ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

フェンス

ゴールデンウィーク中は更新が止まってしまいましたが、
遊びまくっていたからではなく、その逆で、ずっと苦しんでいました。
何年分もの不幸と不運がこの数日に一気に襲ってきた感じで、
映画を鑑賞したりブログ更新したりする余裕なんてないほど辛い日々で…。
今もその状況からまだ脱したとは言えないけど、
少しでも元の精神状態に戻れるように、更新を再開します。
まだ映画は観に行ける心境ではないので、前に配信で観た映画の感想です。

フェンス
Fences.jpg

2017年6月7日リリース。

第89回アカデミー賞で作品賞含む4部門でノミネートされ、
見事に助演女優賞オスカーを受賞した本作ですが、
なんと日本では劇場公開されませんでした。
これにはちょっと驚いてしまいましたね。
ノミネート止まりなら日本では劇場公開されない例も稀ながらあるが、
助演女優賞のオスカー作品がビデオスルーになったのは
21世紀に入ってから初めてのことです。
…というか、私の知る限り初めてのことです。
近年、日本では洋画に客が入らないため、洋画冷遇の傾向が強まってますが、
まさかオスカー作品まで劇場公開を見送られるほどになるとは世も末です。
しかも主演は日本での人気のある俳優デンゼル・ワシントンです。
彼の主演作がビデオスルーになったなんて例も記憶にありませんが、
オスカー受賞作、人気俳優主演作という大きな売りがあるにも関わらず
劇場公開を見送られてしまうなんて、逆に興味が沸きます。

ハリウッド映画ファンとしてオスカー作品は観ないわけにはいかず、
普段はあまり利用しないネット配信で本作を鑑賞しましたが、
たしかに劇場公開を見送りたくなる気持ちもわかる作品です。
とにかく地味な黒人映画で、これでは日本で集客できるとは思えません。
アメリカでもアカデミー賞ノミネート効果を受けても最高6位止まりでした。
舞台は主人公の自宅とその庭先がほとんどで画変わりが少なく、
登場人物もほぼ主人公の家族と友人ひとりだけで、
とにかく主人公が喋って喋って喋り倒す会話劇になっています。
それもそのはず、本作は舞台劇を映画化したもののようです。
原作は1987年にトニー賞を受賞した傑作舞台らしいのですが、
本当にそのまま映画化してしまったみたいです。
舞台には舞台の、映画には映画の見せ方があると思うのですが、
せっかく映画にするなら映画という媒体に合わせてシネマタイズするべき。
舞台劇をただ撮影しただけでは地味になるのも当然です。
主人公の異様な長セリフも一発勝負の舞台なら感心も出来るけど
何度も撮り返せる映画ではそれほど凄いとも思えないしね。
以下、ネタバレ注意です。

本作の内容を簡単に言えば、ある黒人一家の家族問題です。
この家族は極度の家父長主義で、父トロイの言うことは絶対。
高校生の次男コリーにはアメフトの才能があって、
大学からもスカウトが来ているのですが、トロイは強硬に反対し、
「アメフトなんかじゃ飯は食えん、手に職を付けろ」と押し付けるのです。
普通なら大学にスポーツ奨学金で入学できるなんて有難い話で、
むしろ喜んで送り出してやればよさそうなものですが、
本作の舞台は1950年代のピッツバーグで、まだまだ人種差別が根強い時期。
トロイももともと野球選手でニグロリーグで強打者として活躍しながらも、
人種差別のせいで大リーグには入れなかったことを悔やんでおり、
「スポーツ界で黒人は成功できない」という先入観があり、
息子がアメフト選手になって自分のように挫折してほしくないと思ったようです。
その気持ちはわからないでもないけど、彼の選手時代は更に十数年前で、
50年代には公民権運動も盛んになり、ジャッキー・ロビンソンなど
黒人メジャーリーガーも現れ出した頃で、トロイは少し時代錯誤ですね。
もちろんNFLも黒人選手を取っています。
そもそもプロになるかどうかは別として、自分と同じ道を歩ませたくないなら、
大学に行かせるべきだと思うが、学歴よりも手に職を重視してるようで…。
でも部活やめさせてスーパーでバイトさせても手に職は付かないと思うけど。
結局強制的に部活を辞めさせられたコリーは、家を出て海兵隊に志願します。

トロイの被差別意識はかなり強く、始終愚痴をこぼしています。
たしかに実際に人種差別は根強いものがあるし、気の毒ではありますが、
正直、彼に人種差別を批判する権利はないと思ってしまうんですよね。
トロイの弟ゲイブは太平洋戦争で頭を負傷し、知的障碍者になっており、
それも気の毒なことだと思いますが、彼はそんな弟の負傷のことを語る時に、
「ジャップと戦って脳みそが吹き飛んだんだ」と言うのです。
日本人をジャップなんて差別的蔑称で呼ぶレイシストが、
自分への差別を嘆いたところで憐れむ気にもなりませんよ。
アジア人は差別する輩に黒人差別を批判する権利なんてなく、
トロイの被差別意識は単なる被害妄想だと思ってしまうのです。
いや、実際に次男のスカウトの件にしても被害妄想なところが大きいしね。
それにトロイは清掃局のゴミ収集車で働いていますが、
「積み込み役は黒人、運転手は白人だ」と局長に苦情を言うのだけど、
なんと局長はあっさり彼を運転手にしてくれるのです。
彼が思ってるほど黒人差別は強くないのかもしれません。
てか、トロイは運転手になったのに運転免許も持ってないんですよね。
清掃局も「黒人は運転免許の取得率が低い」と思っているから
白人を運転手に起用するだけじゃないかとも思ってしまいますが、
運転免許の持ってないくせに何が「手に職」だ、と思ってしまいます。

なお、弟ゲイブの見舞金3000ドルもトロイが使い込み、
更に年金目当てで弟を障碍者施設に強制的に入院させたみたいで、
かなり金に汚い下衆野郎だと思ってしまいましたが、更に女癖も悪く…。
連れ添って18年の献身的な妻ローズがいながら、
余所に若い愛人アルバータを作って、足繁く通っているみたいです。
親友ボノからも度々注意されるのですが全く聞きません。
そしてなんと愛人に子供まで孕ましてしまい、仕方なく妻に告白。
しかし謝るというよりも釈明する感じで、妻も当然納得できませんが、
むしろ聞き分けのない妻が悪いとでも言いたげな感じです。
妻ローズは「親の違う家族だけは作りたくなかった」と言うのですが、
結婚して18年だけど、34歳の長男ライオンズは既に腹違いの息子では?
結局、お産の時に愛人アルバータが死に、生まれたばかりの娘を
ローズは我が子として育てることにするのですが、本当に献身的な奥さんで、
助演女優賞オスカーも納得ですね。

そんな女癖の悪いトロイですが、彼の父親はもっと酷かったみたいで、
なんと彼が14歳の時に13歳の恋人を父親がレイプしたらしいのです。
彼はそんな父と縁を切るために14歳で家を出たみたいですが、
やはりカエルの子はカエルか、彼も強盗殺人事件を起こして15年間服役。
刑務所で野球を覚えて出所後ニグロリーグに入ったみたいですが、
つまりプロになったのは早くて30歳ってことか?
それでは人種差別云々以前に大リーグなんて無理だろ。
彼の長男ライオンズもミュージシャンになる夢を捨てきれずに
34歳まで無職のようですが、次男コリーと違って甘やかしすぎだろ。
結局長男は他人の小切手を現金化して懲役刑に…。
親子三代犯罪者、これでは黒人が差別されるのも無理ないです。

ただそんな元犯罪者トロイと勘当同然で家を出た次男コリーは
海兵隊で伍長になり、立派な男になりました。
これで夢を潰したクソ親父も見返せるというものですが、
残念ながら6年後にコリーが里帰りしたのは父の葬式の時で…。
コリーは最後の抵抗に「葬式には出席しない」と母ローズに言うが、
「父さんが正しいとは言わないが、悪意より善意が優っていた」と説得され、
腹違いの幼い妹にも励まされ考え直し、おしまいおしまい。

映画と言う媒体には合わない舞台劇で微妙だと思いましたが、
ホワイト・オスカー批判の追い風を受けて評価されてしまったのでしょう。
単なる演技合戦という感じで、たいして面白くもない物語でしたが、
こんなクソ親父役のデンゼル・ワシントンは珍しい気がするので、
そこだけは少し見物だったかな。

関連作の感想
最後の追跡
ラ・ラ・ランド
ムーンライト
LION/ライオン 25年目のただいま

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1814-709e53c0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad