ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

BALLAD 名もなき恋のうた

世は空前の戦国ブームですね。というかイケメン武将ブームですね。
発端は大河ドラマ『天地人』や『戦国無双』『戦国BASARA』などのゲームですが、
その波に乗ってか、映画にも時代劇ものが増えてきました。
今月だけでも『TAJOMARU』『火天の城』『カムイ外伝』など。
今日観た映画も、そんな戦国ブームの一端なのかな?
ボクも戦国時代は大好きだけど、本作には期待よりも不安が強かったです。
なにしろ原作がボクが唯一好きなアニメ(というかコレ以外のアニメは見てない)、
『クレヨンしんちゃん』の実写映画化だったからです。

BALLAD 名もなき恋のうた

2009年9月5日公開。
映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』を原案にした実写映画。

時は1574年の戦国時代、春日という小国で“鬼の井尻”と恐れられ無敵を誇る侍・井尻又兵衛(草なぎ剛)は、春日の国の姫君・廉姫(新垣結衣)を命懸けで守り続けていた。ある日の戦中、無敵の又兵衛に一瞬のスキが生まれてしまい、足軽の鉄砲が又兵衛に狙いを定めたその瞬間、川上真一(武井証)という少年が突然現われる。(シネマトゥデイより)

原案の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』といえば、
当時あれだけPTAに叩かれまくったアニメにもかかわらず、
文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞他、多くの賞に輝き、
正式出展してればパルム・ドールの可能性もあったと囁かれるくらいの名作。
ボクもジブリを抑えて、日本のアニメ映画史上最高の名作だと思ってるし、
邦画全体としても五指に入る傑作だと思ってます。
公開時から各所で絶賛されていたんですが、その頃よくいわれていたことが、
「本作は『クレヨンしんちゃん』じゃなくてもよかった。」という評価。
ファンだけじゃなく一般にも通用する名作という意味の最高の褒め言葉なんだけど、
クレしんファンとしては何か釈然としない評価だと感じてました。

そして時を経て、戦国ブームの今年、その評価を証明するかのように、
『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』が『クレヨンしんちゃん』の要素を抜いて、
実写映画『BALLAD 名もなき恋のうた』として生まれ変わりました。
アニメ映画が実写映画化されるなんて前代未聞なことで、
クレしんファンとしては自分の好きな作品が評価されているという恍惚感もあるけど、
それを打ち消して余りある、クレしんを排除されたということの不信感…。
とりあえずファンとしてはどう貶められたのか確認する必要があると、
恐る恐る観に行きました。
で、観終わって、改めて『クレヨンしんちゃん』という作品の偉大さを実感。
本作はクレしんだったからこそ名作たりえたということを再確認しました。

原案『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』はアニメらしからぬ緻密な時代考証で、
戦国武将・井尻又兵衛と現代からやってきた5歳児・野原しんのすけとの
時代・世代を超えた友情を縦軸に、又兵衛と城主の娘・廉との身分差からくる悲恋や、
野原一家の絆、しんのすけの成長を描いた感動の物語でありながら、
ちゃんと本来のギャグアニメとして成立させている奇跡的な映画です。
なので子供のみならず、大人も笑い、泣ける映画として評価されていたんですが、
実写映画化された本作は、又兵衛と廉の恋愛模様だけを中心に描いた劣化版。
クレしんという子供要素を抜いたにもかかわらず、逆に大人の鑑賞に堪えない
チープな戦国版『タイタニック』に成り下がってしまっています。

まずそうなってしまった原因は、本作の監督の勘違いにあると思います。
『アッパレ!戦国大合戦』で大人が感動したのは、又兵衛と廉との悲恋じゃなく、
又兵衛との友情のために決起する野原一家の奮闘や、
又兵衛との死別を乗り越えて成長する幼児の姿に心を揺さぶられるんです。
恋愛要素はあくまでそれに付随するものでしかありません。
まぁそれに特化したはずのその恋愛要素でさへ、本作は原案に負けてます。
身分違いによる悲恋を描いているのは同じですが、最後に告白しあう本作に対し、
原案では又兵衛は最後までその想いを廉に告げることはできませんでした。
廉もそのことをわかっていて、又兵衛に告白するようなことはしてません。
それでこそ悲恋、戦国時代の主従関係の悲哀が伝わるというものです。

心配していたキャストですが、中でも一番心配だった主演、又兵衛役・草なぎ剛は、
子供映画の主演としては致命的な公然わいせつ罪で捕まったこともあったし、
原案の又兵衛とは似ても似つかない風貌だったので絶対ダメだと思ってたんですが、
その粗忽な顔が意外と戦国時代向きで、鎧を着るとけっこうサマになってました。
廉役・新垣結衣は、ちょっと顔が現代人すぎるのと、明るい女の子というイメージが
高貴な姫という役柄に合ってないような…。なんか町娘みたいでした。
大沢たかお演じる大倉井高虎は、キャスティングがどうとかいう前に、
高虎のキャラが変わり、武勇・戦略ともに一流の立派なイケメン戦国大名に…。
原案みたいにもっと狡猾に嫌らしく描かないと、悪役としてはどうかな?
オリジナルキャラである又兵衛の家来の息子・文四郎(吉武怜朗)ですが、
本作では又兵衛の代わりにしんちゃんとの友情を一手に引き受ける役柄。
本作を恋愛に特化させるために急遽作られた役ですが、
こいつのために原案のよさが潰されたわけで、ぶっちゃけいらない子です。

何気に一番ダメだったのが野原しんのすけに相当する川上真一役の武井証。
ボクも子役を叩きたくはないけど、正直、この子が画面に出るたびにガッカリします。
あまりにもしんのすけと性格が違いすぎます。間逆といってもいいかも。
恋愛の機微に敏感で子供らしくないし、優等生タイプで、臆病者。
そのクセに原案通りにしんのすけと同じ行動をとるんだから違和感があります。
まぁこれは子役が悪いんじゃなくて、誰がしんのすけの役をやったところで、
絶対に文句は出るんだけど、もっと小さい子、せめて小学校低学年じゃないと
この物語自体のリアリティが損なわれるんですよね。
たとえば、始めの方のだけど、未来からやってきたという元服前くらいの
怪しい子供の言葉を大名をはじめ、大人たちが信用しすぎるのは変です。
これがもっと無邪気な幼児だったら嘘ついてると思わなくて当然だけど。
廉と又兵衛の湖のほとりでの小っ恥ずかしいやりとりだって、
こんな大きな子供のいる前でするのは違和感あるし…。
原案のように真一は又兵衛との友情はないし、廉を好きになることもない。
じゃあ何で彼らに助太刀しようとするのか、動機が薄いです。
野原みさえに相当する川上美佐子(夏川結衣)ももっと若い母親がいいかも。
野原ひろしに相当する川上曉役の筒井道隆はキャラも年齢もけっこう嵌ってたかも。
ひまわりがいないのも、重要な役どころだったシロがいないのも不満ですが、
まぁ仮にいたとしてもどのみち文句は言いますけど。

あ、文句ばかりもあれなんでちょっと褒めます。
時代考証をちゃんとしてあるリアルな合戦はよかったです。
アニメのシーンをちゃんと再現してあるのに感動したし、アニメでは出せない
実写ならではの迫力もあったと思います。さすがはALWAYS組です。
でも川上一家が車で敵陣に突っ込むシーンはちょっとショボすぎますね。
原案でも一番の盛り上がるシーンで、かなり重要なところだけど、
せっかくSUV型で強そうな車(トヨタ・ヴァンガードかな?)なのに、
あんな徐行のジグザグ走行では全然迫力ないし、敵兵が避けるわけがない。
エキストラの中に車が高速で突っ込むのは危ないのはわかるけど、
ここはアニメの方が100倍迫力ありました。って、結局貶してるし…。

あと何のしがらみだか知らないけど、真一にソフトバンクの携帯を持たせて
随所で使用させる、その宣伝のような演出はかなり不愉快でした。
どうせカメラ機能しか使えない上に、曉がポラも一眼レフも持ってきてるんだから、
原案にもない携帯電話なんて、わざわざ使う必要ないでしょ。
しかも一般的じゃないサイクロイドスタイルの携帯をわざわざ…。
まぁボクがソフトバンク、大っっっ嫌いなだけですけど。

『20世紀少年』や『ROOKIES』の実写映画化はなかなか頑張ってたし、
あの大不評の『DRAGONBALL EVOLUTION』でさえ比較的好意的なボクですが、
これは今年の邦画、ワースト候補ですね…。
もっと細かい文句はいっぱいあるけど、もういいや。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/167-cbca50d5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad