ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

ヘイトフル・エイト

日本時間の本日、第88回アカデミー賞の授賞式がありました。
ビッグ・ファイブの結果は、作品賞は『スポットライト 世紀のスクープ』、
監督賞は『レヴェナント 蘇えりし者』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
主演男優賞は『レヴェナント 蘇えりし者』のレオナルド・ディカプリオ、
主演女優賞は『ルーム』のブリー・ラーソン、
脚本賞は『スポットライト 世紀のスクープ』がオスカー受賞しました。
受賞作はどれも日本未公開の作品なので何とも言い難いですが、
作品賞と主演男優賞の結果は少し意外だったかも。
作品賞は下馬評通り『レヴェナント 蘇えりし者』だと思っていたし、
5度目のノミネートのディカプリオもどうせまた受賞を逃すと予想してました。
何にしても『スポットライト』、『レヴェナント』、『ルーム』の3作品は、
この結果を受けて公開が更に待ち遠しくなりました。

ということで、今日は作曲賞受賞作の感想です。

ヘイトフル・エイト
The Hateful Eight

2016年2月27日日本公開。

第88回アカデミー賞で作曲賞を受賞した本作。
それほど映画に対して音楽を重視していないので、
その受賞が鑑賞の動機にはなりません。
ただ単に奇才タランティーノ監督の最新作として期待していました。
いざ観てみて、期待通りの面白さだとは思いましたが、
如何せん上映時間が長く感じてしまいました。
いや、実際に約170分もあるかなりの長尺映画なのですが、
前作『ジャンゴ』や前々作『イングロリアス・バスターズ』も長尺映画だったのに、
本作だけがやけに長く感じられたということは、
面白かったけど前作や前々作よりも冗長感があったのでしょう。
タランティーノは長尺も自分の持ち味だと思ってるのかもしれないけど、
相当面白い話じゃないと冗長になりやすいし、生理現象にも困るので、
映画はやっぱり2時間前後でまとめてほしいです。
本作も面白味を損なうことなく30分は削れる内容でした。
なお、本作は「ウルトラ・パナビジョン70」という極めて特殊な規格で撮られ、
その70mmフィルム版だと180分を超える上映時間だそうです。
(日本ではたぶん上映する機材がないのでデジタル版です。)

本作の面白い(?)逸話と言えば、脚本流出騒動でしょう。
一昨年、書き上げたばかりの初稿がネットにリークされ、タラちゃん激怒。
流出元を訴え、本作の製作も中止されてしまいました。
しかしタダでは転ばぬタラちゃんは、キャストを集めて朗読会を開催。
朗読会に参加したサミュエル・L・ジャクソンの熱意に負け、
再び映画製作することになったみたいです。
もちろん改稿を重ねているので、流出した初稿とは大きく内容が違います。
初稿の脚本は読んでいないので比べようがありませんが、
無理やり行った改稿がポジティブに働くとは考えにくいので、
きっと初稿の方が面白かったんじゃないかと思うんですよね。
本作の終盤にちょっとグダグダ感を覚えてしまったため、
これは無理な改稿のせいではないかと思えたので…。
まぁ上映時間が長すぎるので単に疲れただけかもしれないけど。
以下、ネタバレ注意です。

時代は南北戦争後、大雪のワイオミング州。
計8000ドルの賞金首を仕留めた黒人の賞金稼ぎは、
大雪で愛馬が死に、賞金首を換金できる街レッドロックまでの足がなく、
たまたま通りかかった駅馬車を停め、同乗を願い出ます。
その駅馬車は通称「ハングマン」という男が貸し切っており、
彼は生け捕った女手配犯をレッドロックまで連れていく途中です。
女手配犯には1万ドルもの報奨金が懸けられており、
ハングマンは彼女を賞金稼ぎに横取りされることを警戒しますが、
賞金稼ぎがリンカーン大統領の手紙を持っていて、
大統領の文通仲間だったので信用できると思ったのでしょう。
この手紙は白人に懐柔するために偽造したものと後にわかりますが。
その後、レッドロックの新任保安官を自称する男が駅馬車に近づいて来て、
同乗を願い出ますが、ハングマンはやはり警戒するも、
彼が本当に保安官なら置き去りにすれば報奨金が受け取れなくなるので、
仕方なく同乗を許可するのです。
南北戦争中に賞金稼ぎは南軍の白人を殺しまくった北軍の黒人兵士で、
保安官は南軍の略奪団メンバーだったので、車内は険悪な雰囲気です。
宣伝では「密室ミステリー」を謳われていたので、
野外のシーンから始まり、しかもけっこう長かったのが意外でした。

吹雪が強まり、駅馬車は山小屋「ミニーの紳士服飾店」に避難することに。
しかし店主は留守でメキシコ人の使用人が店番しており、
店内には先客であるレッドロックの絞首刑執行人、元南軍将軍の老人、
実家に帰る途中の牛飼いの3人が吹雪で足止めされていました。
これで主要登場人物が揃ったわけですが、黒人賞金稼ぎ、ハングマン、
女手配犯、保安官、駅馬車の御者、使用人、執行人、将軍、牛飼いで9人。
タイトルが『ヘイトフル・エイト』、訳せば「忌々しい8人」だったので、
主要登場人物も8人のはずだと思ったのですが、なぜか9人いますね。
「エイト」は人数ではなく、タランティーノの第8回監督作って意味なのかも。
いや、単に御者は含めないと考えるのが妥当かな。

ハングマンは賞金稼ぎと御者以外の5人の男の誰か(或は何人か)が、
女手配犯を救出しに来た彼女の仲間ではないかと疑い、警戒します。
保安官は同じ南軍出身同士で将軍と意気投合しますが、
賞金稼ぎは将軍と戦場で相見えたことがあり、一触即発の雰囲気です。
そこで執行人が仲裁に入り、店を二分し、南軍と北軍に分かれようと提案。
なるほど、この店が南北戦争の縮図になる展開か、
…と思ったのですが、その提案はいつの間にか流されてしまいます。
興味深い展開になりそうだと思ったのに残念です。
上映時間もすでに一時間を超えていて、そろそろ何か動きがほしいです。
…と思っていたら、ついに物語が動き始めます。
賞金稼ぎが将軍を執拗に挑発、激昂して拳銃を手にした彼を撃ち殺すのです。
これなら正当防衛なので罪に問われることはない、と。
その挑発方法が度が過ぎる侮辱なので、ここに書くのは差し控えます。
まぁ将軍のようなレイシストには相応しい殺され方なのかもしれないが、
賞金稼ぎの想像を絶する根性の悪さにちょっと引きました。

そんな騒動の間に、ある男がコーヒーのポットに毒を混ぜます。
それを目撃したのは女手配犯だけ。
何も知らずに毒入りコーヒーを飲んでしまったハングマンと御者が吐血。
御者は死に、ハングマンも弱ったところを女手配犯に射殺されます。
この事件が起こった時点で、上映時間はちょうど半分くらいですが、
主要登場人物の中でも賞金稼ぎと並ぶ主人公格だと思ったハングマンが、
まさかこんなところで退場になるとは予想外の展開です。
賞金稼ぎはハングマンの言う通り、女手配犯の仲間が毒殺を図ったと考え、
使用人、執行人、牛飼いの3人に拳銃を突き付けます。
保安官はあわやコーヒーを飲みかけたので容疑者から外します。
一体誰が女手配犯の仲間で毒殺犯なのか、ついに密室ミステリー開始です。
いやー、本題に入るまで一時間半以上、かなり長かったですね。

怪しいのは素性が最も不明な牛飼いですが、
保安官が彼を執拗に疑ってるので、怪し過ぎて怪しくないです。
使用人は毒が混入された騒動の時にピアノを弾いていたのでアリバイがあり、
紳士を装っている執行人の犯人説が有力かなと思いました。
しかし賞金稼ぎはメキシコ人の使用人を疑います。
というのも、この店「ミニーの紳士服飾店」の店主は、
2年前まで店に「犬とメキシコ人お断り」という看板を掲げていたほど
メキシコ人嫌いなので、メキシコ人使用人に店番させるはずない、と。
彼が店主を殺して店番のふりをし、ハングマンを待ち伏せしていたと推理。
アリバイがあるので毒殺犯は別にいると考えます。
その推理は的中していたのですが、店主がメキシコ人嫌いなのは、
我々観客には知る由もないことなので、推理の余地がないですね。
せめて牛飼いと執行人のどちらが毒殺犯か推理したいところですが、
考える暇もなく、牛飼いが「俺が毒を混ぜた」と自供しちゃいます。
あらあら、これでは密室ミステリーとは言えませんね…。
そもそも執行人もグルなので、容疑者3人とも女手配犯の仲間だし。
賞金稼ぎは使用人を射殺、次の瞬間、床下から何者かに撃たれ股間を負傷。
その隙に執行人も保安官と撃ち合いになり、双方とも負傷します。

時は遡り、その日の朝。
この店に4人の男を乗せた駅馬車が到着し、4人は店主を殺害し、
店を乗っ取り、女手配犯を連行するハングマンを待ち伏せます。
その4人は牛飼い、執行人、使用人、将軍、…と思いきや、
最後のひとりは将軍ではなく見知らぬ男で、床下から撃った奴です。
彼はどうやら女手配犯の弟らしいです。
将軍はたまたま店にいた客ですが、有名人だったので説得力が出ると考え、
犯人たちに殺さない代わりに協力するように言われたみたいです。
彼らは名うてのギャング団で、弟が首領で5万ドル、偽執行人が1万5000ドル、
偽使用人が1万2000ドル、偽牛飼いと女手配犯が各1万ドルの賞金首です。
計9万7000ドルのギャング団ですが、相当な悪党なのでしょうね。
こんな終盤で新キャラが登場して、しかも彼が事件の首謀者だったなんて、
ミステリーとしてはあるまじき展開ですが、
弟を演じるのは人気俳優チャニング・テイタムで少し得した気分。
人気俳優なのに役柄上、宣伝には使えないところが面白いですね。

賞金稼ぎと保安官は負傷しながらも女手配犯を人質に取り、
床下の弟に丸腰で出てくるように命令します。
そして仕方なく床下から顔を出した弟をすぐに撃ち殺すのです。
なんだかんだで偽牛飼いと偽執行人も射殺されます。
絶体絶命の女手配犯は保安官に取引を持ちかけます。
賞金稼ぎを殺せばも報奨金1万5000ドルの偽執行人の遺体を譲る、
私を殺せば15人の部下から街ごと報復を受けるだろう、と。
その儲かる取引に応じかけた保安官ですが「だが断る」と返答。
南軍の略奪団出身の彼ですが、保安官としての正義感は強いみたいです。
(毒を盛られかけたことも根に持ってるみたいだけど。)
宣伝で「クセもの8人、全員ウソつき。生き残るのは誰だ!」と謳われているが、
結局一番嘘臭かった保安官だけは何ひとつ嘘をついてませんね。
一番の嘘つきはこの嘘のキャッチコピーを作ったコピーライターだな。

賞金稼ぎらは女手配犯を撃ち殺すだけでは生温いと考え、
ハングマンの望んでいた通り、絞首刑に処すことにし、
彼女を天井から吊るして縛り首にします。
2人とも死にかけの重傷なのに、よくそんな大掛かりなことが出来たものです。
女手配犯が死にゆく様を見て、満足げな2人でしたが、
吹雪であと数日足止めされる重傷の彼らもまた死にゆく定めです。
彼らが死ぬところまでは描かれませんが、結局全員死ぬわけで、
誰も生き残らず、またしてもキャッチコピーに騙されました。
この後この店を訪れた人は、賞金稼ぎの持参した8000ドルの賞金首も含め、
計10万ドル以上の賞金首の遺体を労せず入手できるので大儲けですね。

本格的な密室ミステリーを期待してしまうと肩透かしを食らうけど、
ミステリー風味の西部劇コメディとしてなら、なかなか楽しめました。
もう少し短ければ更に楽しめたと思われますが…。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1628-eaf44b78
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad