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この世界の片隅に

今日、新語・流行語大賞の候補30語が発表されました。
私はやはり映画関連のワードが気になりますが、
今回は「シン・ゴジラ」と「君の名は。」が候補になりました。
どちらも今年大ヒットした映画のタイトルですが、
興収200億円目前で歴代興収6位確実の『君の名は。』を差し置き、
興収80億円で歴代60位そこそこの『シン・ゴジラ』が受賞するのはあり得ず、
映画関連で受賞するとしたら『君の名は。』になるでしょうね。
ただー昨年、興収250億円以上で歴代3位になった『アナと雪の女王』でも
大賞受賞には至らなかったので今回も無理でしょう。
選考委員にクリエイターが多いので、他人の作品は評価したくないんだろうな。

これまでの傾向から、複数個選ばれるならスポーツ関連「神ってる」は確実で、
あとは「ゲス不倫」「斎藤さんだぞ」「SMAP解散」「センテンススプリング」
「トランプ現象」「パナマ文書」あたりから1~2個選ばれそうかな。
受賞式のことも考えたら、受賞者が出席確実な「斎藤さんだぞ」は有力かも。

ということで、今日は2013年の流行語大賞受賞者が主演の映画の感想です。

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この世界の片隅に

2016年11月12日公開。

2016年も残りわずかですが、今年の最高傑作アニメ映画が出てしまいました。
全米興収歴代7位(全米アニメ映画歴代1位)の『ファインディング・ドリー』や、
日本興収歴代6位の『君の名は。』など、今年はアニメ映画の当たり年で、
私もその2作を含む22本のアニメ映画を観ましたが、文句なしに本作が一番。
特に現在も大ヒット中の『君の名は。』と比較されますが、
『君の名は。』もかなり佳作ではありましたが、本作に比べると霞みます。
しかし上映12週目にして依然1位(V11達成)の『君の名は。』に対して、
先週末公開の本作は初登場ギリギリ10位という成績で…。
やはりいくら傑作でも、それだけではヒットできないのですね。

『君の名は。』は日本最大手の東宝配給で、現在も約300館で公開中ですが、
本作は弱小(?)東京テアトルの配給なので、公開館数もわずか63館。
初登場10位に食い込めたのが奇跡なほどの小規模公開です。
宣伝もバンバン打ちまくれる東宝『君の名は。』とは違い、
本作はクラウドファンディングで製作費を賄うほどの貧乏運営で、
ほとんど宣伝もされず、私も劇場で一度予告編を観ただけで、
下手すれば見落としていたかもしれないほどの周知度です。
メディアが意図的に無視しているのではないかと噂されるほどですが、
主演が能年玲奈なので、強ち噂とも言い切れないんですよね。

朝ドラ『あまちゃん』で国民的人気女優になった能年でしたが、
バーニング系事務所から独立したことで、芸能界から事実上干され、
本作が独立後の初仕事ということになるみたいです。
しかし前事務所の圧力なのか各メディアの自主規制なのか、
彼女の主演作ということでメディア露出が極端に少ないらしいです。
全く報じられてないわけでもないので「考えすぎだ」という意見もあるが、
前事務所は本名の使用まで許さず、不可解な芸名改名を強いて、
今後の活動を妨害しようとしているので、圧力くらい平気でかけてくるはず。
広島国際映画祭での「ヒロシマ平和映画賞」受賞についても、
微妙な映画祭なので一般メディアが報じないのはわかるが、
映画サイトさえも全く報じてないのは違和感があります。
まぁ映画サイトはバーニングよりも東宝に気を使っている気もしますが…。

ただ能年を起用したのが本作にとって失敗だったかと言えば全く逆で、
この役柄は能年にしか演じられないだろうと思えるほどの嵌り役で、
これ以上ないベストなキャスティングだったと思います。
度々引き合いに出して申し訳ないが『君の名は。』のヒロイン役上白石萌音は、
東宝シンデレラなので政治的キャスティングだったのは間違いないが、
彼女がヒロイン役じゃなくても『君の名は。』は成功したと思います。
しかし本作は誰がヒロイン役でもそれなりの評価は得たでしょうが、
能年がヒロイン役を務めたことで傑作になり得たと感じられます。
それにクラウドファンディングも、映画を観たい出資者もいたでしょうが、
能年の復帰を願う出資者が多いような気がします。
能年が主演だから完成し、傑作になれた作品だと思うのです。

あとはまともに宣伝さえ出来ていれば、『君の名は。』ほどとは行かないまでも、
興収50億円くらいのポテンシャルはある作品だと思うので悔しいですが、
実は『君の名は。』だって、始めから東宝に大プッシュされていたわけではなく、
SNSなどでの口コミで火が付き、東宝を本気にさせたのです。
本作を観た人の満足度も『君の名は。』に優るとも劣らないほど高いので、
今後バイラルヒットできる可能性もないとは言い切れません。
監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』も名作アニメ映画でしたが、
初動はイマイチだったものの拡大公開され、バイラルヒットしましたしね。
実際に本作も評判を受けて、どんどん拡大公開が決まっているそうです。

私はSNSをしていないので、バイラルヒットにあまり貢献は出来ませんが、
このブログで少しでも本作の魅力を伝えて、ひとりでも多くの人に
本作を知ってもらいたいと思うけど、本作の魅力を言葉で語るのは難しいです。
物語的には、広島が舞台という特異性はあるものの、
基本的には太平洋戦争中の市井の人々の日常を描いただけのもので、
SFである『君の名は。』のようにファンタジックな展開があるわけでもなく、
地味と言えば地味な作品かもしれません。
戦時中の人々の風俗や生活も丁寧に描かれていて勉強になるが、
学習ビデオじゃないんだからそんなものが売りになるとは思えないし。
長閑な風景や優しいタッチのキャラデザなども魅力だとは思うけど、
今時のアニメ映画は画が綺麗なんてのは当たり前だしね。
結局本作の最大の魅力は、主演である能年の演技力…
というか、能年が命を吹き込んだヒロインの持つ空気感みたいなもので、
それをどう説明すればいいのか、筆舌に尽くしがたいんですよね。
とにかく観た人は皆、ヒロインすずの魅力に引き込まれることでしょう。
以下、ネタバレ注意です。

広島県江波で海苔生産をしている浦野家の長女すずは、
絵を描くのが好きで、のんびりした女の子です。
はじめに能年による彼女の声を聞いた時は、浮いてるような違和感があったが、
すず自身ちょっと変わった浮世離れした女の子だったので、
徐々にその声質がしっくりきて、唯一無二のすずの声になります。
もちろん広島弁ですが、さすがに北三陸弁も見事に使いこなす能年だけあり、
広島弁も全く違和感なく、むしろ魅力的に使いこなしています。

昭和18年、18歳になったすずに縁談が持ち上がり、
あれよあれよという間に、翌年2月には呉に嫁ぐことになります。
すずは忘れていますが、相手の北條周作は彼女のことを知っているようです。
私も最後の方まで気付きませんでしたが、すずが8歳くらいの時に、
人攫いに浚われかけた折に一緒に浚われかけた男の子ですね。
この人攫いはバケモノだったので、すずは夢だと思ったみたいですが、
その時に周作と会ったことは事実だったみたいです。
周りに流されるまま嫁いだ夜、周作から「傘を一本持て来たか」と問われ、
祖母に教えられた通りに「新なのを一本持て来ました」と返答し、
そのまま初夜へと突入するのですが、なんだか謎なやり取りだと思ったけど、
この地方の初夜の決まり文句みたいなものなんですかね?
こういう知らなかった風習を知れるのも本作の面白味です。

