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グローリー 明日への行進

先週末に日本公開になった『グローリー 明日への行進』を観たことで、
第87回アカデミー賞の作品賞ノミネート作を全て観ることが出来ました。
オスカーは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でしたが、
全て観てみて、ボクなりの順位を書きたいと思います。

第87回アカデミー作品賞 個人的に面白かったランキング
1位『アメリカン・スナイパー
2位『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
3位『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
4位『セッション
5位『6才のボクが、大人になるまで。
6位『グローリー 明日への行進
7位『グランド・ブダペスト・ホテル
8位『博士と彼女のセオリー

上位3作品はノミネートも納得の傑作だと思いましたが、
4位、5位は見所もあるけど、凡作な印象を受けました。
そして6位以下は駄作で、下位2作品は年間ワースト級で、
このノミネート結果には納得できませんが、
2位がオスカーだったので、受賞結果は納得です。

ということで、今日は8作中6番目に面白かった、
というか3番目につまらなかったオスカー候補の感想です。

グローリー 明日への行進
Selma.jpg

2015年6月19日日本公開。
マーティン・ルーサー・キング・Jrのアメリカ公民権運動を描いた歴史ドラマ。

1965年3月7日、マーティン・ルーサー・キング・Jr.の呼び掛けにより集まった、黒人の有権者登録妨害に抗議するおよそ600名がアラバマ州セルマを出発。だが、デモ行進がいくらも進まないうちに、白人知事は警官隊を動員して彼らを暴力で制圧する。その映像が「血の日曜日」としてアメリカ中に流れたことにより抗議デモはさらに激しさを増し、やがて世界を動かすことになる。(シネマトゥデイより)



本作はキング牧師のアメリカ公民権運動を描いた歴史ドラマです。
第87回アカデミー賞では作品賞と主題歌賞にノミネートされ、
主題歌賞でオスカー受賞しています。
しかし批評家連中の評価がすこぶる高い作品で、
アカデミー賞当時も、「ノミネート部門数が少なすぎる」
「これこそ黒人差別じゃないのか」などと批判されたみたいです。
たしかに作品賞候補になるほどの作品が、俳優部門など他で無視されたのは
少々違和感はありますが、どうせ受賞は難しいんだからどうでもよくないかな。
なにしろ昨年は公民権運動映画『それでも夜は明ける』が9部門でノミネートされ
作品賞を含む3部門を受賞しているので、公民権運動映画が二年連続で
アカデミー賞席巻するなんて、それこそ異常事態ですからね。
アカデミー賞は公民権運動映画の祭典ではないし、そうなるべきでもないので、
アカデミー会員もバランス取ろうとするのは当たり前だと思います。

正直、ボクとしては作品賞にノミネートもされて欲しくなかったです。
本作は作品賞候補作だから日本でも劇場公開されましたが、
本来ならビデオスルー、或はビデオリリースもスルーされそうな作品です。
それは出来が悪いためではなく、アメリカ公民権運動に興味を持つ日本人が少なく、
日本で本作が売れる見込みがないからです。
ボクもアメリカ公民権運動に全く興味ありませんが、ハリウッド映画ファンとして、
アカデミー作品賞ノミネート作くらいは全て観ておくべきだと思うので、
仕方なく観に行きましたが、もし本作がノミネートされていなければ、
他のもっと妙味深い作品がノミネートされ、日本劇場公開された可能性もあります。
まぁ公民権運動映画枠でノミネートされているので、作品賞候補を全て観るなら、
公民権運動映画の観ることは避けられないんですけどね。
作品賞候補になったことで日本でも劇場公開が決まった本作ですが、
案の定、劇場はガラガラで、義務的に観に来た映画ファンばかりじゃないかな?
先日のヘイトクライム、教会銃乱射事件も本作の追い風にはなりませんでした。

ただ、全く興味のないアメリカ公民権運動やキング牧師ですが、
最近でも先月公開された『ジェームス・ブラウン』の劇中で、
キング牧師暗殺のことが語られたりしましたが、
アメリカにおいては重要な歴史であり、ハリウッド映画を楽しむ上でも、
知っておいて損はない、いや、知っておくべきことかもしれません。
ボクもキング牧師については教科書以上のことは知らないので、
こうして映画で観れることはいい機会でもあります。

で、いざ重い足取りで観に行った本作ですが、
観る前はキング牧師の半生を描いた伝記映画だろうと思っていたけど、
意外にも、ほんの1年程度の活動が描かれていただけでした。
キング牧師がノーベル平和賞を受賞した1964年から、
翌1965年の血の日曜日の前後が描かれているだけで、
かなりピントが絞られた内容でした。
これだと後学のためにキング牧師のことを知るという目的は適わないけど、
ひとつの事件に焦点を当てているので、伝記映画よりも観やすいです。
名前しか知らなかった血の日曜日事件のことも、よくわかりました。
本作の原題の『セルマ』ってどういう意味だろうと思ってましたが、
血の日曜日が起きた場所、アラバマ州ダラス郡セルマのことなんですね。
『グローリー 明日への行進』なんてセルマと関係ない邦題が付いていますが、
これは南北戦争の黒人部隊を描いた歴史映画『グローリー』に肖っている、
…わけではなく、オスカー主題歌賞を受賞した曲名のタイトルに肖っています。
本作がオスカー関連作として日本公開されることになった証拠でしょう。
以下、ネタバレ注意です。

冒頭、教会で黒人少女4人が爆殺されるシーンが描かれます。
このシーンはかなり衝撃的で、本作に全く関心がないまま観ていたボクも
思わず引き込まれていまったので、いい掴みです。
公民権法施行から半年、ノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、
ジョンソン大統領に面会し「黒人の選挙権を連邦法で保証してほしい」と訴えます。
選挙権は憲法で認められた基本的人権ですが、隔離政策を取る南部では、
投票した黒人が不当解雇されたり、投票所に入れなかったりするみたいです。
しかしジョンソン大統領は「もう少し待て、貧困対策が優先だ」と一蹴します。
ジョンソン大統領は公民権運動に関心が高い人物として知られますが、
本作の彼はどうも違うみたいで、キング牧師の公民権運動を疎ましく思うも、
武闘派マルコムXよりはキング牧師の方がマシ、というスタンスみたいです。
FBI長官を使い、キング牧師の夫婦に亀裂を入れようなんてこともしています。
大統領が悪者の方が話が面白くなるからかもしれませんが、
この手の映画で事実を捻じ曲げるのはあまり好ましくない気がします。
ケネディ大統領の方が好きだったのはわかりますが…。

キング牧師率いるSCLC(南部キリスト教指導者会議)は
新しい運動の場としてアラバマ州セルマを選びますが、
セルマではSNCC(学生非暴力調整委員会)の縄張りです。
同じ公民権運動の組織なのに、縄張り争いみたいなものがあるんですね。
SNCCは主に有権者登録運動をしていますが、あまり効果はないようです。
本作の序盤で運動家アニー・リー・クーパーが有権者登録に行きますが、
登録には白人の登録官の質問に正解する必要があるみたいだけど、
「アラバマ州判事67人の名前を答えよ」みたいな意地悪な質問で、
これでは有権者登録運動が上手くいくはずありません。
運よく有権者登録に成功しても、新聞に登録者の名前と住所が載り、
KKKに目を付けられて殺される危険性もあり、登録は進みません。
SCLCはそんな無駄な運動よりもデモをするべきだと提案します。
ボクにはデモにそんな力があるとは思えませんが、
デモで郡保安官を挑発し、デモ参加者に暴力を振るうように仕向け、
それがテレビや新聞で全国に報道されることにより、
アメリカ世論の黒人差別問題意識を高める作戦です。
保安官が挑発に乗ってこなければ全く意味のない敵のミス待ちで、
悠長な作戦な気がしますが、この地のクラーク保安官は
かなり短絡的で暴力的な男らしく、楽勝だろうと考えます。

キング牧師が扇動し、大勢で裁判所まで行き、
「有権者登録するまで帰らない」と座り込みます。
案の定、クラーク保安官が出張ってきて、座り込む黒人青年を殴ろうとしますが、
息子が殴られそうになった母親が先に手を出してしまい…。
挑発作戦台無しで、逆にキング牧師らが逮捕されてしまうのです。
ミス待ちどころか、こっちが先に大チョンボしちゃうなんて、
ちゃんと作戦を皆に伝えてなかったのでしょうか?
キング牧師が拘留されている間、武闘派のマルコムXが
セルマでの運動代行を申し出ますが、非暴力を貫くキング牧師は拒否します。
キング牧師はマルコムXが超嫌いみたいですね。
マルコムXはキング牧師に心底協力したかったみたいですが…。
SNCCもそうだけど、公民権運動家同士、もっと協力すればいいのにね。
キング牧師不在で黒人市民によるデモ行進が行われますが、
キング牧師が不参加ならマスコミが全く注目しないことをいいことに、
隔離政策を進める州知事は州兵を動員し、暴力的にデモ行進を妨害し、
黒人青年ジミー・リー・ジャクソンが州兵に射殺されます。
娑婆に戻ったキング牧師はその事件を演説で批判しますが、
その時、マルコムXが暗殺されたことにも触れ、残念がるのです。
さっきまであんなに嫌ってたのに、いつ心変わりしたのか、
その心境の変化の過程もちゃんと描いてほしいです。
まぁ単純に世論を煽るために黒人殺害事件を利用しているだけかな?

