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スノーデン

風邪ひきました。
インフルエンザではないと思うんだけど…。
とりあえず豆撒いて、恵方巻食べて邪気払い。

スノーデン
Snowden.jpg

2017年1月27日日本公開。

本作は、NSA(米国家安全保障局)及びCIA(中央情報局)のスタッフである
エドワード・スノーデンが米国政府による国際的な個人情報監視の実態を
内部告発するに至る経緯を描いた社会派伝記映画です。
なかなかクオリティが高く、オスカー戦線にも立てると期待されていたのですが、
オスカーからも、その前哨戦の各映画賞からも完全に無視されました。
あまりに露骨すぎる無視で違和感を覚えてしまいますが、
本作で批判されたNSAやCIAの圧力でもあったのだろうと勘繰ってしまいます。
実際オリバー・ストーン監督が本作を撮るにあたっても、
米国のメジャー・スタジオはNSAからの干渉を恐れて出資を拒否し、
結局ドイツとフランスに出資してもらい製作しますが、
監督自身もNSAの干渉を嫌い、ほぼ国外で撮影したんだとか。
日本も出資を拒んだらしいけど、それはNSA云々ではなく、
事件に対する日本人の関心が薄く、日本でのヒットが見込めないからでしょう。

なんとか小さな映画会社が全米配給に名乗りを上げてくれたみたいですが、
いざ公開されても全米初登場4位と微妙な成績で、評判もイマイチで…。
たぶんスノーデンのことを売国奴と思っている米国人が多いのでしょう。
最低映画の祭典ラジー賞には一部門ノミネートされてるし…。
内部告発サイト「ウィキリークス」の編集長ジュリアン・アサンジの伝記映画
『フィフス・エステート』(2013)も悲惨なほど大コケしたし、
米国人は内部告発者を英雄視しない傾向があるのかもしれませんね。
私は義賊が大好きなので、内部告発者は英雄だと思っていますが。

スノーデンの行為の是非以前に、本作は単純にスパイ映画として面白いです。
と言ってもドンパチするようなスパイ・アクション映画ではなく、
リアルな諜報活動の実体を描いた社会派なスパイ映画です。
いや、情報戦を描いた戦争映画と言うべきかもしれません。
社会派でありながら娯楽性もあり、絶妙なバランスで興味深く楽しめますが、
如何せん聞き慣れないパソコン用語とか政治用語とか頻発するので、
ちょっと理解しきれないところもありました。
たぶんそうなるだろうと予想していたので、本作を観に行く前に、
スノーデンのドキュメンタリー映画『シチズン・フォー』で予習するつもりでしたが、
反面ネタバレになるかもしれないと悩んだ挙句、本作を先に観ました。
予習不足で理解しきれないところもあったけど、それほど深刻な問題でもなく、
ネタバレ回避したお蔭で内部告発に至る経緯とか興味深く観れたし、
本作を先に観たのは正解だったかなと思います。
ドキュメンタリーから先に見ると事実との違いに引っ掛かりするしね。
以下、ネタバレ注意です。

2004年、スノーデンは米軍の特殊部隊に入隊しますが、
訓練中に両足を骨折し、除隊を余儀なくされます。
スノーデンは見るからにインテリタイプなので、マッチョな特殊部隊なんかに
なぜ志願したのか不思議ですが、実際かなり虚弱体質なのか、
その両足骨折も二段ベットからの着地失敗が原因なんですよね。
上官から「他の方法で国に尽くせ」と言われて、スノーデンはCIAに就職しますが、
オタクで情報技術に強いので、はじめからCIA受ければよかったのに。
2006年、CIA訓練センター「ザ・ヒル」で適性テストを受けるが、
8時間かかる作業を「コロンブスの卵」的発想で38分でやり遂げるのです。
たぶん凄いことをやったのでしょうが、私にはテストの内容が理解できず…。

テストが早く終わりやることがない彼は、デートに行きます。
相手は出会い系サイトで知り合った女性リンゼイですが、
『攻殻機動隊』が好きという共通の趣味で意気投合したみたいです。
スノーデンが日本語を嗜むのも趣味が高じてのことなのかもね。
(もしかすると特殊部隊に入隊したかったのも趣味の延長線かも?)
なんにしても親日家らしいので好感を持てますが、
思想的にはゴリゴリの保守派で、あの無能ブッシュ大統領すら支持します。
まぁ政府に批判的な人物がCIAに入れるはずないですよね。
逆にリンゼイはイラク戦争にも反対のリベラルで、全く反りが合わなそうですが、
なぜか彼らはこの初デートで付き合うことになるのです。
『攻殻機動隊』はイデオロギーも超えるのか。

そんなゴリゴリの保守派のスノーデンでしたが、ザ・ヒルで指導する
フォレスター教官の話を聞いて、イデオロギーが揺らぎます。
テロとの戦いのためにCIAで働きたいと思っていた彼ですが、
フォレスター先生曰く、CIAの目的は軍需産業を潤わせることであると…。
更に担当教官コービンも「米国の真の脅威は中国、ロシアだ」と言われ、
CIAの目的がテロ対策は口実で経済の支配だと確信するのです。
このフォレスター教官を演じるのが、なんとニコラス・ケイジ。
主演級だった彼も、こんな端役でも受けるようになったんですね。
でも出番は少ないながらも悪い意味で強い印象を残したみたいで、
ラジー賞助演男優賞にノミネートされてしまいました。

2007年、ジュネーブに赴任したスノーデンは、NSAのガブリエルに出会い、
NSAの極秘システム「エックスキースコア」のことを教えてもらいます。
私はITに疎いので完全には理解できませんでしたが、簡単に言えば、
ネット上の非公開の情報までアクセスできる検索エンジンみたいです。
個人的なチャットやメール、公開範囲設定されたフェイスブックでも
お構いなく閲覧できてしまい、しかもテロとは関わりのない一般人まで対象。
しかも他人のパソコンのカメラを遠隔作動でき、ライブで盗聴盗撮できます。
スノーデンはそんな任務に倫理的な疑問を覚え、CIAを退職するのです。
彼は盗撮を恐れて自分のパソコンのカメラにも絆創膏を貼り付けますが、
私もカメラ機能は使わないので、かなり以前からシールを貼っています。
カメラの遠隔操作なんてのはNSAじゃなくても出来てしまうので、
みんな気を付けた方がいいと思います。
そんな疑問から、すっかりリベラルに傾きつつあるスノーデンは、
違法盗聴禁止と情報公開を公約に掲げるオバマ大統領就任を歓迎します。
現大統領がアレなんで尚更ですが、やはりオバマは素晴らしいと思っちゃうね。

CIAを退職したスノーデンは、NSAの仕事で横田空軍基地に配属されます。
NSAの監視システムに幻滅したはずなのに、なぜNSAの仕事を受けたのか?
アニメオタクで親日家だから憧れの日本で仕事がしたかっただけかな?
といっても、主な仕事は日本人の監視という親日家とは思えない業務で…。
なぜ同盟国に監視されなきゃならないのかと憤りを感じますが、
日本のインフラにマルウェアを仕掛け、もし同盟が破綻したら作動させるそうで。
まぁ日米同盟が破綻するなんてあり得ない話です。
…と昔は思ってたけど、大統領がアレだから意外とあり得るかも。
もし戦争になってもインフラの破壊なんて倫理的に不可能でしょうが。
しかし最も多く監視されているのはテロ支援国家でも同盟国でもなく、
米国人であることに、スノーデンは強い懸念を感じます。
特に監視業務をする自分自身が監視されていないはずなく、
当然その家族や恋人も要監視対象で、彼はリンゼイを気に掛けます。
スノーデンは富士山登山デート前夜に、リンゼイがパソコンに保存している
彼女自身のヌード写真を削除しろと迫り、ケンカになってしまうのですが、
NSAに監視されてるかは別にしてもヌード写真は保存しない方がいいです。
NSAに見られてもどうということはないが、流出する危険は常にあるし。

2011年、帰国した彼はメリーランドでDELLに就職し、CIAに出向します。
CIAが嫌で民間企業に就職したのに、まさかCIAに出向させられるとはね。
てか、CIAも辞めた人間を受け入れるなんて、諜報機関としてリスキーじゃない?
更にNSAから中国のサイバー攻撃対策の仕事を打診されますが、
任地がハワイなので、リンゼイが嫌がるのではないかと考え保留に。
しかし彼が仕事のストレスからてんかん発作で倒れてしまい、
リンゼイは温かい場所での療養もいいかもとハワイ赴任に同意します。
でも仕事を続けると頭が鈍るてんかんの薬を服用できないため、
治療のためにはハワイ赴任しない方がよかったかもね。
でも仕事はサイバー攻撃対策なので、監視なんかよりは、
スノーデンの望む仕事に近いかもしれませんね。

赴任先のNSA工作センター「トンネル」では、
アフガンの爆撃ドローンのライブ映像の監視も行っています。
そういえば昨年末に日本公開された『アイ・イン・ザ・スカイ』でも
ハワイでドローンの映像分析してましたが、あそこがトンネルか。
ドローンでテロリストを見つけて、爆撃ミサイルを撃ち込むわけですが、
ミサイルの標的はテロリストではなく、テロリストのケータイを追撃するそうな。
スノーデンはその監視システム「エピック・シェルター」に、
自分が作ったシステム「ハートビート」が無断使用されていると気付き…。
このハートビートに関しても正確には理解できなかったけど、
ケータイを追跡してデータ収集するシステムだと思われます。
スノーデンは自作システムがまさか軍事利用されているとは思わず、
それによる爆撃で幼い子までが犠牲になっていると知り…。
更に米国人の監視について議会で質問された国家情報長官が、
「監視してない」と平然と嘘を付いている様子を見て、内部告発を決意。
トンネルから極秘データを持ち出すのですが、この持ち出すまでの展開は、
スパイ映画みたいでドキドキしましたね。
ある同僚が持ち出しに協力してくれますが、NSAにはスノーデンの他にも
任務に疑問を持っている人が結構いるってことなのかな?
まぁ疑問を持たない方が倫理的に異常か。

2013年、スノーデンはドキュメンタリー監督のローラ・ポイトラスと
コラムニストのグレン・グリーンウォルドと香港のホテルの一室で密会。
翌日には英ガーディアン紙の記者ユーウェン・マカスキルの助力を得て、
同紙にて米国政府とNSAの監視・盗聴の実態、手口を告発するのです。
これにはオバマ大統領も慌てて、「監視には制限がある」と言い訳し、
「彼は内部告発者ではなく単なるハッカーだ」と告訴し、逮捕状を取得。
中国政府に身柄拘束を要請するも、無視されてしまいます。
選挙の時には違法盗聴禁止と情報公開を公約に掲げていたので、
クリーンな大統領かと思ったけど、所詮は同じ穴の狢か。
いや、大統領になる前は崇高な信念があっても朱に交われば赤くなるんだな。
オバマは「諜報活動の一環で違法性はない」と主張しながらも、
同盟国からの苦言を受け、後に一部見直しし収集停止を発表します。
スノーデンはテレビのインタビューで、「新しいリーダーに期待したい」と答えるが、
皮肉にも新しいリーダーがアレでは、状況は更に悪化しそうです。
スノーデンはウィキリークスの助力でモスクワに亡命しますが、
ロシアなんかに匿われるから米国人から裏切り者扱いされるんじゃないかな?
逮捕されて裁判で戦えば、義賊として英雄視されたかもしれないのに。
まぁ母国の獄中よりもモスクワでリンゼイと暮らせる方が幸せか。

余談ですが、スノーデンの内部告発に対して、諸外国が米国に苦言を呈す中、
我が日本政府は「米国内の問題なので」と特に問題視しませんでした。
これはただ単に、親方米国様に物申せない日本の体質とも取れますが、
日本政府が成立を目指す、共謀罪との関わりもあるでしょうね。
これはテロ対策を口実に国民を監視することを合法化する法案で、
「テロ等準備罪」と名前を変えて本国会での提出を目論んでいます。
本作中でも「米国人は自由よりも安全を望んでいる」という台詞があったけど、
私もそうで、安全になるなら監視されることに抵抗はありません。
パソコンやケータイの写真やログを勝手に収集されたとしても、
家族や知人には見られたくないないデータはいくつかあるけど、
政府や公安に見られて困るようなものはないし…。
オスカー候補になる目論見でこのタイミングで日本公開したのでしょうが、
その目論見は外れたけど、共謀罪や新大統領誕生など、
結果的にタイムリーな内容で、なかなか考えさせられ楽しめます。

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