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ひそひそ星

近頃、ミニシアターに行く機会がめっきり減ってしまいました。
今年は今のところ映画館に37回行ってますが、ミニシアターは2回だけ。
例年は月に2~3回は通っていたのですが、
今年は観に行く映画をかなり絞っているため、
どうしても人気作、話題作を優先してしまうので、
ミニシアター系作品を観に行く機会が減ってしまいました。
劇場でミニシアター系作品を観てこそ真の映画ファンだと思うけど、
近所に大型シネコンがあるので、ちょっと映画でも観に行こうかと思っても、
わざわざミニシアターまで観に行くのが億劫になってしまいます。

ということで、今日はミニシアターに観に行った映画の感想です。

ひそひそ星
ひそひそ星

2016年5月14日公開。

園子温監督の最新作です。
昨年、園子温監督は商業映画、怒涛の四作連続公開を行いましたね。
『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』『みんな!エスパーだよ』です。
全部観ましたが、正直ヒットしたのは『新宿スワン』だけで、
内容でも『ラブ&ピース』以外はイマイチだったと思います。
ただ『ラブ&ピース』は2015年のベスト邦画の一本だったので、
園子温監督に対する私の評価はそれほど下がってないかな。
彼はこのまま商業映画監督としてメジャー街道を進むのかと思われましたが、
今回の『ひそひそ星』は再び自主映画に戻っています。
彼が立ち上げたシオンプロダクションの第一弾作品だそうです。
もともと自主映画で注目を集めた監督だったので、メジャー進出したものの、
商業映画では自分の撮りたいものが撮れなかったのかもしれませんね。
本作は構想25年の念願の作品だったみたいですが、
たしかにこの内容では商業映画には出来そうもないです。
『ラブ&ピース』の構想期間も同じくらいだったはずですが、
『ラブ&ピース』の製作に金を出す人はいても本作では難しいです。
なにしろ理解できない内容なので…。

アンドロイド「マシンナンバー772」こと鈴木洋子は、
昭和家屋風のアンティークな宇宙船「レンタルナンバーZ」に乗り込み、
星々を巡って人間の荷物を届ける宇宙宅配便の仕事をする。
というような物語ですが、特に山場もなければオチもありません。
82個積んでいるうちの数個の荷物を届ける過程が坦々と描かれるだけ。
難解というか、ぶっちゃけ中身のない物語だと思います。
いや、中身がないというのは少し語弊があるかもしれませんね。
明確にはされないものの、メッセージの片鱗のようなものが散りばめられ、
あとは観客が勝手に解釈してくれたらいい、というような印象です。

ただ本作にコメントを寄せた栗原類のように、
本作の最大のテーマは「福島」だと思っている人も多いみたいですが、
それだけは見当違いだと思います。
たしかに園子温監督は『ヒミズ』『希望の国』と、
これまでも東日本大震災後の福島を題材に撮り続けていましたが、
本作は構想25年なので、5年前の東日本大震災は関係ないです。
原発事故の影響で帰還困難地域となり、復興が遅れている福島の一部が、
ポスト終末ものSFである本作のロケ地として最適だっただけの話。
これは『ヒミズ』や『希望の国』でも同じで、壮絶な被災地の風景や状況が、
映画のロケ地として魅力的で、ネタとしてオイシイから舞台にしているだけです。
おそらく園子温監督には福島に対してそれ以上の想いはありません。
もちろん福島を舞台にしたことも、観客に与えたメッセージの片鱗のひとつですが、
それが最大のテーマというのはあり得ないと思われます。

では25年前に構想した時のテーマは何だったのかと考えると、
たぶん「科学の終焉」だったのではないかと推測されます。
止まることなく進歩するように思える科学ですが、どこかで限界を迎え、
科学が完結した後の世界がどんなものかを描きたかったのでしょう。
人類は数度にわたる大災害と失敗を繰り返して衰退の一途にあり、
宇宙は人工知能を持つロボットが8割を占め、人間は2割にまで減少している。
という世界観の物語ですが、よくある終末ものSF映画のように、
賢くなりすぎた人工知能が人間を支配しているわけでもなさそうです。
なにしろ人工知能のアンドロイドの主人公は、
人間に荷物を運ぶために働いているんですからね。
人間の衰退はロボットとの戦争など特に何か重大事件が起きたわけでもなく、
災害や失敗の積み重ねで静かに進行しているようです。

興味深いのは人類はすでにテレポーテーション技術を開発しているのに、
あえて届くまでに何年もかかる宅配便で運ばせているという点です。
それは人間には距離と時間に対する憧れがあるからで、
人間にとってそれを無にするテレポーテーションは、初めは便利でも、
退廃的な結果を生む技術と感じるようになったみたいです。
合理的なロボットはテレポーテーションを利用していると思われ、
宇宙宅配便を利用するのは人間だけらしいです。
そもそも鉛筆一本とか紙コップとか煙草の吸い殻とか、
ゴミみたいなものをわざわざ梱包して何年もかけて届けさせてますが、
たぶん人間にとっては届ける品物よりも、
届けるのに費やされた時間や届け先までの距離に価値があるのでしょう。
距離と時間に対する憧れ、なんとなく理解できる気がします。

そんな化学が完結した世界という設定は非常に面白くて、
この設定をいつか物語にしようと25年も温め続けてきたのも理解できます。
しかし本作はどういうわけか、その設定すらも殊更大きく扱わず、
その世界で生きる主人公の日常が坦々と描かれ、何のオチもなく終わります。
せっかく興味深い世界観なのにもっと活かさないと勿体ないと思いました。
設定が興味深いので、私自身はそこまで退屈しませんでしたが、
あまりにも坦々とした、BGMすらない静かなモノクロ映画なので、
爆睡する客が続出して、鑑賞中イビキが耳障りでした。
SFですがエンタメ作品を期待して観に行くのは止めた方がいいです。
もしあなたが寝たら他のお客さんに迷惑なので。
(客入りも少ないし、寝息でも気になるほどの静かな映画です。)

商業映画とは違い制約の少ない自主映画なので、
いつも以上に園子温監督の作家性が出るのではと期待しました。
この独り善がりな内容を見れば、彼の作家性がフルに発揮されていたのは
間違いなさそうですが、私の期待するものとは違ってましたね。
『冷たい熱帯魚』で衝撃を受けて園子温監督に注目した私は
セックスとバイオレンスこそ彼の作家性と思っているので、
違う方向の作家性が出た本作は楽しめませんでした。
まぁセックスとバイオレンスのなかった『ラブ&ピース』も大好きなので
一概には言えませんが、次はもっとエグい内容の監督作を観たいです。

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