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ゴースト・イン・ザ・シェル

今日の気になる映画ニュース。

現地時間の昨日、『君の名は。』の北米公開が始まったみたいです。
オスカー候補の条件を得るために、昨年末に公開されたと思っていたけど、
一般公開されるのは昨日からだったみたいです。
上映館数は303館らしくて、これは予想以上の公開規模でした。
まぁハリウッドのメジャー作品はその10倍以上の公開規模ですが、
『シン・ゴジラ』の北米公開時の10倍以上だし、ジブリ映画並みなので、
注目度は思った以上に高いみたいです。
更に嬉しいことに、かなり高評価を受けているみたいで、
某有名批評サイトでの映画批評家の支持率が97%なんだとか。
これはオスカー作品『ムーンライト』と同等の支持率になります。
まぁ私は『ムーンライト』の支持率を不当に高すぎると思っているので、
比較対象としては微妙かもしれませんが…。
日本同様北米でも『Your Name』旋風が吹き荒れる、
というのは期待しすぎだけど、なるべく頑張ってもらいたいです。
世界興収も365億円を越えてるみたいなので、目指せ400億円ですね。

ということで、今日は日本のアニメが原作のハリウッド映画の感想です。
某有名批評サイトの支持率は46%…。

ゴースト・イン・ザ・シェル
Ghost in the Shell

2017年4月7日日本公開。

劇場アニメ化、テレビアニメ化もされている士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を
ハリウッドのドリームワークスが実写映画化した本作。
日本の漫画やアニメがハリウッドで映画化される企画は数多ありますが、
『AKIRA』よろしく、だいたいポシャるので、本作の実写化の話を聞いた時も、
「期待するだけ無駄、どうせ実現はしないだろう」と高を括っていました。
確かに企画段階で少しまごまごしていましたが、2014年に監督が決まり、
主演女優も決まってからは、あれよあれよという間に製作が進んで…。
ただその間は期待の声よりも懸念の声の方が多かった気がします。
そもそも日本原作のハリウッド映画に成功例が少ないのもありますが、
主演女優がスカーレット・ヨハンソンに決まったことに対して、
あちこちで批判が噴出していたような印象があります。

近年のポリコレ意識の高まりにより、ハリウッドの白人至上主義が問題視され、
白人が有色人種を演じるホワイトウォッシングに対しても批判が強くなりました。
そんな中で『攻殻機動隊』のヒロイン草薙素子を演じるのが、
白人女優スカーレット・ヨハンソンだと発表されたのだから、
ポリコレ民に追いかけ回されるのも当然のことです。
この批判に対して(95年の劇場版アニメ監督の)押井守が、
これまでにも多くの俳優が他人種を問題なく演じてきた指摘し、
「こういうことは映画世界の慣習なのです」と擁護していますが、
その習慣がホワイトウォッシングと問題になっているのに的外れな擁護です。
ただ一方で「どうせ日本人が演じても草薙素子にはならない」とも言っており、
これは的を射た意見だと思いましたね。
私はそもそもホワイトウォッシングを問題だとは思っておらず、
ハリウッド映画は基本的にアメリカの国産映画なので、主な客はアメリカ人。
商業映画としてアメリカのマジョリティである白人に迎合することは、
政治的に正しくなくても戦略的に正しいと思います。
もしスカヨハよりも集客力がある日本人女優がいれば起用したでしょう。
むしろ私はホワイトウォッシングしてもらって助かったと思っています。
本作の製作には中国の映画会社も入っているのですが、
もしヒロインに中国系女優でも起用されてたら悲惨でしたからね。

私が本作を楽しみにしていたのは事実ですが、
実は原作『攻殻機動隊』のことはほとんど知らないんですよね。
原作漫画も未読だし、押井守の劇場版アニメも観ていません。
ただ洋邦問わずオマージュされている作品なので、
映画ファンの一般教養として、少しでも勉強しておいた方がいいと思って、
2013~14年に劇場上映された中編アニメ『攻殻機動隊ARISE』四部作と、
その続編である長編アニメ『攻殻機動隊 新劇場版』は観に行きました。
でも完全にマニア向けの内容で新参者には難解すぎてついて行けず…。
しかしだからこそハリウッド映画化された本作に対する期待も高まりました。
良くも悪くも儲け第一のハリウッド映画は、ポピュラリティが重視され、
誰でも楽しめるわかり易い内容に仕上がるはずだからです。
実際に観てみると、上記の劇場アニメはついて行けなかった私でも
ちゃんと理解できる、一見さんにも優しい内容になっていると感じました。
ただ原作はその難解さがマニア心を擽りカルト的人気があったわけで、
簡略化された本作に原作ファンは物足りなく感じてしまうのかも。
原作は「ゴースト(魂)の所在」という哲学的で難解なテーマでしたが、
本作は「ヒロインが記憶を取り戻す」という単純明快なテーマなので、
この手のサイコスリラーは多いし、ちょっと薄っぺらく感じるかもしれません。
でも『攻殻機動隊』の入門編としてはピッタリだと思います。

かくいう私ですが、単純明快な内容だったのは歓迎だったけど、
あまりに単純すぎて、中盤で中弛みして少し意識が飛んでしまいました。
劇場アニメの時に難解すぎて意識が飛んだという失敗から、
念のため上映前に眠気覚ましを服用したのですが、退屈で睡魔に負け…。
派手なアクションシーンが売りですが、中盤でドラマシーンが続き、
迂闊にも仕事の疲れが出てしまいました。
でも中盤過ぎのある展開で一気に目が覚め、そこからクライマックスまでは
退屈することもなく非常に楽しめたので、満足感は十分にあります。
ビデオリリースされたら、意識がなかったところも見直してみようかな。
以下、(中盤が曖昧ですが)ネタバレ注意です。

近未来、人類は知性や身体能力を強化するため義体を用いるようになります。
義体技術をリードするハンカ・ロボテクス社は、全身義体「シェル」を開発し、
テロで難民ボートが沈み、死にかけていた少女の脳をシャルに移植し、
彼女ミラ・キリアンが全身義体の人間第一号になります。
脳以外全て機械のサイボーグを人間と呼べるのかは疑問ですが、
脳にゴースト(魂)が宿っているので、ロボット(アンドロイド)とも言えないかな。
ハンカ社のカッター社長の狙いは命令通りにしか動けないロボット兵士ではなく、
人の心を持ち柔軟に動ける機械の兵士を作ることなので、
キリアンは反テロ組織の公安9課に少佐として着任するのです。
このキリアン少佐が原作の草薙素子少佐に相当するわけですが、
ホワイトウォッシングしたのに日本名だと変なので改名したのかな?
…と思いましたが、その理由こそが本作の最大のテーマと言えそうです。
本作はヒロインが何故ホワイトウォッシングされたのかに迫る物語なのです。

少佐が配属された公安9課のメンバーですが、
なんと荒巻課長演じるのは日本の大御所芸人ビートたけしです。
なんかめちゃめちゃ意外な人選ですよね。
映画監督としてフランスから勲章まで授与された彼の知名度は抜群だが、
俳優としてアニメの実写化作品に出るような印象はなかったので…。
しかもハリウッドのメジャー作品に出るのは初めてじゃないのかな?
ハリウッド映画にも関わらず、彼は日本語台詞を貫くんですよね。
ECC外語学院のCMもしてたくらいなので英語も出来ると思うんだけど、
郷に入りても郷に従わないところが、彼らしくて渋いです。
ただ英語台詞の中に入る日本語台詞というのは不思議と聞き取り難く、
更に彼は活舌に難があるので、日本語字幕でフォローしてほしかったかも。
逆に英語字幕で話している内容を理解しているような感じでした。
公安9課の同僚には、原作でお馴染みのバトー、トグサ、サイトーらがいます。
私は唯一全く義体を使用していない完全生身の人間であるトグサが、
最も親近感があり好きでしたが、彼はホワイトウォッシングされてないものの、
残念ながら華人俳優チン・ハンが起用されていて…。
ただサイトー役には泉原豊という日本人俳優が起用されています。
あと主要メンバーとしてラドリヤという女性がいるのですが、
そんな名前の女性は『攻殻機動隊ARISE』にはいなかったな…。
たぶんポリコレで公安9課の女性比率、黒人比率を上げるために、
無理やり捻じ込んだキャラではないかと思います。

ある日、ハンカ社の研究員オズモンド博士が謎の芸者ロボに襲われます。
強烈なインパクトを放つ芸者ロボですが、強烈すぎて日本をバカにしてる気が。
本作の舞台の街も未来的な都市に日本文化を混ぜたような雰囲気ですが、
なんか日本の美意識とは真逆な雑然とした街並みで、中国感があります。
まぁ香港でロケしたみたいなので仕方ないのかもしれませんが、
看板のカタカナが間違ってたりするのは、製作に加わる中国映画会社の
日本に対する嫌がらせな気もしてしまうんですよね…。
現場に駆け付けた少佐が芸者ロボを破壊しますが、博士は既に殺され…。
ハンカ社で殺された研究員は博士で4人目となります。
少佐は駆け付けた時に光学迷彩スーツを着ていましたが、
これがスキニーな全身タイツで、一見すると全裸に見えてセクシーです。
スカヨハは本作撮影時は出産して間もないはずですが、
さすがハリウッド女優、すぐに体を作ってきましたね。
ついでに少佐の容姿についてですが、原作の草薙素子に合わせたのか、
オンザ眉毛の黒髪ショートだけど、正直スカヨハには似合ってない気が…。
もうちょっと若い女優だったら可愛くなりそうだけど…。
それに今後の展開を鑑みれば、日本人を連想させるような
黒髪の義体が使われているのはおかしい気がします。

少佐は破壊した芸者ロボにダイブ(データにアクセス)し、
芸者ロボをハックして操っていた犯人がクゼという男だと判明します。
クゼが芸者ロボにハックした場所も割り出し、バトーと突入しますが、
それは罠で、仕掛けられていた爆弾が爆発し…。
少佐は全身義体なので、頭さえ残ればいくらでも修理できるが、
バトーは生身だった目を失明し、義体の目(義眼?)をすることに。
まぁ彼ももともと体の何カ所かは義体なので、義体箇所が増えたところで
そんなにショックもないでしょうが、なぜあんな機械丸出しの義眼に…。
暗視機能やズーム機能なども付いてる高性能な義眼レンズらしいけど、
少佐の生身と見分けが付かない義眼も同様の機能があるのにね。

(意識が飛んだのであまり覚えてないが)紆余曲折あって、
少佐はクゼに逆に捕まってしまうのです。
クゼは「俺は君を作った全身義体実験の失敗作だった」と明かします。
全身義体第一号の少佐でしたが、彼女で初めて成功する前に、
98人の被験者がシェルへの脳移植に失敗しているみたいで、
クゼはその失敗作の中のひとりで、ハンカ社を恨んでいるようです。
失敗作のわりには常人以上に十分動けてると思いましたけどね。
少佐は自分も含め大勢の被験者がどこから連れて来られたのか疑問に思い、
脳移植を行ったハンカ社の女性研究員オウレイ博士を問い詰めます。
オウレイ博士はカッター社長に命じられて、少佐の記憶を消去しようとするが、
彼女は初の成功作の少佐の事を娘のように愛していたため、命令に背き、
少佐にあるメモを渡して逃がしてしまい、カッター社長に粛清されます。

博士から渡されたメモには、ある超高層アパートの部屋番号が書いてあり…。
どうもこの建物は日本人ばかりが住んでるみたいで、
部屋の作りや外観も昭和の団地みたいな感じになっていますね。
その部屋を訪れると、日本人中年女性が迎え入れてくれて…。
なんでも彼女は一年前にひとり娘を亡くしているみたいで、
娘は失踪し、後日役場から遺灰が届き、自殺したと告げられますが、
彼女は「娘は自殺するような子じゃなかった」と信じてないようです。
その娘の名前が「素子」で、なるほど、そう来たかって感じですね。
少佐の本名は草薙素子で、この団地に住む日本人でしたが、
白人のシェルに脳移植された際に、新しい名前と記憶を植え付けられ、
白人のミラ・キリアン少佐にされてしまったわけです。
これぞまさにホワイトウォッシュを地で行く話です。
正直、全身義体化される前の少佐が日本人であろうことは予想してましたが、
予想外だったのは素子の母を演じていたのが大女優桃井かおりだったこと。
ビートたけしの出演ばかり取り沙汰されていたので、意外な登場です。
桃井かおりの登場で一気に眠気が覚めました。
ハリウッド経験もある彼女はたけしと違って英語台詞でしたが、
英語台詞でもちゃんと桃井節なのが、なんか面白かったです。
あれだけ英語台詞に感情を込められる日本人俳優はなかなかいないかも。

彼女の素子は反テクノロジーの活動グループに属していて、
無法地帯の隠れ家でタムロしていたみたいですが、
警察に踏み込まれ、仲間と共にサイバーテロリストとして連行された後、
ハンカ社の全身義体の実験台にされてしまったみたいですね。
反テク主義者をテクノロジーの塊に利用するなんて皮肉な所業です。
素子には同グループにヒデキという日本人の恋人がいましたが、
彼も連行され実験台となり失敗作になるが、彼こそがクゼでした。
クゼも日本人の名字っぽいのに白人なのは変だなと思ってたけど、
やっぱりホワイトウォッシングされてたのか。

自分の本当の素性に気付いた少佐は、公安9課の荒巻課長と通信し、
ハンカ社が違法な人体実験をしていることを報告します。
荒巻はハンカ社のカッター社長逮捕のために動き出すのです。
荒巻は少佐の報告を二つ返事で信じるなんて彼女を信頼してるんですね。
それにヤクザみたいな顔して正義感に厚いです。
その通信はカッターに傍受されており、彼は荒巻を始末しようと、
殺し屋を送り込みますが、荒巻はヤクザさながらのハジキ捌きで返り討ちに。
「キツネを殺すのにウサギをよこすな」という捨て台詞(当然日本語)も渋いです。

少佐は自分の記憶を追って無法地区の隠れ家に行きます。
そこでクゼ、いや、恋人ヒデオと再会しますが、
そこにハンカ社の多脚戦車が襲撃してきます。
『攻殻機動隊』を象徴する兵器といえば多脚戦車ですよね。
でも『攻殻機動隊ARISE』に登場した公安9課の多脚戦車ロジコマのように、
人工知能が搭載されているわけではなく、カッターが遠隔操作しています。
多彩な銃器を装備しており、少佐とヒデオを追いつめますが、
ヒデオが撃たれそうになったところを、少佐が光学迷彩で後ろに回り、
自分の腕を犠牲にして装甲を抉じ開けて破壊します。
が、左腕も失った少佐は力尽きてヒデオと一緒に倒れ込みます。
そこにカッターが送り込んだ狙撃機が飛んで来て、ヒデオを狙撃で射殺。
続いて少佐も狙撃されそうになるが、公安9課の狙撃手サイトーが、
狙撃機を狙撃して撃ち落とし、バトーが少佐を救助します。
一方、ハンカ社から遠隔操作していたカッターは荒巻に撃たれて…。
結構ヤバそうな撃たれ方でしたが死なず、国家反逆罪で逮捕されたようです。
さすが義体技術をリードするハンカ社の社長だけあって、
彼も体のほとんどが義体化されているのか銃撃くらいでは死なないのかも。

事件解決し義体の修復も終えた少佐は、本当の母と共に草薙素子の墓参りに。
母に「(自分は生きてるから)もう墓に来なくていいよ」と言いますが、
墓に収められている遺灰はたぶん本人の物でしょうね。
この墓も日本的な墓石で面白かったです。
少佐は公安9課に戻りますが、今後はミラ・キリアン少佐ではなく、
原作どうり草薙素子少佐として活動することになるんでしょうね。
どうせ全身義体なんだから、元の姿に似せることも出来そうだけど、
なんだかんだで白人はカッコいいから、日本人の体に戻りたくないのかも。

アイデンティティを取り戻した草薙素子少佐と公安9課の活躍を、
もっと観たいと思ったけど、全米初登場3位では続編は厳しいか。
1億ドル以上の製作費を取り戻せるかどうかも微妙なラインです。
たぶん日本でも『攻殻機動隊』はマニア向けアニメ扱いだと思うので、
本作の注目度もそれほどだから、日本頼みの製作費回収も厳しそうか。
これが日本で大ヒットすれば、日本原作ハリウッド映画も増えそうなのに残念。
まぁ本作の日本公開に合わせて新作アニメ製作が発表されたので、
ハリウッド実写版である本作の続編は絶望的だけど、
これからも日本製『攻殻機動隊』を楽しむことは出来そうですね。
でもきっとまた小難しいマニア向けの内容になるんだろうな…。

関連作の感想
攻殻機動隊 新劇場版

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