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ハイネケン誘拐の代償

1997年の神戸連続児童殺傷事件を起こした酒鬼薔薇聖斗の手記『絶歌』が
出版されてベストセラーになっていますが、こんな不愉快なニュースも珍しいです。
ボクは酒鬼薔薇と同年代だし、神戸近郊に住んでいたので、
当時はウチの学校でもめちゃめちゃ話題になったし、
たしかにどんなことが書かれているのかは気になりますが、
遺族が内容を批判し、出版差し止め、回収を求めているのに、
出版を断行し、更に増刷して売り続けるらしいです。
酒鬼薔薇が自己顕示欲の強いサイコパスなのはわかり切っているし、
普通の犯罪者ならまだしもサイコパスの更生は不可能なので、
コイツがこんな本を書くのはどうしようもないことだけど、
出版社が金儲けのためにそれに協力するなんて…。
『絶歌』を出版する酒鬼薔薇の共犯者・太田出版に制裁を加えたいけど、
不買するにしても、もともと太田出版の本なんて買ってないし、
ボクには奴らに1円の損害も与えられないのが悔しいです。
こんな本で酒鬼薔薇や太田出版を儲けさせてはいけません。
読みたい人はネットで拾うか立ち読みしましょう。

ということで、今日は実際の犯罪者のインタビューを基にした映画の感想です。
『絶歌』もいつか映画化されるかもしれません。
というか、すでに企画は各所で動き出している気がします。

ハイネケン誘拐の代償
Kidnapping Mr Heineken

2015年6月13日日本公開。
実際の事件を基にした犯罪ドラマ。

1983年、世界的に著名なビール会社「ハイネケン」のフレディ・ハイネケン会長(アンソニー・ホプキンス)が何者かに誘拐され、高額の身代金が要求される。巨大組織による犯行の線も考えられていたものの、犯人たちは犯罪に手を染めたこともない幼なじみ5人組だった。計画は順調に進んでいたはずだったが、次第に人質であるハイネケンの威圧的な言動に振り回され、誘拐犯たちの計画に狂いが生じ始める。(シネマトゥデイより)



本作は1983年にオランダ、アムステルダムで実際に起きた
ビール会社ハイネケンの経営者が誘拐された事件を基にした物語です。
ハイネケン社のことはさすがに知ってます。
お酒が飲めないので商品を手に取ったことはないけど、
めちゃめちゃ有名な世界的ビール会社ですよね。
そんな超有名企業の経営者が誘拐されたなんて、
凄いニュースなはずですが、全く聞いたこともなかったです。
もちろん三十数年前の話ではリアルタイムで知ってるはずもないけど、
後々もっと語られてもよさそうなものなのに…。
やっぱり日本ではハイネケンより国産メーカーが強いから、
誰も興味なくて、事件が取り上げられる機会もあまりなかったのかな?
アサヒやキリンの事件なら、絶対語り継がれてますよね。

全く知らないし、正直そこまで興味がない事件だったので、
面白いのだろうかと不安はありましたが、
ハイネケン役はアンソニー・ホプキンス、誘拐犯のひとりはサム・ワーシントンで、
非ハリウッド映画のわりにはキャストが豪華で、観てみることにしました。
いざ観に行くと、約1時間半、全く弛みを感じないとてもテンポのよい展開で、
最後まで一瞬たりとも飽きることなく楽しむことができ、なかなかよかったです。
ただ、観終った時(正確にはエンドロール直前)に
「そんなバカな」と愕然としてしまいました。
その理由はネタバレになるので後述しますが、最近の映画で言えば、
同様に実際の事件を基にした『デビルズ・ノット』の観た時の印象に近い、
なんともスッキリしない鑑賞後感です。
以下、ネタバレ注意です。

1983年アムステルダム。
コル、ヴィレム、カット、スパイクスの4人は事業のために銀行に融資を申し込むも、
担保になりそうな物件が家賃も払わないコミューンに
不法占拠されている建物だけなため、融資を拒否されてしまうのです。
法的に立ち退かせることも無理みたいで、4人は実力行使で
コミューンを追い出そうとしますが、逆に彼らが逮捕され…。
なぜ占有者が法で守られるのか謎ですが、こんな輩はオランダにもいるんだな。

すぐに釈放された彼らですが、コルは恋人ソーニャが妊娠したと知り、
家族のためにも金が必要だと思ったのか、身代金目的の誘拐を計画します。
子供が出来たら真面目になるって話はよく聞くけど、
逆に犯罪者になろうなんて、ちょっと理解に苦しみますね。
ヴィレム、カット、スパイクス、そして弟のブレイクスを仲間に誘います。
誘拐のターゲットですが、定番の女子供は彼の流儀に反するみたいで、
オランダ有数の大富豪で世界的ビール会社の経営者である
フレディ・ハイネケンを誘拐することになります。
ヴィレムとソーニャは兄妹で、彼らの父親はハイネケン社を解雇されたらしく、
その恨みもあるのかもしれませんが、当の父親は解雇されたにも関わらず、
ハイネケンに心酔しているみたいでちょっと不思議です。
それだけハイネケン社がオランダの誇りなのかもしれませんね。

当初は6000万ギルダーほど身代金を要求するつもりでしたが、
5人でそんな額は持ち運べないということで、3500万ギルダーに決定します。
あまり聞き慣れない通貨単位なので、どれほど高額かピンときませんが、
さっき調べたところ、二十数億円だそうです。
当時としては史上最高額の身代金だったみたいです。
誘拐のための準備として、監禁場所の倉庫を防音に改造したりするので、
10万ギルダーほど資金が必要になり、彼らは銀行を襲うことにします。
銀行襲っただけでも一財産築けそうな額になりそうな気がしますが、
3500万ギルダーに比べたら銀行強盗で得られる額なんて端金かな。
難易度さで言えば、誘拐も銀行強盗も同じくらい困難な気がしますが、
それを連続で成功させるなんて天文学的な確率な気がするのに、
そんな計画を実行するなんて、こいつらかなりアホですね。
でも銀行強盗は意外と楽に成功しちゃうので、オランダの警察も相当アホです。

銀行から盗んだ金なんて、すぐに足が付きそうな気がするけど、
彼らはその金で倉庫に防音の監禁室を自作します。
監禁に必要なボイスチェンジャーや手錠も購入するのですが、
そんな物を買えば怪しまれそうな気がしますが、
ボイスチェンジャーはダース・ベイダーごっこに使うと見せかけて購入し、
手錠はSMプレイに使うかのように見せかけ大人のオモチャ屋で購入します。
アホらしいけど、上手く誤魔化せてますね。
拉致に使うバンは盗難車を使いますが、こいつら誘拐を行う前に、
いくつ犯罪する気だよって感じですが、なぜか全く捕まりません。
マジでオランダの警察は無能です。

ハイネケンが自宅から出て来て、車に乗り込むところを拉致する計画ですが、
身元がバレないように、話すのはドイツ語だけにしようと示し合わせます。
なるほど、オランダ人ではなくドイツ人の犯行に見せかけるつもりでしょうが、
彼らが普段の会話で使っているのは英語なんですよね。
本作が英蘭合作の英語映画なので仕方ないけど、なんだか違和感があります。
結局彼らはアホなので、ハイネケンに話しかけられて、
うっかり英語を使ってしまい、ドイツ人に見せかける計画は台無しです。
ハイネケンの拉致には成功しますが、なぜか彼の運転手まで拉致。
その理由が全くわかりませんでしたが、ちゃんと監禁部屋も2つあるので、
はじめから計画されていたことだと思われます。
ただその意図は本当にわからないし、やはり後々ややこしいことになります。

ハイネケンと運転手を倉庫に監禁し、家族に身代金要求しますが、
逆探知を恐れてか、電話ではなく手紙で身代金を要求します。
電話から足が付くのはよくある話なので、これはいいやり方だと思いましたが、
万が一手紙に指紋が付いていたらヤバいので、倉庫の近くの事務所に侵入し、
コピー機を拝借して手紙をコピーし、それをハイネケンの自宅に届けます。
しかし彼らは本当にアホで、コピー機に原稿を入れっぱなしで去るんですよね。
翌日気付いて、運よく回収すっることが出来ますが、本当にオッチョコチョイで、
こいつらが誘拐に成功するわけがないと思ってしまいました。
自宅に届けるのも、自分たちで自宅の郵便受けに投函するんですよね。
誘拐直後で自宅には警察もいるのに、迂闊にもほどがありますが、
彼ら以上に警察はオッチョコチョイなので、犯人を見過ごしてしまいます。
もはやあり得ないくらい無能な奴らばかりですが、
本当に実話を基にしているのか疑いたくなります。

