ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

スポットライト 世紀のスクープ

『スポットライト』に出演したレイチェル・マクアダムスが初来日しました。
もちろんその映画の宣伝に来たわけですが、時期が時期だけに
自粛ムードもあって、あまり大々的に宣伝活動も出来ないでしょうね。
まぁ地震が起こるなんて誰も予想できないので仕方ないです。
初日舞台挨拶でも「地震のことに胸を痛めています。」と言わされています。
被災地では十数館の映画館が営業停止しているらしい、
もし映画館が無事でも映画を観てる場合じゃないだろうから、
被災された方はどうせこの映画は観ないのにね。

ということで、今日は『スポットライト』の感想です。

スポットライト 世紀のスクープ
Spotlight.jpg

2016年4月15日日本公開。

本作は第88回アカデミー賞作品賞でオスカーに輝いた作品です。
受賞前は流れ的にゴールデン・グローブ賞で本作を降した『レヴェナント』が
本命かと思っていたので、ちょっと予想外の結果でした。
まぁ対抗のひとつではあったので、サプライズ受賞ってほどでもないけど。
ただ、いざ結果を見てみれば、本年度は本作に有利だった気がします。
というのも、アカデミー賞の俳優部門に黒人候補がひとりもいなかったことで、
アカデミー賞が「保守的だ」と非難されていた真っ最中での戦いだったので、
保守的なキリスト教を批判する内容の本作に投票が集まった気がします。
つまり「アカデミー賞は保守的じゃない」というアピールです。
いざ本作を観て、その考えはますます強くなりました。
なぜなら、本作が作品賞オスカーを受賞するほどとは思えないからです。

たしかに扱っているネタはなかなか刺激的で興味深いものです。
神父による児童への性的虐待という実際のカトリック教会のスキャンダルが
描かれているのですが、それ以上でもそれ以下でもありません。
ただその実話をそこそこ有名な俳優を使って再現にしただけで、
ドラマ性がほとんど感じられないようにな気がします。
登場人物たちも単なる記号でしかなく、一体誰が主演なのか、
誰に感情移入して見ればいいのかもわからないような状況で、
ただただ「こんな事件がありました」というだけの内容です。
これを映画として高く評価するのは如何なものかと思います。
作品賞候補8作中、日本公開済みの6作は観ましたが、私の順位は暫定5位。
最大のライバル『レヴェナント』はまだ未公開ですが、おそらくそれ以下なので、
最終的には6位以下になるでしょう。
これが作品賞オスカーなんて政治的意図としか考えられません。

カトリック教会や法曹界、出版界が絡んでくる内容なので、
それなりに組織や業界の知識がないと、少し難しく感じるかもしれません。
かく言う私も、もともと宗教嫌いなので、カトリック教会について疎く、
大司教区とか枢機卿と言われても、なんとなくしかわからりませんが、
本作は怒涛のテンポで進むので、咀嚼する間もなく、どんどん話が流れます。
日本人の多くはカトリック教会に疎いから、同じ苦労をする人もいるかも。
さらに聞き慣れない固有名詞が多すぎるのも大変でした。
特に登場人物が多すぎるため、覚えきれません。
ちゃんと登場する人物でも顔と名前が一致しなくなったりしますが、
更に重要な人物でも名前しか出てこない人物もかなり多く、
もう誰のことについて話してるのか混乱してしまいます。
また覚えやすい名前ならいいけど、嫌がらせみたいな覚えにくい名前が多く、
主な弁護士だけでもギャラベディアンとかサリヴァンとかマクリーシュとか、
多いは覚えにくいはで、名前だけではどの弁護士かピンとこなかったり…。
台詞がない時間がないほど誰かしらずっと喋っているので、
次から次に出てくる名前を処理しきれず、耳から煙が出そうになります。

こんなことになってしまうのは、もちろん私の処理能力の問題もあるけど、
脚色があまり上手くないのも原因だと思うんですよね。
本作は報道ではなく映画なんだから、別に事実に固執する必要はなく、
客がもっとわかりやすいように、登場人物を減らすなど脚色してもいいはず。
こんな不親切な脚本なのに脚本賞オスカーにも輝いているなんて、
信じられないというか全く納得できません。
でも、もしかすると日本語字幕が不出来なだけなのかもしれません。
ずっと台詞が続くので私のように英語が苦手な人は字幕を読み続けるため
字幕から目が離せなくなりますが、それでは登場人物の顔もロクに見れないし、
見てないから顔と名前が一致しなくても当たり前ですよね。
英語が苦手な人は、オリジナル音声を諦め日本語吹替版で観た方がいいかも。
吹替版は劇場公開されてないので、ビデオリリース待ちになりますが。

更にちゃんと楽しむためには、実際の事件を知っておいた方がいいのかも。
怒涛のテンポで進むので、初見でこの事件の全容を理解するのは厳しいです。
日本ではどの程度報じられた事件なのか知りませんが、
アメリカでは相当世間を騒がせた大スキャンダルだと思われるので、
アメリカの客はある程度知識がある上で観ているから評価が高いのかも。
よく知ってる事件が暴かれた経緯を描いた作品として興味深いでしょうが、
そもそも知らない事件ではそこまで興味を持つことが難しいです。
知ってる事件の裏側は気になるけど、知らない事件の裏側はどうでもいいので。
まぁ神職による児童性的虐待事件は、知らなかったことを差し引いても、
なかなか衝撃的ではありますが、知っていれば何倍も楽しめたでしょう。

物語の感想を書こうにも、早すぎるテンポと多すぎる登場人物で、
正しく理解できた自信がないので無理です。
仮にもその年を代表するハリウッド映画であるオスカー作品なのに、
理解しきれなかったなんてハリウッド映画ファンとして口惜しいですが…。
とはいえ人物名や展開の細部はかなり抜け落ちてはいるものの、
大まかな流れは掴めたような気がするので、その範囲での感想になります。
私は宗教に否定的なので、クリスチャンにとっては不快な感想なので注意です。
一応、ネタバレも注意です。

タイムズ傘下の地方紙ボストン・グローブ紙に、
新任の編集局長バロンが着任し、すぐさま紙面の改革に着手。
彼はゲーガン神父が80人の児童に性的虐待したこと、
それを枢機卿が黙殺した疑いがあることについてのコラムを読み、
なぜこの事件をもっと掘り下げないのかと記者たちに問います。
敬虔なカトリックが多い地域で、読者の53%がカトリックということもあり、
カトリック教会のスキャンダルはタブーで、大きく扱うことは憚れるし、
新聞社が教会を敵に回して勝てるはずもないので触れなかったみたいです。
これだから宗教は恐ろしいし、嫌いなんですよね。
神職の児童性的虐待なんて、もっと大騒ぎされて当然の卑劣な犯罪ですが、
宗教の力で圧力が掛かって揉み消されちゃうんだから酷い話です。
信仰とは逆の行為をしておきながら、その宗教から守られるなんて…。
本当に神がいるなら、そんな不心得者は罰されるものなのに、
そうはならないんだから、これこそ宗教に実体がない証拠ですよ。

しかし新局長は余所者だしユダヤ人なので、そんな事情は知ったことではなく、
特集記事「スポットライト」欄を担当するチームに
ゲーガン事件を独自調査し、記事にするように命じます。
チームもタブーを犯すのは嫌だろうと思いましたが、意外にもノリノリ。
神父だろうが政治家だろうが権力に逆らってこそのジャーナリズム精神ですね。
ただ、ロビー率いるスポットライトチームはたったの4人。
精鋭かもしれないが、社を上げて教会と戦うって感じでもないのかも。

チームはまず被害者から話を聞くことに。
児童への性的虐待というと女児が被害者と思ってしまいますが、
どうも男女問わずに虐待を受けているみたいです。
登場する被害者はほとんど男なので男児の方が多いのかも?
事件は二十数年前なので被害者も大人になっていますが、
当時のことを話したがらない人も多く、難航します。
男女問わずレイプされたなんて経験は隠したいものだし、
自分がクリスチャンで相手が神父となれば尚更でしょうね。
しかし被害者の会SNAPの男性に話を聞くことが出来ました。
話しによれば、性的虐待する神父はボストンだけで13人もいるらしく…。
ゲーガン神父だけではなく、教会全体が腐敗しているようです。

更に調査を進めると、虐待神父の更生をしている心理療法士サイプから、
神父の6%は小児性愛者で性的虐待経験があるとの情報が…。
ボストンの全神父1500人の6%、約90人が虐待神父ということになります。
異様に高い割合な気がしますが、小児性愛者の割合は25%以上らしいし、
普通は小児性愛者でも逮捕されるので性的虐待は我慢するけど、
大司教区が揉み消してくれる神父なら我慢せずにやっちゃうのかもね。
サイプ曰く、虐待神父は性的に未熟で、精神年齢12~13歳らしいが、
そもそも神を本気で信じてる時点で中二病と変わらないので、
神父になろうって奴は精神年齢が中学生並で当たり前なのかも。

虐待を起こした神父は教会から休暇、転属させられるので、
教区年鑑で怪しい休暇歴があったり、転属が早い神父をリストアップします。
するとボストンだけで87人の疑わしい神父が…。
そんな大人数の神父が問題を起こしているなら騒ぎになりそうなものですが、
どうもこの問題を専門に請け負う弁護士と、教会側の弁護士が癒着し、
ほとんどの虐待を示談にしてしまうので、裁判にはならなず、
記録も残らないシステムになっているのだそうです。
虐待される児童は貧しい信者の子供が多いので、
教会から金を積まれて謝られたら許してしまうのでしょうね。
それをわかって貧しい子を食い物にするんだから卑劣極まりないです。

チームは虐待神父リストの裏を取るために、弁護士に接触したり、
被害者からの情報収集を頑張りますが、911大事多発テロが発生し、
新聞社としては児童虐待事件の調査をしている場合ではなくなります。
こんな時に人々の心の支えであるキリスト教を叩くのは憚られますもんね。
心情的には神の名を騙る組織的児童性的虐待事件の方が、
神の名の騙る自爆テロよりも卑劣で赦し難いと思いますけどね。
しかしチームの記者レゼンデスが、裁判所の記録保管庫から、
枢機卿が虐待の存在を知っていながら黙殺していたことを示す証拠を発見。
(7人の子供を虐待された母親が枢機卿に宛てた手紙など。)
チームは再始動しますが、早く記事にしようというレゼンデスに対し、
チームの長ロビーは「敵は枢機卿個人ではなく教会だ」と反対し、
先にリストの裏を取るべきだと主張し、教会側の弁護士と接触。
70人の虐待弁護士について裏を取ることに成功します。
しかし、すぐには記事にせず、記事の掲載は年明けを待つのですが、
その理由はクリスマスに発表することを避けるためです。
今カトリック教会を叩くと、クリスマス・ムードに水を差すという判断でしょう。
むしろそのタイミングに合わせて発表した方がインパクトがある気がするけど、
やっぱりアメリカはキリスト教の国だから自然とそんな配慮をしちゃうのかな。

チームはその記事を読んだ信者から批判が殺到する覚悟をしてましたが、
殺到したのはスポットライトへのホットラインです。
「私も神父に虐待された」という被害者からの電話が殺到します。
みんな記事を読んで、カミングアウトする勇気を貰ったのでしょうね。
その後スポットライトは600本の記事を通じて、
1000人以上の児童が249人の神父に虐待を受けていたと報じます。
もちろん虐待はボストンだけじゃなく世界中で行われていたみたいです。
そして世界中で虐待神父の隠蔽も行われていたのでしょう。
もう神父に会っても、「こいつらの17人に1人が虐待神父か」と思っちゃうかも。
信者も子供を教会に連れて行くのは控えた方がいいかもね。
神父志望者の性的に未熟で精神年齢が低いかはわかりませんが、
相当変わり者なのは間違いないので。

はぁ…、これが去年のオスカーか。

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1648-5cc9e743
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad