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ザ・ウォーク

アカデミー賞の俳優部門の候補が二年連続で白人のみとなったことで、
人種差別だと批判されたことを受けて、主催する映画芸術科学アカデミーは、
早くも改革案を発表し、概ね好意的に評価されているみたいです。
しかし私は正直この改革案はクソだと思います。
改革案の概要は、現状では白人男性が大多数を占めるアカデミー会員を、
2020年までに非白人(主に黒人)や女性の会員数を倍増させるというもの。
たしかにそうなれば、黒人候補が選ばれる確率は上がると思います。
ただ候補に選ばれるくらいならいいけど、最終投票の際に、
黒人会員は組織票で黒人候補に投票するのは目に見えています。
作品の出来や役者の演技力に関係なく、彼らは同胞に投票します。
もし黒人会員の割合が2割を超えれば、相当なアドバンテージです。
映画の内容に関係なく、人種だけでオスカーが決まってしまう可能性もあり、
映画賞としては本末転倒ではないでしょうか。

そもそもアメリカは白人が大多数を占める国なんだし、
そこで製作されるハリウッド映画も白人俳優が多くて当たり前で、
多い白人俳優の中から候補が選ばれやすいのも当たり前です。
ということで、今日は黒人がほぼ登場しないハリウッド映画の感想です。

ザ・ウォーク
The Walk

2016年1月23日日本公開。

本作は1974年にワールドトレードセンターで綱渡りした
フランスの大道芸人フィリップ・プティの伝記ドラマ映画です。
この話は2008年にドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』でも描かれ、
それが第81回アカデミー長編ドキュメンタリー映画部門でオスカー受賞し、
それを受けて日本でも小規模ながら公開されましたね。
でも私は綱渡りに微塵も興味がないので観に行く気にならず、未鑑賞です。
お騒がせ野郎のバカ行為のドキュメンタリーに払う金はないよ、と。
オスカー受賞したのも、作品の出来云々は関係なく、
今は無きワールドトレードセンターへの哀惜の念で選ばれただけだろう、と。
何はともあれ、オスカーを受賞したことでその話への注目が集まり、
伝記映画化する企画が持ち上がって製作されたのが本作でしょうが、
正直内容にはほとんど期待していませんでした。
ただけっこう好きな俳優ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが主演しているので、
彼の演技を見るために劇場まで足を運んだ感じです。

でも実際は本当に観に行くべきか、かなり悩んだんですよね。
主演はいいけど物語が面白くなさそうな予感が強かったし、
なにより近所のTOHOシネマズで3D上映しかされてなかったので…。
たいして期待もしてないのに、3D追加料金300~400円払いたくないな、と。
電車乗って2D版も上映している隣町のMOVIXに行こうかとも考えたけど、
電車賃考えると往復400円では済まないと思い、結局近所で3Dを観ました。
他に観たい映画があったら、たぶん本作はスルーしてたと思います。
近所のTOHOシネマズでは2D上映しないくせにMX4D上映はしていて、
誰がこんな映画に1500~1600円も追加料金払うんだと思いましたが、
案の定、MX4Dの上映回はガラガラみたいです。
なにしろ全米ボックスオフィス最高でも7位の作品ですからね。
日本でもそれほど期待されているはずありません。
それを割り増し料金の3Dや4Dを中心に上映するなんて、
劇場はもう少し客のニーズを考えた方がいいです。

でも3Dで観た甲斐が全くなかったかといえば、そうでもないかも。
本作はちゃんと3Dで上映されることを念頭に制作されているため、
3Dが活きる演出がけっこうあります。
サーカス小屋の綱渡りで主人公フィリップがバランス棒を落とすシーンとか、
反射的に棒を避けちゃいましたからね。
でもワールドトレードセンターの上から見下ろすシーンなんかは、
さすがに3Dでもその高さを表現できていたとは言えません。
3Dは奥行きを演出することは出来るものの限度があり、
意外と開けた場所よりも狭い密室の方が向いてるんですよね。
なので3Dで観る意味は多少あるが、追加料金300円の価値はないかな。
2Dで十分だと思います。以下、ネタバレ注意です。

8歳の時、オーマン・コウスキ団サーカスで綱渡りを見て感動したフィリップは、
綱渡り師(ワイヤー・ウォーカー)を志し、独学で綱渡りを練習します。
はじめは木の間に5本の縄を張り、渡れたら1本ずつ減らしていくのですが、
ちゃんと段階を踏んで練習するところが頭いいですね。
私なんかは初めから1本で練習するものだと思ってました。
綱渡りだけではなく、ジャグリングなんかも習得します。
1本を渡れるようになった頃、彼はサーカスのテントに侵入し、
本物の綱渡り台に挑戦しようとしますが、座長のパパ・ルディに見つかり…。
しかし座長はフィリップの才能を見抜き、仕込んでくれようとしますが、
彼が「俺はピエロじゃない、アーティストだ」と客への感謝を蔑ろにするので
愛想を尽かして追い出してしまいます。
また彼は、大道芸人の夢を理解されず、実家からも追い出されます。
まぁ親なら息子が大道芸人を目指すなんて言い出したら反対するよね。
終盤で親と和解すると思ったけど、そんな展開は全く描かれず意外でした。

家を追い出されたフィリップは、大道芸人も多いパリに向かうのです。
綱渡りに最適な場所を探す彼は、歯医者に置いてあった雑誌で、
NYで超高層ツインタワー、ワールドトレードセンターが建設中だと知り、
いつかそこで綱渡りをしようという夢を抱きます。
ある日、パリの大通りで街灯にワイヤーを張って、綱渡りを披露していたら、
近くで弾き語りをしていた女性ミュージシャンのアニーに、
「私の客を盗らないで」と因縁を付けられるのです。
彼女に惹かれたフィリップは、邪魔をしない代わりに飲もうと誘い、
ワールドトレードセンターで綱渡りするという自分の夢を語って、
彼女はその夢を応援してくれることになります。
彼女とのロマンスがもっと描かれるかと思ったけど、
あまり掘り下げられず、いつの間にか付き合っていた感じです。
でも恋人なら相手の自殺行為を応援するものかな?

アニーの口利きで、美術学校の校庭で綱渡りの練習が出来ることになり、
そこの学生なのかカメラマンのジャン=ルイスと知り合い、
彼が芸術的クーデターの2人目の協力者、いや、共犯者になります。
そんな時、練習中にワイヤーが外れてしまう事故があり、
フィリップはパパ・ルディ座長にワイヤーの張り方を教えてもらいに行きます。
ワイヤーなんて、ただ解けないようにピンと張ってればいいと思ってたけど、
ちゃんと重量計算とか設営方法とか知識と経験が必要なんですね。
座長はタダでは教えないと言い、フィリップは授業料を払いながら、
一座の旅に同行し、綱渡りの極意も教わります。
座長は綱渡りの達人らしいので、是非彼の妙技も見てみたかったけど、
彼が綱渡りするシーンは全くありませんでしたね。
座長というか、座長演じるベン・キングズレーの綱渡りが見たかったです。

そしフィリップはて小さな村で初公演することになるのです。
沼に渡したワイヤーで綱渡りするのですが、観衆の野次に動揺し、ザブン!
当たり前だけど綱渡りにはメンタルがかなり重要なようです。
でもこの時点でフィリップがこんなにメンタル弱いとは思わなかったな。
野次で動揺する程度なのに、ワールドトレードセンターに挑もうなんて…。
しかしすぐに彼のメンタルの強さを示す出来事があります。
今度はノートルダム寺院の双頭に渡したワイヤーを見事に渡り切ったのです。
沼の失敗の後に段飛ばしでそんなことに挑むなんてメンタル強すぎ。
もちろん何の予告もなしで、ジャンの協力で夜の間にワイヤーを渡し、
観衆のいる朝に渡るのですが、当然これは違法行為です。
その様子を他国の報道機関は面白がって偉業と称賛しますが、
フランスの報道機関は一様に犯罪者扱いで…。
まぁ成功したからよかったものの、もし転落死でもしていたら、
パリの貴婦人が汚れちゃうことになるわけだし、いい迷惑だよね。
だから私も、違法な綱渡りみたいな独善的芸術は感心しないし、
偉業とも思わないから、ドキュメンタリー映画に興味が湧かなかったのかも。

ワールドトレードセンターの完成間近という新聞記事を読んだフィリップは、
アニーとふたりでNYまで行き、工事中のワールドトレードセンターを下見。
作業員の通用口に忍び込み、運よく南棟の屋上まで上がることが出来ます。
いざその高さを目の当たりにしたフィリップは「これは不可能だ」と。
さすがに怖気づいたかと思ったら「それでもやる」と言い、
パリに戻ってワールドトレードセンターの屋上模型を作成し、
どうやってワイヤーを渡すかなど詳細な計画を立て始めます。
私もワイヤーの渡し方が最も謎で気になりました。
まず釣り糸を渡すのですが、ラジコン飛行機で渡そうなんて案も。
最終的には弓矢で渡すことになるのですが、色々考えるものですね。

他にも補強ワイヤーが必要だったりと、いつもと勝手が違うため、
またパパ・ルディ座長に設営方法を習いに行きます。
座長は「悪いこと言わないから命綱を使え」と助言します。
弟子を死なせたくないのでしょうが、これは当然の態度ですよね。
むしろアニーやジャンがそれを言い出さないのが不思議なくらいです。
しかしフィリップは命綱を頑なに拒否し、座長が折れます。
まぁ命綱付けた綱渡りなんて興醒めですもんね。
計画にはもっと協力者が必要で、ジャンの友達ジェフが仲間に加わります。
ジェフは英語も話せないし、高所恐怖症なので向いてない気がしますが、
数学教師なので重量計算に貢献するかと思ったら、そうでもなく…。
なんで協力を申し出たのか謎です。

決行日を3カ月後の8月6日と定め、毎日ワールドトレードセンターを偵察。
どうやって屋上に侵入するか、どうやって機材を運び込むか計画したり、
北棟と南棟の間の正確な距離などを調べるのです。
フィリップは建築家に変装して、無断で現場に出入りするのですが、
釘を踏んで足を負傷してしまいます。
決行目前に怪我するなんて不注意も甚だしいですね。
変装が得意なら、ちゃんと安全靴くらい履けばいいのに…。
しかもフィリップは怪我したのに延期しないつもりです。
ある日、彼が北棟エレベーターに乗っていると、同乗していた男バリーが、
「君は部外者じゃないのか?」と話しかけてきます。
これは不法侵入で突き出されるかもしれない絶体絶命のピンチですが、
なんとバリーはノートルダム寺院で綱渡りを見ていたフィリップのファンで、
しかも82階のオフィスを構える保険会社の社員だそうで、
手引きをしてもらうために彼を仲間に引き入れます。
さらに通信機を買いに行った時に、フランス人の店主JPに怪しまれ、
彼も仲間に引き入れることになります。
そしてJPの紹介で、アメリカ人アルバートとデビッドが仲間入りします。
この2人は頭も悪そうで頼りないですが、時間もないので妥協します。
怪我したり仲間が無能だったり準備不足だったりするのに、
なぜフィリップは決行日を絶対延期しないんでしょうね。
彼は決行日が近づき正気を失いだすので、正常な判断が出来ないのかも。

そして決行当日、夜のうちにワイヤーを張り、朝綱渡り開始の予定です。
ジャンとアルバートはバリーの手引きで北棟へ上がり、
フィリップ、ジェフ、デビッドは運送業者を装い、南棟に入ります。
南棟組は相当重たいワイヤーも運び込むんだから大変です。
建設作業員が使うエレベーターで最上階110回まで上がりますが、
警備員が巡回しており、ビビったデビッドは逃げてしまいます。
フィリップとジェフは見つからないように隠れるのですが、
なんとその場所は建設中のエレベーターの梁の上で、
高所恐怖症のジェフにとってはフィリップの綱渡り以上の恐怖でしょうね。
午前二時ごろまで隠れていると、警備員が寝てしまったみたいで、
その隙に2人は屋上にワイヤーを運び込みます。
すぐに北棟の屋上にいるジャンが弓矢で釣り糸を渡してくれるはずでしたが、
矢が狙い通り飛ばなかったみたいで、南棟の壁の縁に引っ掛かり…。
フィリップがなんとか矢を回収し釣り糸を伝ってワイヤーを張ろうとすると、
想像以上にワイヤーが重く、あわや落下してしまいそうに…。
なんとか落下は防いだものの、重さで弛んだワイヤーを巻き上げるのに
かなり時間がかかり、作業員たちが来る朝6時がどんどん迫り、
北棟のアルバートが逮捕を恐れて協力を拒み始めます。
アルバートとデビッドは予想以上に使えないやつらでしたね。
空が白み始めた頃、なんとかワイヤーを張るのに成功しますが、
南棟の屋上に、ビジネスマン風の青年が登ってきて…。
万事休すかと思われましたが、青年はフィリップたちを見て無言で退散します。
きっと「ヤバそうな奴らだ、関わらない方がいい」と思ったのでしょうね。
実際、邪魔でもしようものならフィリップに殴り殺されてたでしょう。
そしていよいよ綱渡りを始めるのですが、この綱渡りを始める準備段階での
トラブルの連続に、綱渡り以上にハラハラドキドキさせられました。
なので綱渡り云々は別にしても、なかなかよく出来たクライム映画です。

綱渡り直前、フィリップは衣装に着替えようとしますが、
衣装の黒いタートルネックを屋上から落っことしてしまい、
一世一代の大勝負を下着で挑むことに…。
ドジというか何というか、そんなビルの縁で着替えるからだよね。
下着も黒い長袖シャツなので見栄えはそんなに変わらないけど、
110階建てのタワーの屋上にそんな恰好で寒くないのかな?
綱渡りを始めたフィリップは絶好調でスイスイ北棟まで渡り切り、
世界一高い場所での綱渡りをあっさり成功させます。
ところがフィリップはもう一度ワイヤーで南棟に戻ることにします。
苦労して張ったワイヤーだから一回で終わるのは勿体なかったのかな?
それともあっさり成功しすぎて物足りなかったのかも?
ワールドトレードセンターの下では大勢の観衆が見守っています。
私なら怖くて見てられないと思いますが、意外と観衆の多くは、
成功するところよりも人間が落下するところを見たがってるのかもね。

フィリップは南棟へ戻る途中、ワイヤーの真ん中で、跪きます。
感謝を表現しているらしいですが、一種の曲芸ですね。
あまりにあっさり渡れたので、ちょっと難度を上げてみたのかもしれません。
南棟へ着く直前、騒ぎを聞きつけた警官が2人南棟の屋上に上がって来て、
ジェフを確保し、フィリップが着くのを待ち構えます。
「カモン、カモン」とフィリップを挑発するのですが、
よく危険な綱渡り中の男にそんなプレッシャーをかけられるものですね。
野次に動揺して失敗するようなメンタルの男なのに…。
しかし今日のフィリップは至って冷静で、南棟到着直前にクルッと方向転換。
「追って来れるものなら来てみろ」と言わんばかりに北棟に折り返すのです。
またワイヤーの真ん中で、今度は正座して下を見ます。
綱渡り師は下を見るのはタブーですが、どうしても観衆を見たかったようです。
まぁこれほど高かったら中途半端な高さよりも現実味がなくて怖くないかも。
当然北棟の屋上にも警官が駆け付け、フィリップを待ち構えますが、
彼は警官をからかって、またクルッと折り返すのです。
そしてまた真ん中で曲芸し、南棟手前で再び折り返し、
更にまた真ん中で寝転び、今度は空を仰ぎます。
いくら綱渡りの達人でも、そんなに往復してたらいつか落ちそうですよね。
両端の警官は自分がいるせいで人が転落死するかもしれないのに、
よく平気で待ち構えていられるものですね。

彼を邪魔するのは屋上の警官だけではなく、白い鳥に襲われたりもします。
野生の鳥は仕方ないけど、考えられないのは警告のために近づいてきた
湾岸警察のヘリコプターです。
ヘリの巻き起こす風でフィリップがバランス崩したらどうするのか、と。
天候も怪しくなってきて、ワイヤーも疲労したと感じ、
そろそろ潮時だと考えたフィリップは、南棟に向かいます。
しかしあと少しで到着のところで足がガクガクし、バランスを崩しかけます。
パパ・ルディ曰く、最後の3歩が油断して最も危険らしいです。
でもフィリップはなんとか持ちこたえ、南棟に到着。
その途端に警官に確保され、階下に引きずり降ろされます。

でも建設作業員たちや観衆はフィリップに大喝采を送り、
逮捕した警官からも「見事な芸当だ、大したものだ」と称賛されます。
判事からも「子供たちのためにセントラルパークで綱渡りすること」という、
罰なのかどうなのかわからない罰を与えられて解放されるのです。
バッシングしまくるフランスと違ってアメリカは寛容ですね。
そんなアメリカが気に入ったのか、フィリップはNYに住むことに。
意外なのはアニーがあっさり帰国してしまうことです。
前述のように、本作はロマンスを描くことを重視してないみたいです。
フィリップはワールドトレードセンターのお偉いさんと思われる
ガイ・トゾーリ氏から、自由に屋上に登れるパスを贈られます。
もちろん綱渡りは禁止ですが、粋な計らいですね。
しかも彼のパスだけ使用期限の欄に「永遠」と書かれていました。
まぁ彼の無茶のお蔭でワールドトレードセンターも有名になったわけだし、
そのお礼の意味もあるかもしれませんね。
でも期限「永遠」のパスは27年で使用できなくなっちゃうわけですが…。
ワールドトレードセンターがNYの象徴になったのは
フィリップが綱渡りして注目集めたお蔭もあるだろうけど、
NYの象徴であるがために崩落したとも言えるので、因果なものです。

綱渡り師の伝記映画なんて、内容には全く期待できなかったけど、
意外にもクライム映画として楽しめたのでよかったです。
2D版で観れていたら尚よかったんだけどな。

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