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チリ33人 希望の軌跡

リオ五輪の閉会式で安倍首相がスーパーマリオに扮して土管から飛び出し、
世界的に話題になっているみたいですね。
私はリアルタイムで見れませんでしたが、なかなか粋だと思いました。
日本のみならず海外の反応も概ね好評だったみたいで、
アニメやゲームなどは完全にアメリカに負けている今でも、
日本にはまだまだソフトパワーが残っているんだなと安心しました。
この調子で2020年の東京五輪の開会式も日本のサブカルチャー満載で、
外国人に大ウケするような演出をしてほしいと思います。
メインカルチャーを推した長野五輪はトラウマになるほど悲惨だったので、
二度とあんな恥はかきたくないです。

ということで、今日はスーパーマリオが土管から飛び出す…、
…ではなくて、地下700メートルの穴から飛び出す南米映画の感想です。

チリ33人 希望の軌跡
The 33

2016年8月24日リリース。

チリで2010年8月5日に発生したコピアポ鉱山落盤事故を題材にした本作。
崩落で33名の鉱山作業員が閉じ込められるも、10月13日に全員が救出され、
当時は日本でも奇跡的美談として大きく報道されました。
当時から「これは絶対映画化されるぞ」と確信していましたが、案の定です。
しかしながら、ちょっと製作に時間がかかりすぎです。
すでにリオ五輪すら過去のことになりつつあるほど時代の流れは早く、
昨年の全米公開時にはすでに事件の記憶も風化しており、
あれだけ話題になったにも関わらず、全米ボックスオフィス初登場5位、
全米総興収も約1200万ドルと製作費の半分程度で大コケしました。
日本でも当初劇場公開予定でしたが、全米の成績を受けてかビデオスルーに。
まぁ日本でも事件は風化しているから劇場公開してもコケたでしょう。
逆にもっと完全に忘れ去られた頃に公開した方がよかったかも。
今ならまだ結末知ってる人も多いし、中途半端に古いネタな印象だし。
以下、ネタバレ注意です。

チリのアタマカ砂漠にあるサンホセ鉱山。
1889年に開山された古い金鉱山で、内部構造が脆くなっていますが、
会社はそれを知りながらロクな安全措置も講じず採掘を続けます。
これまでにも5回の落盤があり、その都度作業員全員死んだそうで、
とんでもなくブラックな職場ですが、やはり給料がいいんでしょうね。
そして2010年8月5日、ついに大規模な崩落事故が発生し、
地下500メートル付近の整備場で働く作業員33人は慌てて避難開始。
当然出口に向かうものだと思いましたが、
更に深いところにある地下700メートルの避難所に逃げ込みます。
そこには30人が3日暮らせるだけの備蓄があるのですが、
崩落を想定しての備蓄としては少なすぎますよね。
換気口エントツから脱出しようと試みますが、その避難ハシゴも未完成で、
地上との通信機も飾りで、本当に安全確保が蔑ろにされています。
33人の中には本当はオフだったマリオや、身重の妻がいるアレックス、
今日が退職日のゴメス、今日が初日の唯一のボリビア人ママスなどがいます。
本当に運のない人たちですが、ある意味フラグですね。

会社は事故を隠蔽しようとしますが、すぐに露見し報道されます。
チリ大統領は民間企業の責任なので静観するつもりでしたが、
ゴルボルン鉱業大臣は道義的責任を感じて、崩落2日目に現地入りし、
救出隊指揮官ソウガレットと共に救助にあたります。
直径数センチの穴が掘れるドリルを10機使い掘削するのですが、
花崗岩の倍の硬さの70トン級の超巨大閃緑岩(メガストーン)が坑道を塞ぎ、
掘り進むのは容易ではなく、避難所到達まで8日はかかる見込み。
しかもドリルのコースが逸れる可能性が高く、幅5メートルの避難所に
上手く的中できる確率は1%以下との試算です。
もちろん作業員が生存しているかもわからない状況なので、
救出する側も心が折れそうな作業になりますね。
しかし生き埋めになった33人は更に心が折れそうな状況で、
不良作業員のダリオが勝手に非常食を喰い出して仲間と大揉めに。
ベテラン作業員マリオが食糧庫の鍵を預かり、食糧管理することになります。
でもなぜマリオが33人を仕切ることになったのかはちょっと謎です。
安全管理者のルチョか人望の厚い牧師ホセがリーダーになるべきでは?

5日目、メガストーンのあまりの硬さにドリルの刃が次々ダメに。
長期戦を見越して、現場近くに作業員家族のためのキャンプ・ホープを設営。
売店や診療所、学校まであるちょっとしたテント村です。
地下ではアル中のダリオが禁断症状で苦しみ、牧師に励まされます。
宗教なんて世迷言だと思ってますが、こんな絶望的な状況下では
牧師とかがいてくれると救われるのかもしれませんね。
8日目、早くも備蓄が尽き始め、食事は一人あたりツナ缶一匙です。
地下水を濾過して飲み水はある程度確保できるみたいです。
作業員たちは冗談で「ボリビア人はチキン味らしい」なんて言いますが、
本当に共喰いが起こっても誰も咎められない非常事態ですよね。

12日目、避難所にドリルの音が響き渡り、ついに貫通かと思われましたが、
懸念した通りコースが逸れ、10メートル横を通り過ぎてしまいます。
アレックスは絶望し自殺をはかりますが、マリオが止めます。
次のドリルまでまた10日も待つのかと思うと私も自殺したくなるでしょうね。
地上も絶望的な状況で、10機中9機のドリルがすでにダメになっていて、
救出指揮官ソウガレットも「もう覚悟を決めた方がいい」と漏らします。
14日目にはテレビ番組の司会者ドン・フランシスコが取材で現場を訪れ、
作業員の家族と視聴者に向かって「手遅れかも」と言い、絶望感を煽ります。
なんなのこの空気読めないオッサンは?
仮にそう思ったとしても、よく公然と「手遅れ」なんて言えるものですね。
実際に地下では最後のツナ缶が開けられ、最後の晩餐が催され、
当事者を含めて誰もが手遅れだと思っていましたが…。

いや、ひとりだけまだ諦めてない人がいました。
16日目、これ以上の作業は費用の無駄だと考えたチリ大統領の指示で
指揮官ソウガレットは撤退を命じられますが、
それでもゴルボルン鉱業大臣は諦めず、作業続行を指示します。
ちょっと意味がわかりませんでしたが、ドリルのコースをわざと外し、
メガストーンにドリルを案内させるという作戦を思いついたみたいで、
その案に専門家のソウガレットも感心し、作業続行に協力します。
その方法で翌17日目にはドリルを避難所まで貫通させることが出来ますが、
作戦の理屈が理解できなかったので、あまり感動できませんでした。
33人はドリルにペンキを吹き掛け、「我々は無事だ」というメッセージを結わえ、
地上もまだ生存者がいることが初めてわかるのです。

まさかの33人全員生存の報に、世界が盛り上がります。
直径数センチの穴にケーブルを通し、地下とのテレビ電話が可能になり、
33人の様子も映像で報じられ、彼らは一躍時の人になります。
特にマリオは「スーパーマリオ」と称されて大人気となり、
キャンプ・ホープの売店で彼のグッツが売られるほどです。
まさか事故現場を観光地化してしまうとは、彼らの家族も抜け目ないです。
物資もパルマと呼ばれる直径13センチの筒状のカプセルで投下されます。
食料や衣料はもちろん、i-Podとかポルノ雑誌とか娯楽グッツも贈られ、
地下での生活は見違えるほど豊かになるのです。
たしか日本からも究極の暇潰し玩具「ムゲンプチプチ」を贈ったとか…。
彼らが脱出できるのはまだまだ先のことになりますが、
何不自由のない引き籠り生活が満喫でき、ちょっと羨ましい環境で、
急激に悲壮感がなくなってしまったのは物語的にどうなんでしょうね。
しかも慈善か売名か、ひとり1万ドル寄付するという金持ちも現れて、
もう33人が気の毒だったという気持ちが吹き飛んでしまいました。

地上では救助するために大きめの穴を掘る計画が立てられ、
三機の特殊なドリルが投入されます。
ひとつはオーストラリア製、ひとつはアメリカ製、ひとつはカナダ製で、
さながら国対抗の救出合戦の様相を呈しますが、
まずオーストラリア製ドリルが故障し、カナダ製ドリルも断念して撤退し、
アメリカ製ドリルに望みを賭けることになります。
本作はチリ映画ですが、アメリカ市場でのヒットを狙っているので、
わざわざアメリカを持ち上げるエピソードを強調しているのでしょう。

