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二ツ星の料理人

今日感想を書く映画で、今年劇場で観た映画の50本目になります。
今は6月中旬なので、年100本少し超えるペースです。
例年200本ちかく観ていましたが、今年は少し控えるつもりなので、
なかなかいいペースで観れている気がします。
昨年の今日はすでに106本観ていたので半減していますが、
不思議と映画を観る充足感にあまり変わりがありません。
むしろ今年は一本一本楽しめているので、観すぎるのはよくないのかも。
期待薄な映画は極力避け、時間や料金の無駄も減らし、旅行にも行けたし。

ということで、今日は今年50本目の映画の感想です。
実は期待薄な映画だったのですが…。

二ツ星の料理人
Burnt.jpg

2016年6月11日日本公開。

今年劇場鑑賞した映画50本の中でも屈指の面白さだと思った本作。
でも前述のように鑑賞前はそれほど期待していませんでした。
日本での公開規模がかなり小さかったためで、
だいたいの映画は観れる梅田ですら上映されてなくて、
年に2~3回しか行かない神戸の映画館まで行きましたが、
小規模公開で客が集中するかと思いきや客席もガラガラ。
これは相当期待できないかもしれないと不安が募る中、上映開始。
するとこれがビックリ、めちゃめちゃ面白くて大満足です。
そんな満足感と同時に、なんでこんな面白い映画がロクに宣伝もされず、
誰にも気付かれないような小規模上映になってしまうのか残念でした。
全米初登場6位という微妙な結果が日本公開にも影響したのでしょう。
人気イケメン俳優ブラッドリー・クーパー主演作ですが、
彼の主演作では『アロハ』(日本未公開)に次ぐ低いオープニングで、
製作サイドも期待ハズレの成績にガッカリしたみたいです。
派手さはないし、ちょっと古典的な内容ではありますが、
なかなか教訓的で悪くない、いや、面白い物語だったのにな…。
以下、ネタバレ注意です。

パリの巨匠ジャン=リュックの一流レストランで働いていたアダムは、
ミシュランガイドで二ツ星を獲得する凄腕シェフでしたが、
薬物に溺れて借金などトラブルを起こして表舞台から姿を消します。
ミシュランの格付けって店に対してではなく料理人に与えられるのかな?
死亡説まで流れたアダムでしたが、実際はニューオリンズのバーで
牡蠣の殻をひたすら剥く仕事をして、3年かけて100万個剥き終ると、
「俺は三ツ星を狙う」と再起を図ってロンドンにやってきます。
牡蠣の殻剥きは禊のつもりだったんですかね?

アダムはロンドンで自分の店を出すために料理人集めを始めます。
まず才能はあるが気の弱い駆け出し料理人デビッドを無理やり雇い、
知人の店のスーシェフの女性料理人エレーヌを3倍の給料で引き抜き、
暴行罪で収監され出所した元同僚マックスも雇います。
さらに同じく元同僚のミシェルともたまたま出会うのですが、
パリで働いていた時、アダムはミシェルが独立したのが気に入らず、
彼の店にネズミを放って衛生指導官に通報し、営業停止に追い込みました。
パリ時代のアダムの無茶苦茶さを表すエピソードで、ミシェル気の毒ですね。
ところが彼はその因縁を水に流し、アダムの店を手伝ってくれることになります。
営業停止を食らった料理人を雇うレストランなんてなかなかないだろうから、
ミシェルも背に腹は代えられないということかな?
あと元同僚リースの店にも訪れますが、彼はすでに三ツ星なので、
勧誘ではなく宣戦布告に会いに行っただけみたいです。
当時からライバル関係ですが、リースは分子ガストロミーが得意で、
オーソドックスな料理が得意なアダムとは気が合わなそうですね。

なんでパリ時代に一緒に働いていた主な同僚たちが、
こぞってロンドンにいるのかはちょっと不思議ですが、
ジャンの店の元支配人のトニーまでロンドンでホテルを経営しており、
アダムは彼にも会いに行き、ホテルのレストランを引き継ぎたいと頼みます。
トニーがトラブルメイカーだったアダムを信用できず拒否すると、
アダムは知人のレストラン評論家シモーネをトニーの店に行かせ、
慌てるトニーに「俺が料理してやろうか?」と提案。
アダムの腕には信頼しているトニーは彼に任せるしかなく、
彼女のレビュー記事でアダムが店のシェフだと既成事実化してしまい、
トニーはアダムに店を引き継がせることを同意することになります。
強引に認めさせたような感じですが、実はトニーはゲイでアダムに好意があり、
店がなくて困ってる彼を放っておくことは出来なかったでしょうね。

そしてアダムは自分の店「ランガム」をオープン。
しかしテレビ出演を拒否したりと宣伝を怠ったためか、空席がチラホラ。
従業員たちもなかなか思うように動かず、アダムはイライラ。
従業員を罵倒したり皿を投げたりと当たり散らし、厨房は最悪の雰囲気に。
そんな状況でいいサービスが提供できるはずもなく、散々な結果で初日を終え、
メディアにも「アダム復活ならず」と厳しい批評が踊ります。
アダムは料理に対して完璧主義で厳しすぎるんでしょうね。
せっかく集めた料理人たちをもっと信頼したらいいのに。
一方でアダムは「これもフレンチと同じ農民料理だ」と
バーガーキングのようなファストフードも平気で食べるので、
料理に対して寛容なのかとも思ったのですが…。

重要なソーシエ(ソース係)を任されたエレーヌもアダムに「辞めろ」と罵倒され、
気の強い彼女は「あんたの料理は古いのよ」と捨て台詞を吐き出て行きます。
トニーが2倍の給料で戻ってくれるように彼女を引き留めます。
前の店から3倍で引き抜かれ、更に2倍なので都合6倍だから超高給でしょうね。
そんな金、借金だらけのアダムにどうやって払うんだと思いましたが、
彼女自身も別に羽振りがいい感じがしないので、元が異常に低かったのかも。
彼女は戻る時に真空パックで低音調理できる最新調理器具を持ち込みます。
捨て台詞は本当で、彼女曰く「フライパンは遺物」なんだそうです。
意外にもアダムは彼女だけではなく、その調理器具も受け入れます。
分子ガストロミーが得意な元同僚リースと険悪だったので、
てっきり最新料理法に批判的な昔気質なのかと思ったけど違うんですね。

アダムはエレーヌの意見も取り入れメニューを一新し、
宣伝のためにテレビ取材も積極的に受けて店は好評を得ます。
エレーヌの娘に誕生日のケーキを焼いてあげたりもするようになるけど、
彼女以外の従業員に対してはまだ壁を作っている感じです。
逆にひとり厚遇されるエレーヌは他の従業員に対する態度が横柄になります。
こういうことってどこの職場でも往々にしてありますよね。
エレーヌに対してイマイチ好感が持てないのは、そんな勘違い態度もあるけど、
味覚が重要なはずのソーシエなのに煙草を吸っているので、
喫煙者が作るソースが美味しいとは思えないからです。
でもリースも三ツ星なのに煙草吸ってるし、あまり味覚に影響ないのかな?

ある日、ミシュランの調査員が来店し、厨房に緊張感が走ります。
調査員はお忍びで来るのですが、常に二人組で一人は遅れてくる、
7時半に予約する、コースとアラカルトを頼む、床にスプーンを置くなど、
お決まりのルーティーンがあるので店側にバレバレなんだそうで。
抜き打ちならもっとバレないようにしろよと思うけど、調査員だってバレた方が
接客もよくなるし、勝負料理が提供されるし、旨味があるからわざとかもね。
三ツ星を狙うアダムは自ら腕を振るって勝負料理を提供しますが、
あるスープが辛すぎると食べ残されて…。
なんとミシェルがネズミ事件を復讐に唐辛子の粉を大量投入していたようで…。
やっぱりあんな仕打ちを受けて水に流すなんて無理ですよね。
絶妙なタイミングでの復讐ですが、ネズミを放って通報されるよりは優しいか。
三ツ星獲得に命を懸けていたアダムは絶望しますが、
この前にアダムは借金取りにボコボコにされ、流血しながらの料理だったし、
ミシェルが妨害しなくても三ツ星が取れる料理の提供は無理だった気がします。

自暴自棄のアダムは断っていた酒を飲み、ベロベロでリースの店に行き、
厨房で真空パックを頭に被って窒息死しようとするのです。
リースは慌てて真空パックを切って自殺を止めますが、
こんな間抜けな自殺方法、本気なのかは微妙ですよね。
本気で自殺するならウォータールー橋から飛び降りたらよかっただけだし。
リースは酔いが醒めたアダムにオムレツを作ってあげ、
「俺たちのトップはお前だ、引っ張っていってくれ」と彼を励まします。
リースって意外にいい奴で、アダムが一方的に敵視してただけかも?
アダムが部屋に戻ると、トニーが待っていて、
「ミシュランに弁解のため電話したが、その日は調査員は出てないらしい」と。
激辛スープを提供された客は普通の会社員だったみたいです。
厚遇を受けようと調査員のルーティーンを模倣したのかもね。
私もレストランに行ったらスプーンを床に置いてみようかな。
あ、私程度の庶民が星を狙えるようなレストランに行く機会なんてないか…。
これでアダムの三ツ星への夢は繋がりますが、客は客なので、
激辛スープ飲んだのが調査員じゃなくてよかったというのは如何なものか…。

それ以来、アダムはエレーヌだけではなくマックスらの意見にも耳を傾け、
デビッドもひとりで厨房を回せるまでに成長します。
ワンマンだった自分のやり方を見直し、みんなの協力体制を築きます。
そして本物の調査員が来た時には、アダムは「やるべきことをやるだけだ」と、
従業員一丸となって素晴らしい料理を提供するのです。
そこで本作は終了し、結局アダムが三ツ星を取れたかは不明ですが、
仲間たちと笑い合うアダムは満足そうだったので、
星を取ることよりも仲間を共に乗り越えたことに喜びを感じ、
結果よりも過程に価値があるってことでしょうね。
過程がよければ必ずしも結果が伴うとは限らないけど、
過程がダメなら絶対に結果には繋がらないものです。
ハッピーエンドだけど、ちょっと心残りなのがミシェルのことですよね。
ちゃんと双方謝罪して和解してくれると尚よかったです。

普通にとても楽しめる映画でしたが、特に人を使う立場の人は、
アダムの姿に(時には変面教師として)学ぶところがあると思います。
上に立つ人が利己主義では成功しないという教訓です。

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