわけですが、これは史上4番目の下げ率で、
かなり不名誉な記録として映画史に残ってしまいました。
そういう作品というのは駄作と相場が決まってますが、本作は様子が違います。
なにしろスペインのアカデミー賞であるゴヤ賞で監督賞など9部門受賞しており、
なぜアメリカでこれほど受け入れられなかったのか不思議なくらいです。
実際、アメリカでも観た人たちの評価は極めて高いので、
観さえすればアメリカ人でも楽しめる作品のはずなんですが、
やはりハリウッド映画ではないから避けられたのかもしれませんね。
私もTOHOシネマズデイでもなければ観なかったはずなので、
アメリカ人のスペイン映画への偏見をとやかく言える立場ではないですが。

ゴヤ賞のお墨付きを得ている本作ですが、
原作もカーネギー賞を受賞した由緒あるYA小説です。
原作の著者は人気YA作家パトリック・ネスですが、
急逝した女性作家シヴォーン・ダウドの構想を引き継ぎ執筆されたものです。
ダウドは47歳の若さで乳癌で亡くなったそうなのですが、
本作の物語には彼女の死生観も反映されているような気がしました。
そんな彼女のアイディアを出版社を介してネスが引き継ぐわけですが、
それがカーネギー賞受賞して(自身の脚本で)映画化もされるなんて、
彼にとっては棚ボタみたいな感じですよね。
まるで彼の手柄のようになっていることに多少違和感を覚えますが、
たしかに面白い作品だったので、世に出してくれたことは感謝すべきかな。
以下、ネタバレ注意です。

13歳の少年コナーは末期癌の母親と2人暮らし。
妄想と絵を描くのが大好きで、同級生からイジメられている彼は毎晩、
深い穴に落ちかける母親の手を放してしまう悪夢を見続けます。
ある夜12時7分、自室で絵を描いていると、窓から見える教会の庭に生えている
イチイの巨木が巨人にトランスフォームし、こちらへ向かって来ます。
見た目は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のグルート的な木の巨人ですが、
便宜上「怪物」と呼ぶことにします。
怪物は「今度3つの物語を聞かせるからお前が4つ目を話せ」と言います。
その後、コナーは目を覚ますのですが、どうやら怪物は夢のようです。
ところが、母親が新しい科学治療のために入院することになり、
コナーは暫く祖母の家で生活することになるのですが、
祖母が迎えに来た日の夜12時7分に、また怪物が現れるのです。
コナーは祖母が大嫌いなので、怪物に祖母を追い返すように頼みます。
彼がなんで祖母のことを毛嫌いするのかわかりませんが、
祖母を演じるのがシガニー・ウィーバーなので、ちょっと怖そうな婆さんですね。

怪物はコナーの頼みを無視して約束通り1つ目の物語を話し始めます。
昔々、この地域に王国がありましたが、国王は3人の息子を戦争で亡くし、
王妃も病死したため、世継ぎは幼い孫ひとりだけになってしまいます。
孫は成長し立派な王子になった頃、急に若い王妃を娶った国王は、
途端に衰弱し、死んでしまいますが、王子はまだ国王になれる年齢ではなく、
暫くの間、若い王妃が摂政として国を治めることになります。
国民は王妃は国を奪うために国王に毒を盛った魔女に違いないと噂します。
実際に王妃は王子が成人しても王妃の権力を手放したくないと考え、
なんと義理の孫である王子に求婚するのです。
孫に求婚とかちょっと気持ち悪いですが、王妃はたぶん二十歳そこそこで、
むしろそんな小娘を娶ったロリコン国王が気持ち悪いか。
王子は義理の祖母の王妃から逃れるため、恋人の農民の娘と駆け落ちし、
その道中、イチイの巨木(つまり怪物)の下で野宿することにします。
ところが、朝王子が起きると娘は血を流して死んでおり…。
国民は王妃の仕業と考えて、王子と共に蜂起し、城を襲撃します。
イチイの巨木も怪物に変形し軍勢に加わり、城から王妃を摘み出すのですが、
それは王妃が殺されないように逃がしてやるためだったのです。
この物語を聞いたコナーは「なぜ悪い魔女を助けるんだ」と憤りますが、
怪物曰く、王妃は確かに権力に執着する魔女ではあったものの、
実は娘は王妃に罪を擦り付け失脚させるために王子が殺したのでした。
国王も毒殺されたわけではなく、単なる老衰だったみたいです。
そんな人殺しの王子ですが、王座に就くと立派に国を治め、
国民から慕われる素晴らしい国王になったそうな。チャンチャン。
人間の善悪は簡単に区別できないという教訓めいた興味深い物語ですね。
でも私としてはやっぱり私欲のために無関係な娘を殺した王子は
いくら立派な国王になったとしても悪人だと思ってしまいますが。

