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メッセージ

先々週末公開されたケイシー・アフレック主演の
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』がなかなか良かったので、
先週末は兄ベン・アフレック主演の『夜に生きる』を観に行こうかと思いましたが、
調べてみると『夜に生きる』は記録的な失敗作のようなので止めました。
なんでも全米公開時、公開2週目までは2818館で上映されていたのが、
3週目には163館にまで縮小されたらしく、この下げ幅は史上最高だったそうな。
全体の94%にあたる2659館が「客が入らない」と見限ったわけですが、
そんな客が入らないと証明された作品をわざわざ日本公開するとは奇特です。
しかも明らかに『マンチェスター・バイ・ザ・シー』よりも大規模公開だし…。
でもそんな記録的な大失敗作だと逆に観てみたくなるので、
ビデオリリースされたら観てみるつもりです。
原作はエドガー賞受賞作だし、悲惨な記録ほど内容は悪くない気がします。

今日も映画の感想です。

メッセージ
Arrival.jpg

2017年5月19日日本公開。

第89回アカデミー賞の作品賞候補9本のうちの1本だった本作。
候補作の中では最も面白そうだと期待していた作品です。
伝記映画とか黒人映画が多い候補の中、本作はエイリアンSFで、
ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』と並び、最も娯楽性が強そうで、
娯楽映画が好きな私としては一番楽しめるのではないかと期待しました。
ただ、単なるSF映画がアカデミー賞候補になるはずないから、
娯楽性が強そうに見えるけど、実はアート系なのかもという懸念も…。
でもいざ観てみると、やはり娯楽SF映画でかなり楽しめました。
思った通り、既観賞作品賞候補7本の中では最も好きかも。

ただ、あまりに娯楽的すぎて、逆に「なぜこれが候補に?」と思っちゃいました。
たしかに普通のSF映画に比べたら幾分アカデミックな気はしますが、
お高く留まったアカデミー賞会員好みの作品ではないような…。
まぁ監督は『灼熱の魂』のカナダの巨匠ドゥニ・ヴィルヌーヴだし、
主演はアカデミー賞の常連女優エイミー・アダムスなので、
その期待感から候補入りしちゃったのかもしれませんね。
面白いのは間違いないが、絶対受賞しないタイプの作品だと思いました。
あ、でも本作は8部門でノミネートされ、そのうち音響編集賞を受賞しています。
音響が素晴らしかったかどうかは私にはわかりかねますが…。
以下、ネタバレ注意です。

ある日、モンタナ州の荒野に全長約450メートルの巨大な物体が着陸します。
実際は10メートルくらい浮かんでいるから着陸ではないか。
宇宙から到来したその巨大な物体は、予告などを見た一部日本人から
「スナック菓子ばかうけにそっくり」なんて言われていたみたいで、
(私はそんな印象は受けませんでした。ばかうけはもっと薄いし。)
それを受けてヴィルヌーヴ監督が「お察しの通り」と発言したそうですが、
実際は小惑星エウノミアを参考にしたらしいです。(これもあまり似てない。)
日本向けリップサービスだったわけですが、なかなか茶目っ気のある監督です。
その物体は作中では「殻」と呼ばれていますが、殻はモンタナだけではなく、
北海道、シベリア、黒海、オーストラリアなど世界12カ所に計12隻出現します。
せっかく北海道に飛来した殻の映像も1シーンくらい描いてほしかったです。
なんかだだっ広い所ばかりに出現しているように思いましたが、
その場所に飛来した理由は明示されてないものの、
劇中では落雷が少ない場所だからというような推察も出てきます。
だだっ広いところに巨大な物体を立てたら逆に落雷の的になりそうだけど…。
(でもたしかに北海道は落雷が少ないらしいです。)
でもどうやら上海なんかにも出現しているみたいなので、広さは関係ないかも。

殻の出現で「エイリアンが攻めてきた」と国は大混乱。
政府も非常事態宣言を出し、米軍やCIAが殻の調査を始めます。
その調査に呼ばれたのが言語学者ルイーザと理論物理学者イアン。
物理学者が呼ばれるのはわかるが、なぜ言語学者も呼ばれたかと言えば、
どうやら殻にはエイリアン2人が搭乗しており、未知の言葉を話しているみたい。
その言葉を解読させるために言語学の第一人者のルイーザが呼ばれたのです。
政府にとってはエイリアンの目的が侵攻か友好か見極めるのが至上命題で、
なんとしてもエイリアンとコミュニケーションが取りたいみたいです。
私たち観客も、エイリアンの目的が最大の関心事ですよね。

ルイーザとイアンは調査チームと一緒に殻に入ります。
殻は18時間毎に扉が開き、エイリアンと会うこと(セッション)ができます。
内部の酸素が切れるので、一度に2時間しか滞在できないみたいです。
調査チームは細菌対策の予防接種を受け、防護服を着て殻に入るが、
未知の物質内の未知の細菌の対策なんて予防接種で何とかなるのかな?
それに放射能を防ぐ防護服じゃなくて、宇宙服くらい着るべきだと思うけどな。
まぁ後にルイーズは殻の中で防護服を脱ぐも、結局何も害はないようだけど。
エイリアンのいる部屋は透明の壁で仕切られており、中には白い霧が充満。
調査チームは壁越しにエイリアンとセッションすることができるのです。
エイリアンの姿ですが、H・G・ウェルズが創作した火星人のようなタコ型。
逆にベタすぎて避けられがちなデザインなので意外でした。
タコとは違って足が7本なので米軍から「ヘプタポッド(7本足の意)」と名付けられ、
ルイーザが一匹を「アボット」、もう一匹を「コステロ」と名付けます。
どうやら「アボットとコステロ」というお笑いコンビが元ネタみたいですね。
勝手に名前(しかも芸人の)付けるなんて、けっこう失礼なことだと思うが、
敵か友かもわからない微妙な相手にそんなことしちゃダメでしょ。
私ももし宇宙旅行して異星人から「四本足」とか呼ばれたらムッとしちゃうかも。

「直接話さないと言葉を解読できない」と言っていたルイーザでしたが、
初めてのセッションで得た成果はゼロで、「会話は無理」と諦めます。
そこで2度目のセッションでは「視覚言語を試そう」とホワイトボードを持ち込み、
筆談してみることにするのです。まぁ常套手段ですね。
ルイーザが「HUMAN」と書かれたホワイトボードを見せると、
ヘプタポッドは腕から蛸墨のようなモヤモヤを出し、
空中に彼らの文字と思われる円のような形を描きます。
どうも彼らの文字はひとつの形が意味を表す表意文字のようです。
ただこの時点でその円が「HUMAN」を表しているかは知る由もないわけで、
ここからヘプタポットに英語の単語をひとつひとつ教え、文法も教え、
彼らの文字の意味もひとつひとつを解読しなくてはいけないわけで、
「地球に来た目的は?」と尋ねられるまでにはかなり時間がかかりそう。
米軍ウェーバー大佐から「悠長すぎるのではないか」と言われてしまいます。
なんでも殻が出現したいくつかの国はこの宇宙人を敵視しており、
今にも攻撃が始まりそうな状態だとか。
どこかが攻撃したら地球全体が宣戦布告したも同じですからね。
そして攻撃を目論む国の急先鋒は、やはり中国のようです。
「対話よりも武力行使」というのは如何にも中国らしい発想ですが、
今の北朝鮮問題とか見てたら、むしろアメリカの方が先に攻撃しそうです。
描かれてない日本政府の対応も気になりますが、どうせアメリカ追従で、
単独ではセッションすらしてなさそうな気がしますね。