のんびり屋のすずですが、嫁としてバリバリ家事をしなければなりません。
姑は優しい人でしたが、周作の姉・径子がうるさい小姑で、
しばしば娘の晴美をつれて里帰りしては、すずのことをいびります。
すずは穏やかな性格なのでケンカしたりせず従順に従いますが、
実際は慣れない家事や義姉にストレスを感じていたのか、脱毛症になったりも。
活発な径子にしてみると、のんびりしすぎなすずにイライラするのかもね。
ある時径子はすずに「広島(江波)に帰ったら」と言いますが、
それは言い過ぎだろと思ったけど、実は「里帰りしていいよ」という意味で、
径子は意外とツンデレなだけの優しい小姑かもしれません。
娘の晴美はすずにとても懐き、まるで姉妹のように仲良しになります。
径子には息子もいますが、夫が他界して下関の夫の実家に取られたようです。
晴美は兄のことも慕っているのに可哀想ですね。
すずにも兄がいますが、怖い兄だったらしく「鬼ぃちゃん」と呼んでいます。
どうも兵隊として戦地に送られたらしく消息不明でしたが、
後に戦死して遺骨が帰って来ますが、骨壺の中は石ころで…。
たぶん消息不明で遺体も見つからず、戦死したことにされたのでしょうね。
最後にフラッと帰って来たりするかと思ったけど、特にそんな展開もなく…。

昭和19年4月、配給もどんどん減りますが、すずはタンポポなどの野草を摘み、
更に楠木正成が籠城戦で兵糧を節約するために考案した
楠公飯なんかも取り入れて料理を作るのです。
意外な料理の腕で驚きましたが、粗末な食材を少しでも美味しくしようと、
楽しそうに料理するすずの姿が微笑ましく、出来た料理も美味しそうでした。
でも楠公飯はクソ不味かったみたいです。
戦時中でも我慢できないほど不味いなんて逆に食べてみたいですね。
昔は戦時中の人々はもっと悲惨な生活をしていると思っていたけど、
貧しいながらも工夫して、明るく楽しく生きてたみたいですね。

昭和19年6月、呉で初めて空襲警報が発令し、庭に防空壕を作ります。
呉は戦艦大和なんかも入港する軍港の町なので狙われやすいのかな。
絵を描くのが好きなすずは、風景をスケッチしたりもしますが、
普通に港を書いていたら憲兵から間諜(スパイ)容疑を掛けられたりも…。
大問題になるかと思いきや、意外と笑い話で済んでしまいます。
憲兵もさすがにこんな女の子が間諜だとは本気で思わないか。
8月には砂糖の配給もなくなり、すずは砂糖を買いに闇市まで行きますが、
方向音痴で帰り道を見失い、綺麗な女性が多い街角に迷い込みます。
実はそこは花街だったのですが、戦時中でもやっぱりあるんですね。
そこで親切な遊女リンに道を教えてもらい帰ることが出来ましたが、
このリンはどうも、すずが小さい頃、祖母の家で出会った小汚い少女で…。
当時すずは彼女を座敷童だと思っていたみたいですが、
人攫いのバケモノ同様、実在する人間だったわけですね。
エンドロール後の出資者名簿が流れるところで、リンの詳細も描かれます。

19年12月、同郷の海兵・水原哲が家を訪れます。
当時すずと哲は親しかったみたいで、二人の様子を見た夫・周作は、
なんと哲の寝間にすずを向かわせるのです。
お国のために働く海兵には性的奉仕をする義務でもあるのかと思ったら、
周作はすずを無理やり自分に嫁がせたことに罪悪感があるみたいで、
要するに嫉妬の裏返しだったわけですね。
哲はすずに迫り、すずも哲とこんな関係になることを望んでいましたが、
周作のことも本当に愛しているので拒否するのです。
ここで本当に抱かれてたら、周作はどうしたんでしょうね?
自由恋愛が出来る時代じゃないから、なかなか複雑な感情です。
哲は戦艦青葉で出航し、青葉と共に戦死したみたいですが、
彼は兄も海兵で海で溺死したようで、海で死ぬのは本望みたいです。

昭和20年3月頃から、呉は頻繁に空襲を受けるようになります。
5月には夫・周作は軍人になり、訓練のため何カ月も家を空けることに…。
軍港に勤める義父も消息不明となるが、軍の病院に入院していることが判明し、
下関に疎開することになった晴美を連れて、すずは義父のお見舞いに。
その帰りに空襲に遭い、近くの防空壕に入れてもらって助かるも、
空襲が終わり外に出たところを時限式の爆弾(不発弾?)の餌食に。
晴美は爆死し、すずも晴美と繋いでいた右手を失います。
幼い晴美が死ぬのも驚いたけど、ヒロインが右手を失うなんて衝撃の展開です。
すずは一命を取り留めたものの、大好きな絵も書けなくなり、
家事も満足に出来なくなり、何より晴美を死なせたことの罪悪感で苦しみます。
今までどんな状況でも、おっとりのんびりしていた彼女でしたが、
さすがにこの状況で心境が激変してしまったようです。
その心境の変化を見事に演じている能年は、やはり演技派女優です。
家に落ちた焼夷弾を消すとろこなんて、始めのすずとは別人みたいです。

昭和20年7月、実家から妹すみがお見舞いに来て、焼け野原の呉を見て、
広島の方がまだ安全だから実家に帰って来ないかと言います。
晴美を死なせたことで義姉径子ともギクシャクしているすずは、
7月28日、実家に帰ることを決意するのです。
しかし病院の予約があるのですぐには帰れないでいると、
8月6日、広島に原爆投下され、その閃光と激震が呉まで届きます。
すぐに帰らなかったことで、彼女は難を逃れたわけですが、
実家の辺りからキノコ雲が昇る様子を目の当たりにするのは、
爆死するよりも辛かったかもしれませんね。

昭和20年8月15日、終戦の日を迎えます。
玉音放送を聞いたすずは、戦争終結に安堵するかと思いきや、
「最後の一人まで戦う覚悟じゃなかったのかね!」と激怒。
あのおっとりしたすずなのに意外でしたが、ずっと我慢してたのでしょうね。
右手や晴美を失ったのも敗戦で無駄になったと思ったみたいです。
昭和21年1月、すずは実家に里帰りします。
実家なんて原爆で跡形もないだろうと思ったのですが、
江波あたりはまだ大丈夫だったみたいですね。
ただ母は原爆で亡くなり、妹すみも被曝して臥せっているみたいで…。
やっぱり核の最も怖いところは放射能汚染ですね…。

周作が広島まですずを迎えに来て、2人で呉に帰りますが、
焦土と化した広島の町中で、小汚い女の子が二人に寄って来ます。
ちょうど死んだ晴美くらいの歳の女の子でしたが、
彼女は原爆で母を失った孤児で、死ぬ前に母が右手を失っていたので、
同じく右手がないすずに母の面影を見て、寄ってきたみたいです。
右手が引き千切れ、ガラスの破片まみれになり、
腐敗して死ぬ女の子の母の末路が描かれるのですが、
この和やかなタッチの絵でそんな壮絶な描写をされると、
その惨たらしさが何倍にも強く感じられますね…。
すずと周作は女の子を呉の家まで連れて帰り、娘同然に育てたようです。
いや、女の子を育てたのは径子だったかもしれませんね。
晴美を失った穴をその子が少しでも埋められたらいいんだけど。
その後、すずたちは慎ましくも幸せに暮らせたような感じなので、
一応めでたしめでたしなのかな。

うーん、やっぱりダメだな。
こんな感想では本作の素晴らしさを全く伝えられてないです。
とにかく『君の名は。』以上の傑作なので、是非観に行ってください。
片渕須直監督の次回作、そして能年玲奈の今後の活躍にも期待です。

コメント

素晴らしい映画でしたね。原作の大ファンだったのですが、忠実どころかその微妙なニュアンスまで見事に映像化されて、制作者の執念を感じました。

昔、北川景子でドラマ化されましたが、ごく普通のよくある女性視点の戦争映画で残念だったのでアニメ化は本当に嬉しかったです。

  • 2016/11/24(木) 10:18:37 |
  • URL |
  • モチスイ #iAXwXlSY
  • [ 編集 ]

モチスイさんへ。

返信が遅くなりました。

本作を観た後、とてもよかったので珍しくパンフを買おうと思いましたが、
同じことを考える人が多かったのか売り切れており、仕方なく本屋に行って、
記念に原作本を買おうとしたのですが、全3巻だったので断念しました。
原作も素晴らしいなら買えばよかったかな?

原作の存在も知りませんでしたがドラマ化されていたことも知りませんでした。
見てないので何とも言い難いですが、実写化では厳しいかもしれませんね。

  • 2016/11/28(月) 17:12:14 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

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