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帰ってきたヒトラー

TBS系の深夜番組『クレイジージャーニー』が、
来月ゴールデンに進出することになりました。
数少ない好きなテレビ番組のひとつなのですが、
深夜番組がゴールデンに進出すると途端に面白くなくなるのは、
異論を挟む余地のない有名なメソッドで、とても懸念しています。
特にこの番組は深夜だからなんとかオンエアできる過激な内容も含み、
そこが魅力でもあるので、ゴールデンの制約の中では厳しいです。
今回はとりあえず特番として一回限りのゴールデン進出なので、
特に懸念することもないかもしれないけど、もしそれが当たってしまい、
ゴールデンでレギュラー化なんてことにでもなったら最悪です。
せっかく好きな番組の特番なのに面白くないことを祈ることになるとは…。
まぁ前述のように、ゴールデンでは本来の魅力は発揮できないので、
間違っても当たるようなことはないと思いますけどね。

ということで、今日はゴールデンに相応しくない人物が
ゴールデンに出演しちゃう映画の感想です。

帰ってきたヒトラー
Look Whos Back

2016年6月17日日本公開。

洋画と言えばハリウッド映画ばかり観がちな私ですが、
本作の予告編を観て、久々に映画館で観たいドイツ映画だと思いました。
ドイツでは約2000万ユーロ(約20億円)の大ヒットを記録し、
その年(2015年)二番目にヒットした自国製作映画になったみたいです。
ヨーロッパ各国でも公開されましたが、アメリカでは未公開みたいですね。
ナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラーを主人公コメディなので、
人種差別(特にユダヤ)にうるさい国では公開が難しいのかも。
日本では普通に公開されてよかったです。
イタリアではリメイク権を取得し主人公をムッソリーニに変えて製作するらしく、
第二次世界大戦でドイツとイタリアと同盟国だった日本でもリメイクすれば…、
なんて一瞬思ったけど、ヒトラーを東条英機に変えても面白くはないか。
その点ではたぶんムッソリーニでも大して面白くはなさそうなので、
やはりヒトラーのカリスマ性があっての本作だと思います。

本作は当事者であるドイツだから出来る自虐ネタですが、
逆に当事者なのによくぞここまで描けたなと感心します。
現代に蘇ったヒトラーが民衆の人心を掌握してしまう物語ですが、
一見するとヒトラーのことをカリスマ性のある優れた人物だったと、
好意的、肯定的に描いているように見えます。
ドイツでヒトラーを肯定するなんて禁忌中の禁忌だと思うのですが、
それをやってしまい、更に大ヒットさせてしまったのが凄いです。
監督や原作者は「極右復活の危険性が常に存在していることを強調した」
「ヒトラーの危険性を指摘するためあえて優れた面も描いた」と、
本作はあくまで風刺であることを説明していますが、
それは建前で、やはりヒトラーに共感するところはあるんだと思います。
なにしろ私自身、本作のヒトラーに対して好意を持ちましたからね。
「ヒトラーは生まれる時代を間違えただけなのかも」なんて思いました。
本作がドイツで大ヒットしたのも、共感するドイツ国民が多かったからかも。
特に難民流入問題においては「デブ女」ことメルケル首相より、
ヒトラーを支持する国民が多いのではないかと思われます。
以下、ネタバレ注意です。

1945年に自殺したはずのヒトラーでしたがベルリンの公園で目を覚まします。
街の様子はすっかり変わっており、状況が飲み込めない彼でしたが、
キオスクで新聞を立ち読みし、2014年にタイムスリップしたことを理解します。
そんなにすぐに状況を把握するなんて、やはり賢いですね。
自分は神意で呼び戻されたのだと納得するのです。
更に新聞を読み込み、現代の政治状況まである程度把握してしまいます。
そんな彼に映画監督志望のフリー記者ザヴァツキが接触してきます。
民放局マイテレビからリストラされたザヴァツキは
復帰するための特ダネを探していて、たまたまヒトラーを発見。
彼は本物のヒトラーを完成度の高いモノマネ芸人だと勘違いし、
「現代のドイツをヒトラーが闊歩する旅ブラ番組はイケるかも」と考えスカウト。
ドイツの最北ズュルト島から撮影を開始します。
モノマネ芸人の旅ブラなんて誰も興味ないだろと思いますが、
ドイツでヒトラーの格好をすること自体が忌避されることなので画期的なのかな。