SLCLはセルマから州都モンゴメリーまでのデモ行進を計画します。
距離80km、5日間かけて行う大規模デモ行進です。
SNCCはキング牧師の信望者ジョンを除き参加しませんが、
525人の参加者が集まり、セルマを出発します。
初日、キング牧師は家庭の事情で不参加で、
先頭を歩く人は籤で選ぶのですが、この役目は嫌でしょうね。
セルマの境であるエドモンド・ペタス橋まで来たデモ隊でしたが、
橋を渡ったところでクラーク保安官率いる州警察が道を封鎖。
「不法集会だ、2分以内に解散しろ」と命令します。
もちろんデモ隊は応じませんが、催涙ガスを投げ込まれ、
警棒や鞭で殴られ、暴力的に追い返されてしまいます。
催涙ガスは攻撃する目的よりも、マスコミを目眩ましするための煙幕ですが、
あまり効果がなかったみたいで、州警察がデモ隊に暴力を振るう様子は
テレビの生中継などで生々しく報じられ、全国7000万人が目撃します。
これが「血の日曜日」と呼ばれる事件だそうです。
かなり残忍な暴力が描かれていますが、意外にも死者は出てないみたいです。

モンゴメリーまでのデモ行進は失敗したけど、警察の暴力が報じられたことで、
SLCLの本当の狙いである挑発による敵のミス待ちは成功しました。
キング牧師は血の日曜日の報道を知ったアメリカ中の人々に、
マスコミを通じて次回のデモ行進の参加を呼びかけます。
その結果、参加者は数千人規模となり、しかもそのうち三割は、
聖職者やリベラル層などの白人でした。
ジョンソン大統領はデモ行進の中止を要求しますが、キング牧師は強行。
自ら数千人のデモ隊の先頭に立ち、例のエドモンド・ペタス橋まで来ます。
やはり州警察が待っていましたが、今度はあっさり道を譲ってくれます。
先達ての血の日曜日の批判に懲りたのか、白人もいるので気が引けたのか、
それとも今回は参加したキング牧師の存在が大きかったのか…。
しかしなぜかキング牧師は橋を渡り切らずに引き返してしまうのです。
彼曰く「挟み撃ちにされるかも」と考えたらしいですが、
ボクには州警察がデモ行進の阻止を完全に諦めたように見えたし、
ここで引き返すなんて、とんだ腰抜け野郎だなと思ってしまいました。
SLCLの仲間からも「水の泡だ」「集まった白人を利用すべきだった」
「呼びかけておいて中止なんて裏切り行為だ」と非難されます。
まさかもっと注目されるために、もう一度警察から暴行されたいと思っていたとか?

キング牧師の真意はわかりませんが、中止したことにより、
幸か不幸か、更に世間から注目される事件が発生します。
デモ行進に参加した白人牧師ジェームズ・リーブが、
街中で白人市民から「白いニガーめ!」とリンチされ、死亡するのです。
黒人が殺されても何とも思わない白人でも、同じ白人が殺されたら話は別。
アメリカ各地で白人・黒人とはずデモ行進が多発します。
もしキング牧師がこうなることを計算してデモ中止したのなら凄いですね。
キング牧師は大統領に面会し、黒人選挙権の決断を迫します。
更にSLCL対アラバマ州の裁判でも、判事が世論を鑑みたのか、
デモ行進は合法と言う判決が出て、デモ行進の妨害が禁止されます。
州知事はジョンソン大統領にデモ行進を中止させるように直談判しますが、
大統領はあまりに見苦しい州知事の姿を見て自己嫌悪に陥ったのか、
「あなたとは違うんです」と州知事の要請を一蹴し、
選挙権の制限を撤廃する投票権法を提出すると発表、後に署名します。
デモ行進も恙なく行われ、キング牧師は州都モンゴメリーの州知事邸前で、
これ見よがしに演説をぶちかまし、めでたしめでたしです。
まぁ本作では描かれないけど、この数年後にキング牧師は暗殺されるし、
当時ほどではないにせよ依然として黒人差別は残っているので、
そんなにめでたしめでたしでもないかもしれませんが…。

日本でも今月17日に、選挙権を18歳に引き下げられる改正案が可決され、
来年夏の参院選から適用される見通しですが、
創価学会以外の若者がちゃんと投票に行くのか疑問です。
(公明党の組織票が増えるだけな気がします。)
学生には本作を観て、当たり前のようにもらえる選挙権が、
本来どれほど得難い大切な権利かを再確認し、投票に行ってほしいです。

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