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選挙の勝ち方教えます

7本連続でDVDの感想になりましたが、
明日からは劇場鑑賞作の感想に戻りたいと思います。
でも感想未執筆のDVDもまだまだあります。
最近、ビデオスルーになる洋画が多すぎるんですよね。

選挙の勝ち方教えます
Our Brand Is Crisis

2016年10月5日リリース。

ジョージ・クルーニー製作、サンドラ・ブロック主演の本作ですが、
全米ボックスオフィス初登場8位という低調なスタートを切り、
製作費2800万ドルに対して、たった700万ドルしか興収を得られず、
大コケとなってしまったようです。
たしかに批評家のレビューもそれほど高いわけでもないけど、
米国大統領選を控えるなか、大統領選挙の裏側を描いた本作は
もっと興味を引いてもよさそうな内容だと思うのですが…。
逆にポリティカルな内容を小難しそうだと忌避されたのかも。
それに大統領選が舞台ではあるけど、米国大統領選ではないしね。
アメリカ人は自国の政治への関心は比較的高いらしいけど、
他国の政治なんて全く知らない人が多いらしいし…。

本作は2006年のドキュメンタリー映画『Our Brand Is Crisis』が原作なので、
つまり実話が基になっているということになりますね。
本作の舞台は大統領選は大統領選でも、ボリビアの大統領選。
ボリビアには馴染みがなく、南米の真ん中ら辺の国ということしか知らず、
当然本作で描かれている出来事も知りませんでした。
実話に基づくとは俄かに信じがたい内容ですが、かなり脚色されていそう。
なにしろ、もともと主人公はジョージ・クルーニーが演じるはずのところを、
サンドラ・ブロックが直談判して、主演を捥ぎ取ったそうですからね。
つまり主人公の性別まで変わっちゃってるわけです。
もちろん登場人物も全員仮名になっているものと思われますが、
それならもうボリビアも架空の国にしちゃってもよかったかもね。
かなりコメディタッチですが、選挙についてシニカルに描かれており、
選挙システムは違えど、日本にも当て嵌まるところもあり、なかなか面白いです。
以下、ネタバレ注意です。

ボリビア大統領選の候補者カスティーヨ陣営スタッフが、
選挙戦略家ジェーン・ボディーンに選挙コンサルタントを依頼します。
ジェーンは凄腕らしいけど、六年前に四連敗して山奥に引き籠り中。
そんな落ち目な人物に高額ギャラで依頼するなんて…。
本人も「負け戦は御免だ」と乗り気じゃありませんが、
対立候補となるリベラ陣営の選挙参謀がパット・キャンディだと知り乗り気に。
どうもジェーンを四連敗させたのはキャンディのようで、リベンジしたいようです。
でもリベラは圧倒的な本命候補なので、負け戦は確実で、
ここをリベンジの場に選ぶのはちょっと納得できません。
どうやら昔、ジェーンとキャンディはどこかの市長選で対決したのですが、
選挙中にキャンディ側の候補者の娘がコカイン中毒という噂が立ちます。
その娘はそれを苦に自殺しますが、噂の出所がジェーンだと思われて解雇され、
山奥に引き籠らざるを得なくなったみたいです。
キャンディがジェーンを陥れるために、その噂を流したのだろうと思いましたが、
どうも本当に噂の出所はジェーンのようで、自責の念で引き籠ったのかも。
この真偽は劇中でははっきり描かれていませんが…。

キャンディへのリベンジを誓いボリビアに乗り込んだはずのジェーンですが、
カスティーヨや他のスタッフとの初顔合わせに時も無気力で…。
選挙CMにも一切アドバイスせず、酷い出来に…。
「あの候補では勝てない、不気味で冷たい気がする」と戦意喪失したようです。
まぁカスティーヨは元大統領でしたが、ボリビア生まれアメリカ育ちなためか、
強引なグローバル化政策を実行して国民から売国奴扱いされて失脚しており、
そんな候補が再選できるとは考えにくいですもんね。
投票日まで90日の世論調査ではリベラの支持率が39%でトップなのに対し、
カスティーヨは8%しかなく、泡沫候補なのは一目瞭然。
むしろなぜ8%も支持されているのか不思議なくらいです。
なので諦めモードのジェーンの気持ちもわからないでもないが、
勝てなくても高額のギャラ貰ってるんだから仕事しろって感じです。
なんかこの主人公、あんまり印象のいい人物ではないですね。

ところが各候補者が集まる討論会のバックステージで、
再会したキャンディから挑発されたことでジェーンの闘志が再燃します。
その討論会後にカスティーヨが聴衆の一人から生タマゴをぶつけられますが、
彼はぶちキレてこの聴衆の顔面を殴打します。
有権者に暴力を振るうなんて、候補者としては完全アウトですが、
慌てて謝罪文を用意するスタッフに対し、ジェーンが待ったをかけます。
彼女は聴衆がキャンディのヤラセだと判断し、謝罪させるのが目的だと考え、
逆に「戦うリーダー」としてカスティーヨを売り出そうと提案します。
「ボリビアは危機的だから戦うリーダーが必要だ」というスローガンで。
いやー、戦うのはいいけど暴力で戦ったら批判されるだろと思ったけど、
そのタマゴをぶつけた聴衆も不気味な仮面付けててマトモとは思えない奴だし、
あんな奴が殴られたところで国民はなんとも思わないかもしれませんね。
それにしても至近距離からタマゴを押し付けられた感じでしたが、
カスティーヨの周りのスタッフも、あんな不気味な奴を近づかせるなよ。
国民から恨まれるカスティーヨならタマゴどころか刺されてもおかしくないのに。

ありもしない危機を煽り、強いリーダー像を示す戦略により、
カスティーヨの支持率は10%に上昇します。
続ければまだ上がりそうですが、ジェーンは「25%が限界だろう」と。
しかし彼女は更に支持率が上がる戦略を練るのではなく、
他の候補を24%以下にするためネガティブ・キャンペーンを提案します。
アメリカではネガキャンは当たり前だけど、ボリビアでは好まれないようです。
しかしジェーンは独断でネガキャンの専門家を自陣営に招き、
リベラの弱点探し、失言探しに躍起になります。
先の市長選ではネガキャンによって死人まで出てるのに…。
意外にもカスティーヨもネガキャンに断固反対しますが、
キャンディのリベラ陣営から先にネガキャンを仕掛けられてしまいます。
カスティーヨの不倫相手の写真が載ったチラシがばら撒かれます。
チラシをばら撒いたのは「ラパス草の根運動」という組織で、
誰の仕業かは不明だが、ジェーンにはキャンディの仕業と確信があるようで。
うーん、ちょっと勢い付いているとは言え、支持率十数%の候補に対し、
圧倒的本命候補のリベラ陣営がネガキャンなんて仕掛けるかな?
まぁ逆にだからこそ遺恨のあるキャンディの仕業以外に考えられないのかも。
ネガキャン嫌いのカスティーヨも、目には目をでネガキャンを容認。
リベラが公費を13万5000ドル着服したという疑惑を流します。
公用車も不正に私物化していたようで、まるで前東京都知事のハゲみたいだ。
政治家として不倫はまだしも汚職はアウトですね。

ネガキャン合戦により、カスティーヨにいい波が来ていましたが、
なんとジェーンが悪ふざけで、キャンディの宿泊するホテルの部屋の窓を、
リベラのフィギュア人形の首を投げ込んで割るのです。
これが「カスティーヨ陣営の選挙戦略家の奇行」と報じられて…。
この女、アホすぎて本当に凄腕なのか疑わしいですね。
なんでも精神科に通院歴もあり、躁鬱病でもあるみたいですが、
選挙戦略家が自陣営の足を引っ張るなんてあり得ませんね。
カスティーヨからも「君はお荷物だ」と言われますが、
ジェーンは「あなたには私が必要なはずよ」と居座ります。
当初カスティーヨを傲慢と言っていた彼女ですが、傲慢なのはどっちだ。
バスで遊説中にリベロ陣営のバスに遭遇したジェーンは、
追い抜き際に窓から生尻を出してキャンディを挑発しますが、
もう一回精神科に入院するべきだろと思ってしまいました。
それほどキャンディが憎いのだろうが、もし写メでも撮られようものなら、
また絶好のネガキャンのネタを提供することになるのに…。
すぐヒステリー起こすし、この主人公、ホントに嫌いだな。

そんな折、またラパス草の根運動が中傷ビラをばら撒きます。
そこにはカルト教団「宇宙の風」の教祖とカスティーヨのツーショットが…。
これは某カルト教団のフロント政党が大嫌いな私的にも
不倫や汚職や暴力以上にアウトなネタです。
でもどうやらカスティーヨ自身はカルト教団の信者ではないみたいで、
息子が入信したため、心配で見に行った時の写真らしいです。
いやいや、身内がカルトでも十分アウトだろ、と思いきや、
テレビ番組でのインタビューでカルト疑惑を追及されたカスティーヨは、
息子の話で感極まって涙し、視聴者の同情票で支持率が一気に上昇し、
リベラ30%に対し、カスティーヨ19%まで差を縮めます。
ジェーンの「カメラ目線で泣け」という助言が功を奏しました。
まぁ演技が下手なカスティーヨは本当に感極まったみたいですが。
しかし「強いリーダー」が泣けば離れる支持者もいそうですが…。

カスティーヨは先住民グアラニ族が住むスラムまで遊説することに。
危険な地域なのでスタッフは反対しましたが、ジェーンの強い意向です。
なんでも国民の6割が先住民なので、そりゃ無視できませんね。
先住民はグローバル化に大反対なので、当然カスティーヨにも批判的で、
バスの行く手を阻まれて投石されたりとかなり危険な状況に。
でもカスティーヨは果敢にもバスから降りて先住民のリーダーと話ます。
先住民はカスティーヨがIMFを介入させることに懸念を抱いているのですが、
彼は「国民選挙を実施し信を問う」と約束し、先住民の指示も取り付けます。
はじめは私もダメ候補だと思ったカスティーヨでしたが、
指導者としてなかなか立派な人物に見えてきました。

かなり他候補の支持者を取り込めたカスティーヨでしたが、まだ支持率3位。
反グローバル化なリベラの支持者をこれ以上取り込むことは難しいため、
リベラの支持者を2位のベラスコに散らす戦略に出ます。
まさかベラスコの選挙活動を手伝うわけにもいかず、どうやるのかと思ったら、
コネを使って米国国務省にベラスコを批判させます。
すると反グローバル化で反米的なリベラの支持者がベラスコ指示に鞍替え。
まさか批判することで支持率を高めるなんて目から鱗です。
その結果、リベラの支持率との差が縮まり、投票日まで8日の時点で、
リベラ26%、ベラスコ24%、カスティーヨ22%の三つ巴の大接戦に。

そしてその3候補による最後の討論会が開催されます。
討論会目前、会場でキャンディがジェーンに話し掛けてくるのです。
会話中、ジェーンはその時読んでいたドイツ文学から、ある人物の名言を引用。
その名言を気に入ったキャンディは、ジェーンへの当て付けも込めて、
自候補リベラに討論会で引用させ、素晴らしい演説を披露します。
最後の最後でジェーンは敵に塩を贈ってしまったな、と思ったのですが、
なんとキャンディに教えた名言は、ナチスの政治家ゲッベルスからの引用で…。
これは取り返しのつかない致命的ミスですね。
しかし名言の中身は正論だし、ゲッベルスもまともなことも言うんだな。
ジェーンにしてみれば「してやったり」ですが、リベラが引用するとは限らないし、
もし引用してなければ討論会で惨敗していたはず。
たまたま思い通りになったけど、ちょっと無策すぎますね。

そして迎えた投票日当日。
投票結果はリベラ22.8%、ベラコス21.9%、そしてカスティーヨ23.5%。
リベラとの1%未満の接戦を制し、カスティーヨが大統領に当選します。
ジェーンもキャンディへのリベンジが成就し大満足。
しかしそんな喜びも束の間、なんとカスティーヨは先住民との約束を破り、
国民投票なんて行わず、舌の根も乾かぬうちにIMFと接触するのです。
IMFから借金するということは、当然増税されるわけだから国民は猛抗議。
ボリビア各地で暴力を伴う大規模なデモが起こり、国は大混乱に。
まぁ私も選挙中には嘘でもいい事しか言わないのが政治家だと思ってるけど、
さすがにこれは酷いというか、独断でそんなことが決められるなんて、
やっぱり大統領制ってちょっと怖い気がしますね。
カスティーヨを勝たせたジェーンは「選挙後の行動まで責任とれない」と
開き直る素振りをしますが、内心罪悪感に苛まれていたみたいで、
帰国を取り止めて反体制運動を始めたところで本作は終了です。
うーん、キャンディに勝つためには選挙を利用した彼女が、
選挙の真の重要性に気付き改心した感じの終わり方ですが、
ちょっと心変わりの理由付けが弱くて急すぎる展開に思えます。
米国人がたった3カ月しか滞在してないボリビアのために反体制活動するか?
しかもカスティーヨを批判するということは反米を支持することだし。
だから本作はアメリカでの評判が悪いのかもしれませんね。
多くの国が加盟するIMFの介入が絶対悪だとも言い切れない気がするしな。
アメリカの次に出資している日本に「増税しろ」と言ってくる変な組織だけど。

主人公ジェーンは好きになれないし、行動も理解できませんが、
下衆な選挙戦をシニカルに描けていて面白かったです。
下手にロマンスを持ち込まなかったのも好感ですね。

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