撮影の途中で泊まったモーテルで初めてテレビを見たヒトラーは、
アーリア人の素晴らしい発明に感動すると同時に、
こんなプロパガンダに最適な物があるのに、
料理番組とか低俗な番組しか放送されてないことに憤り、
撮影のテーマを政治に決定し、各地で人々にインタビューを敢行。
外国人の流入や政治不信など民衆の不満の声を聞きます。
民族主義者でユダヤ人を排斥していたヒトラーは、
ドイツには今こそ民族主義が必要と確信するのです。
ドイツはアメリカに次ぐ移民大国ですが、本作が公開された2015年には
メルケル首相の(自らも認めた)難民政策の失敗により、
中東やアフリカから100万人以上の難民が流入し、
ケルン大晦日集団性暴行事件なども起きて大問題になりました。
実際にイギリスでも難民流入に耐え兼ね、難民受け入れ拒否できないEUから
離脱するかを問う国民投票を明日に控えている状況ですが、
これだから日本のように難民なんて受け入れない方がいいのです。
ドイツは過去のことがあるから、あまり大きく反対できないようで…。

ヒトラーは番組にシェパード犬を出演させたいと言い出し、
犬を借りるためブリーダーのもとを訪れるのですが、
そこで彼は犬に噛まれて咄嗟に銃殺してしまうのです。
意外にも人々に対しては(偉そうだけど)親しげに接していたので忘れそうだった
ヒトラーの危険性、残虐性を思い出させるエピソードでした。
でも愛犬家だったヒトラーがあれしきのことで犬を殺すかな?
なんだか賛美するぎるとマズいからバランス取ろうとしている気がしましたが、
まさかこの出来事が終盤にあんなことになるなんて…。
番組の製作費はザヴァツキがママから貰った小遣いだけだったので、
バイロイト広場で似顔絵を売って金を稼ぐことになります。
画家志望だったヒトラーの特技を活かした資金集めですが、
客を馬鹿にしたような風刺的な似顔絵が大好評でした。
普通なら客も怒りそうなものですがヒトラーが描いたなら笑って許せるかな。
おそらくこのシーンはゲリラ撮影で、客は俳優ではなく一般の人です。
一部苦情を言う市民もいましたが、多くの市民はヒトラーに扮した画家に
好意的な(というか面白がるような)反応を示しており、少し意外でした。
バイロイトといえばナチスの拠点のひとつだし…。
本作にはそんなゲリラ撮影の模様が随所で使われていますが、
中には中指を立てる人もいるけど、ほとんどの人は手を振るなど好意的で、
ドイツ市民のヒトラーに対するアレルギーは思ったほどでもないのかも。

各地で市民と触れ合うヒトラーですが、どこに行っても大人気で、
写メや動画を撮られまくって、TwitterやYoutubeにアップされまくります。
100万再生を超える動画もあり、ザヴァツキはそれを見せて
古巣マイテレビのゼンゼンブリング副局長にヒトラーを売り込みます。
副局長はヒトラーのモノマネ芸人に嫌悪感を示しますが、
ベリーニ局長がアドリブも完璧なモノマネを大絶賛し、出演が決まるのです。
そりゃヒトラー本人ですからアドリブも完璧で当然ですね。
倫理的にNGぽいヒトラーのモノマネ芸人の起用に難色を示す副局長ですが、
批判されたら局長を失脚させ、自分が昇進できると考え、
生放送のお笑い番組『クラス・アルター』にゲスト出演させます。
『クラス・アルター』は白人司会者のジョークマンがオバマ大統領に扮したり、
中東のテロリストに扮して笑を取る低俗な社会風刺番組です。
ヒトラーが出演しなくてもすでに倫理的にNGぽい番組で面白そうですね。

副局長は作家に人種差別ネタを書かせ、ヒトラーに番組で言わせようとするが、
出演したヒトラーはそんなカンペを無視し、貧困や失業や少子化に持論を展開。
低俗な番組ばかりのテレビも痛烈に批判し、客から大喝采を浴びます。
彼自身は真面目に話しているのですが、ちゃんとオチを付けるのが凄いです。
ヒトラーはお株を奪われたジョークマンが焦るほどの大人気で、
その反響を受け、真面目な政治番組からゴールデンの人気トーク番組まで、
局長は自局の全番組にヒトラーを出演させるのです。
すぐにMAD動画が作られ、ユーチューバーたちも大絶賛し、
ヒトラーは一躍スターダムを駆けあがるのです。
単なる激似のモノマネ芸人ではなく、彼の主張も共感され指示されますが、
局長から「笑えない」と釘を刺されてユダヤ人ネタだけは封印しているけど、
それ以外のヒトラーの思想は至極真っ当なのでしょうね。
面白いことにネオナチほど彼に対して批判的なんですよね。

