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栄光のランナー 1936ベルリン

リオ五輪、全く見ることが出来ませんでした。
負けるのを見るのが嫌いなので、国際試合観戦は苦手なのですが、
けっこう見ていたトリノ五輪での日本の獲得メダルたった1個がトラウマで、
それ以来、五輪はなるべく見ないようにしていました。
特に今大会では開会式前に行われたサッカーの初戦で、
絶対的に有利な条件だったナイジェリア戦でまさかの敗北を喫し、
幸先悪すぎで嫌な予感しかしなかったので…。
ところ終わってみれば金メダル12個、メダル総数42個で国別ランキング6位と、
日本が大活躍したみたいで、それなら見ておけばよかったなと…。

ということで、今日は五輪が題材の映画の感想です。

栄光のランナー 1936ベルリン
Race.jpg

2016年8月11日日本公開。

本作はリオ五輪期間中の8月11日に日本公開されましたが、
私が観に行ったのはリオ五輪が終了してからでした。
タイムリーなネタの映画なので期間中に観るのがベストとは思いましたが、
盆は他の夏の話題作に劇場を占拠されたのか、公開規模が思いの他小さく、
リオ五輪終了間際の20日に拡大公開されるのを待つしかなく、
結局、リオ五輪終了してから観に行くことになりました。
うーん、ちょっと公開が遅い気がしますね。
五輪ネタなら五輪開催の数週間前には公開スタートしないと、
開催中の公開だと旬が一瞬で過ぎてしまうので勿体ないです。

本作は陸上選手ジェシー・オーエンスの伝記映画です。
名前くらいは聞いたことがありますが、ほとんど知らない人物です。
その名前も、本当はジェームズ・クリーブランド・オーエンスですが、
J・C・オーエンスが聞き間違えで転じてジェシー・オーエンスになったとか。
結局、名前も含めて全く知らない人物だったわけです。
知らない人物の伝記映画はなかなか楽しみ難いものですが、
本作は人種差別というテーマが明確なので、ドラマとして普通に楽しめました。
アメリカ人選手の伝記ですが、本作は独加合作なので、
ハリウッド映画ほど綺麗事ではない物語になっており、興味深いです。

ただ、テーマ性を重視するあまり、伝記的側面が弱まりすぎている気もします。
ジェシーは当時最強の陸上選手ですが、登場時の大学時代からすでに
世界タイ記録保持者なので、なぜ彼がそんなに速く走れるのか、
強さの秘密とかが全く描かれていません。
他の選手よりも努力しているような印象も受けないので、
ただ才能に恵まれただけの印象で、努力で勝利することが美徳とされる
スポーツ映画としては少し物足りなさも感じます。
以下、ネタバレ注意です。

1933年、100ヤード走の世界タイ記録保持者だった黒人ジェシーは
推薦を受けオハイオ州立大学に入学し、
名匠スナイダーコーチが指導する陸上部に所属します。
しかし、まだバスに黒人専用席があるような時代で黒人差別は根強く、
ジェシーは白人オンリーのアメフト部から嫌がれせを受ける毎日です。
アメリカ中西部のオハイオ州でもけっこう黒人差別があったんですね。
練習初日、ジェシーは9.5秒の好記録を出しますが、
それを見ていたアメフト部コーチは「世界記録より1秒遅い」と言います。
しかし実は彼が走ったのは100ヤードではなく100メートルだったのです。
100ヤードは約91メートルなので、世界記録を上回る記録ですが、
100メートル走が9.5秒だと、現記録保持者ウサイン・ボルトより速くない?

ジェシーは故郷クリーブランドに恋人ルースを残して来ていますが、
なんとすでに3歳の娘がいるみたいで、陸上部の練習に参加しながら、
養育費を稼ぐために給油所(週給2~3ドル)で仕事もしています。
高校の時に孕ませたことになりますが、あまり感心できませんね。
コーチは彼を練習に参加させるため、州議会の雑用の仕事を斡旋しますが、
籍を置くだけで何もしなくても月給60ドル貰える仕事で、なんかズルいです。
だらしない性生活の責任くらい取らせろと思います。
その後、ジェシーは浮気までして、恋人ルースに訴えられそうになりますが、
陸上選手としては偉大かもしれないが、男としては最低です。
その訴訟騒動のゴタゴタで競技会でも成績不振に陥ったりしますが、
これでは仕事斡旋してくれたコーチの面目丸潰れだし。
「英雄色を好む」というやつですが、伝記としてジェシーの偉業を称えるなら
浮気のエピソードなんていらないはずなのに、あえてそこを取り上げるとはね。
結局ジャシーは浮気相手を捨てて、ルースと結婚します。

競技会の3日前、練習帰りのジェシーは友達と棒跳びをして遊び怪我します。
練習のために色々免除されてるのに、遊びで怪我するなんて意識が低いです。
しかし彼は怪我をおしてビックテン選手権に強行出場するのです。
まず100ヤード走に出て、9.3秒の世界記録を叩き出します。
怪我しても世界記録とか、バケモノみたいな奴ですが、
当時は数人の計測員がストップウォッチで測る方式で、当然誤差があり、
その最も遅いタイムが採用になるため、世界タイの9.4秒が公式記録になります。
黒人選手だから白人計測員の手心が加えられたのかとも思いましたが、
次に出場した走幅跳でも世界記録、200ヤード走でも世界記録、
225ヤードハードルでも世界記録となり、一大会で3つの世界記録を樹立します。
怪我して世界記録3つと世界タイ記録1つを出すなんてバケモノにも程があり、
怪我のエピソードは彼の凄さを強調するため、話しを盛っている気がします。
それにしても自動計測が当たり前の今、手動計測していたことに驚きました。
あと、スターティングブロックもなかったので、コースに穴を掘って、
クラウチングスタートの足場にしていたのもビックリです。

一方、ナチスのユダヤ人差別に抗議するため
アメリカはベルリン五輪に参加するべきではないという世論が盛り上がり、
AOC(米国オリンピック委員会)は会長を現地に派遣しナチスの宣伝省と交渉。
ナチスはベルリン五輪をゲルマン民族の優位性をアピールする場と考え、
ユダヤ人や黒人選手は参加させない方針でしたが、
AOC会長に「アメリカ抜きでやる気か?」と脅されて、渋々方針を撤回。
参加の是非を決めるAOCの投票日、ナチスの独裁に抗議するためにも
参加するべきではないという意見に対してAOC会長は、
選手のチャンスを奪うのかと反論し、結局58対56の僅差で参加が決定します。
私個人としては選手のチャンスより人権の方が重要だろと思うし、
真っ当に投票したらこんな結果にはならないような気がしますが、
AOC会長はナチスから買収もされていたし、裏で多数派工作があったのかも。

アメリカのベルリン五輪参加が決まり、ジェシーも五輪を目指します。
そんな彼のもとにNAACP(全米黒人地位向上協会)の使者が訪れ、
活躍して黒人の地位向上に努めてほしいと激励でもされるのかと思いきや、
逆に参加しないでほしいと依頼されるのです。
ユダヤ人差別するナチスのベルリン五輪に参加することは、
アメリカの黒人差別を容認するようなものであるという理屈で、
アメリカ政府に対する抗議として参加するべきではない、と…。
なるほど、国内最強のジェシーに出場辞退されたらアメリカは痛いですね。
差別を受けてきたジェシーも揺れ動きますが、
怪我で選手生命を絶たれたライバルの黒人選手ピーコックから
「俺の代わりにヒトラーの鼻を明かしてほしい」という説得を受けます。
たしかにゲルマン民族の優位性というナチスの幻想をぶち壊すには、
五輪でドイツ人選手を負かすのは有効でしょうね。
しかし逆に負ければナチスに屈服したことにもなるため、
ジェシーは悩むが、コーチから「周りの目はどうでもいい」と助言され、
国内選考会に参加し、100M走、200M走、走幅跳の代表に選ばれます。

1936年、いざベルリンに行くと、部屋も白人選手と相部屋だったりと、
選手村では全く黒人差別はなく、ナチスの噂は嘘ではないかと思うほど。
しかしコーチがシューズを買いに靴工場まで行く途中、
ナチス警察によるユダヤ人狩りに遭遇したりします。
リオ五輪でも治安がいいのは会場周辺だけと言われてましたもんね。
ナチスはベルリン五輪に人種差別が無い風に取り繕ってはいますが、
それはもちろん表向きだけで、ヒトラーは金メダリストに祝辞するはずなのに、
100M走に出場して10.3秒で金メダルに輝いたジェシーを無視します。
AOC会長は抗議するが、宣伝相は「閣下がアレと握手するとでも?」と…。
まぁヒトラーとの握手なんて、こっちから願い下げですよね。
それにしても今は100M9秒台が当たり前なので、
やはりウサイン・ボルトとか今の選手の方がジェシーより速いんですね。

続いてジェシーは走幅跳に出場。
ドイツ人選手ルッツ・ロングが優勝候補で、ヒトラーも期待する競技です。
ビッグテン選手権で世界記録を保持しているジェシーですが、
五輪での踏切判定はかなりシビアで、予選で2回連続ファウル。
すると敵のはずのルッツが踏切位置を助言してくれ、3回目は成功し決勝へ。
決勝でジェシーはオリンピック記録の8.06メートルを跳び、金メダルに。
ルッツは2位となり敵に塩を贈ってしまいますが、2人はガッチリ握手。
国を越えた、いや人種を越えた友情に感動しました。
競技に民族意識を持ち出す例の国に見習ってほしいものです。
ナチスは優れた遺伝子の国民を作るため、優れた選手に女を宛がい、
子供を作るように強要していたらしく、ルッツはそんな政府に不満を持ち、
ゲルマン民族が優位だという考えは間違いだと証明したかったそうです。
なんかそんな風に言われてしまうと、わざと負けたみたいで…。
ルッツに激励されたジェシーは200Mでも20.7秒で金メダル獲得します。

黒人の大活躍でイライラするヒトラーの様子に宣伝相は焦り、
アメリカに嫌がらせするためか、AOC会長を呼び出し、
「癒着をバラされたくなければ400Mリレーにユダヤ人は出すな」と脅します。
AOC会長は保身のため、400Mリレー代表チームからユダヤ人2人を抜き、
代わりにジェシーら黒人選手2人を加えます。
ユダヤ人はダメだけど黒人なら宣伝相も文句は言わないのでしょうか?
100M走の金メダリストを加えたら、逆にチームが強くなりそうだけど…。
まぁバトンの受け渡しにも技術がいるので、バトンパス練習していない
ジェシーは不利かもしれませんが、それも考慮し彼は第一走者になります。
バトンパスは渡すより受け取る方が難しいですもんね。
結局、ジェシーを含めた代表チームは39.8秒の世界記録で金メダルに。
ジェシーはこの大会で4つの金メダルを受賞したことになります。

英雄的な活躍をして帰国したジェシーでしたが、
ホワイトハウスは彼の偉業に対して公式声明を発表することもなく、
一流ホテルで行われる彼が主役の祝賀会も、黒人を理由に裏口から通され…。
ジェシーは全く黒人の地位向上に帰依できなかったわけで、
これならNAACPの言う通り、出場辞退するべきだったかも…。
ただ最後に白人少年が彼にサインを求めるシーンがあるので、
それほど後味が悪くなることはありませんでしたが…。

ジェシーにとってはこのベルリン五輪が最後の五輪でしたが、
もし1940年の東京五輪が幻にならなければ、日本でも活躍したかも。
2020年にはまた東京五輪がありますが、どんな選手が活躍するか楽しみです。
リオ五輪では400Mリレーで黒人選手を含む日本代表チームが
見事に銀メダルを受賞したそうで、陸上での日本の活躍も期待できるかも?
たぶんまた見ないとは思いますけど。

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