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グレートウォール

一年二カ月ぶりに3D映画を観る破目になりました。
私は映画を3Dで観ることに割増料金に値する価値はないと思っているので、
必ず2D版を選択することにしているのですが、たまに2D版がない作品が…。
今日感想を書く映画もそうで、梅田、なんば、伊丹、西宮、
近隣全てのTOHOシネマズで3D版、或はMX4D版での上映しかやっておらず…。
たまたま公開日が割引のあるTOHOシネマズ・デイだったので、
3D割り増し分を多少相殺できたため、観に行く決心をしましたが、
そうでもなかったらビデオリリースまで待ってたと思います。
ちゃんと客のニーズを汲んで2D版も上映してくれと思いますが、
おそらく本作は客入りが見込めないため単価をあげようとしたのでしょう。
つまりはその程度の出来の作品だということです。
間違っても割り増しがボッタクリなMX4D版で観てはいけません。
いや、2D版でも観る価値があるかどうか微妙です。

ということで、今日はマット・デイモン主演の3D映画の感想です。
そういえば一年二カ月前に観た3D映画もマット・デイモン主演だったな…。

グレートウォール
The Great Wall

2017年4月14日日本公開。

『ダークナイト』や『パシフィック・リム』、ハリウッド版『GODZILLA』を製作した
レジェンダリー・ピクチャーズの最新作です。
上記のフィルモグラフィーでもわかるように、レジェンダリーは非常に有望な
ハリウッドの映画製作会社ですが、昨年『ジュラシック・ワールド』公開後に
中国のワンダグループ(大連万達集団)に買収されてしまいました。
なのでそこで製作される映画も中国人向けになるのは必然で、
初の完全中国人向け作品が本作ということになるでしょう。
ワンダはわざわざ人気ハリウッド俳優マット・デイモンを主演に据えて、
あくまでハリウッド映画として売り出していますが、
アメリカではもはや中国映画として認識されているみたいです。
なので全米ボックスオフィスも超大作にも関わらず初登場3位と低迷し、
1億5000万ドルの製作費に対し、たったの4500万ドルしか稼げませんでした。
一方、中国では全米興収の約4倍稼ぐ大ヒットを記録しています。
中国人向けの中国映画なので当然の結果ですね。
アメリカでは本作は「製作費史上最高額の中国映画」と言われてますが、
これはたぶん皮肉なのでしょう。
アメリカ人のレジェンダリーが中国に乗っ取られたことへの憤りは
たかがハリウッド映画ファンの日本人の私の非ではないだろうし…。

面白いのは本作に対して中国人も憤っているということです。
宋王朝時代の万里の長城を舞台にした歴史フィクションなのに、
なぜ主人公が中国人ではなく白人なのか、という批判が強いようです。
そんなもの、中国人俳優主演だったら世界で売れないからに決まってるだろ。
(上のポスター画像はアメリカのものですが、デイモンのワンショットだし。)
日本人だったら『攻殻機動隊』の草薙少佐をスカヨハが演じていても、
「日本の漫画をハリウッド映画化してくれただけでも有難い」てなものなのに、
中華思想(漢民族中心主義)丸出しの批判ですね。
『カンフーパンダ』なんかも「我々のパンダを勝手に使うな」って言ってたし、
これだからハリウッドは中国に迎合するだけ損なんですよ。
さすがは万里の長城を作った漢民族だけあって排他的です。
マット・デイモンも良かれと思って出演しただろうに、
まさか叩かれるとは思ってなかったでしょうね。
まぁ実際に世界では全くヒットしなかったわけだし、
中国国内だけで製作費回収できてるんだから、いっそ中国人を主演にして、
国内だけで消費してくれてた方がよかったかもしれませんね。

本作が中国以外でヒットしなかったのは、中国人向けであることや、
レジェンダリー買収の憤りだけが原因ではなく、単純に駄作だからです。
中国にとっては世界に誇れる数少ないもののひとつが万里の長城なのに、
それを題材にした映画が、こんなB級モンスター映画に仕上げられたら、
もし私が中国人だったら激怒しそうなくらいです。
言ってしまえば壁を万里の長城に置き換えただけの中国版『進撃の巨人』。
実際に『進撃の巨人』の影響も散見される内容だったと思います。
日本の実写版『進撃の巨人』よりかは幾分マシなのが悲しいですが…。
こんな単なる壁ではなく、もっと万里の長城の歴史的意義や文化的価値を
活かしたストーリーにするべきだったと思います。
本作を観ても万里の長城が作られた本当の理由など描かれてないし、
自国の歴史を世界に知ってもらういい機会なのに勿体ないです。
これで万里の長城に興味を持った人が観光に来てくれるかもしれなのに、
本作を観て実物を見てみたい、中国旅行に行こう、なんて思う人はいません。
まぁそもそも本作はほぼ全編中国で撮られているらしいけど、
実物の万里の長城でのロケは拒否されたそうです。
世界遺産がクソ映画の撮影でボロボロにされたら困るし賢明な判断です。
以下、ネタバレ注意です。

舞台は宋王朝時代です。
万里の長城は秦の時代以前、紀元前から存在するのが驚異的な建造物だから、
もっと昔の物語にした方がよさそうなのに、なぜ宋王朝を舞台に選んだのか…。
(宋王朝は10世紀~13世紀の国で、日本だと平安時代です。)
ウィリアムら傭兵団は、貴重な黒色火薬を求めて万里の長城の北まで訪れます。
ウィリアムはたぶん英国人ですが、仲間のトバールはヒスパニックぽいし、
他にもアラブ人なんかもいるみたいで国際色豊かな傭兵団です。
そこで野宿中、得体の知れない怪物に襲われ、剣を振り回して、
怪物の腕を斬り落として撃退するも、生き残ったのはウィリアムとトバールだけ。
翌朝、今度は馬賊(契丹族?)に見つかったため、2人は南に向かって逃げ、
宋王朝の禁軍が防衛している万里の長城に辿り着くのです。
2人は馬賊に捕まるよりマシだと、禁軍に投降し長城の中に入れてもらいます。

禁軍は60年に一度、北に現れる怪物「饕餮(トウテツ)」が都に侵入しないように
長城で食い止める任務を負った宋王朝の軍隊です。
野宿中にウィリアムらを襲った怪物が饕餮の斥候だったみたいで、
彼らが饕餮に遭遇したと聞いて、禁軍に緊張が走ります。
その直後、饕餮の大群が長城に押し寄せてくるのです。
饕餮は中国神話の怪物で、何でも食らう食いしん坊妖怪です。
RPG『女神転生』のモンスターとして採用されていたので少し知ってましたが、
ゲーム内では羊っぽい姿だったけど、本作の饕餮は蛙と猪を合わせたような
不格好な姿をしていて、正直あまり魅力的な怪物ではないです。
自国の妖怪なんだからもっとカッコよく描いたらいいのにと思いますが、
自国に進攻しようとする外敵のメタファーだから不細工なのか。
禁軍のワン軍師によれば、饕餮は約2000年前にナントカ山に落ちた
緑の隕石から生まれた地球外生命体らしいです。
約20世紀の間、60年に一度ということは、もう30回以上現れているのか。
けっこう頻繁に起こる厄災ですね。

シャオ将軍率いる禁軍は、攻城兵器部隊の虎軍、射手部隊の鷹軍、
歩兵部隊の熊軍、騎馬部隊の鹿軍、女性部隊の鶴軍の5部隊から構成され、
それぞれ黄、赤、紫、黒、青揃えの鎧を着ています。
5部隊の隊長が並んだところなんて、まるでゴレンジャーのようです。
それにしても他の4部隊の役割は明確ですが、鶴軍の女性部隊って何?
なぜここだけ性別で分けられてるんだ?と思ったら、
女性ならではの軽さを活かしたアクロバティックな戦術を取る部隊です。
槍を持って長城の上からバンジージャンプして、長城の下まで迫った饕餮を
槍で突き刺すというのが彼女たちの戦い方ですが、それって有効なのか?
普通に長城の上から槍だけ落とした方が安全じゃないかと思うんですよ。
実際、落ちてきたところを饕餮に咬みつかれて、何人も死んでるし…。
たぶんこの戦い方は『進撃の巨人』の立体起動装置を参考にしてそうです。
槍が使い捨てで一撃ずつ持ち帰るのも、スナップブレードの真似でしょう。

長城に連れて来られたウィリアムとトバールは、
外壁を這い上がっってきた饕餮と戦います。
トバールがマタドールのように赤い布で注意を惹いて、
ウィリアムが弓矢で射殺すという連係プレーで饕餮を殺します。
ウィリアムは本職は泥棒なのに、なぜかロビン・フッド並みの弓の名手で、
鷹軍の弩(クロスボウ)を解体して昔ながらの短弓にして使います。
弩のまま使った方が威力はあるはずだけど連射が難しいですもんね。
ウィリアムが饕餮を殺した途端、饕餮の女王が急に撤退を指示します。
なぜ優勢だったのにこのタイミングで撤退し始めるのか謎ですが、
もっと謎なのは退却する饕餮たちが戦死した仲間の遺体を持ち帰ることです。
饕餮には仲間の死を悼むような気持でもあるのかな?
この一件でウィリアムは禁軍から英雄として迎えられることになります。

そんなウィリアムらに禁軍で英語を教える白人バラード師が接近します。
彼も25年前に黒色火薬を求めて中国に来て禁軍に捕まったそうです。
禁軍は60年に一度現れる饕餮と戦うための軍隊なはずなのに、
なぜ何の仕事もない25年前にも活動してるのか謎ですね。
バラードは2人を禁軍の武器庫から黒色火薬を盗む計画に誘います。
饕餮が襲撃してきたら武器庫の番兵たちも戦場に駆り出されるので、
その隙に火薬や武器を盗んで逃走し故郷に帰ろうと提案し、2人も同意します。
その夜、長城の西塔に一匹の饕餮(斥候?)が現れ、
部隊を率いて駆け付けたシャオ将軍の右腕を食い千切ります。
シャオ将軍は死に際、将軍職を鶴軍のリン隊長に譲るのです。
リンは禁軍の生え抜きだけど、意味不明なバンジージャンプ部隊の女隊長だし、
まだまだ若輩者なのに、もっと指揮官に相応しい人材はいなかったものか…。
他の4部隊の隊長も顔で選ばれたような優男ばかりだったけど、
最も切れ者そうなワン軍師を指揮官にしたらいいのにと思いました。

ある時、都から皇帝の特使が古い文献を持って長城へやって来ます。
その文献は900年前に饕餮が現れた際の戦記でしたが、
そこに饕餮がなぜか磁石に弱いと読み取れる記述があり…。
そんな重要な事に900年間も気付かなかったなんて、
禁軍は60年間も体ばかり鍛えて過去から何も学ばない脳筋ばかりなのか…。
饕餮を一匹捕まえて実験してみようということになりますが、
どうやって捕まえればいいか悩む禁軍に、ウィリアムは捕鯨方法を教えます。
眠り薬を塗った銛を撃ち込んで捕獲しようという案ですが、
そんなことしなくても、戦場に磁石持って行って実戦で試せばいいような…。
弓矢でも死ぬ饕餮に銛なんて撃ち込んだら捕まえる前に死にそうだし、
捕まえるだけなら落とし穴とか原始的な方法でも出来そうな気がします。
そもそも饕餮に効く眠り薬なんて作れるなら磁石も要らないだろ。

タイムリーにも、すぐに饕餮の大群が攻めてきます。
今回は濃霧の中での戦闘になるのですが、たぶん手抜きのための霧だな。
捕鯨を提案したウィリアムも流れで饕餮捕獲を手伝うことになりますが、
そのためバラードの武器庫襲撃計画に参加できず、計画はお流れに…。
ウィリアムは後でトバールに「英雄気取りか!」と怒られてしまいます。
結局、饕餮は鯨と違って腕があるので、銛が刺さっても自分で抜けますが、
銛の先端に塗った眠り薬が効いて熟睡した一匹を捕獲できます。
それなら別に弓矢の鏃に眠り薬塗って射た方が簡単だし安全な気が…。
捕獲した饕餮は磁石付きの檻に閉じ込めて無力化し、
特使が都に持ち帰り、時の皇帝、仁宗に献上されます。
饕餮対策のために禁軍に預けて研究させるべきだと思いましたが、
ワン軍師以外脳筋の禁軍に研究なんて出来るはずもないか。

今度は深夜に饕餮の大群が攻めてきます。
闇に乗じるのも単に手抜きが目的でしょうね。
ウィリアムはやっぱり禁軍と共に戦うが、バラードとトバールは、
もう裏切り者ウィリアムのことは無視して武器庫襲撃計画を実行。
ウィリアムも遅れて武器庫に駆け付けますが、計画に参加するかと思いきや、
盗みを思い留まるように説得を試みるのです。
英雄扱いされても所詮は捕虜のくせに、なぜ禁軍の肩を持つのか。
リン新将軍に惚れているのか、それともストックホルム症候群なのか、
まるでバラードたちが悪人のように描かれていますが、
私もウィリアムの方が正気じゃないと思ってしまいます。
バラードとトバールはウィリアムの説得を無視し、火薬をごっそり盗み、
長城の北に逃げますが、バラードが抜け駆けし、全ての火薬を持って逃走。
ところが彼は馬賊に捕まり、火薬で火遊びした馬賊と共に爆死します。
馬賊、頭悪すぎて饕餮より性質悪いですね。
後にトバールも禁軍に再び捕まったみたいです。

これまでの饕餮の襲撃は陽動で、饕餮たちは密かにトンネルを掘っていて、
禁軍が気付いた時には女王率いる饕餮本隊はすでに地下から長城を突破し、
長城の南に位置する都に攻め寄せていました。
リン新将軍は馬でも追いつけないので、熱気球で追うことにします。
しかし熱気球が発明されるのはずっと後の話なので、
彼らの使う熱気球はスカイランタンを人間が乗れるくらい巨大化したもので、
とても実用化できない不安定な代物で、多くは離陸後すぐに炎上、墜落します。
自滅するのはリアルですが、やっぱり禁軍てアホだなと思っちゃいますね。
リンの乗った熱気球はなんとかうまく飛び、饕餮を追いかけて都へ。
リンに助力しようと、ウィリアムも熱気球で後を追います。
都上空でリンの熱気球が炎上、饕餮の大群のど真ん中に落下してしまい、
彼女は槍一本で饕餮との戦いを強いられるのですが、
急に『HERO』のようなワイヤーアクションで立ち回り、
少し唖然として、その人間離れした動きにどっちが怪物だよとも思ったけど、
この手のアクションは中国映画らしくて悪くないとも思いました。
そうか、本作の監督はチャン・イ-モウでしたね。
遅れてきたウィリアムが熱気球からリンを吊り上げて救出します。

都は饕餮に蹂躙され、禁軍も熱気球でほぼ自滅したので多勢に無勢で、
もう勝ち目はない状況ですが、女王を殺して一発逆転を狙うことに。
饕餮は腹一杯になると、女王のもとに戻る習性があるため、
前に捕獲した饕餮に大量の爆薬を巻き付けて、餌を与えて解放し、
女王のもとに戻ったところに種火を撃ち込んで爆殺します。
女王が死ぬと全ての饕餮が固まったように動かなくなり、戦いに勝利します。
勝利に貢献したウィリアムは褒美として黒色火薬かトバールか選ばされ、
トバールを選択して帰国し、めでたしめでたしです。
てっきりリンと別れのキスのひとつでもするかと思ったけど、
本作にそんなロマンスは一切ありませんでしたね。
ただでさえ白人主人公として中国人から疎まれてるのに、
中国人ヒロインにまで手を出すような展開は避けられて当然かな。
今回は饕餮の侵略を阻止できたが、また60年後に更に進化して
更に賢くなった饕餮がまた現れるはずですが、
もう長城も攻略されちゃってるし、次は勝てるのか?
まぁ饕餮の弱点は確定したし、磁石を沢山用意しておけば楽勝か。

マット・デイモンにとってはキャリア最大の汚点になり得る本作ですが、
人柱となり中国映画に主演することのリスクを知らしめた功績は大きいです。
過去には『ダークナイト』で人気絶頂だったクリスチャン・ベールが
やはりチャン・イーモウ監督の中国映画『金陵十三釵』に主演した途端に
落ち目になりましたが、ハリウッド俳優の中国映画出演は鬼門です。
ワンダ買収前の人気作『GODZILLA』の関連作『キングコング』は別として、
買収後の一作目『ウォークラフト』も中国でしかヒットしませんでしたが、
このままレジェンダリー作品が落ちぶれていくのはいい気味です。
でもレジェンダリーは『GODZILLA』はもちろん、『パシフィック・リム』など
私の好きなシリーズを抱えているので、没落を手放しには喜べず…。
ただ菊地凛子がヒロインだった『パシフィック・リム』の続編も
ワンダのゴリ押しで本作のリン隊長ことジン・ティエンがヒロインになり、
かなり中国贔屓な内容になるらしいので、たぶんヒットしないだろうし、
優良シリーズが中華風に味付けされて不味くなってしまう前に、
ワンダがレジェンダリーを手放してくれることを切に祈ります。
そのためにはレジェンダリー作品には軒並みコケてもらう必要があるので、
頑張って駄作を量産してください。

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