監禁された運転手はビビリまくってますが、ハイネケンは余裕です。
すぐに身代金が支払われて解放されると思ってるようで、さすがは金持ちです。
バスローブが欲しいとか、本が読みたいとか、BGMはクラシックがいいとか、
バンバンジーのチリソースが食べたいとか我儘放題です。
世話係のカットは優しい性格なので、出来る限り要求を飲みます。
もちろん水洗便所なんてないので、オマルの処理なんかもしますが、
誘拐犯もなかなか大変な仕事ですね。
マスコミも誘拐事件を報じますが、訓練された外国の組織の犯行だとか、
全く見当ハズレな犯人像が報じられ、してやったりです。
ところが、何日経っても家族から身代金要求の手紙の返事がありません。
電話だと直接返事を聞けるけど、手紙だとひたすら待つしかないんですね。
拉致から2週間経ち、カットが痺れを切らせ、人質を解放しようと言い出し、
抜けたいと言い出しますが、コルたちの説得で何とか思い留まります。

焦っているのは誘拐犯ばかりではなく、ハイネケンもです。
彼はすぐに身代金が払われると思っていたので、見捨てられた気分でしょう。
「私がいなくても会社は回るのか」って思ったかもしれないですね。
ハイネケンは「きっと行き違いだから、紙とペンを貸してくれ」と
自分で家族に対し身代金を請求する伝言を書きます。
本作の宣伝では誘拐犯がハイネケンに逆に追い詰められる展開になるような
印象を与えられましたが、実際はそんな感じでもなく、
本作のハイネケンは単なる金持ちのオッサンです。

彼の直筆伝言を家族に届けても、やはり返事はなく、
警察は誘拐犯は身代金が払われない場合、本当に人質を殺す気があるのか、
こちらの出方を窺っているみたいです。
たぶん、本当に殺すつもりなら、まず運転手を殺すはずなので、
それまではハイネケンは無事だと警察や家族は楽観しているのでしょう。
人間の命の価値は平等ではないんですね。
安易に運転手まで拉致ったことが裏目に出てしまいました。
コルは銀行強盗の時も怪我人ゼロだったことを誇りに思っていて、
誘拐や強盗はやっても、人殺しだけは絶対避けたいタイプです。
しかし強硬なスパイクスは「本気だとわからせるために運転手を殺そう」と提案し、
ヴィレムが殺人役に立候補するが、コルが必死に止め思い留まらせます。
この時ヴィレムは、なぜか運転手ではなくハイネケンを殺そうとするんですよね。
彼も何を考えているのか、よくわからん奴です。

拉致から19日目、コルはもう一度ハイネケンに伝言を書いてもらいます。
その時、ハイネケンから「君たちは大金を手にするだろうが、裕福には二通りある」
「金が多い裕福か、友達が多い裕福で、二つ同時はあり得ない」と。
身代金を手に入れたら、仲間を失うことになると説教しているみたいですが、
身代金がなかなか払われなくて自分自身の友人のいなさに気付いた、
自虐的な発言かもしれませんね。
その伝言が効果的だったのか、ついに身代金支払が新聞に告知され、
受け渡し方法を書いたメモを運転手に読ませて録音し、家族に送ります。
誘拐で最も困難なのは受け渡しを成功させることなので、
どんな方法なのかと期待しましたが、意外と普通でした。
立体交差の上から金を投下させて、下でトラックに積んで逃走するだけです。
そのまま山中に向かい、地中に金を埋めて隠します。
なんだか杜撰な計画でしたが見事に史上最高額の誘拐に成功しちゃいました。

大喜びする5人はハイネケンを解放するため倉庫に向かう途中で
警察に尾行されていることに気付きます。
なぜ彼らに警察が目を付けたのか不思議です。
まぁ杜撰な計画だったので、思い当たる節はありまくるけど、
身代金受け渡しも成功したこのタイミングで目を付けられるのは不思議でした。
その場は何とか撒き、ヴィレムとコルはせっかく隠した金を回収しますが、
700万ギルダーだけ埋めっぱなしにしまて、3人と合流します。
5人は金を山分けし、コルはまず弟ブレイクスにどこかに逃げるように指示、
自分たちはパリに国外逃亡しようとします。
なぜブレイクスを連れて行かないのかよくわかりませんでしたが、
弟だけはマークされてないとでも思ったのかな?
後日、逃げたブレイクスは普通に逮捕されちゃうんですけどね。
妻子がいるカットもパリに逃げるのを拒否します。
優しい彼はハイネケンを倉庫に放置していることも気にかかるみたいで、
仲間と袂を分かち、ひとりで倉庫に向かいますが、途中で警察に逮捕されます。
彼は監禁場所を自供し、ハイネケンと運転手は警察に救出されます。
意外なのは救出される時にハイネケンが運転手を気遣っていたことです。
身代金もなかなか払われないほどの嫌われ者かと思っていたので、
彼にもそんな優しさがあったとは…。

残る3人はパリに逃げますが、その道中でヴィレムとスパイクスが大ゲンカ。
なぜ警察にバレたのかで揉めたみたいですが、
ホントになぜバレたのかボクもめちゃめちゃ気になります。
結局、スパイクスも袂を分かち、ひとりで逃げますが、後日自首します。
「神から金を燃やせとお告げが」とキチガイを演じて精神病院に収容されます。
なかなか狡猾な奴ですが、結局精神病院を脱走して、
再び逮捕され、刑務所に収監されたみたいです。

コルとヴィレムはパリに着き、ヴィレムの恋人の家に匿われます。
国境の検問で引っかかったのは描かれましたが、
どうやって突破したのかは描かれておらず気になります。
ヴィレムは恋人とイチャイチャして潜伏生活をエンジョイしますが、
そこに居候するコルには堪ったものではありません。
彼はアムステルダムに残してきた身重の恋人ソーニャと話しがしたいのですが、
ヴィレムからは「絶対妹に電話するな」ときつく言われていていて…。
そこでコルはソーニャの友達カリンに電話し、潜伏先の電話番号を教え、
ソーニャに伝えてほしいと頼みます。
ソーニャへの電話は駄目と言われたから、別の人ならいいと考えたのか、
あまりにもアホすぎる行為で呆れてしまいます。
当然、潜伏先の電話番号は警察に漏れてしまいますが、
これならソーニャに直接電話した方がまだマシですよね。

すぐに警察が潜伏先に急行し、コルとヴィレムを包囲しますが、
2人は「刑務所から若いうちに出られる、金の隠し場所は知られていない」と、
抵抗することなく御用となるのです。
いやー、警察もそんなに甘くないだろうから、捕まっちゃったら、
金の隠し場所だって吐かされるんじゃないかと思いましたが、
オランダの警察はトコトン無能で、30年以上経つ今現在も
史上最高額の身代金は行方不明だとか…。
精神病院に収容されたスパイクスは別として、カットは12年、
ブレイクスは8年、コルとヴィレムは11年の懲役に処されますが、
ハイネケンに対しても最も優しかったカットが一番刑期が長いのは謎です。

それにしても、結局彼らが警察に目を付けられた原因が何だったのか…。
警察発表では匿名の情報があったらしいけど、情報提供者は非公開で、
作中でも明らかにされていないんですよね。
実際わからないのは仕方がないけど、その事件を映画にするなら、
本作独自の解釈を作品に込めてもいいはずだし、そうするべきです。
本作は犯罪ジャーナリストのピーター・R・デ・ヴリーズが、
実際のコルとヴィレムへのインタビューを基に書いた本が原作ですが、
原作者は本作の内容が事実と違いすぎるとして、プレミアに出席しなかったそうです。
つまり本作は事実を基にしているとは言いながらも、ほとんどフィクションですが、
事実に忠実にする気がないなら、独自の解釈で描いてもいいはずなのに、
なぜ最も重要なところだけ、事実通りに曖昧に描くのか。
別にドキュメンタリーじゃないんだから、映画としてちゃんと決着させるべきです。

ハイネケンが他界した2003年に、なぜかコルも暗殺されたらしいけど、
その暗殺犯が誰なのかも有耶無耶にしています。
そんなもの、どう考えたってヴィレムが身代金を独り占めするために、
隠し場所を知ってるコルを殺したことは想像に難くないのに…。
なんでも実際のヴィレムは裏社会の大物になっているらしいので、
製作サイドは報復を恐れて日和ったか?
その程度の覚悟なら、実話なんて映画化するべきじゃないです。

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