母親が入院し、祖母の家に預けられたコナーでしたが、
ある夜の12時7分にまた怪物が現れ、2つ目の話をします。
約150年ほど前、この辺りに偏屈な調合師が住んでいました。
調合師は草木から取れる生薬を調合する薬剤師で、腕は確かなのですが
患者に高額の薬代を請求したりと、あまり感心できる人物ではないようです。
そんな折、牧師が調合師の治療法を批判し、ボイコットを呼びかけます。
神の教えに背く西洋医学を重視するなんて変わった牧師ですが、
万能薬を作るために教会の庭のイチイの巨木を伐ろうとする調合師のことが
ウザくて仕方がなかったのかもしれませんね。
牧師の不買運動のせいで調合師は廃業を余儀なくされるのですが、
ある日、牧師の二人の娘が西洋医学ではお手上げな難病を患い、
牧師はイチイの木の伐採と不買運動の撤回を約束して
調合師に助けを乞うのですが、拒否され、娘たちは敢え無く病死します。
更にイチイの木の怪物が、牧師を罰するべく教会を破壊するのです。
この話を聞いたコナーは「罰するなら娘を見殺しにした調合師だろ」と憤るが、
怪物曰く、牧師が信念を捨てたことを許せないとのことで…。
その程度の信念なら最初から調合師を批判するな、と言いたいみたいで、
信念の大切さを説いた教訓でしょうが、面白いけどちょっとピンとこないかも。
ただ単に怪物は自分の伐採を許可されたことに怒ったように思えます。
怪物は教会を破壊する時に、一緒に破壊してみないかとコナーを誘います。
コナーは誘いに乗り、棒切れで教会の窓を割ったり大暴れしますが、
気が付くと祖母の家の居間を滅茶苦茶に破壊していて…。
それを見た祖母は怒りで声も出ないほどに絶望し、泣いてしまい、
祖母が嫌いなコナーも申し訳なくて居た堪れなくなります。
これなら怒られて、叩かれた方が楽ですよね。

コナーはある罪悪感から、自分は罰されるべきだと思っているみたいですが、
母親が末期癌な気の毒な身の上のため、何しても罰されないようです。
そのため同級生にガン飛ばしたりして、わざとイジメられようとしていますが、
ついに同級生に見抜かれ「もうお前は相手にしない」と言われます。
もう暴力は振るわれなくなりましたが、無視されまるで透明人間扱いです。
するとそこに怪物が現れ、3つ目の物語を話し始めます。
あるところに、そこにいるのに誰からも見てもらえない透明人間がいました。
誰からも見られないのは存在しないも同じではないか。
という自分自身の物語を聞いたコナーは逆上し、同級生に殴りかかり、
マウントポジションで病院送りにするほどボコボコにします。
コナーは校長室に呼び出され、普通なら退学だと説教を受けるのですが、
やはり彼の境遇などが鑑みられたのか罰はなしで…。
また罰されないことにガッカリしたコナーですが、今回の騒動で
他の同級生たちからも「ヤバい奴だ」と距離を取られるようになってしまいます。
この3つ目の物語の教訓は、注目されるためにやったことのせいで、
逆に更に孤独になってしまった、ということみたいです。
3つ目の物語がコナー自身のことだったという展開は興味深いですが、
前2つの物語に比べると物語自体が面白くないですね。
3つ目はどんな面白い物語かと期待していたのでちょっと残念でした。

そんな折、母親の受ける新しい科学治療が効果なかったとわかり、
これ以上の治療を断念することになるのです。
つまり近々死ぬことが決定してしまったわけですが、コナーは納得できず、
イチイの巨木まで行き、怪物を呼び出し、「約束が違う」と激怒します。
コナーは怪物が母親を治すために現れたと思っていたみたいですが、
怪物は「お前を癒すために現れたのだ」と言い、
「お前の番だ、4つ目の話を聞かせろ、真実を話せ」と迫ります。
どうやらコナーがいつも見ている例の悪夢について話させたいようで、
突如その場で悪夢が再現され、母親が深い穴に落ちそうになり、
コナーが必死に母の手を掴むが、結局いつも通り手を放してしまい…。
怪物が再度「真実を話せ」と迫ると、コナーは重い口を開き、
「終わらせたかった、待つのが怖くて手を放したんだ」と泣きます。
つまり彼は、母親が治らずいつか死ぬことはわかっていたけど、
死を待つのが辛すぎて、さっさと死んでほしいと思っていたわけですね。
そんな気持ちに罪悪感を持っていて、罰を受けるべきだと思っていたようです。
彼の気持ちはなんとなくわかる気がしますね。
避けられない辛いことが起きるとわかっていたら、なるべく早く済ませて
辛いことを待つ辛さから解放されたいと思うのは人情ですもんね。

この告白が4つ目の物語だったわけですが、
怪物は「手遅れになる前に真実を伝えろ」とコナーを病院に行かせます。
え、今にも死にそうな母親に対して「早く終わらせたかった」なんて言わす気か?
と思ったのですが、コナーは母親に「逝かないで」と抱きつくのです。
病室まで付いてきた怪物もそれを聞いて満足気ですが、
「早く終わらせたい」という気持ちも「死なないでほしい」という気持ちも
どちらもコナーの真実の気持ちだったみたいですね。
人間とはそういう矛盾を抱えた生き物だという教訓でしょう。
思えば前の3つの物語も人間の矛盾についての寓話でしたね。
その夜12時7分、コナーに見守られながら母親は永眠します。
コナーは祖母の家に帰り、自分の部屋になった元母親の部屋で
母親が子供の頃に描いたスケッチブックを見つけます。
そこには母親と思われる少女が怪物と一緒にいる絵が描かれていて…。
怪物の物語はコナーの妄想で生まれたものではなく、母親の創作で、
たぶんもっと幼い頃に母親が話してくれた物語を思い出したのでしょう。
その絵を見た途端に急に涙が堪えられなくなり、不覚にも泣いてしまいました。
悲しいけどなんだか心温まるラストでした。

ただひとつ釈然としないのは、祖父との関係は改善されたものの、
母親が亡くなったのならコナーを引き取るのは祖母ではなく、
カリフォルニアにいる父親であるべきだと思うんですよね。
父親は母親と離婚し、すでに新しい妻子がいるみたいですが、
自分の息子にはちゃんと責任を持つべきだと思います。
コナーも父親が好きで一緒に暮らしたいと思ってるみたいなのに…。

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