しかしアメリカ製ドリルも順風満帆ではなく、50日目に刃が折れ、
地下430メートル地点で破片が引っ掛かり、除去作業に時間を費やします。
その間、地下では新聞で勇敢なるリーダーとしてスーパーマリオばかりが
持て囃されている状況に不満を持つ作業員が現れます。
更にマリオに契約金が超高額な本の出版依頼が来ていると判明し、
皆の不満が爆発、批判が集中しますが、スーパーマリオも
「今生きてるのは俺のお蔭だ」と傲慢な発言で顰蹙を買い仲間外れに。
人間は極限状態だと助け合うのに豊かになると争うんですね。
更に54日目、唯一のボリビア人で疎外感を覚えていたママニも、
いつもからかってくる作業員エルヴィスに対してついにブチギレ、
彼の首にナイフを押し当ててぶっ殺そうとします。
スーパーマリオが止めに入り「自分を見失うな」と説教。
そして「迷ったけど本の契約はしない」と宣言し、彼らは再び団結します。
本作も原作本があるはずなので、それは誰が書いたのか調べたら、
公平にするため33人から依頼された作家が書いたみたいです。
たぶん本や本作から得た収益も公平に分配しているのでしょう。
そういうことが出来る人たちじゃないと全員生存はしてないでしょうね。

アメリカ製ドリルの破片回収も終わり、掘削が再開され、
58日目、ついにドリルが避難所に到達する目前になります。
しかし避難所の金属製の補強棒がドリルの進路を塞いでおり、
33人は補強棒を外しますが、外すとまたメガストーンが沈下し始めるため、
急いで脱出しなければまた崩落で生き埋めになります。
地上では人ひとり入れる救出用カプセル「フェニックス1」が準備され、
69日目の10月13日、いよいよ脱出作業が始まります。
いつ崩落してもおかしくない状況なので、脱出する順番が重要です。
もちろんみんな先に出たいでしょうが、初っ端はある意味実験台なので危険。
誰が最初の脱出者になるのか、揉めると思いましたが、
特にそんな様子もなくアレックスに決まります。
娘が生まれたばかりの彼に最も危険な一番手をやらせるなんて、
どんな選考だよと思ってしまいましたが、結局途中少し詰まり、
冷やっとしたものの、問題なく脱出に成功します。
69日間も生き埋めだったのに、物資のお蔭で小奇麗な恰好で生還しますが、
どうせなら汚い恰好で生還した方が世間の感動も一層高まると思うんだけど。
二番手はスーパーマリオでしたが、安全が証明された上で最も早い、
最もいい順番を彼が得るのは、なんか違う気がします。
本当にリーダーなら仲間全員の脱出を見届け、最後に乗るべきだろと。
結局しんがりを務めたのは安全管理者のルチョでしたが、
やはり彼がリーダーに相応しかったのではないかと思います。
ただ最後のひとりは、避難所でひとりになるという貴重な経験も出来るので、
崩落の危険性を度外視すれば美味しい役目かもしれません。

無事33人全員救出し、ゴルボルン大臣やソウガレット指揮官も安堵。
作業員の家族も喜びの再会を果たし、めでたしめでたしです。
ところが、杜撰な安全管理で鉱山事故を招いた会社は、
どういうわけか裁判で無罪となり、作業員に対する補償もなしに…。
まぁ作業員は寄付とか印税とか講演会である程度収入はあるでしょうが、
こんな会社がお咎めなしとはチリの司法はどういう了見なのか。
まぁ落盤事故による犠牲者は毎年1万2000人もいるらしく、
鉱業が盛んなチリでも当然多発しているので、ここで有罪の前例を作ると、
鉱業が衰退するという政治的判断があったのかも。
調べたところこの鉱山会社は破産したようなので少し溜飲が下がったけど、
なぜ作中でそのことを伝えないのか不思議です。
ハッピーエンドで鑑賞後感をよくするなら会社倒産に言及するべきですが、
作業員たちの悲惨さを強調したかったのかも。
エンドロールで実際の33人が登場しますが、事故の記憶も風化して、
彼らの収益も減るから、今一度同情を引こうという目論見なのかも?

サバイバル映画ですが如何せんオチがわかっているので、
救出作業にハラハラドキドキ出来ず、予定調和の生還で感動も出来ず、
ちょっと微妙だったかもしれません。
来月劇場公開の『ハドソン川の奇跡』も同時期の飛行機事故が題材ですが、
やはり風化したけど忘れたわけでもない中途半端な時期なので、
本作と似たような感想になりそうな予感がします。

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