局長を失脚させる当ての外れたゼンゼンブリング副局長は
「民衆を扇動している」と当局に告発しますが、
調査に来た検察もヒトラーのファンで全く問題にならず…。
副局長はヒトラーが犬を殺したという噂を聞き、ザヴァツキが撮影した映像から
ヒトラーが犬を射殺したシーンを盗み、ヒトラーが出演した討論番組で流します。
このショッキングな映像には、さすがに視聴者から批判が殺到し、
ヒトラーはテレビ業界から追放され、局長も責任を取って辞職。
ついにゼンゼンブリングが念願の新局長に就任するのです。
しかしヒトラーが降板して視聴率はガタ落ち、
頼みの人気番組『クラス・アルター』も打ち切りになってしまいます。
視聴者も批判して降板させたくせに、本当に降板したら番組を見なくなるなんて
調子のいい話ですが、やはり批判するのはノイジーマイノリティで、
多くの市民は犬殺し程度のしくじりは何とも思ってなかったのかもしれませんね。

テレビ業界を追放されたヒトラーはザヴァツキの勧めで自伝を執筆することに。
ザヴァツキはそれを自分で監督して映画化しようと考えます。
自伝はベストセラーとなり、犬殺し批判も風化、彼は再び人気者に。
ザヴァツキ監督、ヒトラー主演で映画の撮影も開始されます。
自伝の内容はヒトラーが2014年にタイムスリップしてからの出来事ですが、
つまり本作自体がその自伝を映画化した作品という体裁です。
だから劇中映画のザヴァツキ役などの俳優は
本人と見分けがつかないほどの特殊メイクが施されたわけですね。
面白いメタ演出ですが、私も本作を観ているうちに
このヒトラーが本物ではないかと錯覚しそうになりました。

撮影の合間に、ヒトラーはザヴァツキの恋人の家を訪問するのですが、
ヒトラーを見た恋人の認知症の祖母が彼を本物と思い、
「私の家族はこの男がガス室で殺した」と大激怒し、彼を追い出します。
ヒトラーはザヴァツキに「君の恋人はユダヤ人か、失望した」と告げ、
恋人を侮辱されたザヴァツキは不快感を覚えるのと同時に、
どんな時でも素に戻らないヒトラーのモノマネ芸人に違和感を覚えるのです。
そしてザヴァツキがヒトラーを発見した時の映像を見直してみると、
彼がタイムスリップで出現した瞬間が映っており、
ヒトラーがモノマネ芸人ではなく本物だと気付きます。
撮影スタジオに戻ったザヴァツキはヒトラーに銃口を向け、
「歴史は繰り返す。また市民を扇動する気か」と問います。
ヒトラーは「扇動ではない。市民が指導者を選んだ。選挙を禁止するか?」と。
ナチス政権って選挙で民主的に誕生してるんですよね。
難民政策の失敗で外国人排斥の機運が高まる現在、
本当に歴史が繰り返す可能性は否定できないかもしれません。
実際に世界一の移民大国アメリカでも、トランプのような人種差別主義者が
大統領候補になってしまう時代だし、世界的な右傾化は加速する一方です。
建前ではそれに警鐘を鳴らしている本作ですが、
実際はヒトラーではなく難民政策を風刺した右翼映画だし、
本作が平然と公開されていること自体、ドイツの右傾化の表れでしょう。

ザヴァツキはスタジオの屋上でヒトラーを銃殺しますが、
ヒトラーは「私は消えん、人々の一部だから」と無傷で復活。
…というのは劇中映画のラストシーンで、
実際のザヴァツキはヒトラーを殺そうとして精神病院に収容され…。
ヒトラーは自伝映画を完成させ、コンバーチブルのベンツに乗って街を走り、
沿道の多くの市民から歓迎されて本作は終了します。
このままだと本当にヒトラーが指導者に選ばれてしまいそうですが、
たとえ市民が彼の演説に感銘を受け、ヒトラーを再評価したとしても、
ヒトラーのモノマネ芸人と思ってる以上は票を投じるはずありませんね。
ただ彼の活動で極右政党が票を伸ばす可能性はあると思います。
たぶん本作がヒットしたことだけでも、少なからずその傾向になるかも。
特に劇中でヒトラーが指示した緑の党には追い風になったかも。
あ、緑の党は左寄りなのかな?

日本でも自民党が少子化対策の無策を棚に上げ、
移民受け入れで労働力確保しようと目論んでいますが、
本作を観ればわかるように、移民政策は差別の温床であり、戦争の火種。
日本にヒトラーのような人物を誕生させないためにも、
移民受け入れは断固反対せねばなりません。
本作を観ずとも、移民問題に揺れるEU各国を見れば一目瞭然か。
イギリスのEU離脱が決まれば、自民党も移民受け入れ方針を考え直すかも。
もしヒトラーのような人物が日本に現れ、民族主義を掲げて出馬したら、
私は投票しちゃうかもしれません…。

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