1カ月ほど経ち、ヘプタポッドの文字の解読もそこそこ進みますが、
どこかの国からか、ヘプタポッドの姿を写した画像が流出、拡散し、
アメリカ国内でも「呑気すぎる、軍事力で警告しろ」という世論が高まり…。
たしかに見た目は知性もなさそうなタコのバケモノなので、
「こんなものと対話できるのか?」と国民が不安に感じるのも当然か。
意外にも中国はまだ軍事行動を起こしていませんが、
その間なぜかセッションでヘプタポッドに麻雀を教えていたみたいです。
たしかに私も麻雀はコミュニケーションツールとして優秀だと思いますが、
ルイーザは「ゲームとはいえ対戦を仕掛けるのはマズい」と考え、
焦った彼女は解読作業を早め、36回目のセッションで、
「地球に来た目的は?」と核心に迫る質問を投げかけます。
ヘプタポッドの返答の文字を解読すると「武器を提供」と…。
これだけなぜ武器を提供してくれるのかは意図が全くわかりませんが、
多くの国が「武器を与え人類を対立させるつもりではないか」と解釈します。
たしかに一部の国に未知の大量破壊兵器でも与えられたら戦争になるね。
それまで宇宙人の情報を共有していた各国の協力関係も解消され、
中国人民解放軍のシャン上将は「この宇宙人は信用できない」
「国連で対策を」と世界に呼びかけ、ロシアなどが同調します。
ルイーズは「武器と道具が区別できてないだけではないか」と主張しますが、
自分で「武器」と訳しておいて今更あとの祭りですよね。

ルイーズとイアンは次のセッションで「武器を提供」の真意を訪ねるが、
ヘプタポッドは大量かつ複雑な文字を壁一面に描き…。
しかしその後、米軍の独断で殻に仕掛けられたC4爆弾が爆発し、
殻は上空800メートルまで浮上し、それが最後の文字になります。
まさかというかやはりというか、結局アメリカが真っ先に攻撃しましたね。
C4爆弾程度で倒せるはずないのに、やるならやるで核くらい用意しないと。
そのせいでおそらく世界中の12隻全てが上空に退避したみたいで、
反撃を恐れた中国は「撤退しなければ撃ち落とす」と宣戦布告。
続いてパキスタン、ロシア、スーダンも宣戦布告します。
さすが核保有国は強気ですね。(スーダンは違うか。)
物理学者イアンはヘプタポッドの最後の文字の解読作業をし、
やはり膨大で複雑すぎてほとんど解読できませんでしたが、
「時間」を表す文字が点在していることに気が付き、
「これは光よりも速く移動する方法では?」と推測するのです。
武器とは兵器ではなくワープ理論のことではないかという解釈ですね。
更にその理論は今回与えられた文字だけでは1/12程度しか完成せず、
「これは他11隻が出現した他国と協力しろということでは?」と推測。
今までのセッションでは物理の知識の出る幕はなく、
役立たずだと思ってたイアンですが、ここで急に大活躍ですね。
しかし既に各国はデータを共有し合おうなんて状況ではなく…。
ある国はセッションでヘプタポッドに「多数をひとつに」と言われたそうで、
これは「みんなで協力しろ」という意味にも取れますが、
「多くの国を戦わせてひとつだけ残す」という意味だと解釈されたようです。
やはり少ない語彙で会話すると様々な解釈が出来て危ないですね。

中国らの武力行使を懸念するルイーズがひとりで殻の下まで行くと、
殻からリフトが降りてきて、彼女だけ中に入れてくれます。
いつも壁越しにセッションしていた部屋ではなく、
壁の中に案内され、彼女の前にコステロがやって来ます。
何故だか不明ですが、どうもアボットはもうすぐ死ぬらしく、
彼らにはアボットが死ぬ未来が見えているらしいのです。
もっと遠くの未来も見えており、なんでも彼らは3000年後に
地球人の支援を受けなければならない事態が待ち受けているらしく、
そのために地球人にある道具を与えに来た、と彼女に伝えます。
その道具を与えられた者は時間を超越した認識を得て、
未来が見えるようになるのですが、その道具こそが彼らの文字だったのです。
以前「外国語を学ぶと考えが変わる、思考は話す言語で形成されるから」と
イアンが言っていましたが、ヘクタポッドの言語を学んだルイーザにも
彼らの時間を超越した思考が形成されたわけですね。
その兆候はすでに出始めていて、時折彼女が思い出す娘の記憶は
昔の出来事ではなく、これから起こる将来の記憶だったのです。
私もルイーザの娘を思い出すシーンはフラッシュバックだと思い込んでましたが、
実はフラッシュフォワードだったという大どんでん返しで「やられた」と思ったけど、
本作冒頭の導入シーンからルイーザと娘の回想が使われていたので、
まだヘクタポッドも出現しておらず、彼女も当然未来も見えないはずの冒頭で、
そんなシーンを見せられたら過去の出来事だと判断するのは当然で
構成的にちょっと卑怯じゃないかなとも思ってしまいます。
あと、筆談を提案したのはヘクタポッド側ではなくルイーズなので、
彼らに端から文字を贈る気があったのかというのもちょっと疑問です。

未来が見えるようになったルイーザは、攻撃派の急先鋒シャン上将に電話。
彼を説得して中国を武将解除させ、殻への攻撃を回避するのです。
どうも未来を見て、一年半後に上将から直接教えてもらったプライベートなネタで
説得したみたいですが、これは一年半後に上将と親しくないと教えてもらえず、
つまりここで上将を説得できてないと無理だったわけです。
説得に成功し攻撃回避した未来を見たことで説得に成功し攻撃回避できたという
タイムパラドックスで、なかなか興味深い展開です。
裏を返せば、一年半後のルイーザは上将に教えてもらうまでもなく
ネタを既にしていたということになるので、けっこう矛盾も感じてしまうけど、
矛盾はタイムパラドックスを楽しむスパイスですからね。
件のことからも見えるのは確定された未来であり、改変は不可能。
例え嫌な未来が見えても回避する選択は出来ません。
ルイーザも今後イアンと結婚し、娘を生むことになりますが、
娘は難病で若くして他界する将来が見えいるけど、それを回避できません。
イアンにも娘が死ぬ未来を話してしまい、離婚することになりますが、
それでも彼女はイアンに未来の話をしない道を選べないのです。
一見、未来を見る能力なんて素晴らしい贈り物のようですが、
確定した未来に従って生きなければならないわけで、地獄ですよね。
ただその感覚が普通なヘクタポッドと同じ感覚を得たルイーザにとっては、
そんなに辛いことではないのかもしれません。

中国の融和により、各国も再び情報共有をはじめ、「多数がひとつに」が実現。
それを見届けたかのようにヘクタポッドを乗せた殻は地球を去ります。
飛び去るのではなく、雲散霧消するように姿を消します。
ルイーザがあと3000年も生きられるわけじゃないだろうに、
彼女にだけ文字を教えて帰って大丈夫だろうかと思いましたが、
彼らにも3000年後に未来が見えるようになった地球人が
自分たちを支援してくれるという確定した未来は見えているはずなので、
これで大丈夫なんでしょうね。
ルイーザもヘクタポッド言語の研究の著書を出すことになるみたいなので、
(彼女自身、未来の自分の著書で言語を理解したみたいです。)
後世それで文字を学び、彼女と同じ能力を得る人もいて、
その人たちが3000年後にヘクタポッドを支援するのかもしれませんね。
どんな支援なのか気になるところですが、地球に移住でもするのかな?
移住先で自分たちの言語が通じると便利だから前もって教えてくれたのかも?

まだ『ハクソー・リッジ』と『ドリーム』が日本公開されてないので、
なんとも言えないところではありますが、たぶん全部観終わっても、
アカデミー作品賞候補の中で本作が一番面白かったことに変わりはなさそう。
これで音響編集賞一冠だなんて、明らかに過小評価だと思います。
『ムーンライト』が合わなかった人にこそ観てほしい作品です。

関連作の感想
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LION/ライオン 25年目のただいま
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