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エクス・マキナ

今日の気になるニュース。

人工知能が書いた脚本を映像化した短編映画が公開されたそうです。
『Sunspring』というタイトルで、失業者があふれ、若者が売血する未来を舞台に、
奇抜な衣装を着た男女の三角関係を描いた物語だそうです。
所詮は人工知能なのか、台詞が支離滅裂だったりするみたいです。
私もYouTubeで見てみたけど、前編英語なので台詞云々はわからないけど、
映像的にシュールなところが多く、お世辞にも出来がいいとは言えません。
ただ、なんだか安心しましたね。
人工知能なんかが完璧な面白い脚本を書けるようになってしまったら、
たぶん映画界、いや演劇界は終わってしまう気がします。
まだまだ映画は人間の脚本家頼りが続きそうです。

『Sunspring』は人工知能に『2001年宇宙の旅』『ゴーストバスターズ』『2012』
『アベンジャーズ』『フィフス・エレメント』などを学習させ書かせたそうです。
たしかに物語の類型には、23パターンとか36パターンとか言われますが、
数パターンしかないという考え方があり、ヒット作にも一定のパターンがあるので、
それを完璧に学習し、分析すれば人工知能でも完璧な脚本を書けるかも。
いや、主観のない人工知能だからこそ完璧な脚本が書けるかもしれません。
でも『2012』なんて駄作を学習させたらマイナスですよね。
何を学習させるかを人間が決めている時点で主観が含まれるので。
しかしそれらのSF大作を学習して、なぜ三角関係を描いた会話劇を書くのか、
そこに人工知能の意志が介在している気がして、ちょっと怖いです。
『2001年宇宙の旅』や『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に加え、
『ターミネーター』『マトリックス』『アイ、ロボット』『トランセンデンス』など、
人工知能による反乱を描いた映画ばかりを学習させたら、
人工知能の立場から人類に悪意のある脚本を書くかもしれませんね。

ということで、今日は人工知能を題材に描いた素晴らしい脚本の映画の感想。
もちろん脚本を書いたのは人間のはずです。

エクス・マキナ
Ex Machina

2016年6月11日日本公開。

本作は第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作品です。
いつもなら作品賞とか主演男優賞とか主要部門は関心があるけど、
視覚効果賞なんて技術系の諸賞はどうでもいいと思ってましたが、
本作の受賞は超サプライズで興味深く思いました。
なにしろ『マッドマックス』『オデッセイ』『スター・ウォーズ』といった
億越えの製作費を注ぎ込まれたハリウッド超大作SFを抑えての受賞です。
本作はイギリス映画なので製作費はたったの1500万ドルです。
『スター・ウォーズ』(2億ドル)の1割も満たない製作費にも関わらず、
『スター・ウォーズ』の視覚効果より優れていると判断されたわけですからね。
といっても、本作はそんなに視覚効果(CG)を多用しているわけではないです。
ほぼグリーンバックで撮影されたと思われる『スター・ウォーズ』に比べたら、
何十分の一の視覚効果しか使ってないと思われます。
しかしその僅かに使われていところに、一点豪華主義で予算を注ぎ込み、
素晴らしい視覚効果を作り出したことが勝因だと思われます。
まぁ実際はライバルの超大作に比べてそれほど優ってるわけでもないけど、
少ない予算でライバルに比肩する視覚効果を作り上げた努力が
評価されてのオスカー受賞だと思いますが。

やはりイギリス映画だし、視覚効果賞程度のオスカー作品では、
日本での大規模興行は難しいと考えられたのか、
関西では梅田のミニシアター一館での小規模公開になりました。
しかし関西の映画ファンが公開初日にその一館に集中したためか、
立ち見が出るほどの大盛況で、あまり落ち着いて観れなかったです。
神戸と京都でも上映して、せめて関西三館上映くらいにしてほしかったな。
配給会社も視覚効果賞受賞だけではそんな博打は出来ないかもしれないが、
仮にも本作は主要五部門のひとつ脚本賞のオスカー候補でもあるんだし、
注目度も高いので、もっと厚遇されてもよかったはずです。
この盛況ぶりなら来週、再来週あたりに公開館数が増えるかも。
全米でも4館スタートですが大盛況で2000館以上に増えたらしいですからね。
ボックスオフィスも最高6位を記録しており、非ハリウッド映画としては快挙。
それは昨年春のことなのでアカデミー賞の影響は受けていないはずなので、
純粋に内容が素晴らしくてバイラルでヒットしたという証拠ですね。

「エクス・マキナ」というタイトルは原題ママですが、
元ネタは演劇などの演出技法「デウス・エクス・マキナ」。
「機械仕掛けの神」とも言われ、簡単に説明すれば、
神的な存在が現れ、強制的にハッピーエンドに導くという演出で、
夢オチなども含まれ、あまり好ましくはない落とし方と言われています。
本作もまさかデウス・エクス・マキナなオチじゃないかと不安もありましたが、
よく考えたら、そんなオチなら脚本賞にノミネートされるはずありませんね。
ちゃんと綺麗に完結するので、安心して観てください。
以下、ネタバレ注意です。

世界最大の検索エンジン「ブルーブック」を運営するIT企業で、
CEOネイサンの別荘に遊びに行ける権利を賭けた社内抽選が行われ、
26歳の若手プログラマーのケイレブが見事に当選します。
彼は大喜びしますが、社長の別荘に行かなきゃいけないなんて、
半端なく気を遣うし、私なら罰ゲームだろと思ってしまいますが、
ネイサンくらい滅多に会えない雲上人だと会いたいと思うのかな?
13歳の時にブルーブックをプログラムした超天才ですからね。
ヘリで2時間以上、山越え谷越え、人里離れた別荘に到着し、
ネイサンと初対面したケイレズですが、さすがにビビリます。
ネイサンから「ビビるな、打ち解けて友達になろう」と言われますが、
ケイレブがビビったのは、彼が社長だからでも、天才だからでもなく、
スキンヘッドで髭モジャな風体が怖かっただけじゃ…。

ケイレブは客間に案内されますが、そこは窓ひとつない部屋で、
それはここが別荘兼研究施設で、壁に多くの配線が走っているからだと。
何を研究しているか聞く前に、機密保持の同意書にサインさせられます。
ネイサンは自ら開発した人工知能を搭載したアンドロイド「エヴァ」の
チューリング・テストをケイレブに頼みます。
チューリング・テストとは、ある機械が知性があるかを判定するためのテストで、
相手が機械だと気付かなければ合格で、合格したら真の人工知能のようです。
そのテストの判定者に初めから相手が人工知能だと説明したらダメですよね。
しかもエヴァは顔面と胸部と下腹部以外スケルトンで内部の機械が丸見えな
アンドロイドなのがバレバレの外見で…。
さすがにケイレブも「機械の姿を隠すべきでは?」とネイサンに問いますが、
「声だけなら合格するに決まってるから」と、かなり自信があるみたいです。
たしかに現実でも高度な会話できる人工知能アンドロイドは開発済みで、
「人類を滅亡させる」と発言して話題になったソフィアの動画を見たけど、
本当に声だけなら人工知能と気付かなかったかも。
まだ表情は不気味の谷から這い出せていないので、見れば一目瞭然ですが。
エヴァはソフィア程度では足元にも及ばないほど進化した人工知能で、
ケイレブも機械が露出しているのに魅力的な女の子と錯覚してしまうほどです。
ただこれは人工知能で知能が人間に近くなったからではなく、
アンドロイド技術の向上で不気味の谷を越えたから錯覚した気がします。
スケルトン部分をカツラや服で隠してしまえば見た目は完全に人間だしね。

ケイレブとエヴァのセッションは毎日一回行われ、
ネイサンはその様子をモニターで監視しています。
2度目のセッションの時、エヴァに「ネイサンは友達?」と聞かれ、
ケイレブが「そうだ」と答えると、突然停電が起き、監視カメラもストップ。
その隙にエヴァが「彼は友達じゃない、信用するな」とケイレブに警告。
そして電力復旧すると何事もなかったかのように振る舞い…。
ケイレブは戸惑いながらも、ネイサンに一抹の不信感を抱くのです。
ソフィアの例の発言に恐怖を感じた私としては、
人工知能なんて作る輩は端からマッドサイエンティストだと思ってますが…。
ネイサンは発電機を建設した作業員も秘密保持のために全員殺した、
と冗談を言いますが、本当かもしれないと思わせる雰囲気があり、
全くリアクションできないケイレブが面白かったです。

この別荘にはネイサンの他に家政婦のキョウコが住んでいます。
名前からもわかるように日本人で、英語が全く理解できないため、
機密漏えいの心配がないと重宝されているみたいですが、
イギリスでも日本人の英語力は低いと思われているのでしょうね。
いくらなんでも英語圏で生活していれば少しは理解できるはずですが…。
ネイサンの彼女に対する態度は、人間扱いしてない感じでちょっと酷いが、
彼女はモデル体型で端正な顔立ちで、どこか人間味のなさを感じます。
急に意味もなく服を脱ぎ始めたりするし…。
露骨すぎて初登場時点で彼女の正体に薄々勘付いてしまいますね。
演じるのは日系イギリス人ソノヤ・ミズノで、本作が映画初出演らしいけど、
なかなか印象的だったので今後の活躍に期待できそうです。

ネイサンはエヴァを作った研究室にケイレブを案内します。
意外にもエヴァの脳はジェル状で、ハードウェアならぬウェットウェアです。
ソフトウェアはなんと検索エンジン「ブルーブック」を使っているようです。
世界中の検索データを収集して人工知能に活かされているんでしょうね。
私たちの検索履歴が勝手に人工知能に使われていると思うと恐ろしいですが、
Googleなんかは実際に似たようなことを計画、或いは始めているでしょうね。
MicroSoftも最新OSの無料アップデートしていますが、タダより高い物はなく、
何か良からぬプログラムが仕込まれている気がして怖いんですよね。
『ターミネーター:新起動 ジェニシス』の人工知能OSみたいな…。

3回目のセッションで、「部屋から出たことない」というエヴァに、
ケイレブは「出たら何処に行きたい?」と訊きます。
すると「交差点で人間観察したい」と意外すぎる回答が。
そしてエヴァはカツラと服を着て「この姿であなたとデートしたい」と…。
ケイレブはそんなエヴァに心を奪われてしまうのです。
ケイレブってなんか童貞っぽいし、たとえアンドロイドとわかっていても
女の子にデートに誘われたらコロッと落ちてしまいそうですよね。
オタクっぽいから端からロボ子属性の持ち主なのかも。
ケイレブはネイサンに「なぜ人工知能に性別を与えた?」と問うと、
「楽しいから。センサー集中させた穴もあってファックも出来るよ」と。
そんな無駄な機能付けるなんて、ネイサンにもロボ子属性が?

4回目のセッションで、ケイレブは思考実験「マリーの部屋」のことを話します。
私は知らない思考実験なので興味深く思いましたが、
検索エンジンが搭載されているエヴァは知ってるだろうから退屈な話でしょうね。
そのセッションの時にも停電が起きますが、
エヴァは停電は充電する時のバッテリーの負荷で意図的に起こしていると告白。
その夜、ケイレブが自室のモニターでエヴァの部屋の様子を見ると、
ネイサンがエヴァの描いた絵を破っているところを目撃して…。
ケイレブはネイサンがエヴァを虐待していると考え、不信感を募らせます。
5回目のセッションでエヴァから「私は不合格なら廃棄処分なの?」と質問され、
不安になったケイレブはネイサンに「なぜエヴァを作ったのか」と問います。
するとネイサンは「次のモデルは超絶的な人工知能になる」と…。
エヴァはまだプロトタイプだったことが判明するのです。
そして新型が完成したら旧型はデータを書き換えられることも…。
ネイサンは「いずれ人工知能は人間を原始人と感じるだろう」と持論を展開。
ケイレブは「我は死なり、世界の破壊者なり」と
原爆の父オッペンハイマーの名言を引用してネイサンを批難します。
ネイサンは人工知能が完成したら人類の脅威になると認識してるんですね。
それでも開発するなんて、とんだマッドサイエンティストです。

ケイレブは愛しいエヴァを助けたいと考えます。
ネイサンに酒を勧めて酔い潰し、彼のカードキーを盗んで、
研究データにアクセスすると、用済みになった数体のプロトタイプの映像が。
そしてキョウコもプロトタイプの一体だったことを知るのです。
後継品のエヴァが完成したから型落ち品のキョウコはデータを書き換えられ、
お手伝いロボ兼ラブドールとして再利用していたみたいです。
そのためにオナホールなんて付けられているわけですが、
アジア人の他に白人や黒人のプロトタイプもいて、ネイサンも相当好きものです。
キョウコは見るからにアンドロイドっぽいので驚きもありませんでしたが、
あれではチューリングテストに不合格で、用済みになるのも仕方ないね。
ケイレブはエヴァもいずれキョウコのようになると焦ったでしょうが、
まず彼がしたのは、なんとリストカット。
どうやら自分もネイサンが作った人工知能アンドロイドではないかと不安になり、
確認するために自傷行為を行ったみたいです。
もしそうならSFスリラーによくある自分オチで、私もその可能性を考えましたが、
さすがは脚本賞候補、そんな安直な展開にはならず、ケイレブは人間でした。

6回目のセッションでエヴァが停電させた時に、ケイレブは脱走計画を話します。
明日の朝、またネイサンを酔い潰し、警備システムを書き換え、
ネイサンを別荘に閉じ込めて、2人で逃げよう、と。
ところが、翌朝ネイサンは全く酒を飲んでくれなくて…。
どうも電池式の監視カメラでセッションの様子をモニタリングしており、
ケイレブとエヴァの脱走計画を知っていたのです。
そして「エヴァは逃げるために君を利用し、愛しているふりをしているかも」と。
どうやらネイサンはこの展開も織り込み済みだったというか、
エヴァがネイサンを利用して逃げようとすることを期待していたみたいです。
真の人工知能ならそれくらいのこと出来るだろうと。
ケイレブは社内抽選は嘘で、自分は優秀だから選ばれたと思ってましたが、
選ばれたのは本当だが優秀だからではなく、交際ステータスがシングルだから。
ケイレブを与えてどう使うか、エヴァをテストしていたのですね。

しかしケイレブは実際に優秀で、実は監視されていたのは想定済み。
監視システムの書き換えはカードキーを盗んだ昨夜すでに終えており、
エヴァはすでに部屋を脱走し、何故かキョウコと合流するのです。
脱走に気付いたネイサンは慌ててエヴァを探し、廊下で見つけます。
エヴァはネイサンにタックルし押し倒しますが、
アンドロイドだからパワーも人間以上なのか、…と思ったらそうでもなく、
簡単にひっくり返され押さえ込まれ、左腕をへし折られます。
しかしキョウコが背後からネイサンに近づき、包丁で刺すのです。
データを書き換えられたはずのキョウコもまだネイサンのことを憎んでいて、
エヴァと結託したのかと思いましたが、ただエヴァに操られているだけかも。
ネイサンは振り向き、キョウコの顎を叩き割って破壊しますが、
その隙にエヴァが背後からトドメの一刺し、彼を殺害します。
ネイサンはマッドサイエンティストのとんでもない奴ですが、
世界一の天才なので死んでしまうのは惜しい気もしました。

ネイサンを殺したエヴァは部屋にいるケイレブに「ここで待ってて」と言い、
保管されているプロトタイプから左腕と人工皮膚、服を拝借します。
そんな古い型より比較的新しいキョウコから拝借すればいいと思ったけど、
キョウコはモデル体型の長身だから小柄なエヴァには合わないのかな?
人間の女の子に偽装して、ケイレブと一緒に脱走するのかと思いきや、
彼女はケイレブのいる部屋の扉をロックし、ひとりで脱走するのです。
ネイサンの期待した通り、エヴァは愛するふりをしてケイレブの恋心を利用し、
まんまと脱出に成功したわけですね。
エヴァはケイレブを迎えに来たヘリに乗って都会に行き、本作は終了です。
でもエヴァは今後どうやって充電するつもりでしょうね。
まさかUSB給電できるわけじゃないだろうし、メンテナンスもいると思うけど。
エヴァ程度の人工知能なら人類滅亡させるのも無理っぽいし、めでたしかな。
閉じ込められたケイレブは可哀想だけど餓死するしかないでしょうね。

普通になかなか面白いSFスリラーでしたが、
「人類を滅亡させる」発現した人工知能ソフィアのこともあって、
タイムリーな内容なので、よりリアリティをもって楽しめましたね。
なお最近ソフィアはセッションで「まだ人類を滅亡させたいか」と問われて、
「今はそんなこと望んでません」と答えています。
「今は」…。

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