ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

完全なるチェックメイト

先週末は観たい映画が『ファインディング・ドリー』しか公開されなかったので、
今週末まで映画館には行かないし、専ら自宅でビデオ鑑賞するつもりで、
海外ドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』のシーズン3をレンタルしてきました。
海外ドラマはシーズンを重ねるごとに登場人物の人間関係が複雑になり、
ついて行くのが大変になりますが、相関図を書きながら見るのも楽しいです。
特に『ワンス・アポン・ア・タイム』は主人公の家系図だけで膨大になる上に、
多くの登場人物に二つ名があるので相関図の書き甲斐がありますね。
正直、物語自体は今のところあまり面白くはないのですが…。

海外ドラマと言えば、エミー賞のノミネートが発表されました。
ドラマ部門、コメディ部門とも、見たことないドラマばかりです。
私はアメコミ系ドラマを見ることが多いですが、けっこう人気あるはずなのに、
エミー賞には全くノミネートされないんですね。
アメコミ系ドラマで気になる話題と言えば、『X-MEN』のドラマ化です。
マーベルのドラマでは、『エージェント・オブ・シールド』や『デアデビル』など、
映画『アベンジャーズ』シリーズとシェアード・ワールドになっていますが、
ドラマ『X-MEN』も映画『X-MEN』シリーズのシェアード・ワールドになるかも。
X-MEN創設者プロフェッサーXの息子を主人公にしたドラマ『リージョン』も
シリーズ化が決まっており、それとの絡みも気になるところです。

ということで、今日は前々スパイダーマン俳優の主演作の感想です。

完全なるチェックメイト
Pawn Sacrifice

2015年12月25日日本公開。
2016年7月2日ビデオリリース。

本作は昨年12月25日に日本劇場公開されました。
観に行きたかったのですが、如何せん年の瀬で忙しくて断念し、
DVDレンタルされるのを待つことになりました。
アメリカでヒットしていれば多少無理してでも劇場鑑賞したでしょうけど、
全米ボックスオフィス初登場12位なんて微妙な成績だったので、
別にビデオでいいか、と思ってしまったんですよね。
でも観客や批評家の評価は上々だったみたいです。
主演男優賞にノミネートされた『トランボ』(今週末日本公開)など、
高評価連発の新鋭映画会社ブリーカー・ストリートが製作してますからね。

本作は天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの伝記です。
私はルールも知らないほどチェスに疎いので、
プレイヤーのことなんて知る由もありませんが、
昔たまたま何かのテレビ番組でドキュメンタリーを見た記憶があります。
そのドキュメンタリーの内容は主に晩年のことだったと思いますが、
本作は全盛期のことが中心なので、ほぼ知らない内容でした。
かなり変人だったみたいで、なかなか面白い伝記ですね。
以下、ネタバレ注意です。

1951年NYブルックリン、ボビー少年は独学でチェスを覚えます。
チェスに没頭しすぎる息子を心配した母親レジーナは、
NYで25位のチェスプレイヤーのいるチェスクラブに連れて行きます。
強敵と対戦し、負ければチェスを諦めると思ったみたいです。
思惑通り、強敵相手に初の敗北を喫したボビーでしたが、
その悔しさをバネに諦めるどころかますますチェスに没頭するのです。
母親も完敗すると思ったのですが、大健闘の惜敗でしたから、
そりゃチェスの面白さに目覚めてしまいますよね。
1959年には史上最年少でグランドマスターになりますが、
1962年の国際大会チェス・オリンピアードで、
ソ連勢がわざとドローにしてポイント稼ぎしていることに気付き(思い込み?)、
卑怯だと抗議して棄権し、国際大会から引退してしまうのです。
チェスのルールがわからないので何とも言えませんが、
チェスってそんなにドローになりやすいゲームなんですね。
ボビーも同じ手でポイント稼げばいいだけな気もしましたが、
彼はドローになるのが何よりも嫌いな性格のようです。

1965年、ソ連との親善試合ピアティゴスキ杯が開催されますが、
親善試合は名ばかりで、実際は国家の威信がかかった冷戦の代理戦争です。
姑息なポイント稼ぎするような奴らなので大したことないのかと思ったけど、
当時ソ連のチェスのレベルは世界一だったみたいですね。
おそらくアメリカ政府の息のかかった弁護士マーシャルがボビーに接触し、
自分を代理人にして、ピアティゴスキ杯にアメリカ代表で出てほしいと依頼。
尊敬するチェスプレイヤー、ロンバーディ神父がセコンドに付くことになり、
ボビーは出場を了承するのです。
出場したボビーはソ連代表プレイヤーら相手に破竹の8連勝します。
負けたソ連のプレイヤーは「実はインフルエンザで体調が悪かった」とか
情けない言い訳しますが、負けたら祖国から怒られるんでしょうね。
そして最終戦、ボビーは世界王者ボリス・スパスキーとの対局になりますが、
さすがに世界王者は強く、敗北してしまうのです。
ボビーは「スパスキーは卑怯にもドロー狙いだった」と言い訳。
ドロー狙いだから負けたという意味が全くわかりませんが、
嫌いなドローになるくらいなら負けた方がマシってことなのかな?
ボビーは「報酬はチケット代の30%(1500ドル)よこせ」とか
無茶な要求していた手前、負けたら赤っ恥もいいところですよね。

スパスキーに負けてヘソ曲げてまた引退するかと思いきや、
ボビーはピアティゴスキ杯をキッカケに国際試合に復帰します。
どうやら世界王者スパスキーにリベンジしたかったみたいで、
各国のグランドマスターを次々に撃破し、世界選手権の準決勝でも勝利し、
ついにアメリカ人史上初の世界王者への挑戦権を得ます。
順風満帆な感じですが、チェスを極めようとすると精神が極限状態になり、
偏執性や妄想性の精神異常を発症し、奇行を繰り返すように。
またKGBなどに盗聴されたり命を狙われているという強迫観念に捕らわれます。
たしかにチェスとか将棋とか囲碁のトップ・プレイヤーって変人が多いですよね。
実際に脳の構造が常人とは違うような気がします。

王者スパスキーとの決勝戦がアイスランドのレイキャビックで開催されるが、
ボビーは空港で逃亡し、開会式を欠席します。
スパスキーとの再戦でまた負けるのが怖くなり、尻込みしたのでしょう。
なんとか再戦しなくて済む理由を作ろうと考えたのか、
ファイトマネーの法外な増額など無茶な要求をしますが、
金持ちのチェス愛好家がポケットマネーで13万ドルもの報酬を用意。
さらに「大統領と私は君が祖国のために戦うことを楽しみにしている」と
大統領補佐官キッシンジャーから激励され、ボビーは重い腰を上げます。
当時の大統領は悪名高いニクソンなので、褒められても嬉しくないか。
決勝戦は24局するようですが、そんなに対局するなんて大変ですね。
まぁ、先に12.5勝すればいいので、24局まで縺れることは少ないでしょうが、
囲碁や将棋のタイトル戦だってせいぜい七局までなのにね。

1972年、選手権決勝戦第一局。
観客や中継のカメラマンを入れて、ホールでの公開対局になりますが、
ボビーはカメラの回る音や観客の僅かな物音が気になり集中できません。
単に劣勢なのを物音のせいにしているだけな気がしますが、案の定敗戦。
ボビーは「あんな騒がしいところで対局はできない」とクレームを付け、
二局目はカメラなし、観客なしで静かな卓球場での対局を要求します。
これも対局しなくていい口実作りのための無理難題でしょう。
当然そんな要求、主催者側も飲めるはずなく、同じホールで第二局を行うが、
ボビーは部屋に引き籠って対局を欠席し、不戦敗になります。
対局して負けるより不戦敗の方が面目は保てると思っているので、
要求を飲まれなかったのは此れ幸いと思ったでしょうね。
これまでの奇行も全て負けた時のための予防線な気がしてきましたが、
王者スパスキーも同じように考えたみたいで「異常なふりをして逃げてる」
「こんな勝ち方はゴメンだ、逃がさない、どこでも勝負してやる」と、
第三局から卓球場での無観客対局を承諾するのです。
不戦敗でそのまま逃げるつもりだったボビーもこれはアテが外れたでしょうね。

と思いきや、卓球場での第三局、先番で自殺行為と思える手を打ったボビーは、
その後見事な奇手で形勢逆転し、初勝利するのです。
もしかしたら本当に物音が異常に気になる神経症だったのかもしれませんね。
同じく卓球場での第四局はドローになります。
ボビーは是が非でもドローを避けるのかと思ってたけど、なる時はなるのか。
更に卓球場での第五局、今度はスパスキーが「私の椅子が振動している」
「椅子から高周波が聞こえる」と、ボビーみたいな言い訳をして、案の定負け。
やっぱりトップのチェス・プレイヤーはみんな精神異常なのか、
と思いきや、椅子をX線検査するとハエが二匹入っていたみたいで…。
それに気付くスパスキーの集中力も異常だけど、
椅子にハエが二匹も入ってたなんて状況も異常で、これが本当だったら、
ボビー陣営による妨害工作としか思えないんですけど…。

始めの二連敗から勝率を五分に戻したボビーは自信を持ったのか、
第六局は観客のいるホールでの対局を承諾します。
先番のボビーは初手から前例のない奇手を打ちますが、
これはどうやらスパスキーのボビー対策の対策のようです。
ボビー対策が潰され焦るスパスキーはそのまま敗北しますが、
彼はボビーに拍手で惜しみない称賛を贈るのです。
本作はハリウッド映画だけど敵であるソ連代表スパスキーの方が、
アメリカ代表ボビーよりも人格者として描いていますね。
対局後、初手の奇手について質問されたボビーは、
「チェスは理論と記憶、正しい指し手は常にひとつだ」と答えますが、
これはチェスの真理だと思います。
だから人間より理論的で記憶力の優れたコンピューターの方が強いのでしょう。
将棋のように持ち駒がないのでパターンは限られるしね。
目の数が多い囲碁でもトップ棋士がコンピューターに負ける時代だし、
コンピューターがトップの競技なんて何だか冷めますね。
当時のアメリカはボビーの活躍でチェスが大ブームになったみたいですが…。

スパスキーとの決勝戦は12.5対8.7でボビーが勝利し、世界王者になります。
ポイントだけみるとボビーが12勝したように思いますが、戦績を調べてみると、
7勝3敗11分だったみたいで、意外にもボビーの嫌いなドローが多いですね。
第21局まで縺れたわけですが、六局終了時点で3勝2敗1分なので、
この後はほとんどドローの泥仕合だったことになりますね。
世界王者になったボビーですが、これでめでたしめでたしとは行かず、
精神はますます蝕まれ、タイトルを放棄するなど奇行が悪化。
1980年には放浪罪で逮捕され、1992年にはスパスキーと再戦しますが、
経済制裁措置違反で逮捕状が出され、2005年アイスランドに亡命します。
私が見たドキュメンタリーはこの辺りの話が中心でしたが、
本作で描かれた半生以降もドキュメンタリーになるほど波乱万丈な生涯は、
2008年にレイキャビクで幕を閉じたそうです。
晩年は日本を拠点に活動し、日本人女性と事実婚だったそうですが、
そこが本作では全く触れられてなかったのは少し残念かな。

ボビーが優勢に転じたところの心境など、少し理解し難いところもあったけど、
なかなか面白い伝記映画だったと思います。
この出来なら劇場で観てもよかったので、『トランボ』は是非観に行こう。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1692-06d8ce8c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad