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王様のためのホログラム

今日の気になるニュース。

先日、クアラルンプール国際空港で金正男が暗殺されたようです。
金正男は金正日総書記の長男で、金正恩第一書記の異母兄。
暗殺したのは北朝鮮の女工作員だったと報じられていますが、
北朝鮮及び金正恩が彼を殺す理由がよくわからず、何か裏がある気がします。
中国にも韓国にもメリットはないだろうし、一体誰が得をするのか
見た目は小汚いオッサンでしたが、いい歳してディズニー好きなこととか、
ちょっと共感を持てる人物だったので、少し残念な気も…。
今年は各国首脳やその関係者を狙った暗殺や暗殺未遂が相次ぐ予感がします。

今日も映画の感想です。

王様のためのホログラム
A Hologram for the King

2017年2月10日日本公開。

全米ボックスオフィス最高11位で、製作費3000万ドルに対し、
全米興収僅か400万ドルで大コケしてしまった本作。
大御所トム・ハンクス主演なのに信じられない低迷っぷりですが、
なんでも彼の主演作では売れる前の駄作『さよならは言わないで』に次ぐ、
過去最低の成績だったみたいです。
トム・ハンクスの日本人気は高いとはいえ、そんな大コケ作品を、
よく日本劇場公開に踏み切ったものだと思ってしまいましたが、
本作は大コケこそしたものの、評価は割と高いんですよね。
配給するポニーキャニオンも、内容が気に入って買い付けたのでしょう。

私もそれほど期待せずに観たけど、割と面白いコメディだったと思いました。
それもそのはず、原作は米国の最高文学賞「全米図書賞」候補作でした。
主演大御所、原作は折り紙付き、これでなぜコケるのか不思議ですが、
イスラム世界を舞台にしたのが忌避されたのかな?
とはいえ私も、期待してなかった割りには楽しめた、くらいの評価なので、
積極的にオススメしたいような作品でもなかったかな。
特に終盤がグダグダなので、後味はあまりよくなかったし…。
以下、ネタバレ注意です。

主人公のアランは大手自転車メーカーの取締役でしたが、
彼はコスト優先で中国に工場を移し、国内工場の従業員を解雇します。
「雇用が中国に奪われる」とトランプ大統領が激怒しそうな判断ですね。
ところが中国工場の中国人従業員に自転車作りを教えたところ、
技術をパクられ中国産の安い自転車が出回ることに…。
彼は責任を取って退職(責任を取らされて解雇?)されたみたいです。
模倣品問題や技術・ノウハウの流出、これぞチャイナリスクですね。
日本のメーカーも中国に生産工場を移転させまくる時期がありましたが、
今はチャイナリスクに気付き、どんどん撤退している状況です。
中国の人件費も上がっているので、コストダウンも難しいみたいですが、
日本の技術やノウハウをパクられる機会が減るのは喜ばしいことです。
と思ったら、シャープみたいに買収されて技術が流出するんですが…。
ほんと中国と関わるとロクなことはないです。
今や中国は日本を抜き世界第二位の映画消費国になったので、
中国興収を期待して中国フレンドリーなハリウッド映画が増えている中、
本作のようなアンチ中国なハリウッド映画は珍しいかもね。

アランは大手IT企業レイアンド社のセールスマンに転職します。
自転車屋にIT技術のセールスなんて出来るのかと思ってしまいますが、
彼はサウジアラビア国王の甥と知り合いなので、
サウジに技術を売り込みたい会社が、彼のコネを期待して雇ったみたいです。
ただ、知り合いといっても、何十年も前にトイレで会い談笑しただけで、
彼にはコネも何もありませんが、当然サウジのプロジェクトに参加させられ、
国王にセールスするためサウジのジッダに派遣されてしまいます。
「王族と知り合い」とか適当なこと言って採用された報いですね。

サウジはジッダ近くの砂漠地帯を先進的な人工都市に変える、
「KMET(国王の経済貿易大都市)」計画を進めており、
レイアンド社は開発した3Dホログラムによるテレビ会議システムを売り込み、
KMETに導入してほしいと考えてしるみたいです。
しかしアランが現地に行った時はまだ辺り一面の砂漠で、
こんなところが整備されて近未来的な都市に変わるなんて想像もできませんが、
本作のKMETにはKAEC(アブドラ国王の経済都市)というモデルがあるみたい。
人口爆発と若者の失業対策のための人工都市計画らしいので、
実際は3Dホログラムのテレビ会議システムなんて不要でしょうね。
昨日、UAEは火星に小都市を建設するプロジェクトを発表しましたが、
イスラム世界の都市開発はダイナミックですね。

砂漠の真ん中にモダンな建物のKMET本部があるのですが、
レイアンド社のチームはそこに入れてもらえず、テント小屋を宛がわれます。
IT企業のオフィス代わりWi-Fiすらなく、アランはこの冷遇に愕然とします。
更に国王に直接プレゼンできるはずが、国王との連絡係カリームが常に不在で、
レイアンド社チームは何日も待ちぼうけを食らわされるのです。
アランは本部に苦情を言いに行くが、いつも受付で追い返されてしまいます。
なぜKMET側が彼らを冷遇するのか、理由がよくわかりませんね。
邪魔だから追い出したいのかと疑ったけど、そうでもないみたいで不思議です。

なかなかプレゼンが出来ないことを気に病むアランでしたが、
彼にはもうひとつ悩みがあり、背骨付近に謎の瘤が出来ているのです。
何かヤバい腫瘍で、体調が優れないのも瘤のせいではないかと考えます。
ある夜、彼はホテルの自室でステーキナイフを使い瘤を切り取ろうとします。
結局血塗れになっただけで切り取ることは出来ませんでしたが…。
それはそうと、サウジはイスラム世界なので飲酒は禁止なんですね。
(サウジは特に厳しく、消毒用アルコールやエタノール燃料も禁止だとか。)
海外から出張で来た非ムスリムの酒飲みにとっては辛い場所だろうな。
と思ったら、大使館のパーティに行って飲みまくってるみたいです。
治外法権の大使館にはサウジの法律もイスラム法も通じないのか。
まぁこの時のアランは、知人のデンマーク女性からこっそり貰った酒を、
こっそりホテルの自室で飲んでいたので、完全に違法ですけど。
イスラム世界でイスラム法を無視するなんて根性あるな。

あと、もうひとつサウジの面白い法律ですが、ハイウェイを走行していると、
「非ムスリム出口」「ムスリムのみ直進」というような交通標識があります。
信仰で車両区分みたいな交通法規が適用されるのか、と思いましたが、
「ムスリムのみ直進」と直進するとメッカに到着するんですよね。
ムスリム以外はメッカに入ってはいけないと法律で決まっているみたいです。
アランは間違って直進し、メッカに入ってしまうのですが、トーブを着て誤魔化し、
なんとかメッカを通り抜けることができましたが、撮影時はどうしたんだろ?
トム・ハンクスはムスリムではないと思いますが、撮影許可下りたのかな?
(『ダヴィンチ・コード』に出てるし敬虔なクリスチャンでもなさそうだけど。)
ゲリラ撮影したか、メッカっぽい別の場所で撮影したのかな?

話は戻って、瘤の切り取りに失敗して血塗れになったアランは病院に行きます。
女医ハキイの診察を受け、良性の脂肪腫だと診断されますが、
瘤のせいで体調不良を感じている彼はイマイチ納得できず…。
ハキイからは「気持ちの問題よ」と助言されるのです。
劇中で、サウジでは女医は極めて珍しいという話が出てきます。
たしかにサウジの女性の就労制限は非常に厳しいと聞いたことがあるけど、
ムスリムの女性は親族以外の男に触られてはいけないはずなので、
病気や怪我も女医に診てもらうしかなく、女医はむしろ多いはずです。
ただムスリムの女医も男に触れられないはずなので、本作のように
女医が男性患者を診察するようなことは珍しいというかあり得ない気が…。
まぁそんな考証ミスするとは思えないから私の思い違いかな?
後に男性医師から「組織検査の結果、前癌状態だ」と告知され、
アランは後日摘出手術を受けることになるのですが、
ハキイの楽観的診断は間違ってたわけで、あまり名医でもないのかも。

あまりにも冷遇され続けるのに苛立ったアランは、また本部に怒鳴り込み、
「連絡役カリームは不在だ」と追い返そうとする受付を無視してオフィスに行くと、
なんと不在のはずのカリームがいて、要望を聞いてくれることになります。
テントにWi-Fiも手配し、国王にもアポを取ってくれますが、
更にKMETの建設中の分譲マンションのモデルルームまで案内してくれます。
分譲マンションにはKFCやスタバのテナントの看板もあってよさそうですが、
モデルルームのスタッフによると、まだ一件も入居契約取れてないらしく、
テナントの看板も客寄せのためのダミーだったみたいで…。
大都会になる予定のKMETですが、そこに住みたい人はあまりいないみたいで、
この計画の先行きはかなり暗そうな気がしますね。
しかしカリームはなぜ取引先にそんなネガティブな情報を与えるのか…。

カリームの働きかけのお陰か、急転直下で国王へのプレゼンが実現します。
プレゼンは設備の整った本部で行われるのかと思いきや、
なんとテントに国王自ら訪れるんですよね。
国王が来る前にサウジのスタッフがテントを絢爛豪華に飾り付けますが、
そんな無駄なことしないでアランらが王宮までプレゼンに行けばいいのに。
プレゼン自体は問題なく終わり、国王の反応も上々でしたが、
うーん、たしかに3Dホログラムは見る分には面白いかもしれないけど、
会議に3Dホログラムは不要な気がしました。(スカイプで十分でしょ。)

念願のプレゼンに成功し、やっと帰国できそうだしめでたしめでたし。
…と思いきや、ここから前述の終盤のグダグダな展開になります。
女医ハキムの執刀で、瘤の摘出してもらったアランですが、
いろいろお世話になったお礼にハキムを病院外デートに誘います。
アランが異国で助けてくれた女性に恋心を抱くのはなんとなくわかるが、
なぜかハキムも満更ではないみたいなんですよね。
彼女にとってはアランも患者の一人でしかないのに、いつそんな感情が?
しかも彼女には夫と子供もおり、ムスリム女性が不倫するなんて考え難い。
旦那がいるムスリム女性を誘うアランの根性も考え難いです。
彼女は夫とは離婚を考えているらしいが、サウジでの離婚は男次第だし…。
彼女の海辺の家に招かれて、一緒に上半身裸で海水浴したり、Hしたり、
終盤で急にアランとハキムの恋模様が描かれるのですが、
この展開の必要性が全くわからず、謎の急展開にグダグダ感を覚えます。

アランがサウジ国王にプレゼンするために東奔西走するコメディだと思いきや、
最後の最後にロマンス映画に着地するなんて、予想外すぎてついて行けず…。
そんな展開全く期待してなかったから、裏切られた気分になりました。
結局プレゼンの結果も、アランの頑張り虚しくレイアンド社のシステムは不採用。
やはり会議に3Dホログラムなんて過剰演出すぎると判断されたのか。
…と思いきや、なんと中国の3Dホログラム会議システムを採用したのです。
レイアンド社と全く同じシステムで模倣なのは間違いないでしょうが、
レイアンド社のものより安いので、中国のシステムが選ばれたのでしょう。
ある意味、アランはまたしても中国に一杯食わされたわけですが、
当時のアラン同様、コスト優先で中国を選んでしまったKMETは、
いつかチャイナリスクで痛い目に遭うのでしょう。
日本より中国の高速鉄道計画を選んだインドネシアがどうなったか、
破格の条件に騙されて中国を選んだことをどれほど後悔しているか。
中国業者が建設中のオークランドの橋もきっと欠陥工事だろうな。

終盤のグダグダ恋愛を除けば、中国と関わることの危険性を示唆し、
イスラム世界を馬鹿にした、なかなか興味深いハリウッド映画でした。

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