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サウスポー

昨日、ボクシングの元世界ヘビー級王者モハメド・アリが亡くなったそうです。
私が生まれた時には引退していたので、現役時代の活躍は全く知りません。
正直、異種格闘技戦でアントニオ猪木と引き分けた人物くらいの印象です。
ただこの訃報で、彼の功績がクローズアップされたのを見ると、
凄い選手だったのもわかるし、リングの外でも凄い人物だったみたいです。
15年前にウィル・スミス主演で半生を描いた伝記映画も作られてますが、
当時は興味なくて観なかったけど、観てみようかな?
いや、それを観ずとも生涯を描いた伝記映画が近々製作されそうな気もします。

ということで、今日は世界王者の苦悩を描いたボクシング映画の感想です。

サウスポー
Southpaw.jpg

2016年6月3日日本公開。

全米初登場5位で、それなりにヒットした本作。
昨年、『タイタニック』なども手掛けた映画音楽作曲家ジェームズ・ホーナーが、
自身で操縦していた飛行機で墜落し、亡くなられましたが、
本作はホーナーの遺作で、最初に公開される作品としても話題です。
なんでも本作は予算が少なくて、十分なギャラを払えなかったらしいですが、
ホーナーは本作の企画を気に入り、それでも受けてくれたらしいです。
ちょっといい話ですね。音楽にも注目して観るといいかもしれません。
ちなみにホーナーの遺作2本目は2010年の鉱山崩落事故を題材にした
『チリ33人 希望の軌跡』です。(邦題も決まってるのに日本公開未定。)
そして最後の遺作は『荒野の七人』のリメイクです。(やはり日本公開未定。)

お悔やみは申し上げますが、誰の遺作だろうと感想に手心は加えません。
しかし本作はそれを差し引いても、なかなか面白かったと思います。
もともとボクシング映画というのは、クライマックスの試合シーンで
否応なく盛り上がってしまうので、鑑賞後感が抜群なため、
なんでも傑作だったと錯覚してしまうところがあるのですが…。

タイトルの「サウスポー」は左利き選手のことで、
ボクシングでは右足を前に出す左構えのことを指します。
しかし本作の主人公は右利きで右構えのオーソドックス・スタイル。
なのになぜこんなタイトルになってしまったかといえば、
もともとは『8 Mile』の精神的続編として企画され、
左利きのエミネムが主演することになっていたようです。
ところがエミネムが音楽活動優先させるため降板し、
代わりに右利きのジェイク・ギレンホールが主演に抜擢されました。
(本作の主題歌がエミネムの曲なのはその名残でしょう。)
それに伴い、脚本も書き換えられていると思われますが、
なぜかタイトルだけそのままにしちゃってるんですよね。
いや、一応サウスポーに絡めた展開もあるんですが、
正直取って付けた感があるし、ネタバレにもなっちゃってます。
タイトルでネタバレしちゃうのは如何なものか…。
以下、ネタバレ注意です。

主人公ビリー・ホープはボクシング世界ライトヘビー級王者です。
しかも42戦無敗で、WBA、WBC、WBO、IBFの四団体統一王者という
歴史的にも類を見ないようなバケモノ的ボクサーです。
ある日も、防衛戦で挑戦者ジョーンズと戦い、43勝目を上げますが、
そんな記録だからどんな強いのか思ったら意外と辛勝で…。
KOまで10ラウンドもかかっている上に、顔面殴られまくって、
右目から出血しながらの痛々しい勝利でした。
まぁそれは彼の「ガード二の次、とにかく攻撃」というスタイルのせいで、
「打たれるほど調子が出る」タイプみたいだからですが、
彼の最愛の妻モーリーンは毎試合大量流血する旦那が心配で、
いつも「打たれすぎないで」とお願いしています。
私が彼女の立場だったら旦那の試合なんて怖くて観戦できないほどです。

ビリーは防衛戦後の記者会見で、彼に挑戦したい新進気鋭の選手ミゲルから、
「次は俺とやれ」と挑発されますが、彼は大人な対応でスルー。
しかし後日、彼が育った養護施設のチャリティ・パーティに妻と出席した時に
またしてもミゲルが押しかけ、「女房とやらせろ、女房もベルトも頂く」と挑発。
モーリーンを侮辱されて切れた彼は、ミゲルに殴りかかり、
双方の仲間たちも混ざっての大乱闘になります。
その大混乱の中で、ミゲルの仲間(兄?)ヘクターが勢い余って銃を発砲し、
その流れ弾がモーリーンに直撃し、彼女は帰らぬ人に…。
そして最愛の妻を失ったビリーの生活は荒れ果ててしまい…。
なぜか目撃者がみんな黙秘したため、ヘクターは逮捕されないんですよね。
ミゲル側の奴が黙秘するのはわかるけど、ビリーの関係者の方が多いのに…。
ビリーは自ら復讐しようとしますが、ヘクターに妻子がいるとわかり諦めます。
それ以降、劇中でヘクターが罰を受けるようなことは一切なく、
これに関しては鑑賞後にちょっと違和感が残りますね。

そんな絶望の中でも、豪邸のローンや税金は待ってくれないので、
また防衛戦をしてファイトマネーを稼がなければなりません。
四団体統一王者でも、そんな自転車操業なんて不思議ですが、
マネージャーのジョーダンあたりが横領してそうです。
そして挑戦者トゥレイとの防衛戦を迎えるのですが、
もともとガードの甘いビリーですが、この日は腕をダラリとさせノーガード。
矢吹丈ばりのノーガード戦法、というわけではなく単なる自暴自棄で、
トゥレイからボッコボコにされ、見かねたレフェリーが止めに入るが、
ビリーは「止めるな」とレフェリーに頭突きをして反則負け。
(…いや、その前にTKOになるのかな?)
この行為により、彼はライセンス停止され、ベルトも全て失います。
更に制裁金や賠償金のために豪邸も売ることになってしまいます。
みんな事情は知っているだろうから、そこまで厳しい制裁しなくても…。
なお、トゥレルは後日、ミゲルに完敗しWBC王者を奪われます。

絶望のどん底だったビリーは飲酒運転で交通事故を起こし、
「保護義務怠り、父親としての適性に欠ける」と裁判所が判断し、
最愛の娘レイラが養護施設に保護され、面会も制限されます。
娘も「ママじゃなくてパパが死ねばよかったのに」と面会拒否。
どんなハードパンチよりも痛い言葉だったでしょうね。
ビリーはレイラと再び一緒に暮らしたい一心で、再起を図り仕事も探します。

そんなビリーが訪ねたのがあるボクシング・ジム。
ここのオーナー兼トレーナーのウィルズは名伯楽みたいです。
なんでもビリーは過去にウィルズの育てた選手と戦ったことがあり、
本当ならその選手に完敗していたが、マネージャーのジョーダンが
相手選手に賄賂を払って負けてもらっていたのです。
ビリーのあんな戦い方で43戦無敗はおかしいと思ってたら、
そんな八百長試合もあったんですね。(たぶん一試合のみではないな。)
ビリーはそのことを覚えていて、その選手を育てたウィルズに、
自分のトレーナーをしてもらおうと思ったわけです。
ウィルズは今は主に近所の貧しい少年たちの指導をしており、
「もうプロは見ない」と断りますが、ビリーは「もうプロじゃないから」と。
彼はジムの掃除夫の仕事を兼任することを条件に入会を認めます。
ウィルズも元ボクサーですが、現役時代に試合で左目を失明し引退しました。
今は義眼が入っていて、外見的にも左目に違和感を覚えます。
ウィルスを演じるのは先天性眼瞼下垂の俳優フォレスト・ウィテカーですが、
彼の病気を活かしてキャラ設定にしてしまうなんて…。
(しかも物語上、別に必要とも思えない設定だし。)
まぁウィテカーは左目をコンプレックスには思ってないのでしょう。

ウィルズはパンチを避ける練習とガードを固める練習を徹底します。
今までのビリーのスタイルとは正反対の「打たれない」ボクシングです。
避けたりガードしたりしながら、相手のミスを待つ戦法のようです。
意外にもビリーは素直にその練習に打ち込みます。
そして、ライセンス不要の傷病軍人基金チャリティ・マッチに出場し、
ガードを上げ、ジャブをコツコツ積み重ねる戦法で相手選手をKOします。
まぁ世界戦とは違うので、相手がどの程度の選手かもわからないので、
スタイルを変えたビリーが強くなったか弱くなったかまだ判断できませんが、
そのチャリティ・マッチを見ていた元マネージャーのジョーダンが、
「ライセンス取り戻してやるから、ミゲルとやってみたら?」と声を掛けます。
ジョーダンは落ちぶれたビリーを捨て、今はミゲルのマネージャーなので、
もちろんミゲルが勝つと確信して誘っています。
因縁の対決をプロモートすれば、また大儲けできますからね。
他人の不幸を食い物にする最低なゲス野郎です。
なお、元トレーナーもミゲルに乗り換えています。

ビリーは利用されているとわかっていても、再起のチャンスだと話に乗ります。
「プロは見ない」と反対していたウィルズでしたが、
教え子の少年ホッピーが父親の虐待で死んだことがキッカケで、
子供たちに希望を与えようと、ビリーのトレーナーを引き受けます。
ホッピーは『8 Mile』の主人公の呼び名から付けられた名前で、
これもエミネム主演予定だったことの名残のひとつでしょうね。
そしてウィルズがミゲル戦の秘策として考えたのが、サウスポーです。
別にずっとサウスポーとして戦えというわけではなく、
ここぞという時にサウスポーにスイッチして、一発かます作戦です。
でもそれを練習段階で描いてしまうと、サウスポーが勝敗の分かれ目で、
ビリーがサウスポーにスイッチするまでは勝ちも負けもしないと
暗示してしまっているようなものです。
タイトルにまでなってるし、不発なんてことはありえず、これはネタバレです。

そして弔い合戦として大注目される中、ついに試合当日を迎えます。
1ラウンド目からビリーはミゲルの猛攻により、顔面から出血。
ちゃんとガードを上げているのに、ミゲルには効果ないみたいですが、
やっぱり付け焼刃の戦法で世界戦に挑むのは無謀だったのかな。
2~4ラウンドもミゲル優勢で、5ラウンド目でついにダウンを奪われます。
左目あたりからドクターストップもあり得るほど大出血しており、
観客もミゲルも次で勝負が着くだろうと思い始めますが、
6ラウンド目から急にビリーの動きが良くなるのです。
ショルダー・ブロックを多用し、パンチもミゲルに当たり始めます。
「打たれるほど調子が出る」というのは本当だったみたいですね。
7~10ラウンドまでビリーが若干優勢で、ミゲルも右目あたりから出血。
しかしどちらも満身創痍で、残り2ラウンド、あとは気持ちの勝負で、
どちらが勝ってもおかしくない接戦です。
11ラウンド、クリンチしたミゲルは「もう女房は守ってくれないぞ」と挑発。
ビリーはぶち切れて、またしてもルール無視の大乱闘になりそうでしたが、
ゴングに止められ、青コーナーに戻ると、セコンドのウィルズから
「娘が見てるぞ」と言われ、彼は冷静さを取り戻します。

そして最終12ラウンド。
ビリーはまたしてもダウンするが、ローブローによるダウンだったため、
ミゲルが減点されることになります。
試合終了まであと数秒というところで、ビリーはサウスポーにスイッチ。
サウスポーから放たれた右アッパーが見事に決まり、ミゲルはダウン。
しかしミゲルはカウント中にゴングで救われ(?)、勝負は判定になります。
採点の結果、審査員2対1で勝者は…、
…まぁそこまでは書かないでおきましょうか。
ビリーは努力が裁判所にも認められ、娘とも和解し、
同居できるようになり、めでたしめでたしです。

クライマックスがなかなか熱い試合で盛り上がったので満足でした。
ただサウスポーのネタバレはやっぱり少し冷めるかな。
あと、最終2ラウンドなんかは完全な打撃戦だったし、
あまりウィルズの「打たれない」ボクシングを実行してたのは言えないのも、
ちょっとどうなんだろうと思ってしまいます。
死んだ妻の「あまり打たれないで」という思いに応えるべきでは?
ただその反面、ボロボロになりながらも戦うところが醍醐味でもあるので、
ほぼ無傷で試合が終わってたら盛り上がらなかったかもしれません。

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